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[106] 糖尿病は怖い?― 循環器病とのかかわり ―

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
文章・図表・イラスト等の転載・引用のご相談は循環器病研究振興財団までご連絡ください。

国立循環器病研究センター
予防健診部
部長 宮本 恵宏

治療計画しっかり...健康長寿めざそう

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もくじ

糖尿病は「祟り」なのか

日本人で最も古い糖尿病患者さんとして記録に残っているのは、誰だかご存知ですか?〈図1〉の切手をご覧ください。1997年に神戸で開催された第15回国際糖尿病会議の記念切手です。六角形は血液中の糖分のコントロールに欠かせないホルモンであるインスリンの結晶を表し、その左上に描かれた人物は平安時代の摂政、藤原道長の肖像画です。

道長は、源氏物語の主人公・光源氏のモデルともいわれ、関白太政大臣として栄華を極めたとされていますが、実は糖尿病を患っており、狭心症も合併していたようです。

同じ時代の人の日記には、道長の病状について「のどが乾いて、水を多量に飲んだ」とか「体が痩(や)せて、体力がなくなった」「背中には腫れ物ができた」「目が見えなくなった」などと書かれています。

これらは「多飲、多尿、多食、体重減少(三多一少)」〈図1〉といわれる糖尿病の特徴的な症状や、糖尿病性網膜症、さらに感染症(または、がん)などの合併症を表していると考えられます。道長自身の日記にも、胸痛に襲われたことが繰り返し記されており、狭心症という心臓の病気も合併していたようです。

現在のような医学知識がなかった当時のことですから、これらの症状は「祟(たた)り」によるものだと信じられていました。

まれな病気ではありません...糖尿病人口の推移

昔は道長のように裕福で、自分ではほとんど労働をしない、ごく一部の人が糖尿病になっていたと考えられています。しかし、現代では国民病といわれるほど糖尿病は増えています。国民健康栄養調査などによりますと、現在、糖尿病が強く疑われる人は約900万人、糖尿病の可能性が否定できない人も合わせると、2200万人に及ぶとされています。〈図2〉

しかも、糖尿病が急速に増えてきたのは、戦後の60年あまりのことです。この間に、摂取カロリーはそれほど増えていませんが、生活習慣の変化で脂肪の摂取割合が大きくなり、さらに身体活動量が減ったことが大きな要因ではないかと考えられています。

2006年の国際糖尿病連盟の推計では、東アジアの糖尿病人口は6700万人ですが、2025年には約1.5倍の1億人弱になるといわれています。ヨーロッパでは同じく5320万人が6410万人に増えると見込まれ、東アジア、東南アジア、南アメリカの増加が著しいと指摘されています。

こうした増加は、遺伝的なことが原因ではなく、むしろ生活習慣の変化が大きいと考えられます。一方、ヨーロッパで増加の伸びがゆるいのは、すでに生活習慣の変化による増加のピークが過ぎたからのようです。

なぜ起こるのか?...インスリンの働きが悪くなるため

糖尿病は祟りでも特別な病気でもありません。しっかり理解していただきたいのは、ちゃんと治療をすれば、決して怖くはない病気ということです。

糖尿病とは慢性的、つまり長い間にわたって、高血糖(血液中のブドウ糖の濃度が高い状態)が続く病気です。では、なぜ高血糖になるのでしょう?

血糖値のコントロールに最も重要な役割を果たすホルモンをインスリンといい、それは膵臓から分泌されています。

食事を摂ると、食物は胃・十二指腸で消化され、小腸で吸収されます。そして、ご飯やパンなどの炭水化物も消化分解され、ブドウ糖となって吸収され、門脈(英語ではportal veinといいます。portとは港、入り口という意味です)という血管を通って肝臓に運ばれます。

ブドウ糖が吸収されると、門脈のまわりにある膵臓のランゲルハンス島にあるベータ細胞からインスリンが出て、つまり分泌されて、ブドウ糖と一緒に運ばれます。インスリンはブドウ糖を細胞に取り込む働きをしているのです。

しかし、さまざまな原因によってインスリンの分泌が悪くなったり、インスリンの働きが鈍くなったりすると、ブドウ糖が細胞に取り込まれにくくなります。その結果、細胞に取り込まれなかったブドウ糖が血液の中にたまり、血糖値が高くなっていきます。

インスリンの働きが悪くなる仕組みは、大きく二つのタイプに分けられます。一つはインスリンの出が悪くなる(インスリン分泌不全)タイプで、インスリンの絶対量が不足しているために、ブドウ糖を消費しきれなくなります。もう一つは、インスリンの作用が弱くなる(インスリン抵抗性)タイプで、インスリンがある程度分泌されているにもかかわらず、効き目がよくないために血糖値が高くなってしまいます。〈図3〉

インスリン抵抗性は、肥満にともなう内臓脂肪の増加や運動不足による筋肉量の減少が原因で起こります。後で説明する2型糖尿病は、多くの場合、まずインスリン抵抗性が強くなり、つまり作用の弱いインスリンがたくさんつくられます(高インスリン血症)が、作用が弱いのでブドウ糖を消費しきれなくなって血糖値が上昇する(糖尿病になる)と考えられています。


糖尿病にも種類があります...原因で分けると

糖尿病はその原因によって主に二つの型に分けられます。一つは、若年で発症することが多い1型糖尿病で、もう一つは成人で発症することが多い2型糖尿病です。まず〈図4〉をご覧ください。

1型糖尿病は、すい臓からインスリンがほとんど出ないタイプです。ですから、治療するにはインスリンを注射で補う必要があります。

2型糖尿病は,インスリンの出が悪いか、うまく働かないタイプです。治療は食事・運動療法が中心です。それでも血糖値が下がらなければ、薬物療法を行います。日本では、全糖尿病の約95%が2型糖尿病といわれています。この冊子では主に2型糖尿病について説明します。

糖尿病の大切な検査...HbA1cをご存知ですか?

高血圧は血圧を測りますし、脂質異常症(高コレステロール血症など)では血液中のコレステロールや中性脂肪を測定します。このように病状を把握するに、は重要なものがそれぞれの病気にあります。糖尿病では何が重要なのでしょうか?

糖尿病の名前の由来にもなっているように、かつては糖尿病の診断や経過をみるため尿中の糖を調べていました。しかし、糖尿病は高血糖の状態が続く病気なので、血糖を調べることが必要です。血糖が容易に測れるようになったのは半世紀前、1960年代になってからのことです。

血糖値は食事の前後や時間帯などによって大きく変動します。そこで、安定した血糖値の状態を表す指標として最も使われているのがHbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)です。

なぜ血糖値の指標となるのでしょうか。タンパク質にブドウ糖が結合(糖化)すると離れなくなる性質があります。赤血球の中にあるヘモグロビンというタンパク質の中で、ブドウ糖と結合したヘモグロビンがどれだけあるかをみた割合がHbA1cです。単位は%です。

赤血球は骨髄で作られ、約120日間の寿命がくると肝臓や脾臓で破壊されるので、HbA1cは過去1~2か月の平均血糖値を反映することが知られています。現在、多くの研究から糖尿病の合併症の予防のための血糖コントロールの管理には、HbA1cが最も有用とされています。〈図5〉

ただし、急激な血糖値の変化や出血、血液の病気などでは、平均血糖値とHbA1cにズレが生じることがあります。

HbA1cは血糖の状態のマーカー(目印)として、糖尿病の診断にも使われます。血糖値が基準以上でなくても、HbA1c6.5%以上が2回続けば糖尿病と診断されます。また、糖尿病の合併症を予防するための治療のマーカーとしても重要なものです。〈図6〉

糖尿病の合併症...細小血管症と大血管症

糖尿病で起こる持続的な高血糖は、身体中のさまざまな臓器に影響を与えます。

とくに神経や血管が集中している臓器が影響を受けやすく、網膜症・腎症・神経障害はまとめて「細小血管症」と呼ばれています。さらに心臓病や脳梗塞や末梢動脈疾患などの「大血管症」の原因となる動脈硬化は、血糖値が高くなることに加え、インスリン抵抗性がもたらす高インスリン血症も原因となり、軽症の糖尿病(または境界型)の段階から進行します。〈図7〉

〈図8〉のグラフは英国で糖尿病の患者さんを追跡して、HbA1c(血糖値の平均)と合併症の発病しやすさを調査したものです。HbA1cとその患者さんが1年間に1000人あたり何人、合併症を発症したかを示しています。

細小血管症はHbA1cの値が高くなると、それに比例して発症数が増えることがわかります。HbA1c6%以下であれば、ほとんど細小血管症は起こりませんが、7%を超えるあたりから、どんどん起こりやすくなります。

一方、大血管症の一つである心筋梗塞の発症数はHbA1cの増加に伴い、なだらかに増えていきます。6%以下でも心筋梗塞を起こす人が少なくないこと、HbA1cが7%を超すところで大きく増えることがわかってきました。

HbA1cがそれほど高くない段階から心筋梗塞が増えるのは、軽症の糖尿病の段階から、作用の弱いインスリンがつくられる「インスリン抵抗性」を背景に動脈硬化が進むこと、高血圧や脂質異常症など糖尿病以外の病気も心筋梗塞の大きなリスクとなることなどが原因のようです。

心筋梗塞のほとんどが糖尿病を合併

心筋梗塞はQOL(生活の質)に関わる大変な病気の一つです。(心筋梗塞については「知っておきたい循環器病あれこれ 92 心筋梗塞が起こったら」をご参照ください。このシリーズのバックナンバーは循環器病研究振興財団のホームページhttp://www.jcvrf.jpでご覧になれます)

国立循環器病研究センター(国循)のCCU(心筋梗塞や狭心症などの専門病棟)に入院した患者さんにブドウ糖負荷検査をおこない、糖に対する反応(耐糖能)を調べた研究では、耐糖能が正常であったのは4人に1人だけでした。治療中の糖尿病の方と、検査で新たに糖尿病とわかった方を合わせると、全体の半分以上が糖尿病でした。このことは糖尿病と心筋梗塞の発症の関係が深いことを示しています。

糖尿病になると、心臓の組織に栄養を与える冠動脈の動脈硬化が進み、冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症)を引き起こします。また、通常の造影検査ではみえない冠動脈の細い枝(微小循環)が詰まったり、心臓の組織に血液を流す能力が悪くなったりすることも知られています。

そのため、冠動脈疾患にかかった方は必ず糖尿病があるかどうかを検査する必要がありますし、糖尿病の方は冠動脈疾患の検査を受けることをお勧めします。〈図9〉

国循では吹田研究という一般住民の方の協力によるコホート研究(協力いただいた方を調査し、その後の病気の発症を追跡する)を行っており、その研究から、最初の調査時の血糖値が高いほど、その後、循環器病になりやすい(男性で1.75倍、女性で3.07倍)ことがわかりました。〈図10〉

食後の高血糖が循環器病の発症のリスクであることはよく知られています。空腹時の血糖の採血だけでは「食後高血糖」があるかどうかはわかりません。厳密に食後高血糖があるかどうかを調べるためにはブドウ糖負荷検査を行わないといけませんが、それには1日に複数回採血をする必要があります。そこで、1回の採血で食後高血糖があることを予測するマーカー(1,5AGと呼ばれる成分)を測ったところ、この値は循環器病、特に脳卒中の発症と関連があることがわかりました。

糖尿病は脳梗塞のリスクにも

吹田研究を始め多くの研究から、糖尿病が脳梗塞のリスクであることがわかっています。

糖尿病になると、心臓からでた大動脈の弓状の部分や、脳に血液を送る頸部の動脈で生じた血栓が原因となって、脳梗塞(アテローム血栓性脳梗塞)を起こしたり、心房細動という不整脈を合併したときに心臓で生じる血の固まりが脳に詰まったり(心原性脳塞栓症)、脳の細い動脈が動脈硬化で詰まったり( ラクナ梗塞)することが起こりやすくなると考えられています。〈図11〉

一過性脳虚血発作(一過性脳虚血発作については「循環器病あれこれ96 脳梗塞の〝前触れ〟一過性脳虚血発作とは?」に詳しく書かれています)が起こると、その後に脳梗塞になりやすいと知られています。

特に糖尿病があると、血圧が高いことや神経症状があることと同様に、比較的短期間のうちに脳梗塞を再び発症するリスクが高まると考えられています。

糖尿病性神経障害は恐ろしい...症状がないのが最も危険

糖尿病の3大合併症の一つである神経障害は〈図12〉のように様々な症状を呈します。しかし、最も怖いのは症状がない(感覚がない)まま引き起こされることです。

心臓の冠動脈が細くなって血液の流れが悪くなると、通常は胸痛が起こって異常に気づき、すぐに受診できます。しかし、糖尿病があると、胸痛を自覚しない場合(これを無症候性心筋虚血といいます)があり、病気が心筋梗塞にまで進展して初めて自覚症状を生じることがあります。このように、糖尿病があると、神経障害のため自覚症状が乏しいという切実な事態が生じるのです。

また、足潰瘍(かいよう)や足壊疽(えそ)といった糖尿病足病変も、糖尿病による血管障害と神経障害と高血糖による免疫力の低下で起こりやすくなります。次に、糖尿病足病変になりやすい人の条件と、そうならないための主な注意点をあげておきます。〈表〉

糖尿病の治療の基本...食事が要

糖尿病の治療を運動会の騎馬戦の馬に例えると、あなたが乗る馬を組む3人のなかで先頭の最も大事なポジションにあたるのは食事療法です。〈図13〉

薬だけに頼ったり、運動をしているからどれだけ食べても良いと考えて食事をおろそかにしたりすると、馬のバランスが悪くなり、転倒して落馬する(合併症を起こす)ことになります。

また、食事をとりすぎないよう、むやみに食事を制限すれば良いと考えるのも間違っています。特に糖尿病は食事で取り入れたエネルギーを効率よく使えなくなる病気なので、食事を制限しすぎると、低血糖を起こしたり、乳酸アシドーシスという命に関わる危険な状態になったりする原因になります。

では、どのような食事療法をすればよいか、その基本をご存知ですか?

食事の基本は①身長と普段の活動量できまる適正なカロリーをとる②必要な栄養素をバランスよくとる③塩分のとり過ぎに注意する(食塩6g/日)④間食をしない―です。適切な食事療法を実現するには、病院の専門医や臨床栄養士から説明を受けて実行することが大切です。

〈図14・15〉を参考に、ご自分の食事療法の目標を決めてください。

もう一つの基本...運動療法のコツと注意点

中高年で糖尿病が発症する原因の一つは、運動不足といわれています。デスクワークが増えたり、自動車や電車での通勤が増えたりして、自分では気がつかないうちに体を使うこと(身体活動)が少なくなっているのです。

運動療法は、重要な糖尿病の治療であるとともに、予防法でもあります。しかし、糖尿病にかかっている場合は、正しく行わないと、かえって状態が悪くなることがあります。〈図16〉に、適切な運動の種類や程度をまとめました。

運動の強度の指標となる脈拍がうまく測れない場合は「少しきつい」とういう自覚強度を目標にしていただいても結構です。「少しきつい」をもうちょっと具体的にいうと、「汗はかくが、運動しながら会話ができる程度」といわれています。

運動には、血糖値がすぐに下がるという直接効果があります。長期的にはインスリン感受性を改善し、血糖値を正常域に維持するのに必要なインスリン量を減少させることも知られています。これを間接効果といいます。〈図17〉

また、それ以外に、運動療法には次のような効果が知られています。
1)エネルギー摂取量と消費量のバランスが改善され、減量効果がある
2)加齢や運動不足による筋萎縮や骨粗鬆症の予防に有効
3)高血圧や脂質異常症の改善に有効
4)心肺機能を良くする
5)運動能力が向上する
6)爽快感、活動気分など日常生活のQOLを高める効果も期待できる

このように、運動には薬や食事療法では得ることができない効果がたくさんあります。ただし、運動によって得られる利益とともに、運動による弊害(リスク)を考える必要もあります。

運動療法の際に注意する点をあげておきます。
①血糖値がとても高い時は運動をひかえる(インスリン作用が不十分な場合はエネルギー代謝効率が悪く、代謝異常を招くことがあります)
②運動に伴う低血糖に注意しましょう(特にインスリン治療やインスリンを増やす薬を服用している場合は低血糖が起こる可能性が高まります)
③整形外科的疾患があったり、肥満の著しい場合は運動の種類を選びましょう(体重負荷をかけずに行う運動としては、水中歩行やエアロバイクなどがお勧めです)
④虚血性心疾患・高血圧がある方は注意してください(主治医に運動の可否を確かめてください。特にスクワットや重量挙げなどの息止めをする運動は、血圧が高くなりやすいので避けること)
⑤眼底検査、尿検査を受けましょう(網膜症や腎症が進んでいるときは運動が制限されることがあります)
⑥足のサイズや形にあった運動靴を選びましょう(糖尿病足病変の予防のためです)

また、事故防止に重要な点をあげておきます。
1)体調の悪いときには無理をしない
2)準備体操や整理体操は必ずしましょう
3)季節や天候に合わせた服装を選びましょう
4)運動靴は自分の足型やサイズに合わせましょう

運動は続けることが難しいといわれています。続けるこつは、自分に合った方法を見つけることです。例えば、犬の散歩や友達や家族と一緒に運動することで続けられる場合もあります。家のまわりや家の中の掃除、通勤など日常生活に運動を取り入れることで続けられる場合もあります。歩数計で日々の歩数を記録することや、運動日誌をつけることで続けられる場合もあります。

あなたにとって最良の方法は何でしょう?

最近の臨床研究から...早期の治療開始がかぎ
...ハイリスク糖尿病はゆっくりと血糖管理を
...糖尿病以外のリスク管理も重要

最近、糖尿病の方を対象にインスリンや血糖降下薬を使って血糖値を確実に下げれば、合併症を予防できるかどうかを厳密な方法で調べた研究が報告されました。

UKPDS研究という有名な研究で、2型糖尿病と診断されたばかりの患者さんを対象に、厳格に血糖管理を行う場合と、通常のコントロールをする場合を比較しました。その結果、血糖値を厳格に下げると、やはり細小血管症(腎症・網膜症・神経障害)の発症リスクを低下させることがわかりました。残念ながら、心筋梗塞の発症のリスクを明らかに低下させるまでには至りませんでした。

しかし、この研究の終了後、さらに10年間の調査を行い解析すると、やはり、厳格に血糖を管理した方が心筋梗塞や総死亡のリスクが下がったことがわかりました。ですから、新しく発症した2型糖尿病は、できるだけ早く治療を開始することが重要です。

また、別の研究から、高齢者や糖尿病にかかっている期間の長いハイリスク糖尿病の方の場合、厳格な血糖管理だけでは心筋梗塞などの抑制効果は明らかでないことがわかりました。

その大きな理由は、厳格な血糖低下療法は低血糖などをもたらしやすい短所があり、特に高齢者や糖尿病にかかっている期間が長い方は低血糖を起こすリスクが大きく、そういった方には、ゆっくりと血糖をコントロールする方が良いと考えられるからです。

さらに、血糖だけではなく、血圧やコレステロールのコントロールも行い、肥満の解消や禁煙も同時に行った場合は、心筋梗塞の発症をしっかりと抑えられるとわかっています。ですから、糖尿病だけでなく他の危険因子のコントロールも欠かせません。

ご自分の糖尿病を見直してみましょう...一病息災で健康長寿

糖尿病は特別な方がなる病気ではなく、多くの方が患う可能性があります。しかし、血糖や血圧などを良好に維持することで、合併症が起きたり、病状が進んだりするのを予防し、抑えることができれば、あなたは健康人と変わらない健康寿命を得ることができます。ですから糖尿病は決して怖くないのです。

あなたの明るい未来のために、できることを確実に実行しましょう。最後に糖尿病の治療の目標・計画をご自分で確かめてください。〈図18〉

主なチェック項目をあげておきます。
1) 血糖のコントロールの程度を知る(HbA1cの目標値はいくらか)
2) 糖尿病以外の危険因子(肥満、高血圧、脂質異常症など)がコントロールできているか?
3) 喫煙をしていないか(必ず禁煙、ただし禁煙で体重が増えないように気をつける)
4) 合併症(神経障害・網膜症・腎症・冠動脈疾患・脳血管疾患・末梢動脈疾患・足潰瘍)の有無(合併症の検査を定期的に受けているか)
5) 食事療法はできているか(適正カロリー、栄養バランス、間食をしない)
6) 運動療法はできているか(定期的運動、リスクの確認)
7) 薬物治療は適正か(低血糖症状がないか)

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