循環器病情報サービス

  • 文字サイズ変更
  • 小
  • 中
  • 大

サイトマップ

  • 病気について
  • 治療・療法について
  • 救急蘇生法について
  • 循環器病あれこれ
  • ホーム
  • 心臓:[91]心臓が大きいと言われたら

心臓|循環器病あれこれ|

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
文章・図表・イラスト等の転載・引用のご相談は循環器病研究振興財団までご連絡ください。

[91]心臓が大きいと言われたら

独立行政法人国立循環器病研究センター
心臓血管内科部門心不全科 医師
天木 誠

独立行政法人国立循環器病研究センター
心臓血管内科部門心不全科 医長
神崎 秀明

独立行政法人国立循環器病研究センター
臨床研究部 部長
北風 政史

何か病気が隠れている!?


もくじ

いまこの冊子を手にされている方には、健康診断や病院などで、心臓が大きいと言われた方が多いのではと思います。もしくは、心臓が大きいね、と言われたらどうしようと心配されている方もいらっしゃるはずです。

でも、心臓が大きいことは怖くありません。それがどういう状態で、どうすればいいのかが、わかっていれば心配ないのです。まさしく「敵を知り、己(おのれ) を知れば百戦危うからず」ですよね。

心臓が大きいとは何か、また何が大きくしてしまうのか(敵)、皆さんと、皆さん方の味方であるわれわれ医療関係者(己)は、何ができるのか、それを知りたいとは思いませんか?

そこで、まず心臓の役割や、心臓の構造を説明した後に、心臓が大きいとはどういう状態なのか? その原因は? どう対応するのか? などの疑問にお答えしたいと思います。

心肥大と心拡大の違い

「心臓が大きいですね」と私ども医師が皆さん方にご説明すると、「心肥大ですか」と問い返す方が多いように見受けられます。心肥大という言葉は耳にしたことがあっても、心拡大という言葉にはなじみが薄いからかもしれません。

厳密には心肥大は心臓、特に心室の壁の厚みが何かの原因で厚くなったことを指します。心臓が大きいときには心拡大と表現します。拡大はあくまでも全体の大きさですから、大きくて壁が厚い場合は心拡大および心肥大の状態であると言えます。

心臓の役割

心臓の大きさを語る前に、まずは体の中での心臓の役割を知っていただく必要があります。

心臓は血液を循環させるポンプです。血液は体重の約13分の1の重さといわれ、体重60kgの人で約4.5リットルもあります。心臓は1日約10万回も拍動して、この血液を体中に行き渡らせています。

人間は口から摂取した水分や栄養を、胃や腸で分解し体の中の血液に吸収し、心臓のポンプ作用を使って、その栄養を体の隅々の臓器の全細胞に届けます。また栄養をエネルギーに変えるためには酸素が必要となります。

酸素は肺から血液に取り込まれ、同様に各細胞に届けられますので、ポンプの作用が低下すると栄養や酸素が全身に行き渡らず、からだはエネルギー不足となってしまいます。

心臓の構造

心臓はどのように構成されているのでしょうか?

心臓には合計四つの部屋があり、その中を血液が循環してポンプとして機能します〈図1、2〉。

四つの部屋の上半分は心房、下半分は心室と呼ばれ、それぞれ左右二つあるので右心房、左心房、右心室、左心室と呼ばれます。

全身から戻ってきた血液は、まず右心房に入り、右心室から肺へ流れます。肺では血液のなかにたくさんの酸素を取り込み、全身から受け取った二酸化炭素を放出します。酸素を取り込んだ血液は、左心房を経て左心室に入り、ここから全身へと送り出されます。

心房は血液を血管から受け取り、それを貯めてから心室に受け渡す役割ですので、あまり筋肉は発達しておらず壁は薄いのが特徴です。

一方、心室は心房からの血液を受け取り、重要な臓器に血液を送る役割があります。特に左心室は全身の臓器に血液を送り出すために収縮と拡張を繰り返しますので、四つの部屋の中で一番、壁が厚い構造になっています。

これら四つの部屋の出口には一方通行の弁があり、血液が心臓の中を一方向にのみ流れる仕組みになっています。

心臓が大きいとは?

ではそのポンプである心臓が大きいとはどういうことでしょうか?

一般的に心臓が大きいといわれる場合、胸部レントゲン写真で指摘されることが多いと思います。この検査は主に肺を見る検査ですが、実は心臓も見えているのですよ。

人によって体格が異なるのと同様、心臓の大きさも一人、一人違います。そのため、心臓の大きさを評価する場合、体格を考慮した比で表します。

胸部レントゲンでは、胸全体の大きさ(胸郭といいます)に対して心臓が占める割合である「心胸郭比」を計測します。具体的には、レントゲンで見た胸郭の幅に対する心臓の幅の比を求めます。

正常ではこの「心胸郭比」が50%未満とされ、50%以上であった場合、「心拡大」、いわゆる心臓が大きいと言われます〈図3〉。これだけで過度に心配する必要はありませんが、病気が隠れている場合もありますので、この段階で一度は精密検査を受けられることをおすすめします。

ただ、50%というのはあくまでも目安です。もともとの心臓が占める割合が40%であった人が、48%まで大きくなった場合は、50%未満であっても拡大していると判断されることがあります。

逆に、胸部レントゲンで心胸郭比が50%以上あっても、実際に心エコー(超音波検査)で計測してみると心臓の大きさは正常範囲内で、心臓が横向きに寝ていて(横位心)、幅広く見えるだけという方もいらっしゃいます。

拡大している部位はどこか?

一言で心臓が大きいと言われても、心臓のどの部位が大きいのかで病状がまったく変わってきます。胸部レントゲンで心臓が大きいと言われた場合、その心臓を構成する部屋のどれか一つでも大きくなると、全体の陰が占める割合が大きくなります〈図4〉。

そのため、次に心臓超音波検査でどの部屋が大きくなっているかを調べます。大きいのは心室なのか、心房なのか、あるいは両方なのか。それぞれ違う病態ですので、説明しましょう。

1)心室が大きいと言われたら

まず〈表1〉の「心室が大きいときに疑われる疾患」をご覧ください。心臓の下半分である心室が大きい場合、特に左心室の場合は、全身に血液を送る重要な臓器ですから要注意です。

左心室は、左心房から受け取った血液を貯めて拡張末期に一番大きくなり、それを全身に送り出すために左心室心筋が収縮するので、収縮末期に最小となります。心臓超音波検査で左心室の大きさを測る場合、拡張末期時にサイズを測ります。

左心室が大きくなる原因は、流れる血液の量が相対的に増えた場合と、心室の筋肉そのものに障害が起きた場合の二つがあります。

血液の量が相対的に増えることは、逆流性弁膜症やシャント性先天性心疾患で起こります。

逆流性弁膜症は、心臓の部屋のドアである弁(一方向弁)が壊れて逆流している状態で、一度、弁を通過した血液が逆流して戻るために、結果として同じ部屋を通る血液量が増えてしまい部屋が拡大してしまいます。

シャント性先天性心疾患は、心臓のどこかに生まれつき穴が開いている疾患です。弁の逆流同様、一度通過した血液が、その穴を通って再度上流の部屋に注ぎこむため、相対的に循環する血液の量が多くなります。

一方、心室の筋肉そのものが障害を受けている疾患には、何らかの原因で心臓の筋肉が脂肪や線維などに置き換わってしまう疾患(拡張型心筋症)、不整脈などで長期にわたり心拍数が過剰に多い場合に拡大した場合(頻脈源性心筋症)、または、心臓に栄養を与えている血管が詰まり、その先の心筋が壊死してしまう疾患(心筋梗塞)があります。

それぞれについては、この冊子では詳しく紹介しませんが、疾患によっては、命に関わるものも含まれますので、原因を突き詰めることが大切です。

また、心室が大きい場合、次に注目をするのはその動きです。なぜなら動きにより重症度が変わってくるからです。

心臓全体の動きは、心室が最も縮んだときに、元の大きさに比べてどれくらい変化したか(駆出率といいます)を数字で表します。正常人では駆出率は約55%以上であることが多いとされています。この駆出率が過度に低下している場合は、将来は心不全や不整脈となる恐れがあります。

2)心房が大きいと言われたら

この場合は、まず〈表2〉の「心房が大きいときに疑われる疾患」を見てください。表のとおり、心臓の上半分である心房が大きくなる原因は大きく分けて三つあります。

一つは心房から心室への流入障害です。心房は心室に血液を送らなければなりませんが、そのためには左心室が効率よく広がり、左心房の血液を吸い込む力が必要になってきます。

左心室が何らかの原因で固くなったりすると、この広がりやすさが障害され、左心房の血液を左心室に引き込む効果が衰えます。そのため、左心房に負担がかかり左心房の拡大をきたすと考えられています。

また、流入障害は左心房と左心室の間に位置する僧帽弁の開きが悪いと生じることがあります。僧帽弁狭窄症という病気です。幼少期にリウマチ熱という感染症を契機に僧帽弁に炎症が起こり、弁が癒着して開きが悪くなるのが原因です。現在、治療法の進歩によりリウマチ熱が減少したため、僧帽弁狭窄症患者数は減っており、心房拡大をきたす原因で最も頻度が高いのは、高血圧です。

もう一つは、弁の逆流によっても、心房に逆流する血液が負荷となり心房が拡大してきます。左心房では僧帽弁閉鎖不全症、右心室では三尖弁閉鎖不全症という疾患が原因となります。

心房が拡大する三つ目の原因は、心房から出現する不整脈です。

特に日常よく遭遇するのが心房細動という不整脈です。この不整脈は加齢とともに発症する確率が高まり、70歳以上の日本人男性の4%以上が心房細動に罹患しているとも言われています(2000年度厚生労働省の調査)。

心房細動は心房が細かく痙攣する不整脈ですが、その持続時間が長いと心房は大きくなるようです。

左心房が小さい場合は、心房細動も一時的(一過性)であり、薬物や電気ショックを与える電気的除細動などで元の拍動リズムに戻ることが多く、一方、左心房が拡大してしまっている患者では元に戻らない可能性が高く、慢性化する率が高いと考えられています。

どうしたらよいか?

このように、ひとくちに心臓が大きいと言われても、いろいろな疾患が原因で拡大している場合があります。また、どの部屋が大きいかで治療方針が変わってきます。中には早期発見によって、その後の心臓の寿命が改善する場合がありますので、心臓血管内科の専門医へ紹介してもらい、正しい診断と適切な治療を受けることが大切です。必要ならば、検査入院を勧められることがあるかもしれません。

心拡大と心不全との関係

心不全は、長期間にわたり障害の起きた心筋によって心臓のポンプ機能が低下し、末梢の臓器に栄養や酸素を十分に送り出せない状態のことで、そのため生活機能に障害を生じる病態とされています。心臓が大きくなることは、長期間にわたり心臓へ無理な負担を強い続けることでもあります。

心臓が大きいと言われた場合、症状がない方でも、心不全の症状が出現する可能性もありますので、典型的な症状〈図5〉は知っておいた方がよいでしょう。

典型的な症状は、体を動かしているときに起こる労作時呼吸困難、息切れ、尿量減少や手足の浮腫(むくみ)などです。

これらの症状は心臓以外の原因でも出てくることがありますので、一概に心臓が原因とは断定できませんが、すでに心臓が大きいと言われており、症状が出現してきた場合、心不全が原因であることもありますので、早めの受診をおすすめします。

患者さんの中には、無症状で経過して突然、心拡大を指摘された方もいらっしゃいます。また、逆に症状が先行して、そのときの検査で心臓が大きいと指摘される場合もあります。

このように症状は出やすい人と出にくい人がいます。どうしてでしょうか。心臓の障害がゆっくりと経過した場合、心臓のパワー不足を補うため、全身の臓器は、それに応じて変化するため症状が出にくいことがあるのです。

心臓が大きいと言われた場合、いろいろな病気が隠れている可能性があります。

症状がないから精密検査は必要ないと考えずに、自覚症状がない時点でもすでに心臓の障害が起きている場合もありますので、検査の異常が出た段階で心臓血管内科の専門医による精密検査をおすすめします。

このパンフレットをお持ちいただき、私ども心臓血管内科の医師にご

相談ください。いつでも、お話をお伺いします。

最終更新日 2014年03月12日

PAGETOP

国立循環器病研究センター:〒565-8565 大阪府吹田市藤白台5丁目7番1号 電話:06-6833-5012(代)
Copyright © 2011 National Cerebral and Cardiovascular Center All rights reserved.