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[75] 心不全

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
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-心臓移植や補助人工心臓が必要な場合-

元国立循環器病研究センター
移植部門長   中谷 武嗣

「善意」と競う人工心臓の開発
イラスト:「善意」と競う人工心臓の開発

もくじ

はじめに

ふぜん【不全】物事の状態や活動状況が不十分であること(新明解国語辞典)

「不全」という言葉は、発育不全、心不全、腎不全、機能不全などのように医学的に使われるだけでなく、「内閣が機能不全に陥っている」といった場面でも使われますので、よく耳にされていると思います。このページでは、重症の「心不全」の治療をテーマに話を進めます。

心臓は全身に血液を送り続けるポンプとして、休むことなく働いていますが、そのポンプの働きが落ちてくると「心不全」になります。平たくいうと、辞典の説明のように、ポンプの「活動状況が不十分」になった状態のことです。

治療法は原因によって異なります。原因が心臓の弁の異常や、心臓に栄養を送っている冠動脈が狭くなったり、詰まったりしている時には、外科手術やカテーテル(細い管)を用いる治療によって、心不全から回復させることができます。

一方、心臓の筋肉に生じた異常が原因の場合は、まず薬による治療をします。しかし、心臓の筋肉の異常が極めて重い場合は、心臓ポンプの働きを補助したり、代行したりすることが必要で、心臓移植や人工心臓が治療手段として登場してきました。

どちらにも長所と短所があります。心臓移植は年々成績が向上していますが、移植にはドナー(提供者)が必要で、移植実施の時期を前もって決めることはできず、実施数にも限界があります。

これに対し、人工心臓は必要な時に使うことができますが、解決しなければならない課題が少なくなく、心臓移植に代わり得るシステムにはまだなっていません。

以下で、心不全が進み、どんな状況になった時に、心臓移植や人工心臓の適応となるのか、こうした治療を受ける患者さんとその家族はどんな点を知り、理解しておかねばならないのか、心臓移植と人工心臓の課題となっているのは何か、などについて解説します。

前半で心不全と心臓移植を、後半は人工心臓を取り上げます。

心臓移植の適応

心臓移植は、ドナーから提供された元気な心臓を胸腔内に植え込み、その心臓の正常な働きによって全身への血液供給を維持し、延命をはかり、社会復帰も目指す治療法です。

この移植手術は、通常の心臓手術と同じように全身麻酔をし、人工心肺を用いて行います。提供病院でドナーの方から心臓を取り出し、移植を受ける患者さん(レシピエント)がいる病院へ搬送し、レシピエントの心臓を切除し、その後にドナーの心臓を植え込みます。移植後の入院期間は1~3か月程度です。

これまでに世界で8万例以上が行われ、その成績はよく、80%以上の人が1年以上、半数の方が10年以上生存されており、QOL(生活の質)も良好です。わが国では64例に行われ、最長例が10年を超えています。死亡例は2例で、10年生存率が94.6%と症例数は少ないのですが、国際登録に基づく平均生存率より良好な成績を示しています<図1>。

ではどんな場合に心臓移植が必要になるのでしょう?

心不全が重く、心臓移植以外のこれまでの治療法では救命できない、もしくは延命の期待がもてない心臓病が該当します。主な病気としては「拡張型心筋症」「拡張相肥大型心筋症」と「虚血性心筋疾患」があります。

この移植が適応と判断される時期は、内科系と外科系の循環器専門医が慎重に検討したうえで決定しますが、これまでの治療の限界を超えた、次のような末期的な心不全状態にある場合です。

  1. 長期間、または繰り返し入院治療が必要な心不全
  2. 心不全に対する薬物療法で用いられるβ(ベータ)遮断薬やACE阻害薬を含む従来の治療法では、重症の段階(NYHA基準のIII度かIV度)から改善しない心不全
  3. 現在のいかなる治療法でも効果がない致死性重症不整脈がある場合
    また、年齢は60歳未満が望ましく、さらに本人と家族の心臓移植に対する十分な理解と協力が得られることが必要
(注)
NYHA基準:ニューヨーク心臓協会が定めた心不全の重症度を表す基準。
I度からIV度まで4段階に分類されている

しかし、この心臓移植では心臓以外の全身状態が安定していることが必要で、次のような場合は、より綿密な観察と検討を行います。

  1. 腎機能や肝機能が低下している場合(免疫抑制薬の使用によって悪化する可能性があるため)
  2. 活動性の消化性潰瘍(かいよう)や重症糖尿病(免疫抑制薬として用いるステロイドホルモンによって悪化することがあるため)
  3. 全身性の感染症、悪性腫瘍(しゅよう)、脳血管障害、薬物依存症、精神神経症、肺高血圧症や肺梗塞(こうそく)、肺血管病変、膠原(こうげん)病などの合併がある場合
臓器提供意思表示カード
イラスト:臓器提供意思表示カード
図1:世界および日本における心臓移植の累積生存率
図1:世界および日本における心臓移植の累積生存率

心臓移植後の注意点

1)拒絶反応

提供された心臓は、自分の体にとっては異物です。程度の差はありますが、移植された心臓に対し、身体防衛システム(免疫応答)による排除機構(拒絶反応)が働きます。

この拒絶反応が起こると、移植した心臓の機能が低下し、程度が重くなると、回復不能な心不全に移行する可能性があります。これを防ぐために、移植後は免疫抑制薬を継続して服用しなければなりません。

拒絶反応が起きた時は、治療のために入院が必要となります。拒絶反応が疑われる場合も、入院して診断を確定するための検査を行います。

拒絶反応の診断は、現在「心筋生検」と呼ばれる検査が最も信頼性が高いとされています。これは静脈を通じてカテーテルを右心室内に挿入し、心筋の一部を採取して顕微鏡で心筋や細い血管の異常の有無を調べる検査です。

移植手術後3週間は1週間ごと、その後は徐々に間隔をあけて5週目、7週目、11週目と検査し、経過が良好であれば、その後4~5か月目、6か月目、9か月目、12か月目と検査を続けます。この後は6か月ごとに行います。心筋生検は拒絶反応の兆候がなくても定期的に実施し、医師がこの検査が必要と判断した場合も同様です。

拒絶反応の治療は、免疫抑制薬を増量するか、他の免疫抑制薬を加えて行います。いかなる治療をしても拒絶反応が治らず、心機能が低下して心不全に陥り、そのままでは生命の維持が困難と判断された場合は、再移植の適応となります。しかし、現状では再移植に適当なドナーを得るのは困難でしょう。

2)免疫抑制療法で拒絶反応を予防

拒絶反応を予防する免疫抑制薬は、現在、シクロスポリン、タクロリムス、アザサイオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、ステロイド、T細胞抗体などがあります。

これらを併用するようになってから、拒絶反応が起きてもその程度が軽くなり、心臓移植の成績は向上してきました。現在、広く用いられる予防的免疫抑制療法はシクロスポリンかタクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、ステロイドの3剤併用です。

拒絶反応が起きた時は、通常はステロイドを短期間に大量(1日500~1000mg、3日間)に使用して対処しますが、十分な効果が得られない難治性の拒絶反応の場合はT細胞抗体を注射します。

免疫抑制薬の副作用には感染症、顔が下ぶくれの丸顔になる満月様顔貌、高血圧、腎機能低下、肝機能低下、骨がもろくなる、がんなどがあり、これらに対する治療が必要になることがあります。

3)感染症

心臓移植して間もない時期には、手術創や点滴針の挿入場所などは感染症が起こりやすい状況にありますが、実はこの時期こそ強力な免疫抑制療法が必要なのです。

免疫抑制療法を受けると体の抵抗力が落ちますから、種々の感染症にかかりやすくなります。感染症の原因はウイルス、細菌、真菌、原虫などの病原体です。

ですから、強力な免疫抑制療法を行う時は、クリーンルームへ隔離するか、マスクをするなど感染予防対策が必要で、移植された患者さんは厳重な生活制限を受けることになります。

通常は移植手術後、徐々に生活制限を緩めていきます。3か月以上経過するとほぼ普通の生活に戻れます。しかし、食事、日々の生活環境、さらに、公共交通機関を利用する時などに感染予防を心がけねばなりません。

拒絶反応が出た時は手術後と同様、厳しく感染を予防し、強力な免疫抑制療法をする必要があります。感染症にかかった時や、感染症が疑われる場合は、検査、治療のため入院が必要になることもあります。

感染症の予防・治療で最も重要なのは早期発見・早期治療です。微熱、全身倦怠(けんたい)、咽頭(いんとう)痛、せきなどの体調の変化を直ちに医師、看護師、またはレシピエントコーディネーターに報告していただくことが早期発見・早期治療につながります。

4)「除神経心」でどうなるか

移植された心臓にはレシピエントの神経がつながっておらず、神経が除かれた「除神経心」になっています。このため心臓に対する神経系の調節機構は機能しませんが、内分泌(ホルモン)系による支配は受けています。運動した時、脈拍数の増加は健常者に比べ遅れますが、運動能力は保たれています。

また、移植された心臓に冠動脈硬化症が起こり、それが進むことがあります。この時、狭心症や心筋梗塞症が起きても、神経がつながっていないため胸痛を感じることができません。ですから、冠動脈疾患の予防を心がけるとともに、定期的に冠動脈の検査が必要となります。

移植に提供される心臓(ドナー心)のこと

現在、欧米を中心に年間3000人以上に心臓移植が行われていますが、移植に用いられる心臓(ドナー心)はすべて脳死者から提供されたものです。移植された心臓はその直後から全身循環を維持するため、正常か、それに近い状態で機能しなければなりません。ですから「ドナー心」の評価を行ってから、提供されることになっています。

移植する心臓は善意で提供され、提供者の氏名などの情報はプライバシー保護のため明らかにされません。

脳死者の発生は予測できませんし、発生数も限られていますので、ドナーからの心臓が提供されるまでの待機期間をお知らせすることは不可能です。

「ドナー心」の提供がある時は、待機患者さんとの適合性、待機患者さんの重症度、待機期間などに基づき、レシピエント候補が決定されます。

わが国では現在、重症度の高い「ステータス1」の人のみに移植されており、平均の待機期間は2年8か月程度となっています。

費用はどれくらい

心臓移植を受けるには日本臓器移植ネットワークに登録する必要があり、登録料は3万円です。また、待機期間が長期にわたる場合、1年ごとに登録更新し、その際5千円の更新料が必要です。

2006(平成18)年4月の診療報酬改定で「心臓移植術及び心臓摘出にかかる経費」が保険適用となりました。これにより、患者さんの負担は各種健康保険の自己負担割合分となります。

また、これまで受けてこられた医療と同様に、高額療養費制度や各種助成制度(特定疾患・小児慢性特定疾患・障害者医療・自立支援医療など)の対象となり、これらの扶助を受けることができます。

その他の経費として、摘出した心臓を運ぶのに要する経費が300万~350万円(搬送距離や、航空機をチャーターするなど搬送手段によって大きく金額が変動します)、移植コーディネート(仲介)の経費が10万円と、臓器を摘出する医師グループの旅費(ドナー病院の所在地により金額が変動)があります。

さらに、提供される心臓との適合性検査(クロスマッチ)を当日する必要がある場合には、クロスマッチ用血液の搬送費がかかります。

移植手術後の経費は保険が適用されます。

以上が心臓移植に要する主な経費ですが、ご本人とご家族が移植の行われる病院から遠方にお住まいの場合、移植後の治療中に移植病院に近い宿泊施設などでの滞在費が必要になることがあります。

移植の特殊性に理解を

心臓移植後は一生、免疫抑制薬を服用しなければならず、常に感染と拒絶反応の危険と隣り合わせでいることになります。また心筋生検を含む種々の定期的検査を受けなければなりません。こうした特殊性を認識し、日常生活の注意事項を守ることが大切です。

患者さんが心臓移植治療の実態をよく理解し、この治療法を希望している場合、適応の検討が行われます。また、患者さんだけでなく、ご家族をはじめ、周りの人々の同意と協力がぜひとも必要な治療法であることも理解してもらわねばなりません。

人工心臓

心臓移植は善意の提供により行われる医療です。重症の心不全が進み、これ以上、移植は待てないという患者さんもいます。こうした場合に、心臓のポンプ機能を代行するのが人工心臓です。まず、どんなタイプがあり、どんなポンプ機能になっているかを説明しましょう。

1)人工心臓のタイプ

大きく分けて二つのタイプがあります。

重篤な心不全となった患者さんの心臓をそっくり取り除き、その場所に埋め込んで心臓の働きを代行する「全置換型人工心臓(TAH)」と、重症の心不全になった患者さんの心臓はそのままにし、その働きを助ける「補助人工心臓(VAS)」です。

これらの人工心臓は、血液ポンプ、ポンプを動かす駆動装置、それを制御する装置、さらに駆動装置を働かせるエネルギー系、情報処理系などから成り立っています。これらを基本構成要素と呼んでいます。

血液ポンプがどこに置かれるかによって「体外に設置するタイプ(体外型)」と「体内に植え込むタイプ(体内型)」があります。さらに「体内植え込みタイプ」は、制御装置やエネルギー系を体外に設置する「携帯型」と、基本構成要素はすべて体内に収め、皮膚の上からエネルギーを送ったり、制御したりする「完全植え込み型」があります<図2>。

2)ポンプの種類

血液ポンプには、(1)人の心臓同様「どくっ、どくっ」と脈を打たせながら血液を送り出す「拍動流ポンプ」と、(2)水道水が流れるように、拍動がないまま血液を送り出す「無拍動流ポンプ」とがあります。

(1)には、人の心臓(自然心臓)と同じように流入したり、流出したりする側に弁が必要で、人工弁が取り付けられています。

(2)には、スクリューやプロペラのような仕組みで血液を送り出す「遠心ポンプ」や、「軸流ポンプ」と呼ばれる方式があります。この「無拍動流ポンプ」では人工弁などを必要としないので小型化できます。しかし、このポンプによる血液の流れは脈が発生しませんので、患者さん自身の心臓の機能低下が進んだ場合、脈が触れなくなります。

以前は動物は拍動がない状態で生存できないと考えられていました。しかし、米クリーブランドクリニックが無拍動流型人工心臓を使った動物実験で、無拍動流でも3か月間、動物が生存したと報告してから、血液ポンプとして無拍動流が注目されるようになりました。

無拍動流型は人工弁が不要であること、耐久性が期待できること、体格の小さな患者さんへの応用も容易なことなどの利点があり、世界の多くのチームが開発を進め、現在では広く用いられています。

左心補助を行う場合には、左心室から直接血液を補助人工心臓に引き込む「左室脱血方式」<図3>が多く行われています。この方式は患者さん自身の心臓内で血栓ができにくい利点があり、安定した補助が行えます。

図2:人工心臓のタイプ
図2:人工心臓のタイプ
図3:わが国で長期使用目的で用いられてきた補助人工心臓
図3:わが国で長期使用目的で用いられてきた補助人工心臓

人工心臓の開発の歩み

1957年、阿久津、コルフ両博士が全置換型人工心臓の動物実験で、世界で初めて人工心臓によって全身の血液循環を維持するのに成功し、人工心臓開発の歴史が始まりました。その翌年、クセロー博士によって補助人工心臓の実験が行われました。

1962年には、初めてローラーポンプと呼ばれるポンプを用いた左心室の補助が患者さんに行われ、翌63年、補助人工心臓による左心室補助の臨床応用が行われました。

また、1969年、全置換型人工心臓が、心臓移植を必要とする患者さんの全身循環を移植実施までの間、維持する「ブリッジ」(つなぎ)として初めて臨床応用されました。

1980年代には、各種の人工心臓の臨床応用が行われ、1990年代になると植え込み型補助人工心臓が用いられるようになり、さらに無拍動流ポンプの臨床応用も行われるようになりました。

当初、心不全には全置換型人工心臓が必要と考えられましたが、左心補助のみの人工心臓によって良好な循環補助ができる症例が多いことが明らかになり、植え込み型左心補助人工心臓が、積極的に使われるようになってきました。

補助人工心臓の成績

日本臨床補助人工心臓研究会の2008年度の集計によると、補助人工心臓治療が1039例に行われました。使用ポンプは、主に「拍動流体外設置型」の東洋紡製国循型<図3>で62%を占めており、「拍動流体内設置携帯型」(米国で開発されたノバコア及びハートメイト)が5%でした。

1992年から心筋症にも適応されるようになり、最近では年間40例程度に使われています。2006年からは、東洋紡製国循型補助人工心臓を心臓移植への「ブリッジ」(つなぎ)に使うことが健康保険で認められるようになりました。

心筋症以外の急性心不全に使われる場合、補助期間は1週間程度が多く、状態がよくなって補助がいらなくなった(このことを「離脱」と呼びます)ケースが39%、回復したケース(生存)が20%でした。

心筋症への適応は394例におよび、装置は東洋紡製国循型が289例と最も多く、体内設置型はノバコア 27例、ハートメイト-IP 17例、ハートメイト-VE 7例でした。

2005年から「無拍動流型」の臨床応用が開始され、遠心ポンプを用いた国産のサンメディカル社製が18例、テルモ社製が6例に、また米国で開発された軸流ポンプを用いたジャービック社製が14例に用いられています。

心筋症に対する平均施行日数は394(最長1496)日で、東洋紡製国循型左室脱血方式<図3>では平均335(最長1496)日でした。これら補助人工心臓装着後の移植例は80例(国内50例、渡航30例)あり、56例で心機能が改善、「離脱」できました。

わが国の心臓移植は、臓器移植法施行後の1999年の第1例以来、これまでに64例行われました。

うち、55例(86%)が移植までに補助人工心臓をブリッジとして使われています。使った期間は平均729日で、1年以上が43例(補助人工心臓装着例中78%)あり、最長は東洋紡製国循型左室脱血方式の1496日でした。

長期間、補助人工心臓をつなぎとして使った患者さんが多かったものの、移植後の成績は安定しており、「心臓移植の適応」の中で説明しましたように、最長例が10年を超え、10年生存率は94.6%になっています。

心移植後患者連絡会CoCoRo会における移植後の患者さんに対する講義風景
イラスト:「心移植後患者連絡会CoCoRo会における移植後の患者さんに対する講義風景」

今後の展望

重症心不全のため、心臓ポンプの機能を置き換えることが必要な患者さんは、米国で数万人、わが国でも数千人に上ると推定されています。これらの患者さんに、心臓移植を行うことができれば、いい成績が期待できます。

わが国でも改正臓器移植法が成立し、15歳未満の方からの脳死での臓器提供ができるようになります。

心臓移植は、善意の提供によるものであり、実施数には限界があります。このため、心臓移植に代わる人工心臓の開発が望まれています。

米国で心臓移植の適応とならない末期心不全患者に対し、体内設置型左心補助人工心臓と内科的治療の成績を比較する臨床試験が行われ、左心補助人工心臓を装着した患者さんたちの成績がよかったことが報告されました。

この結果を受け、欧米では心臓移植の対象とならない末期心不全患者に対し、体内設置型左心補助人工心臓が用いられるようになっています。わが国でも今後、重症の心不全の最終治療手段として補助人工心臓が期待されています。

しかし、人工心臓が心臓移植と同等の代替治療となるために解決すべき問題として、長期の抗血栓性・生体適合性・安全性・信頼性・耐久性などをどう確保するか、また長期間、安定して作動する計測・制御機構やエネルギーシステムをどうするかなどがあります。

わが国でも2種の遠心ポンプを用いた体内設置型左心補助人工心臓が開発され、その臨床応用が進められています。

これまでに開発された人工心臓は、主に成人を対象としていましたが、小児や体格の小さい方にも提供できるシステムが望まれており、その開発が積極的に進められています。

今後、わが国でも、心臓移植の定着化を図りながら、代替治療法としての人工心臓の開発とその臨床応用をさらに推進しなくてはなりません。

こどもにも使える人工心臓の開発も進む
イラスト:「こどもにも使える人工心臓の開発も進む」
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