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[71] 危険な不整脈とその治療

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
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2008年11月1日 発行

-突然死を防ぐには-

元国立循環器病研究センター
臨床検査部長 鎌倉 史郎

疲れ・ストレスを避けよう

イラスト:疲れ・ストレスを避けよう

もくじ

不整脈の多彩な症状

不整脈とは脈がゆっくり打つ、速く打つ、または不規則に打つ状態をさしますが、これらの不整脈が出るといろいろな症状が起こります。

心臓は筋肉だけでできている臓器で、血液を全身に送り出すポンプの役割をしますが、<図1>のように洞結節という“発電所”から弱い電気が流れて、その筋肉が動く仕組みになっています。ところが期外収縮という不整脈が起こって、本来の発電所とは別の場所から電気が流れると、新たに心臓の収縮が起こって、胸の違和感、一瞬キュッとする胸痛、脈が飛ぶ結滞感などが起こります。

一方、脈が遅くなる徐脈では、息切れや、気の遠くなる感じが起こり、脈が速くなる頻脈では、動悸(どうき)、息苦しさ、めまい、失神などが起こります。

徐脈では心臓から出て行く血液が少なくなるためにそうなりますが、非常に速い頻脈が起きても心臓が小刻みに震えるように動いてしまうために、徐脈と同様に十分な血液が全身に回らなくなって、そのような症状が出るのです。

しかし、不整脈があってもまったく症状のない人もいます。ではどのような場合が危険な不整脈なのでしょうか?

最も危険なのは、それが出るとたちまち意識がなくなってしまうような不整脈です。それは心臓が止まったに等しいような徐脈や頻脈が起こったことを意味します。

一方、意識はなくならないけれど、目の前が真っ暗になったり、冷や汗が出て倒れそうになったりする場合もそれに近い状況ですし、非常に速くて脈拍数を数えられないほどの頻脈、狭心症や心不全を誘発するような不整脈も危険といえます<図2>。また、いまは症状はないものの、記録されている心電図から、間違いなく上に紹介したような重大な不整脈が起こると予測される場合も危険と言えます。

意識がなくなるような不整脈がなぜ危険かというと、倒れてけがをするだけでなく、本当に命をなくしてしまうような「致死性不整脈」(心室細動・心停止)に変化して、突然死となる可能性が高いからです。

突然死とは一般に症状が出てから1時間以内に死亡した場合を指しますが、心臓や大血管の破裂を除けば、ごく短時間(たとえば数分以内)で死亡する原因のほとんどが、不整脈と考えてよいと思います。

24時間中、心電図を測定するホルター心電図で記録中に突然死した例を調べたところ、死因の8割は心室細動、心室頻拍などの頻脈で、あとの2割は心停止などの徐脈であったと報告されています。ですから不整脈の治療では突然死を予防することが最も重要な課題となっています。

図1 心臓での電気の伝わり方
図1:心臓での電気の伝わり方
洞結節で発生した電気は房室結節を通って心室に伝わる
図2 危険な不整脈の症状
図2:危険な不整脈の症状

どんな不整脈が危険なのか

心室頻拍

心室頻拍(ひんぱく)とは、心室(左心室または右心室)の一部に筋肉の変性が生じて、そこで電気がぐるぐる回る旋回(リエントリーといいます)が起きるか、新しい“発電所”ができて、そこから規則的ではあるけれど、早い頻度で電気を送ってしまうために起こる不整脈(頻脈性不整脈)です<図3>。

心室は心臓から全身に血液を送る場所なので、そこで頻脈が起こると、心室が小刻みに動いてしまい、十分に血液を送り出すことができません。一方、心房は心室の手前にあり、心室に血液を送る部屋なので、仮に心房が速く動いても、全身の血液の流れには直接影響を与えません。心室頻拍が、心房頻拍や心房細動に比べて危険なのは、このような理由によります。

心室頻拍には、30秒以上続く持続性のものと、それまでに停止してしまう非持続性のものがありますが、突然死を起こす可能性が高いのは「持続性心室頻拍」です。ただ、非持続性のものでも、後で説明します、短時間起こる心室細動の「トルサード・ド・ポアンツ」(Torsade de Pointes)や、それに近いタイプの多形性の非持続性心室頻拍は、心室細動に移行しやすいので、時に突然死を起こします。

図3 心室頻拍
図3:心室頻拍

器質性と特発性とがある

心室頻拍を起こす心臓病には、心筋梗塞(こうそく)、心筋症(拡張型、肥大型)、催不整脈性右室心筋症、心サルコイドーシス、弁膜症、先天性心疾患(これらの疾患については後で説明します)などがあります。

これらの病気がもたらす心室頻拍を「器質性心室頻拍」といい、ほとんどが電気の流れの旋回によって起こります。器質性とは、組織・器官に変化が起きたという意味です。

一方、心臓病がないのに心室頻拍が起こることもあり、それらを原因がわからない「特発性心室頻拍」といいます。

特発性心室頻拍は大きく分けて二つのタイプがあり、右心室の流出路または左心室の流出路から出るものと、左心室の中隔側から出るものとに分かれます。前者はお母さんのおなかの中にいた頃(胎児期)に持っていた“発電所”が復活して、どんどん電気を流してしまうために出る不整脈であり、後者も先天的な要因によって電気の旋回が起こるものと考えられています。

器質性心室頻拍は多くが悪性です。この場合、心拍数が極端に速くなると、血圧が低下し、意識がもうろうとなり、ついに意識を失います。また致命的な心室細動に移行することがあるので、一刻も早い治療が必要になります。

一方、特発性心室頻拍は元に心臓病がないので、多くは良性で、速い脈が起こっても、心室細動に移行することはありません。しかし、まれに(数%以下)突然死する人もいます。特発性と言われても、意識を失うような症状がある場合は要注意です。

いずれにしても心室頻拍があると言われたら、何らかの治療が必要です。特に器質性心室頻拍があると言われた場合は、しっかりと薬(抗不整脈薬)を服用する必要がありますし、入院して突然死を予防する処置を受ける必要もありますので、専門医の指示に従うようにしましょう。

心室頻拍は心電図で診断します。ただし、一部の心室頻拍は、心電図だけでは良性の心房性の頻拍と見分けがつきにくく、心室頻拍だと言われても、実際はそうではないこともあります(変行伝導といいます)。

すでに心房細動を持っている方が、さらに心室頻拍もあると言われた場合などに変行伝導がよく見つかります。どうしても診断に納得がいかない場合は、不整脈専門医を受診するのが、よいと思います。

心室細動・・・最も危険な不整脈

心室細動とは、心室が1分間に300回以上不規則に震えるように痙攣(けいれん)する状態のことで、これが起こるとたちまち死につながる不整脈です。心筋梗塞や、心筋症の人で出やすくなります。

心室細動は最初からそれが起こる場合と、心室頻拍が最初に起こっていて、しばらくして心室細動に移行する場合とがあります。いずれにしても直ちに電気的除細動(電気ショック)で正常のリズムに戻してやらないと、そのまま死んでしまう最も危険な不整脈です<図4>。

運動中に突然死する原因の多くは心室細動ですが、心臓病を持っているのに、それに気づかないで、ジョギングや激しいトレーニングをして心室細動になってしまう人が少なくありません。

一方、心筋や弁膜に異常がなく、見かけは健常な心臓を持っている人に心室細動が起こる場合もあります。ただそれらの人には本当に病気がないのではなく、心臓の電気現象を司る遺伝子に異常があって、心臓の電気系統だけ(筋肉や血管には異常がない)に変調を来しているのではないかと言われています。

心室細動と心房細動は1文字違うだけで、起こっている現象も同じなので、心房細動から心室細動になったり、突然死したりするのではないかと心配されるかもしれません。しかし、先ほども説明しましたように、心房と心室はその機能がまったく異なるので、心房細動から突然死することはまずありえません。

ただ、心筋梗塞の急性期や肥大型心筋症などの場合、非常に速く心室に電気が伝えられてしまう心房細動を持っている人の一部で、心房細動から心室細動に移行することが知られています。

図4 心室細動
図4:心室細動

トルサード・ド・ポアンツ(一過性心室細動)

一過性、つまり短時間で止まってしまう心室細動です。心室細動は永続するものをさすので、そのままだと死につながりますが、こちらは数十秒以内に心室細動が自然に止まります。

そのため、これが起こると、意識を失って倒れ、全身痙攣などを起こすのですが、すぐに元に戻り、元気になります。でもこの不整脈は心室細動に準じる危険な不整脈ですから、適切な治療をしないと別の機会に突然死します。

つい最近まで、この不整脈を持っている人は、てんかんと間違われていました。昔、てんかんの人は痙攣時に舌をかんで死んでしまうので、舌をかまないような処置が必要と言われたことがありました。でもそれは間違っていることがわかりました。

てんかんで死亡した人は舌をかんだためではなく、その多くはこの病気であったわけです。今でもてんかんと診断されている人の中で、不整脈を持っている人が時々見つかります。てんかんと診断されて治療薬を服用しているのに、意識消失発作が繰り返し起こる人は、念のため不整脈専門医を受診しておくのがよいでしょう。

トルサード・ド・ポアンツの多くは、QT延長症候群(心電図上でQ波の開始からT波の終わるまでの時間が延びる病気)から起こります。種々の薬剤や電解質異常(特にカリウムの低下)で起こる場合もあり、そうなる人も先天的に遺伝子の異常があるのではないかと言われています。

房室ブロック

ここまで突然死につながる不整脈として心室性頻脈の説明をしましたが、徐脈でも突然死は起こります。徐脈になるのは洞不全症候群と呼ばれる場合と房室ブロックの場合で、突然死に結びつくのは房室ブロックです。洞不全症候群は、それが低酸素血症やアシドーシスなどの特殊な状況で起こったものでない限り、突然死は起こりにくいことがわかっています。

房室ブロックは<図5>のように、心房の洞結節(発電所)で作られた電気が突然、心室に伝わらなくなる状態で、そのまま心臓が停止したり、あるいは徐脈に引き続いて、心室細動が生じたりして死亡することがあります。

心筋梗塞、心筋症、サルコイドーシス、先天性心疾患、大動脈弁膜症などの疾患で起こり、とくに突然死する可能性の高いのは、高度房室ブロック、完全房室ブロック、発作性房室ブロックといわれるタイプです。でも房室プロックは、ペースメーカーを植え込むことによって突然死を予防できます。

図5 房室ブロック
図5:房室ブロック

突然死を起こす病気

これまで突然死を起こす可能性のある不整脈にはどんなものがあるかを中心に説明してきました。ここからは、その不整脈の原因となり、突然死を起こす可能性のある病気を10項目にまとめて解説します。

心筋梗塞、狭心症

心筋梗塞では心臓を養う血管が詰まり、心筋の一部が壊死(えし)するために、胸痛と心機能の低下が起こりますが、同時に壊死した心筋の周囲で不整脈が起こりやすくなります。

致死性の不整脈である心室頻拍や心室細動が起こりやすいのは、心筋梗塞が発症した直後の数日間と数週間以上たった慢性期です。

また一時的に冠動脈の血流が減少、途絶する狭心症でも、心室細動が起こることがあります。

心筋症

心筋症には拡張型と肥大型があり、肥大型の一部は年月を経て徐々に拡張型に変わるものがあります。また左室心筋緻密(ちみつ)化障害という特殊な心筋症もあります。いずれも左心室の心筋に変性が起こるため、そこで不整脈が出やすくなります。

拡張型の心筋症は息切れなどの症状が出やすいため、早期に発見されることが多いのですが、肥大型の心筋症は症状が出ないので、見過ごされることが少なくありません。

若者の突然死の原因の第1位は肥大型心筋症であると報告されています。特に心筋の厚さが30mm以上の人や、家系に突然死した人がいる場合、これまでに失神の既往がある場合は要注意とされています。

催不整脈性右室心筋症(右室異形成症)

1980年頃にその存在がわかった、主として右心室の筋肉に変性を生じる疾患で、そこから不整脈が出現します。この病気では、右心室は拡大するのですが、左心室の機能は保たれることが多いので、症状が出にくく、心室頻拍が起こって初めて診断されることが少なくありません。

サルコイドーシス

昔からある疾患ですが、いまだ原因がよくわかっていません。

この疾患では肺や眼、皮膚など全身のあらゆる臓器にサルコイド結節という塊ができます。心臓にだけできる場合もあり、それを心サルコイドーシスと言います。これができると心筋が変性して、心臓の機能低下や不整脈を起こします。特に房室結節の周辺が傷害されやすいので、房室ブロックをよく起こします。

先天性心疾患、弁膜症、心筋炎

ファロー四徴症などの先天性心疾患、重度の大動脈弁膜症、心筋炎も心室頻拍や心室細動から突然死を起こすことがあります。

これまで説明した病気はいずれも器質性心疾患で、不整脈出現時には胸部X線や心エコー検査で心臓に何らかの形態異常が見つかります。しかし、以下の病気では通常の検査では正常とされることが少なくありません。

ブルガダ症候群

若年~中年男性が夜間睡眠中に突然死し、解剖して調べても、原因が見つからないため、長年、原因不明の“ポックリ病”として扱われてきた疾患です。

ところが、1992年にブルガダ(Brugada)という人が、死亡の原因は心室細動であり、この病気を持つ人は普段の心電図で特徴的な波形を示すことを報告しました<図6>。それ以来、この病気は外国よりも日本で注目されるようになりました。

というのは、もともと“ポックリ病”は日本人に多く、また心電図検査をすると男性の50人に1人くらいがこの病気に近い波形を示すことがわかったからです。しかし、よく調べてみると、本当に危険なのはごく一部の人で、これまでに意識を失うか、家系に突然死した人がいる場合に限られることもわかってきました。しかし、新しい疾患であるため、長期の予後は不明で、さらに検討が必要とされています。

突然死を起こす病気の多くで不整脈が出るのは、運動中や体を動かしている時、または精神的に興奮した場合ですが、この病気では、睡眠中や安静にして床についている時に発作が起こるのが特徴です。

この病気では、次に説明するQT延長症候群と同様に、原因となる遺伝子が割にはっきりしているため、遺伝子検査もよく行われます。

図6 ブルガダ症候群で見られる心電図
図6:ブルガダ症候群で見られる心電図

QT延長症候群

すでに説明しましたように、心電図でQTという部分が延長するために、それにより「トルサード・ド・ポアンツ」という一過性の心室細動を起こして突然死する可能性のある疾患です。これには先天性と後天性とがあります。

心筋の細胞にはイオンチャンネルという微細な構造物が無数にあり、それにより心臓に電気が流れ、正常に心臓が動く仕組みになっていますが、先天性QT延長症候群ではこのイオンチャンネルを作る種々の遺伝子に異常があって、そのためにQTが延長し、心室細動が発生することが明らかになっています。

この病気はてんかんと症状が似ているので、よく間違われますが、赤ちゃんが突然死する乳幼児突然死症候群の主な原因もこれではないかと考えられています。

一方、後天性のQT延長症候群は、薬剤、電解質異常(特に低カリウム血症)、徐脈などで誘発されますが、後天性の場合もその元には同様な遺伝子の異常があるのではないかと考えられています。

QT延長症候群では異常な遺伝子のタイプにより、症状や治療法が異なるため、遺伝子検査が必要です。またこの症候群の正反対の病態として、QT短縮症候群もあることが最近わかってきました。QT短縮症候群もQT延長症候群と同様に突然死することがあり、その原因は遺伝子異常であることが判明しています。

心臓震盪(しんとう)

胸に野球ボールなどの物体が強く当たった直後に意識を失ったり、突然死したりする病気です<図7>。当たった物体で心臓や骨に傷がつくのではなく、心臓の拍動の周期のある瞬間に一致して物体が当たった時に、心室細動が起こることが動物実験で証明されています。

この病気も比較的新しい疾患と言えますが、運動中の学童~青年男子に起こりやすく、若年者の突然死の大きな原因とされています。このため最近では救命のために多くの学校でAED(自動体外式除細動器)が設置されるようになっています。

図7 心臓震盪
図7:心臓震盪

たこつぼ心筋障害

10年ほど前から日本で報告され始めた病態で、その原因はまだわかっていません。心電図上、心筋梗塞時に見られるようなT波の異常が出現しますが、心筋梗塞はなく、その代わりに左心室の収縮時の形が、たこつぼ様、つまり下方がふくらみ、上方でくびれた形になってしまう病気です<図8>。

中高年の女性に多く見られ、強い精神的・肉体的ストレスの関与が考えられており、地震などの災害時にその患者数が急増することが知られています。多くのたこつぼ心筋障害は一過性の心筋の収縮異常で、心電図変化も数か月以内に消失します。

しかし、発症後急性期にはQT時間が延長するため、「トルサード・ド・ポアンツ」(一過性心室細動)から突然死を起こす場合があって、予後が良好とは限らないことがわかってきました。

図8 たこつぼ心筋障害
図8:たこつぼ心筋障害

特発性心室細動

これまでに述べたような病気がなく、普段の心電図がほぼ正常で、心臓の機能もまったく正常なのに、突然死を起こす病態です。

この中には、特発性心室頻拍から心室細動に移行する人、カテコラミン誘発性多形性心室頻拍という特殊な心室頻拍を有する人、早期再分極という軽度のST上昇(心電図でST波に変化)を有する人の一部などが含まれます。

これらの病気を持っているすべての人に心室頻拍や心室細動などの怖い不整脈が起こるのではなく、その一部(1%から20~30%程度)の人に起こるにすぎません。また突然死が起こりやすいタイプや、その根本的な治療法もだんだんとわかってきています。

以上、説明した疾患のうち、心筋梗塞、弁膜症、心筋炎、サルコイドーシス、たこつぼ心筋障害を除く疾患では、先天的な遺伝子異常がその原因ではないかと考えられるようになっています。

最新の治療法は

抗不整脈薬

心室頻拍には、まず抗不整脈薬が用いられます。特に器質性心疾患に基づく持続性心室頻拍に対してはアミオダロン、ソタロールなどのIII群抗不整脈薬がよく効くので、最近ではよく使われています。

アミオダロンは、難治性不整脈に対して最もよく効く薬とされておりますが、一部の人に肺線維症や甲状腺機能障害などの少し変わった副作用が出現することが知られています。このため、定期的な検査が必要となりますが、これらに留意さえすれば、危険性は他の抗不整脈薬と同等ですので、服薬に対し、過度に心配しすぎないようにしましょう。特発性の心室頻拍に対しては、β遮断薬やワソランなどの抗不整脈薬が有効です。

ICD(植え込み型除細動器)と
CRT-D(除細動機能付き両室ペースメーカー)

(1)器質性心疾患があり、そのために持続性心室頻拍を起こした人(2)非持続性心室頻拍があり、心臓の機能も著明に低下している人(3)心室細動発作を起こして救命された人は突然死しやすいことが、経過観察でわかりました。それを予防するために近年ではICD(植え込み型除細動器)やCRT-D(除細動機能付き両室ペースメーカー)を積極的に植え込むようになっています。海外では、不整脈がなくても心臓の機能が低下していれば、これらを植え込む方針の施設もあります。

これらの機器は、ペースメーカーと同じようなサイズで、植え込む手術の方法も同様です。鎖骨の下のところを小さく切開し、皮膚の下に直径5cm、厚さが5~6mm程度の円盤状の小さな装置をすべりこませる手術を行うことで、突然死を予防できるのです。

ただ、器械を入れても、病気が完治するのではなく、不整脈発作自体を予防することも、今のところはできません(将来はできるようになる可能性があります)。ですから、抗不整脈薬を継続して服用する必要がありますし、3~6か月ごとに定期的な器械の点検が必要になります。

カテーテル・アブレーション

不整脈を根本的に治す方法としてカテーテル・アブレーションがあります。これは心臓に入れた細い管(カテーテル)の先から高周波を流し、心筋の一部に60℃程度の熱を加えて火傷させ、不整脈の原因をなくしてしまう治療法です。

これは特発性の心室頻拍に対しては極めて有効で、90%以上の確率で不整脈を治せます。しかし器質性の心室頻拍に対しては限界のあることがわかっており、現在新しい方法がいろいろと研究されています。

AED(自動体外式除細動器)

最近いろいろな施設でAED<図9>が設置されています。病院はいうまでもなく、空港、駅や学校などの公共施設の他に、スーパーマーケット、会社、寺院など人が集まる所に設置されるようになっています。AEDは心室細動で倒れた人に対して電気ショックをかけて蘇生する装置であり、誰でも扱うことができます。

AEDの使い方は簡単です。電源を入れ、ふたをあけると、自動的に日本語の音声が流れますので、それに従えばいいのです。音声指示に従って胸の上に二つの電極パッドを張り、ボタンを押せば、あとは機械が自動的に不整脈を診断して、治療を行ってくれます。

インターネットなどでもその使用法が紹介されていますので、どういうものであるかを知っておき、いざという時使えるようにしましょう。大きなマラソン大会では必ず何人かがAEDで救命されていますし、日本中で数多くの人が、これにより毎日蘇生(そせい)され、その後も植物状態にならずにすんでいます。

図9 AED(自動体外式除細動器)
図9:AED(自動体外式除細動器)

突然死を発症する状況と心構え

突然死は(1)運動や精神的ストレスに関係して起こるものと(2)そうでない場合とがあります。(1)は心筋梗塞、狭心症、肥大型心筋症、多くのQT延長症候群、心臓震盪、たこつぼ心筋障害、特発性心室細動などの病気に関連して起こり、(2)はブルガダ症候群、QT延長症候群の一部などで見られます。

先の中越地震ではたこつぼ心筋障害が普段の20倍に増え、突然死も3倍に増えました。アメリカで起きた9.11同時多発テロ事件でも致死性の不整脈によるICD(植え込み型除細動器)の作動が2.5倍に増えたことが報告されています。

突然死に見舞われた人の1週間前の生活状況を調べてみると、睡眠不足や精神的・肉体的ストレスが多かったことが示されています。したがって、これまで述べたような病気を持っている人は、仮にICDなどの器械が植え込まれている場合であっても、過度の運動を控え、精神的ストレスや睡眠不足をできるだけ避けるようにしましょう。

 

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