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[62] 心筋症って怖い病気ですか?

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
文章・図表・イラスト等の転載・引用のご相談は循環器病研究振興財団までご連絡ください。

2007年5月1日 発行

元国立循環器病研究センター
研究所 循環動態機能部
病院 心臓血管内科
室長 駒村 和雄

難病ですが、きちんと治療すれば怖い病気ではありません

イラスト:難病ですが、きちんと治療すれば怖い病気ではありません

もくじ

※本ページは2007年5月1日発行のパンフレットを一部改訂したものです。

結論を先に言うと、心筋症は怖くありません

Q. 「特発性拡張型心筋症」と言われました。難病なのですか?

  1. 「心筋症」とは、心臓の筋肉の病気という意味の病名です。「特発性」とは原因不明という意味の医学用語です。遺伝子やウイルス感染、免疫反応などが原因と考えられ、一部は原因が分かるようになってきましたが、多くは不明のままです。「拡張型」とは心筋症の中で風船のように心臓が膨らんでくるタイプを指します。
    特発性拡張型心筋症の治療は、これまでは心臓移植手術しかないというのが一般的でした。心臓移植は今でもこの病気の最後の切り札には違いないのですが、症状をかなり良くする薬や移植以外の手術、あるいはペースメーカーなどの医療機器を用いる治療法が最近著しく進歩したので、特発性拡張型心筋症イコール心臓移植と考えなくてもよくなりました。
    「難病」とは治療が難しく、慢性の経過をたどる病気のことを言います。心筋症は原因不明で、患者さんの数も多くないことから治療方法が確立しておらず、全国的規模での研究が必要な疾患という意味で、現在では「特定疾患」と名付けられ、医療費補助なども整備されています。心筋症は難病と言われていますが、個々の病状に合わせた適切な治療によって、入院せずに生活や仕事を続けられる患者さんが増えてきました。がんと宣告されても今では決して不治の病とは思わないように、心筋症もかつての恐ろしい病名ではなくなりました。

Q. 心筋梗塞とは違うのですか?

  1. 心筋梗塞も「心筋」が傷つくところは似ています。しかし、その原因は心臓の血管が詰まって血液が流れなくなるためで、心筋症とは原因が違います。そのために検査方法や治療方法が異なる別の病気です。「虚血性心筋症」という言葉があり、これが重症の心筋梗塞を示すので紛らわしいですが、心筋症は心筋梗塞とは違います。

Q. 心筋症にかかると体はどうなってしまうのですか?

  1. ごく軽い場合は何の症状もない方がいます。人によって症状が軽かったり重かったりしますが、多くの場合は体のだるさ・息切れ・動悸・むくみ・横になると息苦しい・せきやたんが増えるなどの症状が起こります。これらはひとかたまりの症状として起こるので、まとめて「心不全」症状と呼んでいます。
    症状がもっと進むと肝臓が弱って黄疸が出たり、腎臓が弱って尿の量が減ったり、心臓から血栓(血の塊)が飛んで脳の動脈に詰まったりすることもあります。多くの場合、心不全は徐々に進行しますが、ある日急に起こることもあります。普段なんともなかったのに、ひどい動悸や脈の乱れが突然起こって気を失ったり、本当にひどい場合は心臓が止まったりすることが分かっています。

Q. 心臓移植でしか助からないというのは本当ですか?

  1. 日本国内で心臓移植の順番を待っておられる患者さんの8割が特発性拡張型心筋症の患者さんです(2006年日本臓器移植ネットワーク調査)。そうすると特発性拡張型心筋症イコール心臓移植というイメージですね。しかし、薬でかなり症状や経過が良くなること、薬が効きにくい場合でもペースメーカー植え込み手術などで良くなる患者さんがおられることが分かってきました。
    心筋症治療の最後の切り札は、たしかに心臓移植であることは間違いありません。心臓移植の順番を待つ間ずっと人工心臓に頼らざるを得ない患者さんがおられるのも事実です。心臓移植が万能で、誰でもこの手術で全く健康になるかというと、実は多少誤解がありますので、章を改めて説明します。現在のところ、心臓移植はあくまで他に手だてがない場合に限って考えるべき治療法とされています。
    将来的に移植が必要なのか、移植手術が本当によい選択肢なのかは専門医にお尋ねください。また、早くこの病気が見つかった方ほど薬で良くなることが多いので、自分だけで思い悩まずに、医師にささいなことでも相談されるようお勧めします。

心筋症はこのようにして見つかります

Q. どんな症状が出るのですか?

  1. 自分の感じる症状、つまり自覚症状としては、体のだるさ・運動時の息切れ・横になると息苦しい・運動した時や逆に安静にしている時の動悸・むくみ・せきやたんが増えるなどの症状が多いです。

Q. 検診では見つかるのでしょうか?

  1. 病気の進み具合にもよりますが、心臓の音の診察や心電図で心臓病の疑い・要精密検査と言われることがあります。肺の状態を調べるために撮った胸部レントゲンで心臓が肥大している(大きくなっている)と言われて病院を受診される方もいます。

Q. 心臓の精密検査というのは何をするのですか?

  1. 心筋症で言えば、外来では心エコー検査が代表的です。短時間に苦痛なく心臓の構造や心筋の動き具合、さらに弁膜の状態まで分かります。簡単な検査で全国のたいていの診療所や病院で受けられます。
    この心エコー検査で心臓の形と、正常に働いているか否かが簡単に分かりますから、おおよその診断と治療方針が決まります。簡単に繰り返せる検査なので、薬が効いているかどうかなどもその場で調べられます。
    外来では他に胸部CT撮影や心臓MRI撮影(MR)ができます<図1>。両方とも脳ドックなどでおなじみの機器ですが、心臓の形・大きさ・動き具合など心エコーよりさらに詳しく分かります。動画のエコーと違ってMRIはフィルムの形で残り、別の病院で受診する時、それまでにかかっていた病院から検査フィルムを借りてきて参考にしてもらうことも可能です。
    最近は心筋の細かな性質まで映し出して病気の進み具合が分かるようになりました。ただしこれらの撮影ができるのは循環器科のある病院です。
    他の外来検査としては放射性同位元素(RI)を用いる心筋シンチグラム検査があります<図2>。かなり専門的な検査で、循環器の専門病院でないと行いませんが、心筋の代謝が分かるので、病気の進行度や治療の効き具合が判断できます。
    入院して行う検査に心臓カテーテル検査があります。カテーテルと呼ばれる直径2ミリ程のプラスチック管を下肢の血管から入れ、心臓まで進めて、心臓の血管や心室腔に造影剤を入れて撮影し、最後に耳かき半分ほど心臓の筋肉を切り取ってきます。この筋肉細胞に特殊な処置をして顕微鏡で調べると心筋の傷み具合やその原因が分かります<図3>。
    カテーテル検査は、この方法に慣れた循環器専門医が専門病院でする検査です。心不全症状の原因が心筋症なのか、他の病気が原因なのか、最終診断がこの検査で下されます。
図1 MRとCT画像
図1:MRとCT画像

AはMR画像。肥大型心筋症の中仕切り(心室中隔)に造影剤が長く残っている像です(矢印)。細胞がスジに置き換わっていること(線維化)を示します。BとCは、造影剤を使って拡張型心筋症をCTで撮ると心筋の厚みや馬力が詳しく分かることを示しています。
Bが拡張期、Cが収縮期(ほとんど収縮なし)。(内藤博昭国立循環器病センター部長提供)

図2 RI画像
図2:RI画像

AとBの画像は、心臓の場所ごとの動きが詳細に分析でき、動脈血を送り出す力(収縮能)だけでなく、静脈血を吸い込む力(拡張能)も評価できます。Aは拡張期、Bは収縮期。Cはがんの検査でおなじみのPET画像です。元気な心筋はブドウ糖の取り込みが少ないので、画像のようにうっすらとしか写りません。Dは心筋症が進むと心筋は栄養をブドウ糖に頼るため、PETではっきりと写った画像です。(石田良雄国立循環器病センター医長提供)

図3 心筋症の心臓の顕微鏡写真
図3:心筋症の心臓の顕微鏡写真
  1. 赤は生きている心筋細胞、青は心筋細胞が死んでスジ(線維)で置き換わっているのを示します
  2. 細胞の輪郭の所に緑色の縁取り(ジストロフィンという細胞骨格)がとぎれとぎれに染まっていて、細胞が壊れかけていることを示します
  3. 電子顕微鏡で見える多数の渦巻き状のものは細胞に不要な蓄積物です

(植田初江国立循環器病センター医長提供)

Q. 肥大型とか拡張型とか病名が分かりにくいです

  1. 確かに分かりにくい病名ですね。これらの用語は単に心臓の形を表しているだけなのです。心筋症という病気としては同じ一つのグループです。特発性心筋症には大きく分けて三つのタイプがあります。肥大型・拡張型・拘束型です。これらは心臓の形で分類された名前です<図4>。
    肥大型は心臓の壁が厚くなって内部が狭くなるタイプ。拡張型は心臓全体が丸く膨れ上がって壁が薄くなるタイプ。拘束型は厚みに変化はないのに心筋が硬くなり、血液が入りにくくなるタイプです。それぞれ症状や経過が違い、治療法も異なるので別の名前が付いています。

Q. 主人がアルコール性心筋症と言われました。肥大型とか拡張型とは違うのですか?

  1. 日本酒なら1日に4~5合以上を10年以上飲み続けている方で、心臓が大きくはれて動きも悪くなって、体のだるさ・息切れ・動悸などの症状を訴える方がいます。他に心不全の原因が見当たらず、お酒を止めると急速に良くなり、アルコールが原因と考えられる場合、アルコール性心筋症という診断名がつきます。
    この場合、心筋症の原因はアルコールということがはっきりしているので、肥大型とか拡張型など原因の分からない特発性とは区別して二次性とも表現します。二次性の場合、原因を治療すれば心筋症も治るはずです。アルコール性心筋症などは、まさにそれに該当します。
図4 心筋症の分類
図4:心筋症の分類
心臓の形や心筋の厚みで、肥大型、拡張型、拘束型に大きく分類されています

心筋症はまず薬で治療します

Q. 薬で正常に戻りますか?

  1. 正常に戻るわけではなく、病気の進行を遅らせていると考えてください。症状が軽い方の場合は、正常に近い程度に良くなる場合もあります。しかし、薬を飲む前にやるべきことがありますし、さらに、薬を飲み始めてからも気をつけないといけないことがあります。
     1) 心臓に負担がかかるような(ご自分でつらいなあと思うような)作業や運動は控えてください。
    2) しんどいな、と思ったら十分に休みをとって無理しないでください。
    3)風邪引きは禁物です。風邪をきっかけに症状が悪くなり、入院しないといけないこともあります。引きかけたと思ったら休みを取ってください。
    4) 体重が重いと心臓がすべき仕事が多くなります。体重が増えないように、太りすぎの方は減らすように心がけましょう。
    5)水の飲み過ぎ、塩の取り過ぎは、血液量を増やして心臓の負担になります。食事の全般的な注意と適切な飲水量・塩分量を担当医からよく聞いてください。
    6)たばこやアルコールなども血圧を上昇させ、脈拍を増やして心臓に負担をかけます。禁煙・節酒について担当医・看護師からよく話を聞いてください。
    7)塩分を取り過ぎて心臓に負担をかけたり、心臓の馬力が弱ってきたりすると、体がむくみます。毎日体重を量って増えていないか、むくみが出ていないか、気をつけてください。
    以上の七つの注意点は、薬を飲み始めても守っていただかないといけません。薬で病気が治ったと思い込んで、不摂生すると必ずぶり返します。心筋症の治療では、実は薬が病気の進む速さを遅くしているだけです。血圧の薬を飲み忘れると、すぐ薬を飲む前のように血圧が上がってしまうのと同じなのです。摂生は一生続けるようお願いします。
イラスト:心筋症の七つの注意点1 イラスト:心筋症の七つの注意点2

Q. どんな薬が心筋症に効くのですか?

  1. 最近の約20年間に心筋症を含めた心臓病の薬は著しく進歩しました。その代表的な薬が拡張型心筋症に対する各種の阻害薬・遮断薬です。ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬とかβ遮断薬などと呼ばれています。
    ACE阻害薬は、体の塩分が足りない時に血圧が下がらないようにするホルモンが心不全の時には出過ぎるのを抑えて、心臓の負担を少なくし、心不全を良くします。一方、β遮断薬は、駆け足の時などに心臓の馬力を上げるホルモンが心不全の時に出過ぎるのを抑えて、心臓を休め、心不全を良くします。
    これらの薬により、心筋症が原因の体のだるさ・息切れ・動悸といった心不全症状が良くなるだけでなく、長生きできるようになったことが統計上はっきりしました。それ以外にも、ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)とかアルドステロン受容体拮抗薬などさまざまな薬が有効だと分かってきました。症状に合わせた使い分けが大事です。担当医から詳しく話を聞いてください。
    むくみもよく起こる症状です。尿を増やす薬である利尿薬でむくみを減らせます。動悸・脈の乱れは心筋症につきものですが、不整脈の薬でよくなる場合も、悪くなる場合もあります。だから、飲み続けていれば安心とも言い切れません。定期的に担当医の診療を受けてください。薬で不整脈や心不全症状が良くならない場合、後で説明するペースメーカーという医療機器を使用することがあります。
    肥大型心筋症によく起こる不整脈に、心房細動という不整脈があります。心臓の構造を建物に例えると、血液を力強く送り出す心室という一階の上に、心房という血液を一拍分ため込んでおく二階があるという二階建て構造になっています。
    二階に相当する心房が細かく震えて規則正しい拍動をしないのが心房細動です。そのために血の塊(血栓)が心房内にできて、脳に飛び、脳梗塞を起こすことがあります。拡張型心筋症で心臓の馬力が落ちている場合に、心室の内壁に血栓がこびりつき、それが脳に飛んで脳梗塞を起こすこともあります。
    こうした事態を防ぐため、適応のある患者さんにはワルファリンという抗凝固薬を飲んでいただくこともあります。ワルファリンは、納豆を食べると効かなくなることがよく知られています。逆に風邪薬や痛み止め、あるいは抗生物質と一緒に飲むと、効き過ぎて出血することがありますから、薬の影響や薬の飲み合わせについては担当医や薬剤師によくご相談ください。1か月に一度程度はワルファリンの効き具合を確認する採血も受けてください。ワルファリンを飲んでいて、他の薬を飲まないといけないときや、サプリメントや健康食品などを試したい時は、必ず前もって担当医や薬剤師にお申し出ください。

Q. 薬は一生飲み続けないといけないのですか?

  1. はい。中にはかなり薬が減る場合もありますが、ほとんどの場合、ほぼ一生薬を続けていただくことになります。仕事が忙しくなったり、転勤したり、あるいは海外へ出かけたりしたのがきっかけで、いつのまにか薬を飲まなくなって症状がぶり返す方がいます。
    長く飲み続けないといけないので、副作用なども調べる必要がありますから、ぜひ定期的に医療機関を受診してください。薬を飲んでいる間も、薬を飲む前にするべき七つの注意を守っていただかないといけません。調子が良くなると忘れがちです。不摂生をなさらないようお願いします。

Q. 薬を続けていれば長生きできますか?

  1. 薬の効き具合や、病気の進む速度は患者さんによって違うため、漠然としたお答えしかできないことをまずお断りします。日本全国での統計値は、良い薬が開発される以前の古いものであまり参考になりませんが、成人の肥大型心筋症の10年生存率は82%、拡張型心筋症では22%と報告されています。しかし、薬やそれ以外の治療の進歩により、特に拡張型心筋症の生存率が著しく改善し、肥大型心筋症のそれに数字の上でも近づいた印象です。
    拡張型の場合、軽症の患者さんでは心配することは少ないのですが、重症の方の場合は薬やそれ以外の治療をすべて行っても、1年以内に心臓移植が必要になることもあります。それでも早くこの病気が見つかった方ほど薬で良くなることが多いので、自分だけで思い悩まずに医師に相談されることをお勧めします。

薬が効かない場合、医療機器や手術で治療します

Q. 薬で良くならなかったら手術しないといけないのですか?

  1. 広い意味では手術と呼ばれますが、カテーテル検査の要領で受けられる治療法も進歩してきました。
    肥大型心筋症は、心臓の壁が分厚く肥大するのが特徴ですが、分厚くなり過ぎて心臓内部の空間が狭くなり、血液の流れを邪魔することがあります。これを閉塞性肥大型心筋症と呼んでいます。めまいや失神などの症状が出ることがあります。
    こうした場合に薬で症状が良くならないときは、ペースメーカー植え込み手術や筋肉を削り取る手術が行われています。しかし、最近はカテーテルで、分厚くなり過ぎた個所の治療もできるようになりました。どの方法がご自身の病状に一番よいのかは専門医にご相談ください。
    拡張型心筋症でもペースメーカー治療や移植とは違う手術療法が行われていますが、どの方法が一番良いかについては専門医とご相談ください。

Q. 人工心臓をつければ治りますか?

  1. 残念ながら、病気の心臓を入れ替えて一生使える人工心臓はまだできていません。人工心臓は実際には、心臓移植の必要な患者さんが心臓をもらうまでの間、待っていただく時にのみ使用されています。

Q. 再生医療では治せませんか?

  1. 新聞などで再生医療という言葉を聞かれた方も多いと思います。これは自分の骨髄や筋肉あるいは脂肪から取った細胞を心臓の細胞に変化させ、心臓に植えて弱った力を助けようとする治療です。実現すれば心臓移植が必要なくなるとも言われていますが、まだ動物での実験段階であって、今後人間での安全性などを検討する必要があります。

移植のことも知っておいてください

Q. 健康保険で心臓移植が受けられるというのは本当ですか?

  1. 本当です。2006年から保険の対象になりました。心臓移植はテレビや新聞で見聞きされたことがあると思います。全世界では毎年約3,000人が受けているごく普通の心臓手術です。一つだけ他の手術と違うところは、心臓を提供してくださるドナーの方がおられて始めて成り立つ手術だということです。
    提供された心臓をもらう方をレシピエントと呼びますが、レシピエントに認められるには条件があります。最も大事なことは移植以外の治療法を試みて、効果がなかったかどうかです。自分は心臓移植でしか助からないのではと思い込まれていた方でも、薬を調節することで元気になった患者さんもおられますし、ペースメーカー植え込み手術で元気になられた方もおられます。
    ですから、多くの選択肢が増えた現在の治療法をすべて検討したことが、レシピエントに認められる条件になります。その他には年齢や心臓以外の臓器、つまり全身状態が条件になります。細菌やウイルスなどに対する免疫力をわざと弱めて、ドナーからもらった心臓を拒絶反応から守る必要があり、免疫抑制剤という薬を一生飲み続けないといけません。そのために肝臓や腎臓などが傷んでいたり、細菌などが体内で活動していたり(感染している、と表現します)、がんの疑いがあったりすると、レシピエントになるのが難しいことがあります。
    意思表示カードに「心臓を提供してもよい」と書かれたドナーの方のご好意によって成り立つ治療ですから、いつ手術が受けられるのかは分からず、日本臓器移植ネットワークに登録して順番待ちをしている現状です。現在の法律では15歳未満の小児の方は脳死判定という手続きが認められないため、子供さんで心筋症が重症になられた場合は、米国など海外で移植手術を受けられているのが現状です。
    しかし心臓移植手術自体はすでに健康保険の対象となった普通の手術ですし、小児の心臓提供に関しても法律改正の動きが進んでいるようです。時間はかかっていますが、日本の移植事情もいずれ海外に近づくと思われます。

Q. 近くの病院でも心臓移植は受けられますか?

  1. 心臓移植手術は国立循環器病センターなど、日本では次の六つの施設だけで受けられる体制になっています。全国どこの病院にかかっておられても、心臓移植治療が必要な場合には六つの施設のどこかで必ず順番に従って手術を受けられるように専門医が連絡を取り合っています。
    *国立循環器病センター
    *大阪大学医学部附属病院
    東京女子医科大学病院
    東京大学附属病院
    東北大学病院
    九州大学病院

    は、心肺同時移植可能施設)

Q. 移植手術が成功すればもう全く普通の生活が送れますか?

  1. 最終的に普通の生活に戻れますが、患者さんご本人とご家族が守るべきルールがあります。移植後は一生涯にわたって免疫抑制剤を飲み続けないと、もらった心臓を異物と勘違いして自分の体を攻撃してしまう拒絶反応が起こり、またしても心臓が病気になってしまいます。また定期的な検査と通院が必要ですが、ほぼ9割の移植患者さんが学校生活や職場に復帰しておられます。移植するとすべてバラ色と言いたいところですが、実際には移植した心臓は動脈硬化が進みやすいですし、免疫を抑える薬を飲んでいるために感染やがんの危険を注意しないといけません。そのため移植患者さんの生活を支えていただかなければなりません。
    以上のような実情を十分に理解していただく必要があります。ご質問やご心配のある方は、ぜひ担当医を通じて国立循環器病センターなどの心臓移植実施施設の専門家にお尋ねください。

公費による補助を受けられる場合があります

Q. 心筋症にかかると医療費が免除されるのですか?

  1. 全員ではありませんが医療補助を受けられる条件の方がおられます。拡張型心筋症の病名で重症の方が各都道府県で認定されれば、「特発性拡張型(うっ血型)心筋症に対する特定疾患治療研究事業による医療費公費負担」を受けられます。ペースメーカー植え込み手術を受けられた方も、障害者自立支援法による「自立支援医療」の対象となり、医療費の自己負担分は公費の支出が受けられます。また健康保険法の定める高額療養費制度の対象となる場合、医療費自己負担額は少なくなります。病院で相談されるようお勧めします。

 

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