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心臓|循環器病あれこれ|

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
文章・図表・イラスト等の転載・引用のご相談は循環器病研究振興財団までご連絡ください。

[50]心臓リハビリテーション入門

-社会復帰・再発予防・快適な生活のために-

国立循環器病研究センター
循環器病リハビリテーション部長
後藤 葉一

「継続は力なり」です
イラスト:「継続は力なり」です

もくじ

  1. 心臓リハビリテーションとは?
  2. 心臓リハビリにはどんな効果が?
  3. 心臓リハビリは、いつから、どこで、何をするのか?
  4. 運動能力が低い心臓病患者のリハビリ効果は?
  5. 心臓リハビリによる運動能力の増加
  6. 心臓リハビリの実際
  7. 心臓リハビリのスケジュールは?
  8. 心臓リハビリの風景
  9. 適度な運動の強さとは?
  10. 運動療法を安全・効果的にするための「運動処方」
  11. 心臓リハビリで大切なこと
  12. 「在宅運動療法10か条」・・・安全で効果的な運動療法のために

1.心臓リハビリテーションとは?

リハビリテーション(リハビリ)というと、多くの皆さんは、整形外科の手術後や脳卒中の患者さんが行う歩行や手足の運動の訓練をイメージされると思います。このリハビリの一分野として、最近、「心臓リハビリテーション(心臓リハビリ)」が注目されています。

「心臓リハビリテーション」とは何? まず<図1>をご覧ください。

心筋梗塞、狭心症、心臓手術後の患者さんは、心臓の働きが低下しています。また、心臓をいたわるために安静な生活を続けたことによって、運動能力や体の調節の働きも低下しています。ですから、退院してすぐには強い活動はできませんし、またどの程度活動しても大丈夫なのかが分からないために不安もあります。社会復帰や職場復帰の前に、低下した体力を安全なやり方で回復させ、精神面でも自信をつける必要があります。

また、心筋梗塞や狭心症の主な原因は、心臓の表面を走る冠動脈の動脈硬化です。再発予防には、原因となる動脈硬化の進行を防ぐことが大切です。動脈硬化の進行を防止するには、食事療法や禁煙とともに、運動療法が有効であることが分かっています。

「心臓リハビリテーション」とは、心臓病の患者さんが、低下した体力を回復し、精神的な自信を取り戻して、社会や職場に復帰し、さらに心臓病の再発を予防し、快適で質の良い生活を維持することをめざして、運動療法、患者教育、生活指導、カウンセリングなどの活動プログラムに参加することです。一言でいえば、心臓病の患者さんが、快適で質の良い生活を取り戻すための総合プログラムです。

図1 心臓リハビリテーションとは?
図1:心臓リハビリテーションとは?

2.心臓リハビリにはどんな効果が?

心臓リハビリによってさまざまな良い効果が得られることがすでに分かっています。それらの効果を<表1>にまとめました。

心筋梗塞や心臓手術後の患者さんは心臓リハビリをすることで、まず身体面では、動作が楽になり、自覚症状も軽くなります。精神面では、不安やうつ状態が改善しますから、心身両面から快適な生活を長く続けることができるようになります。さらに再発予防効果があり、死亡率が減少します。リハビリは地味な努力のようにみえて、実は総合的・多面的な効果が期待できるのです。

イラスト:心臓リハビリにはどんな効果が?
表1 心臓リハビリテーションの効果
1) 運動能力が増加し、楽に動けるようになる。
2) 狭心症や心不全の症状が軽くなる。
3) 不安やうつ状態が改善し、快適な社会生活を送ることができる。
4) 動脈硬化のもとになる危険因子
5) 血管が自分で広がる能力(血管内皮機能)や自律神経の働きがよくなるとともに、血栓ができにくくなる。
6) 心筋梗塞の再発や突然死が減り、死亡率が減少する。
記号:矢印
つまり、心筋梗塞や心臓手術後の患者さんが心臓リハビリを行うことにより、動作が楽になり、快適な生活を長く続けることができるようになります。

3.心臓リハビリは、いつから、どこで、何をするのか?

心臓リハビリは、病気の時期によって内容が異なります。<図2>の「心臓リハビリテーションの時期的区分」を見てください。

まず、急性心筋梗塞の発病や心臓手術の手術日から1~2週間は第1期、または「急性期リハビリ」と呼ばれています。

この時期は入院中ですから、集中治療室や一般病棟で洗面、排便、シャワー浴、廊下歩行など身の回りの動作が完全にできるようになることが目標です。急性期の治療とともに、段階的にリハビリの負荷量(活動量)を増やし、心臓機能評価の検査や、生活指導、禁煙指導をします。

発病から2~3か月間は第2期、または「回復期リハビリ」と呼ばれています。この時期の目標は、退院して社会、または職場に復帰することです。リハビリの場所は、入院中のリハビリから「外来通院リハビリ」や「在宅リハビリ」に移ります。内容は、運動負荷試験などの機能評価検査、積極的な運動療法、そしてカウンセリング、つまり仕事への復帰の問題、不安などの心理的問題、食事療法などについての相談をします。

社会復帰ができれば心臓リハビリが終了かというと、そうではありません。第3期として、回復期に引き続き生涯にわたる「維持期リハビリ」が必要です。維持期リハビリは、在宅あるいは地域の運動施設などで、運動療法をする一方、二次予防、つまり再発予防のために食事療法や禁煙を続けます。この時期の目標は「生涯にわたる快適な生活の維持」です。

図2 心臓リハビリテーションの時期的区分
図2:心臓リハビリテーションの時期的区分

4.運動能力が低い心臓病患者のリハビリ効果は?

心臓リハビリの効果のうち、最も大きいのは運動能力の増加です。

<図3>は、国立循環器病センターで心臓リハビリテーションに参加された患者さんのデータです。心筋梗塞や心臓手術で運動能力が著しく低下していた心臓病患者さん53人が、心臓リハビリに参加されました。リハビリ開始時と3か月後を比較すると運動能力に明らかな増加が認められます。

この中には、入院中に200mの距離を歩くのがやっとで、大阪・梅田のデパートへ買い物に行くのが夢だ、とおっしゃっていた女性の患者さんが含まれています。その患者さんは、心臓リハビリに参加して、元気になって退院された後に、「夢が実現できました」とうれしい報告にこられました。

図3 運動能力が低い心臓病患者でのリハビリ効果
図3:運動能力が低い心臓病患者でのリハビリ効果

5.心臓リハビリによる運動能力の増加

心臓リハビリによって運動能力が大きく増加するのはどのような患者さんでしょう?直感的には、心臓の収縮力が強くて運動能力が高い人ほど、心臓リハビリで運動能力の増加が大きいように思われますが、果たしてそうでしょうか?

<図4>の左のグラフは、リハビリを開始する前の心臓の収縮の強さと、3か月間の心臓リハビリによる運動能力の増加率との関係を示しています。

1つの丸印が1人の患者さんを表しています。図の右へ行くほど強い心臓、左へ行くほど弱い心臓ということになります。これを見ますと、強い心臓でありながら増加率が低い人もあり、弱い心臓であっても増加率が高い人もいることが分かります。心臓リハビリによる運動能力の増加は心臓の強さとは関係がないと言えるのです。

<図4>の右のグラフは、リハビリを開始する前の運動能力が著しく低下していた53人、中程度低下していた135人、やや低下していた241人という三つのグループでの心臓リハビリによる運動能力の増加率を示しています。これを見ますと、運動能力が著しく低かった人の方が、リハビリによる運動能力の増加率が大きいことが分かります。

つまり、心臓が弱くて運動能力が低い人は、運動を控えて安静にしていなければならないのではなく、心臓リハビリをすることで運動能力の大きな増加が期待できると言えます。

図4 心臓リハビリによる運動能力の増加
図4:心臓リハビリによる運動能力の増加

6.心臓リハビリの実際

ここまでで、心臓病になった患者さんが心臓リハビリテーションに参加することにより、体力と精神的な自信の回復、心臓病の再発予防、生活の質の改善、そして死亡率の低下などの効果が得られることを理解していただけたと思います。ここからは、実際に心臓リハビリテーションをどのように実行すればよいかをご説明します。

心臓リハビリで行う内容は、<表2>に示す三つのことです。

まず第1に運動療法として、運動負荷試験の結果からその人に最も適した運動の強さや運動時間を決定し、医療スタッフの監視のもとで運動トレーニングをします。また自宅での運動療法のやり方について指導を受けます。

第2に、集団での講義や教育パンフレットなどによって学習をします。心臓病に対する正しい知識を身に付け、食事療法や禁煙の実行について指導を受け、日常生活での注意事項を学びます。

第3に、カウンセリング、つまり個人面談で、社会復帰や職場復帰へのアドバイスを受けたり、心理的な不安やうつ状態などについて相談したりします。

表2 心臓リハビリテーションで行うこと
1) 運動療法

・運動処方(運動負荷試験により最適運動強度を決定)

・監視下運動トレーニング

・在宅運動療法指導
2) 学習指導(講義、教育パンフレット)

・心臓病に対する正しい知識

・食事療法や禁煙の実行方法

・日常生活での注意事項
3) カウンセリング(個人面談)

・社会復帰や職場復帰へのアドバイス

・不安やうつ状態などについての相談

7.心臓リハビリのスケジュールは?

心筋梗塞の場合を例に説明しましょう。<図5>をご覧ください。

急性心筋梗塞で入院すると、まずCCUという集中治療室で急性期の治療を受けます。経過が順調であれば、4日目ごろに200m歩行試験を受け、合格すれば病棟の廊下などで歩行練習をします。ここまでが急性期リハビリテーションです。

入院5~7日目に心臓リハビリ室で、歩行テストをして、安全が確認できれば開始時面談で説明を受け、いよいよ回復期心臓リハビリテーションが始まります。

運動トレーニングとして、医師の監視のもとで心電図をモニターしながら歩行と自転車こぎをします。運動療法中には、胸痛、不整脈、めまい、心臓発作などが起こる可能性があります。これらを避けるため、救急機器を整備するとともに医療スタッフが常に監視しますので、自宅で一人で運動をするよりはるかに安全です。

退院前に運動負荷試験(運動能力測定)や血液検査を行い、医師や看護師による個人面談で、退院後の運動指導や生活指導をします。

運動トレーニングのほかに、講義が行われます。医師、看護師、薬剤師、栄養士、運動指導士などが、病気の治療と予防法、薬、食事療法、運動療法などについて講義します。再発予防の方法や、退院後の生活の改善方法などの知識を身につけていただけます。

退院後は、3か月間、外来通院リハビリに週1~3回参加して、エアロビクス体操や自転車こぎ運動をします。通院リハビリに来ない日には、ご自宅で在宅運動療法をしていただきます。3か月後に再度運動負荷試験と血液検査をして心臓リハビリの効果を評価し、今後の運動療法のやり方や日常生活での注意についての個人面談が行われます。

3か月以降は、維持期の心臓リハビリとして、ご自宅あるいは近くのスポーツ施設での運動療法と、食事療法や禁煙といった生活習慣の改善を継続していただきます。

以上が急性心筋梗塞のあとの心臓リハビリテーションのスケジュールですが、狭心症や心臓手術後の場合も、ほぼ同様です。

図5 急性心筋梗塞症回復期心臓リハビリテーションプログラム
図5:急性心筋梗塞症回復期心臓リハビリテーションプログラム

8.心臓リハビリの風景

国立循環器病センターでの心臓リハビリテーションの様子をご紹介しましょう<写真>。

左上の写真は、自転車こぎ運動をしているところです。一人一人に適した運動の強さを設定して、脈拍をモニターしながらトレーニングをします。

右上は、音楽に合わせてストレッチ体操をしているところです。このようにゴムチューブを使い、全身のさまざまな筋肉に軽い負荷を加えることによって、体力の向上が期待できます。また、ほかの患者さんと一緒に音楽に合わせて運動することで、楽しいリハビリとなります。

左下は、集団講義の様子です。医師、看護師、薬剤師、栄養士、運動指導士などが、それぞれの専門分野の知識をわかりやすく説明します。右下は、個人面談です。患者さんと家族に対して、医師、看護師がこれまでの検査結果を説明し、退院後の職場復帰や日常生活の注意事項について話し合います。

写真:心臓リハビリの風景

9.適度な運動の強さとは?

心臓病の患者さんが運動療法をする際に問題になるのが、適度な運動の強さとはどの程度かということです。

<図6>のように、運動の効果は運動の強さが強いほど大きくなります。例えばオリンピック選手は、記録を伸ばすために自分の最大能力のところでトレーニングをします。ところが、強い運動をすると、骨折や腰痛などの傷害の発生率が高くなり、心臓への負担も増えます。強い運動をすればするほど健康になるわけではないのです。

心臓病の患者さんの運動療法の目的は、記録を伸ばすことではなくて、健康を維持することですから、最大能力の40~60%の強さの運動が適切とされています。

図6 心臓病患者にとって適度な運度の強さとは?
図6:心臓病患者にとって適度な運度の強さとは?

10.運動療法を安全・効果的にするための「運動処方」

運動療法を安全に、しかも効果的に行うために、その患者さんに最も適した運動のやり方を決めることを「運動処方」と呼びます<表3>。運動処方の内容として、運動の種類、強さ、時間、頻度が指示されます。

まず運動の種類は、心臓病の場合、さっさと歩く早足歩き、自転車こぎ、体操などが勧められます。軽い水泳やゴルフも注意深くやれば可能です。

運動の強さは最大能力の40~60%が目標ですが、その目安として運動中の心拍数、トレーニング心拍数を用います。トレーニング心拍数は運動負荷試験の結果に基づいて決定しますが、これには個人差がありますので、担当の先生に尋ねていただくのがよいと思います。

適切な運動の強さのもう一つの目安は、自覚症状です。自分で「ややきつい」と感じる強さ、「軽く息がはずむ」とか「軽く汗ばむ」といった程度の強さが適切とされています。

運動の時間は、30分から60分が適切です。これは15分を2回とか、30分を2回というように分割してもかまいません。また運動の頻度は、1週間に3回から7回が適切とされていますが、心臓病と糖尿病を併せ持っている患者さんは運動の回数を多めにし、心不全の場合は少なめにするのがよいでしょう。

表3 心臓病がある場合の運動処方
運動の種類

早足歩き(さっさと)、自転車こぎ、体操
(軽い水泳、ゴルフも可)

運動の強さ 1)最大能力の40~60%で運動する(目標心拍数)
2)「ややきつい」と感じる、軽く息がはずむ、軽く汗ばむ程度
運動時間 30~60分(15~30分×2回に分割してもよい)
頻度 週3~7回(糖尿病は週5~7回、心不全は週3~5回)
うち週1~3回は通院外来リハビリに参加する

11.心臓リハビリで大切なこと

心臓リハビリテーションをする際に、よく知っていてほしい大切なことが4点あります。それを<表4>にまとめました。

1)運動療法を安全に行うこと:運動をするときは無理をせず、疲れや異常を感じたら休んでください。過剰な運動は健康に有害なことがあります。


2)運動療法を確実に正しい方法で行うこと:

指示された適切な運動の強さや時間を守ってください。運動が軽すぎたり少なすぎたりすると十分な効果が期待できません。

3)運動だけでなく、食事療法や禁煙も合わせて実行すること:運動療法だけでは効果が不十分ですし、食事療法や禁煙を実行しないと、せっかくの運動療法の良い効果が消えてしまいます。

4)長く継続すること:運動療法・食事療法・禁煙は、長く継続しないと良い効果が出ません。「継続は力なり」です。無理をせず長く続けましょう。

表4 心臓リハビリで大切なこと
1) 運動療法を安全に行う

→無理しないこと、やりすぎは有害。
2) 運動療法を確実に行う

→適切な強さと時間。軽すぎると無効。
3) 食事療法と禁煙も一緒に実行する

→運動だけでは効果不十分。
4) 長く継続する

→継続は力なり。

12.「在宅運動療法10か条」・・・安全で効果的な運動療法のために

在宅の運動療法は安全で、かつ効果的に行わなければなりません。絶対に心がけてほしい点や原則を「注意10か条」<表5>にまとめました。

心臓リハビリテーションの第3期は、生涯を通じて続ける「維持期」であることは前に説明しました。維持期の課題は運動療法と二次予防(再発予防)です。在宅運動療法が安全、効果的にできるかどうかは、日々「注意10か条」を確実に守れるかどうか、それが継続できるかどうかにかかっています。心臓リハビリでは「継続は力なり」であることを忘れないでください。

表5 在宅運動療法の注意10か条
1)運動の種類は早足歩行(さっさと歩く) 、自転車こぎ、体操など。
2)運動の強さは最大能力の40~60%で行う。
3)1回の運動時間は30~60分。
4)運動回数は週3~7回、週2回以下では不足。
5)自己検脈を覚えて、適切な脈拍で運動する。
6)60歳を過ぎたらジャンプは禁物、ジョギングより歩行が安全。
7)必ず準備運動(ウォームアップ) 、整理運動(クールダウン) を。
8)食直後や起床直後の運動は避け、1時間以上空けてから。
9)夏は脱水に注意し水分補給を。冬は防寒を心がける。
10)前日の疲れが残っていたり、体調不良なら無理せず休む。

キーワードは
(1)安全に (2)有効に (3)長く継続!
「運動処方」に従って動きましょう

イラスト:「運動処方」に従って動きましょう

 

最終更新日 2014年03月12日

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