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心臓|循環器病あれこれ|

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
文章・図表・イラスト等の転載・引用のご相談は循環器病研究振興財団までご連絡ください。

[47]ペースメーカーと植え込み型除細動器

-脈が遅くなる病気、速くなる病気の治療-

元国立循環器病研究センター
心臓血管内科
医長 栗田 隆志

頼れる「心臓の調律師」

イラスト:頼れる「心臓の調律師」

もくじ

はじめに

私たち人間の心臓は1日に約10万回もの拍動を繰り返しています。人生80年としますと、なんと30億回という天文学的な数字に達します。これだけの数、心臓は絶え間なく収縮と弛緩を繰り返しているわけですから、生涯を通じて一糸乱れず心臓の正常なリズム(調律)を保つことは、まさに至難の業と言えるでしょう。

心臓が力強く収縮するためには、心臓の細胞が電気的に活動(興奮)する必要があります。興奮を指示する信号は、最初に心房の一部(洞、または洞結節)でつくられ、刺激伝導系と呼ばれる電線のようなシステムを通じて心房から心室へと伝えられます。この時、興奮の信号が流れる方向は必ず一方通行でなくてはなりません。<図1>の「正常な調律」をご覧ください。

脈が病的に遅くなる「徐脈」の主な原因は、興奮信号を発する機能が悪くなる場合(洞不全症候群)と、電気の通り(伝導)が悪くなる場合(伝導障害)に分けられます。伝導障害は多くの場合、心房と心室の連結部(房室結節)で生じ、それは房室ブロックと呼ばれています。<図1>に「洞不全症候群」と、「伝導障害」の起こる仕組みを示しました。このような徐脈に対する最も有効で確実な方法は、ペースメーカーを取り付ける、つまりペースメーカー植え込み術です。

反対に、脈が病的に速くなる「頻脈」は多くの場合、心臓の中で興奮信号(電気)の流れがぐるぐる回転することで発生します(図1の「頻脈性不整脈」をご覧ください)。このような異常な回路が心室にできてしまうと、心室頻拍、心室細動といった生命に関わる頻脈となります。心室頻拍、心室細動などの危険な頻脈を治療する切り札として期待されているのが、植え込み型除細動器(ICD)です。

ここでは医用電子工学の進歩で目覚ましい発展をとげているペースメーカーと植え込み型除細動器による治療について、その仕組みと治療の実際を解説しましょう。

図1
図1:正常な調律、房室ブロック、洞不全症候群、頻脈性不整脈

ペースメーカー

1) 適応となる病気

すでに説明しましたように、正常な興奮信号がつくられなくなる「洞不全症候群」と、その伝導が悪くなる「伝導障害」が主な適応になります。いずれも脈拍数の上昇が不十分となりますので、労作時の息切れ、全身倦怠感などが生じます。徐脈が長時間続くと心不全の症状(足がはれる、肺に水がたまるなど)が出現します。もし、心臓が5秒以上止まると、失神することもあります。ただし、夜中など睡眠中にしか徐脈が発生しない患者さんでは、症状にまったく気づかない場合もあります。

ペースメーカーは病気に陥った洞結節や刺激伝導系の機能を補い、必要に応じた脈拍数を維持する働きを持っています。ですから、ペースメーカーは「心臓の調律師」とも呼ばれています。

2) ペースメーカーの仕組みと種類

ペースメーカーは<図2>のように、本体とリード(導線)の組み合わせで成り立っています。リードは心房か、心室のいずれか、またはその両方に挿入され、心臓から出たシグナル(信号)をペースメーカー本体に、本体からの電気刺激を心臓へと伝えます。本体は心臓の状態に応じてどのような治療をすべきかを判断し、必要ならば電気パルスを心臓へ送り、心臓を刺激します。つまり本体には心臓の興奮を感知する機能とペーシング(歩調をとる)する機能が備わっています。

本体は、だ円形をしており、大きさは種類によって異なりますが、おおむね直径4~5cm、厚さ5~6mmくらいです<図3>。実物大の模型がありますので、植え込む予定の方は主治医に見せてもらうとよいでしょう。

次に各ペースメーカーの種類とそれぞれの特徴を説明します<図4>。

(1)AAIペースメーカー

心房に1本リードが入ります。洞不全症候群でかつ、刺激伝導系に異常のない患者さんが適応となります。

(2)VVIペースメーカー

心室に1本リードが入ります。徐脈がまれにしか発生しない場合や、心房細動に合併した徐脈(房室ブロック)に適応されます。

(3)VDDペースメーカー

心室に1本リードが入ります。VVIと違い、心房の活動を感知することができます。洞結節の機能が正常な房室ブロックの患者さんが適応となります。

(4)DDDペースメーカー

心房と心室にそれぞれリードが入ります。ほとんどすべての徐脈に対応できますが、リードを2本入れる必要があります。

図2 ペースメーカーの基本的な機能

図2:ペースメーカーの基本的な機能

図3 ペースメーカー(左)と植え込み型除細動器

図3:ペースメーカー(左)と植え込み型除細動器

体の動きや体温などを感知して心拍数を変動

イラスト:体の動きや体温などを感知して心拍数を変動

図4 ペースメーカーの種類
図4:ペースメーカーの種類

3) ペースメーカーの特徴的機能

(1)レート応答機能

洞不全症候群では、運動をした時など心拍数(レート)が増えなければならないのに十分に反応できない、つまり心拍数の上昇が不良になります。

以前のペースメーカーは、常に同じレートでペーシングするだけで、寝ても覚めても同じ心拍数でしたが、最近は身体の動きや体温などを感知して必要に応じて心拍数を変動させるようになりました。洞結節の働きを補う機能です。ほとんどのペースメーカーに共通して備わっています。

(2)その他の機能

最近のペースメーカーは他にもさまざまな機能を持っています。例えば「ペーシングの出力を自動でコントロールして寿命を長持ちさせる」「頻拍の発生に応じてペーシングモード(様式)を変更する」「作動状況や頻拍発生時の記録を詳細に保存する」などです。このような多彩な機能を持ったペースメーカーにより、患者さんは一層快適な生活が送れるようになりました。

主治医は多種類のペースメーカーの中からそれぞれの患者さんに最も適したものを選び、必要に応じて細かいプログラムを組んでくれます。

(3)心臓再同期療法

最近は徐脈だけでなく、心不全を治療する特殊なペースメーカーも開発されています。「心臓再同期療法」または「両室ペーシング」と言われ、心室収縮のパターンがいびつになった(特に左心室の収縮するタイミングが遅くなった)心不全患者さんに有効です。

普通のペースメーカーと同様の方法で植え込むことができますが、多くの場合、3本のリード線(心房に1本、心室に2本)が必要になります。このペースメーカーによって労作時の息切れなどの心不全の症状が改善し、日常生活の質が向上すると言われています。

4) 植え込み術の実際

ペースメーカーのリード(導線)は普通、胸の鎖骨の近くにある鎖骨下静脈(多くは利き腕の反対側)を通して、レントゲンで透視しながら心臓の右心房、または右心室へ挿入します。本体は鎖骨の下方に作られた「皮下ポケット」に埋め込みます<図5上>。

切開による傷は一つで、長さは4~6cmです。また、心臓手術(開胸術)と同時にペースメーカーを植え込まれる患者さんや成長が著しい時期のお子さんでは、ペースメーカーリードは心臓の外側に縫い付けられます。従って、本体は上腹部に埋め込みます<図5下>。

静脈を経てペースメーカーを植え込む経静脈的植え込み術の場合、局所麻酔をして行います。歯医者さんで受ける麻酔と同じで、手術中、意識ははっきりしています。麻酔が効いていれば、耐え難いような痛みは感じません。

手術時間は1~3時間、術後の安静は2時間程度ですので、遅くとも当日の夜にはベッドから離れて歩くことができます。ただし、肩よりも上まで植え込み側の腕を上げるバンザイのような姿勢は、植え込み後1~2か月間は控えた方がよいでしょう。

術後の合併症は出血、感染、気胸(肺が縮む)、心タンポナーデ(心臓周囲への出血)、リードの移動などがありますが、重篤なものはまれです。

図5上 静脈を経由して植え込まれたペースメーカー
図5上:静脈を経由して植え込まれたペースメーカー
心房と心室の内側2か所にリードが入っている。本体は鎖骨の下の皮下ポケットに埋め込まれている
図5下 7歳の女の子に植え込まれたペースメーカー
図5下:7歳の女の子に植え込まれたペースメーカー
2本のリードは直接心臓に縫い付けられている。本体は腹部の皮下ポケットに埋め込まれている

5) 植え込み後の生活

植え込み後は、基本的に通常とまったく変わらない生活を送れます。ただし、<表1>に示すように電磁波への暴露を避ける必要があり、多少の注意が必要です。また、鉄棒など腕に強い加重がかかるスポーツはできません。

退院後は、ペースメーカーの作動状況を調べるために3~6か月ごとに、ペースメーカー外来を受診する必要があります。検査は専用のプログラマー(検査装置)を使って行われ、5~10分で終わります。検査中は、軽い動悸がすることがありますが、苦痛はありません。

電池の寿命は機種によって、あるいは患者さんの状態によって違いがあり、4~8年程度です。電池の残量はプログラマーに表示されます。電池が減ると本体の入れ換えが必要になりますが、「交換指標」が表示されても、すぐにはペースメーカーの作動に支障は出ません。多くの場合、植え換え術では本体だけが交換され、リードはそのまま使われますので、最初の手術よりも簡単にすみます。

ペースメーカー植え込み後の生活、電磁波干渉などについての詳細は主治医にお尋ねいただくか、次のホームページに問い合わせてください。

ペースメーカー協議会 http://www.pacemakercom.co.jp/

表1 各種機器のペースメーカーに対する影響
表1:各種機器のペースメーカーに対する影響

植え込み型除細動器(Implantable Cardioverter Defibrillator : ICD)

1) 適応となる病気とのその症状

植え込み型除細動器という名前は長いので、以下、英語の頭文字をとった「ICD」を代わりに使います。ICDは心室頻拍や心室細動といった命に関わる重症な不整脈を経験した患者さん、あるいはその可能性が高いと予測される患者さんが適応となります。これらの不整脈にはICDの他に薬物やカテーテル焼灼術などもありますが、ICDが最も効果的と言われています。

心室頻拍では動悸、冷や汗、吐き気・嘔吐などが生じます。心拍数の速い心室頻拍や心室細動では失神することがあり、最悪の場合は突然死に発展します。

2) ICDの機能

ICDは常に心拍数を監視し、心拍数があらかじめ設定された基準を上回ると、状況に応じた治療が自動的に選択され、行われます。ペースメーカーとしての機能も備わっており、脈が遅い時も作動します。

この装置によって不整脈を止める方法には、「ペーシング」と「電気ショック」の二つがあります<図6>。ペーシングは、不整脈より少し速く心臓を人工的に刺激する方法です。動悸の症状は少し強くなりますが、これで不整脈が止まってくれれば痛みは感じません。しかし、速い心室頻拍や心室細動はペーシングでは止まらないことがあり、その場合は電気ショックが必要になります。

電気ショックを行う場合、電池を充電して放出するまで10秒近くかかりますので、状況によってはこの間に失神することもあります。

また、ICDは頻拍に対して治療を行った時の情報を記憶し、その際の心電図も保存します。従って、主治医は行われた診断や治療が的確であったかどうかをこれらの情報に基づいて正確に判断できますので、今後の治療を考えるうえで大変、役立ちます<図7>。

ICDには、心室のみにリードが挿入される「VVI型ICD」と、心房と心室の両方に挿入される「DDD型ICD」があります。VVI型ICDを選択する場合の基準は(1)徐脈の合併がない(2)心機能が比較的良好である(3)患者さんの年齢が若い(4)心室細動が主な適応疾患である、などです。DDD型ICDを選択する時の基準は(1)徐脈の合併がある(2)心房に由来する頻拍がある(3)心機能が低下している(4)比較的ゆっくりした心室頻拍が生じる、などです。それぞれ特徴を持った機種ですから、患者さんの状態によっていずれかが選ばれます。

図6 ICDによる心室頻拍・心室細動の停止
図6:ICDによる心室頻拍・心室細動の停止
図7 ICDに記憶されたデータの解析
図7:ICDに記憶されたデータの解析

3) 植え込み術の実際

ICDの植え込み術は基本的にペースメーカーと同じです。しかし、ICDの本体はペースメーカーよりも数倍大きいため、切開の傷や皮下につくるポケットも大きくならざるを得ません<図3>。

また、ICD植え込み術のペースメーカーと大きく異なる点は「除細動効果の確認」です。最も重症で止まりにくい心室細動がICDによってきちんと停止させられるかどうかを手術中に確かめる作業(誘発テスト)が必須となります。時にICDからのショックでは心室細動が止まらないことがありますので、これに備えてICDの10倍近いエネルギーが出力できる「外付けの除細動器」をあらかじめ装着しておきます。無論、この誘発テストは全身麻酔下で行われますから、患者さんの苦痛はありません。

植え込みに伴う合併症のほとんどはペースメーカーに共通していますが、心室細動を誘発することに伴うリスクが若干高くなります。

4) ICD植え込み後

退院後、ICD患者さんの約半数で頻拍が発生し、ICDによる治療が行われます。また、治療が必要でない状況でICDが作動してしまうこと(誤作動)も10~20%程度で生じると言われています。もし意識がある状態で電気ショックが発生しますと、患者さんは痛みを感じます。特に誤作動時のショックによる症状は強いと言われています。ショック時の痛みの程度には、かなりの個人差がありますが、多くの患者さんは胸をけられたようだとおっしゃいます。

電気ショックは、速い心室頻拍や心室細動など特に危険な不整脈を止め、患者さんの命を救うためには避けられない治療法です。ショックは苦痛を伴うかも知れませんが、これは言い換えると「ICDが命を救ってくれた」ということです<図8>。

患者さんにとってこの治療法を受け入れるのは、大変勇気のいることだと思います。私たち医療従事者は病気を克服しようとしている患者さんにできる限りのサポートをし、植え込み後の生活が少しでも快適になるよう、細心の治療を心がけております。

外来では3~6か月ごとにICDの作動状況をチェックする必要があります。寿命はショックなどの頻度によってかなり影響を受けますが、おおむね4~5年といったところです。原則として、2回目以降の手術では本体のみの交換ですみますが、心室細動の誘発テストは必須です。

生活上の注意は、ペースメーカーと同様、強い電磁波環境を避けることが大切です。また、ICDを入れていても、車やバイクの運転などにはある程度の制限がつくことはやむを得ません。状況によっては運転が許可される場合もありますので、主治医によく相談してください。しかし、タクシー、バス、トラックなどの運転を生業とすることは残念ながら不可能です。運転中に万一発作が生じた場合、多くの人を巻き込む重大な事故に発展する恐れがあるからです。

図8 ICDの作動
図8:ICDの作動

体外式自動除細動器(Automated External Defibrillator : AED)

わが国では年間約3万人の方が突然死していると言われています。その原因の多くは予測不可能な心室頻拍、心室細動によるものと考えられており、大きな社会的問題となっています。高円宮様のご不幸な出来事はその最たるものでしょう。

病院の外で突然死にかかわる事態が発生した場合、救急隊が現場に到着するまでにどんなに急いでも10分近くかかります。心室細動では除細動が1分遅れるごとに救命率が10%低下すると言われていますので、10分という時間経過はほぼ決定的です。病院の外で心室細動が生じますと、患者さんの救命率は数%に過ぎません。

そこで、除細動までの時間を短縮させる突破口として期待されているのがAED<図9>です。駅や空港ターミナル、大規模なスタジアム、フィットネスクラブなど多くの場所に配置し、通りかかった一般の市民による除細動を行えば救命率は画期的に上昇します。ランチボックス程度の大きさですから、走って運べます。音声ガイドに従ってパッチ電極を張り付け、1~3個のボタンを押すだけです。慣れていれば電子レンジよりも簡単な操作で、心肺蘇生法より安全に行えます。

AEDの診断能力は大変高く、間違って作動させて人を傷つけることはありません。厚生労働省は2004年7月に、非医療従事者(一般市民)によるAEDの使用を認めました。関西国際空港でもAEDが30か所に配置されます。今後はその配備と市民による認知を広め、一人でも多くの人がAEDの恩恵に浴することができるよう活動することが求められています。もし、AEDを含めた救命救急処置にご興味がある方がいらっしゃいましたら、下記にご連絡ください。

NPO法人日本ACLS協会
〒273-8588 船橋市金杉1-21-1
船橋市立医療センター救命救急センター内日本ACLS協会事務局
ホームページアドレス:http://acls.jp

図9 体外式自動除細動器が使われているところ
図9:体外式自動除細動器が使われているところ

 

最終更新日 2014年03月12日

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