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[29] 心臓の検査で何がわかる?

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
文章・図表・イラスト等の転載・引用のご相談は循環器病研究振興財団までご連絡ください。

2001年11月1日 発行

元国立循環器病研究センター
副院長 宮武 邦夫
心臓血管内科医長 中谷 敏

心臓検査の基本は心電図から

イラスト:心臓検査の基本は心電図から

もくじ

はじめに

わたしたちの心臓は、常にリズミカルに動いています。このリズミカルな動きのことを「拍動」といい、心臓はこの拍動によって全身に血液を送り出す働きをしています。

成人では1分間に約70回拍動しています。1回の拍動で約70~80ミリリットルの血液を送り出すことができますので、わたくしたちの心臓は1分間に約5リットルの血液を送り出していることになります。これをひとときも休まず、一生にわたって続けるのですから、心臓はなんと大変な仕事をこなしているのかと、改めて驚かれるはずです。

人の一生を支える強靭な心臓もトラブルを起こすことがあり、心臓が正常に機能しているか、どこに異常が起きているかなどをチェックする、いろいろな検査法が開発されてきました。このページでは心臓の主な検査法と、それによって何がわかるかを中心に解説したいと思います。

心電図でわかる不整脈

心臓のリズミカルな動きをつかさどっているのは実は電気です。心臓は筋肉でできた臓器で、その筋肉にかすかな電気が流れて興奮し、その結果、拍動が起こります。こうした心臓の電気的活動をみるのが心電図で、<図1>に測定した心電図を示しました。

心電図は両手足と胸にいくつかの電極をつけ、そこから心臓で発生する微小な電気を取り出して記録する検査です。痛みを伴うことはありませんし、記録するのにそれほど長い時間はかかりません。
この検査でどんなことがわかるのでしょうか。

まず、心臓がリズミカルに動いているかどうかがわかりますから、心臓のリズムが乱れる「不整脈」の診断には欠かせません。「心筋梗塞」や「狭心症発作」のときには、心臓の筋肉(心筋)の電気的活動にも異常が生じるので、<図2>のように心電図にも異常が出てきます。さらに、なんらかの心臓疾患のために心筋に障害が起きている場合も異常心電図が認められます。

このように心電図は心臓の検査の中で最も基本的なものです。

図1 正常心電図
(12誘導)
図1:正常心電図
図2 急性心筋梗塞の心電図
(胸部誘導)
図2:急性心筋梗塞の心電図

運動負荷心電図とは

狭心症の患者さんはいつも心電図で異常がみられるのでなく、狭心症の発作が起こって初めて心電図に異常が出てきますので、発作が起きていないときの心電図では、正常な人と区別がつきません。

しかし、この発作は運動によって誘発されますから、運動後に心電図を記録して異常が認められれば、狭心症と診断されます。

運動負荷心電図は、運動をしてもらって測定する検査で、いろいろな方法があります。一番簡単なのはマスター法と呼ばれ、二段の階段を決められた時間、決められた速度で上がったり、下りたりして心臓に負担をかける方法です。簡便ですが、運動の負荷量が十分でないなどの欠点があります。

この点を補う方法として、固定してある自転車をこぐ自転車エルゴメーターや、ベルトの上を歩くトレッドミルテストがあります。こちらは心臓にかける負担も大きくなり、狭心症の診断能力も高くなります。

24時間記録できるホルター心電図

不整脈の中には終日続いているものもあれば、一日のうち数分だけ出るようなものもあります。心電図をとっているときに、たまたま不整脈が出れば診断がつくのですが、なかなかそういう機会には恵まれません。

そうした一過性の不整脈を診断するには24時間中、心電図を記録するホルター心電図検査が最適です。この検査では胸にいくつかの電極を張り付け、そこから得られる心電図をウオークマンより少し大きいくらいの小型の機械に記憶させます<図3>。

小さな記録装置の中でカセットテープがゆっくり回っており、24時間にわたり心電図を記録することができます。最近はカセットテープの代わりにICカードを用いる機種も出てきました。ホルター心電図は体に張り付ける電極の数が少ないので、普通の心電図ほどの精度はありませんが、不整脈の診断には十分です。狭心症発作時の特有の心電図変化も記録できます。

記録装置はベルトで腰回りにつけたり、肩からつるしたりして使いますので少し面倒です。しかし、一日の心電図を全部見ることができますから、不整脈の診療には欠かせない検査です。

図3 ホルター心電図の記録装置
図3:ホルター心電図の記録装置

動きが見られる心臓超音波検査

絶えず働いている心臓の動きを実際にみることができる検査は、そう多くはありません。心臓超音波検査は、音波の中でも人間の耳には聞こえないくらいの高い周波数の超音波を利用して心臓の動きを見ることができる数少ない検査です。その超音波は人体に無害で、痛みを伴うこともありません。

超音波検査の仕組みは、魚群探知器を想像していただければ理解しやすいと思います。この探知器は超音波を海中に向かって発射し、魚にあたってはね返ってきた超音波を受信することによって魚がどれくらいの深さにいるかをキャッチします。

心臓でも同じように、胸の上にあてた探触子と呼ばれる小型の装置から超音波を出し、心臓の筋肉や弁にあたってはね返ってきた超音波を受信することで、それらの場所を知ることができ、さらに、動いている心臓の像をつくることもできるのです。

血球に当たり、はね返ってきた超音波の情報で、血球の速度、つまり血液の流れる速度を測定することができますし、流れる速度や方向に応じて色分けして表示することもできます。この方法をカラードプラ法といいます。

超音波検査でわかること

この検査で何がわかるのか、もう少し詳しく説明しましょう。

(1)心臓の大きさ、形、心臓の壁の厚さ、動き方がわかる

心臓病の中には心臓のサイズが大きくなる場合、小さい場合などいろいろありますが、一般的には心臓が大きくなったときは心臓が弱っていることが多く、大きさを評価することは大変、重要です。

心臓が弱ってくると、心臓の形もしだいにボールのように丸くなってくることも知られています。また、心臓の壁の厚さを調べることで、心肥大があるかどうかもわかるのです。

心臓の動き方が調べられるのも大切な点で、心筋梗塞の場合は梗塞が起こり、収縮運動をしない心筋の場所や範囲がわかりますし<図4>、さらに心臓全体の機能の良しあしも数字で客観的に評価することができます。

図4
下壁心筋梗塞の心エコー左室短軸像。心臓の下壁(矢印)の輝度が高くなり、収縮していないことがわかります。
図4の1:拡張期
拡張期
図4の2:収縮期
収縮期

(2)血液の流れる速度、方向もわかる

血液の流れる速度や方向は、弁疾患の診断になくてはならない情報です。心臓は四つの小部屋からなり、正常な心臓では<図5>のように、この部屋の中を血液が一方向に流れています。血液が一方向に流れるように部屋と部屋の間に四つの弁がついているのです。

もし弁がうまく機能しなくなって血流が逆流する場合は「弁逆流」、弁が開きにくくなって血液がスムーズに流れなくなったときは 「弁狭窄」と診断します。このように弁がうまく機能しない病気を 「弁膜症」と呼んでいます。

超音波検査では血液の流れる速度や方向がわかりますから、弁逆流の場合は、弁のところで逆向きに流れる血流を検出することによって診断がつきます<図6>。弁狭窄のときは、開きにくくなった弁のところで加速され、速くなった血液の速度を測ることによって診断できます。こうした弁疾患の重症度も評価することが可能です。

さらに、心房中隔欠損症や心室中隔欠損症などのように、生まれつき心臓の壁に孔があいているような病気の場合も、そこを通る異常な血流を検出することによって診断できます。

図5 心臓内部の構成と働き

上、下大静脈から心臓に戻ってきた血液は右房、右室、肺動脈を経て肺に流れ、そこで酸素を受けとる。酸素を受けとった血液は肺静脈(図には示していない)を介して左房に流入し、そこから左室、大動脈を経て全身に送られる

図5:心臓内部の構成と働き
図6 僧坊弁逆流のカラードプラ像

収縮期に左室から左房に逆流する青色血流が生じているのがわかる(矢印)

図6:僧坊弁逆流のカラードプラ像

胸部CT検査

CTは英語のcomputed tomography の略で、コンピューターを用いて作る断層写真という意味です。筒のようなところに体を入れて、周りから照射されるエックス線で体の輪切り像を作りますから、痛みを伴うことはありませんし、危険なこともありません。

心臓は拍動しているため短時間で撮影しないとボケてしまいます。そこで、電子ビームCT<図7>という超高速撮影ができるCTが使われてきましたが、最近ではMDCT(multi detector-rowCT、ヘリカルCTとも言います)と呼ばれる一般的な装置でも検査が可能となりました。

CTを使った心臓の検査では、心臓に栄養を与える冠状動脈や心臓の筋肉の形態的な異常を調べたり、心臓の中に血栓(血の塊)ができていないかをチェックしたりします。これらの検査では、造影剤を使用することで詳しく調べることができます。

図7 電子ビームCT
図7:電子ビームCT

胸部MRI検査

CTのほか、最近ではMRIという検査をよくお聞きになっているはずです。その仕組みを説明しましょう。MRIのMは磁石(マグネット)のことです。文字通り磁石の性質を利用して脳、肝臓、心臓といったいろいろな臓器に含まれる水分と脂肪の信号をとらえて画像化する検査です<図8>。

もう少し詳しくいうと、水と脂肪の分子に含まれるプロトン(水素原子核)は極めて小さな磁石だと考えられています。この小さな磁石が回転して発する電磁波(いわゆる電波)の信号をとらえて行う検査です。

患者さんは<図8>のように、筒のような形の大きな磁石の中に入り検査を受けます。用いる電磁波の周波数(数十メガヘルツ)はラジオで使われている周波数の帯域の中にあります。

MRIは安全性の高い検査法ですが、強力な磁力を使いますので、患者さんの体に、手術や外傷(けが)の処置のため金属片が取り付けられていたり、埋め込まれていたりする場合は、画像が乱れたり、危険が生じたりすることがあります。ですから、心臓ペースメーカーが埋め込まれている患者さんにはこの検査はできません。

図8 MRIの装置

患者さんは検査台の上に寝る。心臓の検査では胸または背中に心電図電極を付け、胸と背中にコイル(電磁波を受診するアンテナ)を置く。それから患者さんは筒の形をした大きな磁石の中に入る

図8:MRIの装置

MRIでどんなことがわかるか

この検査ではどの方向の断面の撮像も可能です。またいろいろな撮像法があり、検査目的に応じて使い分けることができるのも大きな特徴です。

心臓の動きをみるためには、シネMRIという方法を用います。この方法では多くの場合、患者さんに10~15秒、息を止めてもらい、その間に心電図と連動させて一秒当たり20~30コマの画像をつくり、モニター画面で動画として心臓の動きを観察します。<図9>がシネMRIでとらえた画像です。この方法で心機能(心室の容積や収縮率など)を調べることができます。

MRIには心臓の形態や心筋の性質をみるための撮像法もあります。例えば、心筋の厚さの異常<図10>や、心筋梗塞や炎症による心筋の変化(浮腫)<図11>、さらに心筋の中に脂肪が沈着しているかどうかも確かめることができます。

このほか、先天性心奇形(生まれつきの心臓の形の異常)の診断や血流測定ができますし、冠動脈の奇形・狭窄や、心膜(心臓を取り囲んで心臓の働きを円滑にするための膜)の病気について有用な情報が得られる場合もあります。また造影剤を使えば、心筋の血流の状態や、心筋細胞の障害があるかどうかについても情報が得られます。

図9 シネMRIによる心機能評価

これは正常の例。左図は心室が一番大きく広がったとき(拡張末期)で、右は心室が一番狭くなったとき(収縮末期)。左に比べて右の図では心室(RV、LV)が狭くなると同時に壁が厚くなっている。このような写真を少しずつ時間をずらして20枚ぐらい撮り、それを動画として観察しながら心臓の動きを診断する

図9:シネMRIによる心機能評価
図10 肥大型心筋症

この例では心室中隔(*印)が左心室(LV)の他の部分(矢頭)に比べて著しく肥厚している

図10:肥大型心筋症
図11 心筋梗塞

この例では左心室(LV)の前壁から中隔にかけての白く見える部分が心筋梗塞(矢印)。心臓の周囲でほとんど真っ白に見える部分は脂肪

図11:心筋梗塞

心臓カテーテル検査

カテーテルは細いチューブのことです。これを大腿の付け根か、腕または手首などの動脈か静脈から体の中に入れ、血管に沿って先端を心臓までもってきて心臓の中の小部屋や血管を撮影したり、心臓の中の圧を測ったりする検査を心臓カテーテル検査といいます。検査は局所麻酔で行います。

チューブは柔らかい素材でできていて、<図12>のように用途に応じていろいろな形、種類があります。例えば、心臓に栄養を与えている冠状動脈の撮影に使うカテーテルは、普通は直径約1.5ミリ、長さ110センチです。

さてカテーテル検査でどんなことがわかるのでしょうか。

まず、血管の形、走行、狭いところ、詰まっているところの有無や、その程度がわかります。狭心症や心筋梗塞は冠状動脈が狭くなったり、詰まったりする病気ですが、こうした病気が疑われるときには、カテーテルを通じて冠状動脈内に造影剤を注入し、それを写真にとり、どの血管にどの程度の病変があるかを調べます<図13>。

心臓の心室という小部屋に造影剤を注入することによって、心室の大きさや動き方を知ることができます。弁逆流の場合は、心臓の小部屋の中に造影剤を入れ、もれてくる造影剤を写真にとることで、逆流の場所や、その程度を確かめることができますし、弁狭窄のときは、弁を介して心臓の小部屋間にどの程度の圧の差があるかをカテーテルで測り、評価します。

このように心臓カテーテル検査は、多くの心臓病の診断や治療法を決める際に重要な情報を与えてくれる極めて大切な検査法です。

図12 カテーテルのいろいろ
図12:カテーテルのいろいろ
図13 狭心症の方の右冠動脈造影像

矢印の部分が狭窄しているのがわかる

図13:狭心症の方の右冠動脈造影像

どの病気にどんな検査が必要か

心臓の検査にさまざまな方法があることがおわかりいただけたと思います。すでに説明したことと一部重複する部分もありますが、皆さんにより深く理解していただくために、代表的な心臓疾患について、どんな心臓検査をして、何を調べていくかをまとめます。

(1)狭心症

心臓自身に酸素や栄養を与えている冠状動脈は、その名のとおり血管が心臓の表面を冠のように走っており、大きなものだけで3本あります。狭心症は冠状動脈の血管が動脈硬化のために内腔が狭くなってしまう病気です。

典型的な狭心症では、安静時に症状はありません。体を動かすなどしたときに、心臓が要求しているだけの血液を、狭くなった冠状動脈が十分に送れなくなったときに初めて胸痛という形で症状が出てきます。これが狭心発作です。

診断するには患者さんに運動をしてもらい、発作が出たときの心電図を見る必要があり、運動負荷心電図はそのために行うのです。例えば、朝、通勤の途中、坂道を歩いているときに発作が出るというような患者さんには、ホルター心電図で発作時の心電図を記録して診断します。

しかし、心電図だけで狭心症の治療方針まで決めるのは困難です。なぜなら、心電図だけでは冠状動脈のどの部分が、どれくらい狭くなっているかまではわからないからです。これを明らかにする検査が心臓カテーテル検査です。この検査で初めて狭くなった冠状動脈がどれかをはっきりさせて、重症度に応じた治療方針が決定できるのです。

(2)心筋梗塞

狭心症と違い、心筋梗塞では冠状動脈が詰まって流れなくなっています。この動脈が急に詰まって間もない急性心筋梗塞の場合を説明しましょう。

冠状動脈が詰まったその瞬間から、詰まった部分から下流の心筋には血液が流れず、患者さんは激しい胸痛に襲われます。

病院に来られてから、まず行う検査はやはり心電図検査で<図2>のような典型的な変化があれば、心筋梗塞の診断はほぼつきます。詰まった動脈が栄養を与えていた心筋は動かなくなってきます。これをベッドサイドでみるには心臓超音波検査が適しています。これで診断がつけば次は心臓カテーテル検査で、つまっている血管が判明し、同時に、詰まっている部分に再び血液が流れるように治療を始めることができます。

急性心筋梗塞では、緊急の検査が必要なのはいうまでもありません。

(3)弁膜症

最近、弁膜症の患者さんが減ってきたといわれています。抗生物質による治療が発達して弁膜症の原因の一つとされているリウマチ熱が昔に比べ減ってきたからです。その代わり、高齢化社会の到来に伴い、弁の加齢性変化である「大動脈弁狭窄症」が増えてきました。また僧帽弁の組織の一部が変性して起こる「僧帽弁閉鎖不全」は、どの年齢層にもみられる疾患です。

こうした弁膜症の診断に最も威力を発揮するのは超音波検査です。弁の動きを見ることができますから、弁の開き方がよくないとか、きっちり閉じないことなどがわかります。

この検査では弁膜症の重症度も診断できます。例えば、大動脈弁狭窄症では、左室と大動脈の間にある大動脈弁の開きが悪くなるために血液の流れがスムーズにいかず、弁の前後で圧差が出てきます。

もし圧差が大きければそこを流れる血液は速く流れるし、圧差が小さければ血液はゆっくり流れることになります。超音波検査では血液の速度を測ることができますし、流速から圧を推定する計算式も確立していますから、大動脈弁狭窄症の重症度がわかります。

この検査法ではカラードプラ法を用いて血液の流れに色を付けて表示することもできます。僧帽弁閉鎖不全に伴う逆流もカラードプラ法でみれば、まさに一目瞭然、しかも逆流血流の広がり具合から重症度もわかるのです。

急性心筋梗塞では胸に激痛が
イラスト:急性心筋梗塞では胸に激痛が

検査を受けるときには

心臓の検査のうち代表的なものを解説してきました。ひと口に心臓の検査といってもそれぞれ特徴があり、それぞれ目的も異なることがおわかりいただけたと思います。心臓の検査を受けられる患者さんは少なくありません。医師、技師、看護婦(士)の説明をよく聞いて、検査の目的、意義をしっかり納得して受けていただければと思います。

その理解にこのページが役立つのを願っています。

※ 胸部CT検査、胸部MRI検査の項は、国立循環器病センター放射線科・田中良一、今北哲、山田直明の各先生にご執筆いただきました。ありがとうございました。

最終更新日 2014年03月12日

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