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[13] 心臓リハビリのQ&A

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
文章・図表・イラスト等の転載・引用のご相談は循環器病研究振興財団までご連絡ください。

国立循環器病研究センター
循環器病リハビリテーション部長
後藤 葉一

「心臓リハビリ」は社会復帰と再発予防に不可欠

イラスト:さっそくリハビリの大切さ、知りましょう

もくじ

はじめに

骨折治療のため長らくギプスをはめていた足で歩くには、歩行訓練というリハビリテーションが必要です。心臓病の場合も同じで、社会復帰のために、心臓リハビリテーション、略して「心臓リハビリ」が必要になります。

心臓リハビリとは、心臓病の患者さんが1日も早く快適な社会生活や家庭生活に戻り、さらに再発を予防することをめざして、運動療法・食事療法・健康相談などの活動を行うことです。医師・看護婦・理学療法士(健康運動指導士)・検査技師などがチームを組んで、患者さんの心臓リハビリを援助しています。

現在、わが国では、心筋梗塞や狭心症の発症日、もしくは心臓手術の日から6か月間は、心臓リハビリが健康保険で認められています。

私どものセンターでは、普通3か月間(希望者は6か月間)の「心臓リハビリプログラム」を行っています。皆さんからよく受ける質問を中心に、心臓リハビリのご紹介をしましょう。

キーワードとなる「冠動脈、動脈硬化、コレステロール、HDLコレステロール、狭心症、風船治療、心筋梗塞、心不全」については、巻末に用語解説を載せました。この用語解説も参考にしながら読み進んでください。

なぜリハビリが必要か

Q. 心臓リハビリをすると、何か良いことがありますか?

  1. はい。運動療法を中心としたリハビリをすることで、運動能力が高まり、日常の生活でも楽に活動できるようになります。退院後、どの程度まで運動してよいかを決めるのにも役立ちます。
    さらに、リハビリによって、総コレステロールが低下し、善玉コレステロールが増えること、狭心症発作や心不全症状が軽くなること、また心臓病の再発や突然死が減ることもわかっています<図1>。

図1 リハビリの効能

◎運動能力が高まり、日常活動も楽に
◎総コレステロールが減り、善玉コレステロールが増加
◎狭心症発作や心不全症状が軽くなる
◎心臓病の再発や突然死が減る

図1:無理ないリハビリで健康に

Q. 心臓手術や風船治療(PTCA)が成功した後でも、心臓リハビリは必要でしょうか。

  1. そうです。多くの患者さんは手術前から療養生活を続けていたため、運動能力が低下しています。だから、支障なく安全に社会生活が送れるよう、低下した運動能力を高め、身体を慣れさせておく必要があります。
    また、狭心症や心筋梗塞は冠動脈の動脈硬化が原因になって起こる病気ですから、動脈硬化の進行をくい止め、再発を予防するには、たとえ手術や風船治療が成功していても、運動療法や食事療法によるリハビリを続けることが必要です。運動不足の人は心筋梗塞になりやすいということが、これまでの調査でわかっています<図2>。

図2 身体活動量と心筋梗塞発症の危険度

ハーバード大学男子卒業生6~10年追跡調査の
初回心筋梗塞年齢補正発症率
(Paffenbarger RS et al,Am J Epidemiol
1978 ; 108 : 161-175より引用)

図2:心筋梗塞発症数と身体活動度指数のグラフ
※運動量が少ない人(500Kcal/週未満)は中等度の運動量(2000Kcal/週)の人に比べて、心筋梗塞発症率が約2倍高い

Q. 心臓が悪いのに運動をしても、危険はありませんか?

  1. もちろん危険がないわけではありません。とくに心臓病の患者さんが自分勝手に強すぎる運動や仕事をするのは大変危険です。しかし、逆に怖がって安静にしすぎるのも、健康上よくないのです。
    医師や看護婦がいるところで、心電図や血圧の状態をチェックしてもらいながら運動療法をすれば、危険な心臓発作や事故は防ぐことができます。

Q. 入院中の心臓リハビリはどうすればよいのでしょう。

  1. 他の検査に支障がない限り、毎日(場合により週3回)、心臓リハビリ部門(リハビリテーション棟4・5階)に来て、運動をしたり講義を受けたりしてもらいます<写真>。
    そのためには主治医から心臓リハビリ部門へ、依頼書を送っていただく必要があります。その後、心臓リハビリ部門の担当医が患者さんに詳しい説明をします。

Q. 退院後の心臓リハビリはどうすればよいのですか?

  1. 退院した後は週2~3回、リハビリに通院していただきます。それが無理な場合は、週1回の通院リハビリにし、他の日は自宅で運動療法をしてもらいます。自宅での運動療法のやり方は、心臓リハビリの担当医が退院時に説明します。

国立循環器病センターでのリハビリ(運動療法)

写真:リハビリ(運動療法)の様子
リーダーの指導で運動

リハビリプログラムの実際

Q. 実際に行う心臓リハビリプログラムの内容を教えて下さい。

  1. 心臓リハビリ部門に来てもらい、医師・看護婦・健康運動指導士の指導を受けながら、歩行・自転車こぎ・エアロビクス体操などを1回30~90分、週3~5回行い、これを3か月間、続けていただきます。
    開始時と3か月後に運動負荷(運動能力・心電図)検査や血液検査を行い、その結果にもとづいて担当医が適切な運動の強さや日常生活で必要な注意について説明します。

Q. 強い運動で身体を鍛える方が、心臓が丈夫になるのでしょうか。

  1. 強すぎる運動は心臓病の患者さんにとっては有害です。日々の生活を快適に送り、心臓病の再発を防ぐには、強い運動でなく、中くらいの強さの運動が望ましいといわれています。
    とくに心臓の働きが低い場合は、軽い運動で十分です。

Q. 私はもともと運動が苦手です。それでも心臓リハビリは必要でしょうか。

  1. 運動は苦手だとか、嫌いだと思っている人でも、ほかの患者さんと一緒に心臓リハビリを始めてみると意外に楽しいものです。
    上手にやる必要もありませんし、つらい思いをする必要もありません。自分の健康を守るために、自分に合ったペースでやればよいのです。

Q. 75歳以上の高齢者でも心臓リハビリは必要ですか?

  1. お年寄りは、安静を中心にした療養生活によって全身の活動能力が低下しやすく、これを放置すると寝たきりになる場合があります。
    ですから日常生活が快適にすごせるよう、心臓リハビリによって全身の活動能力を回復させておくことが必要です。このためには軽い運動で十分です。

Q. 自宅が遠方で心臓リハビリに通うことができないときは、どうすればよいのでしょう?

  1. 遠くにお住まいで通院できない場合は、入院中だけ心臓リハビリ部門でリハビリをしてもらい、退院後は自宅で在宅運動療法をしていただきます。在宅運動療法をどう行うかは、退院時に心臓リハビリの担当医が説明します。

Q. 仕事が忙しくて心臓リハビリに通うことができないときは?

  1. 退院後、仕事に復帰するまでの間は、できるだけ心臓リハビリに通院してもらい、職場に復帰後は在宅運動療法をしていただきます。
    運動療法のためにまとまった時間がとれない場合は、通勤時間や昼休みなどを利用して、日常生活の中でできるだけ運動を心がけるようにしていただきます。

Q. 運動療法をすれば、たばこを続けていても、その害をなくすことができますか?

  1. いいえ。喫煙によって、せっかくの運動の効果が帳消しになってしまいます。ですから心臓病の人は禁煙することが絶対に必要です。心臓病でなくても、たばこは有害なのですから<図3>。
図3 禁煙励行
図3:禁煙励行
喫煙はリハビリを帳消しにする

運動療法で期待できる効果

Q. 運動療法でコレステロールは下がりますか。

  1. その通りです。総コレステロール、悪玉(LDL)コレステロール、中性脂肪が低下し、善玉(HDL)コレステロールが増加します。

Q. 運動療法で高血圧は改善するのでしょうか?

  1. はい。適度な運動療法によって、最高(収縮期)血圧が約10(mmHg)、最低(拡張期)血圧が約5(mmHg)下がるといわれています。

Q. 運動療法で糖尿病は治りますか?

  1. 糖尿病が完全に治ってしまうわけではありませんが、運動療法を続けることによって、血糖値が改善し、インスリンや血糖降下薬の量を減らすことができます。

Q. 運動療法をしても体重が減らないときは、どうすればよいでしょう。

  1. 運動療法だけで体重を減らすのは容易ではありません。例えば、40分間の早足歩行で消費するエネルギーは約160キロカロリー(バナナ1本分)にすぎません。
    ですから、体重を減らすには、運動療法と食事療法を組み合わせて続けることが必要です。

運動メニューの留意点

Q. どんな運動を、どの程度すればよいのでしょう。

  1. 歩行、軽いジョギング、自転車、水泳、エアロビクスなどのように、全身をリズミカルに動かす運動がよいとされています。
    これらの運動は、身体が酸素を取り込みながら行うことができるので「有酸素運動」(エアロビック・エクササイズ)と呼ばれています<図4>。
    逆に、重量挙げ、懸垂(けんすい)、腕立て伏せ、短距離全力疾走などは、酸素を取り込まずに行われるので「無酸素運動」と呼ばれ、心臓に負担をかけるので好ましくありません<図5>。
    また高齢の方は、ジャンプ、縄跳び、ランニングなど衝撃を伴う運動によって、腰、ひざ、足首の骨や関節に傷害(ねんざ、骨折など)が起こりやすいので、これらの運動は避ける方がよいでしょう。
    運動の時間は1回30~60分、回数は週3~5回程度が理想的です。運動の強さは、自分の能力の5~7割程度、つまり、軽く汗ばむ程度、「ややきつい」と感じる程度がよいとされています。
    具体的な運動処方は個人の条件によって異なりますので、担当医師に尋ねてください。

図4 おすすめの“有酸素運動”

図4の1:おすすめの“有酸素運動”歩行
歩行
図4の2:&おすすめの“有酸素運動”自転車走行
自転車走行
図4の3:おすすめの“有酸素運動”軽いジョギング
軽いジョギング
図4の4:おすすめの“有酸素運動”水泳
水泳

Q. 運動をするときに、注意しなくてはならない点は?

  1. 自分の体調と環境条件(場所、気候、服装など)に注意してください。具体的にいいますと
  1. 体調がすぐれない日や天気が悪い日は休む
  2. 暑いときは脱水や熱射病に注意して水分補給を心がける
  3. 寒いときは防寒を十分にする
  4. 運動前の準備体操や運動後の整理体操を必ず行う

-などです。
また、登山や旅行など、ふだんと異なる環境では無理をしないことが大切です。

Q. 早朝に運動すると心臓発作が起こりやすいと聞きましたが、本当ですか? 早朝しか運動する時間がないときは、どうすればよいのでしょう。

  1. 狭心症や心筋梗塞など発作が朝に起こりやすいのは事実です。しかし、朝、運動療法をすると心筋梗塞になりやすいというわけではありません。
    朝に運動療法をする場合は、起床して1時間以上たってから、準備運動を十分にして、それから行うよう心がけてください。

図5 “無酸素運動”は禁物!

図5の1:“無酸素運動”は禁物!重量挙げ
重量挙げ
図5の2:“無酸素運動”は禁物!懸垂
懸垂
図5の3:“無酸素運動”は禁物!短距離疾走
短距離疾走
図5の4:“無酸素運動”は禁物!腕立て伏せ
腕立て伏せ

こんなときは運動を控えたい

Q. 運動をしない方がよいのは、どんな場合でしょう?

  1. 体調が悪いとき、つまり、発熱があるとき、関節や筋肉が痛いとき、足にむくみがあるとき、息苦しさ・動悸・めまいなどを感じるとき、前日の疲労が残っているとき、さらに、天候(雨、風、気温など)が非常に悪いときなどは、運動療法は休んだ方がよいでしょう。

Q. 心臓病があっても、ゴルフができるようになりますか?

  1. ゴルフの運動量はそう大きくはありません。階段を上ることができる人なら、ほとんどの場合、プレーが可能です。
    しかし、遠方のゴルフ場へ早朝から出かけ、スコアを気にしながらやるゴルフはストレスを高めます。近くの平坦なゴルフ場でゆったりした気分で楽しんでください。
    ゴルフをしてよいかどうかは、念のため主治医に尋ねてください。

Q. 性生活はどうでしょう。

  1. 性行為は脈拍や血圧を上昇させ、心臓にはある程度負担になります。でも、階段を上れるような人なら、ほとんどの場合、可能です。
    ただし、男性の場合、男性上位の体位は腕立て伏せ運動になり、心臓に負担がかかりますので注意してください。心臓に負担をかけずに精神的満足が得られるよう、パートナーとよく相談してください。
    なお、狭心症や心筋梗塞でニトログリセリンを使用する可能性のある人は、バイアグラ(勃起障害治療薬)の使用は危険ですから、絶対に使わないでください<図6>。

図6 危ない!バイアグラ使用

図6:危ない!バイアグラ使用

いつまで続ける?心臓リハビリ

Q. いつまで心臓リハビリを続ければよいのですか?

  1. 社会復帰を目的とした心臓リハビリ(回復期リハビリ)は、1~3か月間が目安となります。しかし、心臓病再発予防を目的とした心臓リハビリ(維持期心臓リハビリ)は、生涯にわたって続けることが必要です。
    つまり、快適な社会生活を維持するためには、適度の運動療法と食事療法を続けることが必要です。
    心臓リハビリの目的と、どう行うかがおわかりいただけましたか。このリハビリは、患者さん自身が目的と方法を十分に理解し、「継続は力だ」と信じて、根気よく実行するかどうかにかかっています。
    心臓をいたわりながら適度に鍛え、無事、社会復帰を果たされることを願っています。

図7 無理のない運動療法で快適な日常生活を!

●猛暑や厳冬のとき、疲労が残っているときは避ける
●坂道や風に向かうときは心臓の負担になる
●食後の歩行は避け、1時間以上休んでから

図7:無理のない運動療法をしましょう

用語解説

冠動脈(冠状動脈)
大動脈の心臓に近い部分から左右に分かれて、王様の冠(かんむり)のように心臓を取り巻く2本の動脈。枝分かれして心臓表面から壁の中へもぐりこみ、心臓の筋肉に酸素や栄養分を供給します。
動脈硬化
動脈の壁にコレステロールなどの脂肪を含む物質が沈着し、血管の壁が厚くなったものです。このため血管の内径が狭くなり、血液の流れが悪くなります。心臓の冠動脈だけでなく、大動脈や脳動脈など全身の血管に発生します。
コレステロール
動物組織に含まれている脂肪様の物質です。血液中の総コレステロールの理想的な値は200(mg/dl)以下で、これを超えると冠動脈の動脈硬化が進み、狭心症や心筋梗塞になる危険性が高くなります。
血液中のコレステロールが高い場合には、食事療法や内服薬で治療する必要があります。食品では肉、バター、鶏卵、すじこ、たらこ、いか、レバーなどに多く含まれています。
HDLコレステロール
コレステロールには善玉(HDL)と悪玉(LDL)とがあり、悪玉のLDLコレステロールが多いと心筋梗塞の危険性が高くなりますが、逆に善玉のHDLコレステロールが多いと心筋梗塞の危険性は低くなります。悪玉を減らし、善玉を増やすには、食事でとる動物性脂肪を減らし、植物性脂肪を増やすことが大切です。また、善玉は運動療法によって増加します。
狭心症
心臓の筋肉が活動するために必要な血液が供給されず、心臓の筋肉が酸素不足になり、その結果、胸の痛みや圧迫感が生じる病気です。最も多い原因は、動脈硬化で冠動脈の内径が狭くなっている場合で、坂を上るときや重いものを持ったときに症状が出ます。また、安静時に冠動脈がけいれん(れん縮)し、血液の流れが悪くなり、症状が出現するタイプもあります。
狭心症の治療法には、内服薬、風船治療、バイパス手術があります。
風船治療(PTCA)
動脈硬化のために狭くなった血管の中に、カテーテルという細いビニール管の先端に付けた小さな風船(直径3ミリ程度)を入れ、風船を膨らませることによって血管を広げる方法。風船カテーテルは足の付け根か腕の動脈から針を刺して挿入し、治療が終われば引き抜きます。
最近では血管を確実に広げるため、ステントというコイル状の金属製器具を血管の内壁に留置することもあります。
心筋梗塞
冠動脈の中で血液が固まり、血管が詰まって血液の流れが止まってしまうために、激しい胸痛が起こり、心臓の筋肉の一部が死んでしまう病気です。重症の場合は生命にかかわります。ただちに入院し、治療を受ける必要があります。
心不全
全身へ血液を送り出すポンプである心臓の働きが低下した状態で、むくみや疲れやすさ、運動時に呼吸困難などの症状が出現します。原因には心筋梗塞、弁膜症、心筋症、高血圧などがあります。原因を調べ適切な治療を行う必要があります。

 

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