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心臓|循環器病あれこれ|

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
文章・図表・イラスト等の転載・引用のご相談は循環器病研究振興財団までご連絡ください。

[8]心筋症とはどんな病気?

国立循環器病研究センター
心臓血管内科部門
元医長 山岸 正和
元医長 安村 良男

-執筆協力-
研究所 室長 駒村 和雄

心臓を動かす筋肉(心筋)に発生する原因不明の障害
-これが心筋症です

イラスト:心臓を丈夫で長持ちさせるために

もくじ

はじめに

“人生80年時代”といわれるようになってから、かなりたちます。生を受けてから亡くなるまで、全身へ血液を送り出すポンプの役をひたむきにこなし続ける心臓の頑丈さには、目を見張るものがあります。

このポンプが“丈夫で長持ち”する秘密は、それ自体が筋肉でできていること、さらに、その筋肉を動かすエネルギー源の栄養が、心臓を取り囲んで走っている冠状動脈(冠動脈)の血液から直接、運び込まれる実に効率のよい仕組みになっていることにあります。

心臓のポンプ機能が落ちると

これほど頑丈なポンプも、冠状動脈に異常が起こり、心臓への酸素、栄養供給が不足するようになると、狭心症や心筋梗塞を引き起こし、心臓の筋肉(略して「心筋」といいます)に重大な障害が起こることになります。

障害を起す原因は、心筋への血液供給がうまくいかなくなることにある場合が多いのですが、血液供給の障害とは無関係に心筋自体が変化し、心筋が極端に厚くなったり、薄くなったりする場合もあります。

こうして生じた心筋の変化で心臓のポンプ機能が落ちると、動悸、息切れ、呼吸困難などの症状が出るようになります。

心筋自体の病気のうち、原因がはっきりしているもの(2次性)と、そうでないもの(特発性)がありますが、とくに原因不明の「特発性」の場合を「心筋症」と呼んでいます。

原因不明といっても、何か環境因子がからんでいるのではないか、と思われる方も少なくないはずです。これまでに、ウイルスに感染したり免疫能力に異常が起きたりした場合、さらにアルコール類の飲み過ぎが挙げられていますが、いずれも実証されているわけではなく、いまのところ環境因子との関係はわかっていません。

患者さんのうち約75%を男性が占めており、女性に比べ男性は3倍もかかりやすい心臓病といえます。<図1>

図1 心筋症患者は男が女より、ずっと多い
図1:心筋症患者の男女比

ここでは、みなさんに心筋症についてよく理解をしていただくよう、わかりやすく解説したいと思います。

まず下の表をご覧ください。心筋症の種類をまとめました。心筋が「厚くなる場合」、「薄くなる場合」、「硬くなる場合」があります。では、「厚くなる場合」から始めましょう。

心筋症の種類表

◆心筋が厚くなる場合
1)肥大型心筋症:非閉塞型、閉塞型
2)2次性心筋肥大:高血圧症、大動脈弁狭窄症、アミロイド症、ファブリー病など

◆心筋が薄くなる場合
1)拡張型心筋症
2)2次性心筋障害:心筋炎、 心サルコイド症など

◆心筋が硬くなる場合
拘束型心筋症

(その1)心筋が厚くなる場合

超音波エコー法によって心筋の厚さを測定してみますと、成人では約8~11ミリ・メートルが正常値です。

<写真1>に健康な人の超音波エコー像を示しました。この像から、心筋の働きは心臓全体にわたって比較的均一であることがわかります。

心筋が厚くなる代表格が、高血圧や大動脈弁狭窄に伴って起こる「心肥大」です。高い血圧や心臓内部の圧力に抵抗して血液を送り出さねばならないため、心筋は厚くなってくるのです。

しかし、この場合は心臓全体に均等に負担がかかりますから、心筋はまんべんなく厚くなります。

高血圧や大動脈弁狭窄のほか、心筋に異常な物質が沈着し、肥大をきたす場合もあります。

このように原因が明らかな場合は除き、原因が不明で心筋が肥大化する場合を「肥大型心筋症」と呼びます。

写真1 健常な心臓の超音波エコー像
写真1の1:健常な心臓の超音波エコー像(拡張期) 写真1の2:健常な心臓の超音波エコー像(収縮期)

心筋の厚さは8~11ミリ・メートルであり、拡張期(左)から収縮期(右)には全体として均一な壁の運動が見られる

このタイプの心筋症は、報告によって差がありますが、人口の0.17~1.1%、つまり100人から1,000人に1人の割で起きています。

患者さんの約8割は、20~50歳の働き盛りに発症しており、5年生存率は約95%です。半数の患者さんでは、家族にも同じ心筋症の人がいて、遺伝的要因が関係していると考えられるようになりました。

実際、心筋の収縮に大切な役目を果たしている心筋たんぱく質の異常が、7種類確かめられています。

肥大型心筋症にみられる肥大は普通、肥大した部分が限られており、心臓内部の血液の流れが妨げられる場合もあります。血液の流れが妨げられているかどうかで、「非閉塞型」と「閉塞型」に分類されています。

肥大型心筋症の「非閉塞型」と「閉塞型」、さらに、後で説明する心筋が薄くなる「拡張型心筋症」とを<図2>に示しましたから、こちらも参考にしてください。

図2 健常な心臓と心筋症の心臓
図2:健常な心臓と心筋症の心臓
心筋の肥大や菲薄化の明らかな原因が特定されない場合、心筋症と診断される
(1)非閉塞型肥大型心筋症

難しそうな病名ですが、心筋に異常な肥大が生じていても、心臓内の血液の流れには障害がない、つまり「閉塞」されていないタイプの心筋症です。この場合、心室中隔部(左心室と右心室の隔壁にあたる部分)や側壁部に肥大が生じることが多く、超音波エコー法で観察すると、心筋が非対照的に厚くなっているのがよくわかります。

また、心臓の先端部だけに肥大が認められる場合もあり、これはわが国で多くみられます。

<写真2>は非閉塞型の肥大型心筋症の超音波エコー像です。

心筋肥大が心臓全体にわたっている場合、すでに説明した高血圧に伴う肥大との区別が大変、難しくなります。

非閉塞型の多くは、症状が軽いため、健康診断の時の心電図異常や、胸部レントゲン検査で心臓陰影が拡大していることなどから、発見されることがしばしばです。

写真2 肥大型心筋症の超音波エコー像
写真2:肥大型心筋症の超音波エコー像
左心室の壁が著しく厚くなります。この例では最大35ミリ・メートルまで厚くなっている
(2)閉塞型肥大型心筋症

心筋の肥大が心臓の内部に突き出すように生じているため、心臓内部での血液の流れが妨げられ、「閉塞」されるタイプです。

肥大部分は左心室の中央部付近か、左心室から大動脈への出口付近で、血液の流れがどれほど障害されているかの程度はさまざまです。極端な場合は心臓が送り出す血液量がかなり減って、脳への血液が不足し意識障害、さらに失神することもあります。

心筋が肥大した分、心筋の酸素消費量は増えますから、運動した時に狭心症に似た胸痛が起こることがあります。

治療するうえで問題となるのは、閉塞型の方で、注意深く経過を観察しなくてはなりません。

まれに肥大型心筋症から、次に説明します「拡張型心筋症」へ変化する場合もありますから、定期的に心臓の検査を受けることが大切です。

(その2)心臓が拡張する場合

心筋の収縮する力が落ち、結果として心臓が著しく拡張してしまうタイプが「拡張型心筋症」です。ちょうど何度もふくらませたゴム風船がたるむような状態ですから、多くの場合、心筋の厚さは大変薄くなります。

超音波エコー法で観察すると、<写真3>のように心臓全体に薄くなった心筋と、拡大した心臓内部とがよくわかります。

しかし、中には心筋の厚さは正常なのに、心筋の収縮が悪くなっている場合があります。心筋梗塞などで心筋が壊死した時も心筋が薄くなりますが、心筋梗塞では薄くなる部分が一部にとどまることが多いので区別がつきます。

ウイルスに感染して炎症(心筋炎)が起きた時も、同じように心筋の収縮力は低下しますが、多くの場合、時間がたつにつれ回復します。しかし、心筋炎から十分に回復しない段階では、拡張型心筋症と似た経過をたどることがあります。

拡張型心筋症で心筋の収縮力が弱くなってくると、心臓のポンプ機能が落ち、さまざまな障害が出てきます。運動時に息切れするように感じるのは最も多い初期症状で、進行すると安静時にも息切れや呼吸困難を感じるようになります。

まれに言語障害や片まひなど、脳梗塞症状や、手足の血管が詰まった場合の症状が出る場合がありますが、これは拡張した心臓内部でできた血の固まり(血栓)が、脳血管や全身の血管に詰まったためで、すぐに治療を受けなくてはなりません。

拡張型心筋症は、肥大型に比べはるかに少なく、人口1,000人から10万人に1人の割で起きています。

40歳前後でこの心臓病とわかる場合が多く、以前は5年生存率が約60%という難病でしたが、いまは薬剤療法の進歩で80%近くになっています。

肥大型では、家族にも患者さんがいる場合が半数あると説明しましたが、拡張型心筋症ではまれで、遺伝的な要素は少ないと思われます。

写真3 拡張型心筋症の超音波エコー像
写真3の1:拡張型心筋症の超音波エコー像(拡張期)
(A)
写真3の2:拡張型心筋症の超音波エコー像(収縮期)
(B)

心筋は薄くなり、心臓内部は著しく拡張する=写真3(A)また収縮期=写真3(B)には心筋の収縮が全体的に悪くなり(矢印)、ポンプとしての役割が低下する

(その3)心筋が硬くなる場合

これはやや特殊な心筋症で、診断が難しいタイプです。何かの原因で心筋が硬くなり、収縮する力は保たれているものの心筋の拡張がうまくいかず、その結果、全身へ血液を送り出すのが困難となります。

このタイプは一括して「拘束型心筋症」と呼ばれています。ほとんどの場合、原因の病気は特定できませんが、一部、原因がはっきりしている場合もあります。

例えば、アミロイド症という極めてまれな病気では、アミロイドと呼ばれる異常物質が心筋の中に蓄積するため、心筋が硬くなってしまい、心不全に陥ります。

また、全身性皮膚硬化症という病気では、なぜか心筋の周りに硬い繊維が蓄積して、拘束型の心筋症の原因になります。

心筋症はこうして見つかる

いろいろな症状があって受診し、見つかることが多いのですが、中にはまったく自覚症状がなく、たまたま健康診断で受けた心電図でわかることもあります。<図3、写真4>

肥大型心筋症では、運動時だけでなく、安静時でも動悸や息切れ感がよく起こり、時には狭心症を思わせるような胸痛を感じることもあります。すでに説明しましたように「閉塞型」では、血液を送り出す量が減って失神する場合があります。

図3 胸痛や息切れなどさまざまな症状から心筋症を見つける
図3:胸痛や息切れなどさまざまな症状から心筋症を見つける
写真4 心電図による検査
写真4:心電図による検査の様子

拡張型心筋症では運動時の息切れや呼吸困難が多いのですが、併発する不整脈のため動悸や失神を伴うこともあります。このタイプは、心臓にできた血栓による血管閉塞症状(塞栓現象と呼びます)を起こして見つかることもあり、要注意です。

拘束型心筋症では、心臓が硬くなっているので、全身から戻ってきた血液がスムーズに心臓へ流れ込まなくなり、息切れ感、呼吸困難、全身のうっ血症状が主に出てきます。

心電図(12誘導心電図、24時間心電図)では、心筋の肥大や厚くなった特有の状態のほかに、不整脈がしばしば認められます。

この検査の次に行う超音波エコー検査が重要で、心筋の厚さ、心臓がどれだけ拡大しているか、心臓内の血流の異常などが観察できますから、かなり精度の高い診断ができます。この検査は多くの場合、外来通院中に行います。<写真5>

ラジオアイソトープ(放射性同位元素)を用いる心筋シンチグラムは、心筋の障害の状態をつかむうえで、大変、重要な検査です。<写真6>

心臓の働きが低下してくると全身に影響がおよびますから、体全体のバランスをみるため運動をしてもらって調べる運動負荷検査は、治療法を決めたり、治療効果を判定したりするのに役立ちます。

心筋症が強く疑われる場合には、診断と障害の程度を詳しく調べるため、入院して心臓カテーテル検査を受けてもらいます。この時、心筋の一部を採取(生検)して、その細胞組織をよく調べ、最終的に診断します。

写真5 超音波エコー検査
写真5:超音波エコーの様子
写真6 ラジオアイソトープによる心筋シンチグラム検査
写真6:ラジオアイソトープによる心筋シンチグラム検査の様子

有効な治療法

肥大型心筋症と診断されると、多くの場合、心筋を守るため「ベータ遮断剤」や「カルシウム拮抗剤」を使います。閉塞型では、閉塞状態を改善するほかの薬剤を併用することもあります。こうした薬剤を中心にした内科的治療法で、多くの場合、症状は軽減します。<図4>

閉塞型心筋症で内科的治療では効果が不十分な時、以前は肥大した心筋を切除するか、切開するかの手術をしていましたが、最近ではカテーテルを使う新しい治療法も開発されつつあります。<図4>

拡張型心筋症では心臓への負担を軽くするため、「ジギタリス剤」などの強心剤、利尿剤や血管拡張剤が用いられます。

血管拡張剤のうち、「アンギオテンシン変換酵素阻害剤」は拡張型心筋症の予後をよくするとの報告が出て、この心筋症によく使われるようになりました。

心筋症の予後

病気の重症度にもよりますが、心筋症とわかったら、適切な治療とともに無理のない日常生活を過ごすことが極めて大切です。一般的にいえば、肥大型心筋症に比べ拡張型心筋症の方がより厳重な日々の生活管理が必要になります。<図4>

図4 心筋症と診断されたら

図4の1:薬を飲むことになります
◎薬剤中心の内科的療法
図4の2:手術をすることも
◎時には切開手術、カテーテルを使う治療法も
図4の3:無理なく過ごしましょう
◎無理のない日常生活

拡張型心筋症への特殊な治療

このタイプの心筋症の治療は大きく分けて、心不全に対する治療(ジギタリス剤などの強心剤、利尿剤、血管拡張剤)、合併症のうち、とくに不整脈や塞栓症に対する治療(抗不整脈剤、抗凝血剤のワーファリンなど)、さらに心筋症の進行を少しでも防ぐ治療の3つが基本となります。

拡張型心筋症に伴う心不全の進行を遅らせる薬剤として、最近、「ベータ遮断剤」が注目されています。

この薬は本来、心臓の力を弱める作用があり、心不全には使われていませんでした。ところが、拡張型心筋症に伴う心不全にはかえって有効な場合があることがわかってきたのです。しかし、その使用にあたっては、心不全の状態を厳密にチェックし、投与初期には慎重な管理が必要です。

このタイプの心筋症の心筋に対して「成長ホルモン剤」が効果的な場合もあるという欧米の報告があります。ただし、新しい治療法ですから、投与には厳重な検査と管理が必要になります。

拡張型心筋症では、拡張した心筋の一部を切除する手術(バチスタ手術)や、補助人工心臓の装着、さらに、心臓移植など外科的治療の適応となる場合があります。こうした治療には心臓だけでなく、全身状態の詳細な評価が必要なのはいうまでもありません。

臓器移植法で新たな期待

心筋症、とくに拡張型心筋症と診断されると、以前は大量の薬に加え、日常生活の厳しい制限が当たり前でした。しかし、最近では内科的治療の進歩が目覚ましく、制限もかなり緩和され、患者さんのQOL(生活と生命の質)は改善されてきました。

臓器移植法の制定で、わが国でも心臓移植が法的にも認められました。脳死状態からの提供があれば、この手術が可能になり、拡張型心筋症の患者さんの生活状況も大きく変貌しようとしています。

 

最終更新日 2014年03月12日

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