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[98] 床ずれはどう防ぎ、どう手当てするか-褥瘡のケアで大切なこと-

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
文章・図表・イラスト等の転載・引用のご相談は循環器病研究振興財団までご連絡ください。

国立循環器病研究センター
皮膚・排泄ケア認定看護師 中屋 貴子

床ずれ対策しましょう


もくじ


ご家族や知り合いの方が長期間、病床にあって床ずれができ、その手当てが大変だったという体験をお持ちの方は少なくないと思います。

床ずれは、医学的には「褥瘡」(じょくそう)といいます。「褥」は「ふとん」のこと、「瘡」は「できもの」のことですから、長期間、寝込んでいるときに生じるできものという意味です。褥瘡と床ずれは、同義語ですが、この冊子は、一般の方に読んでいただくのを目的としていますので、特に必要でない限り、床ずれを使います。

入院患者さんのうち、床ずれができたのは、2002年の調査によると4.1%でしたが、最近は2~3%とかなり減ってきました。これは各病院で、患者さんの状況に応じて適切なマットレスが使用されるようになったこと、さらに効果的な栄養管理が行われようになったからだと考えられています。

在宅の患者さんにも病院と同じような対応ができれば、床ずれは防げるといえます。しかし、在宅ではなかなかそうはいかず、ご家族の経済状態や介護する人手に制約があります。こうした制約の中で、床ずれの予防、手当てのノウハウを効果的に活用する必要があります。

床ずれができると、さまざまな問題が生じてきますので、まず、つくらないことが何よりも大切です。

心筋梗塞、脳梗塞などの循環器病や、糖尿病などの患者さんは、手足の麻痺があって動けない、呼吸が苦しいので同じ姿勢で座っていなくてはならないといった状況があるので、むくみもできやすく、床ずれ発生のリスクはさらに高まります。

こうした場合でも、予防とケアをきちんとすれば、床ずれの発生は、半分以下に抑えられます。できてしまった床ずれに対しても、適切な治療をすれば治癒させることができます。それには、正しい知識をもつことが大原則です。

この冊子では、どのような場合にできやすいか、どうしたら予防できるのか、どう手当てするかなどについて解説します。

床ずれとは

マットや布団、車椅子などと接触する部分の皮膚が、長い時間、続けて圧迫されて血流が悪くなり、その結果、皮膚や皮下組織、筋肉などへ酸素や栄養が行きわたらなくなり、死んでしまった状態になることです。

できる仕組み

床ずれは、<図1>のように、さまざまな原因が複雑に絡み合って発生します。

汗や尿・便などで皮膚が汚れたり、ふやけたりしている状態や、寝たきりで尿失禁・便失禁が続いている(下痢が続いている時は特に注意)人も、床ずれができやすくなるので、注意が欠かせません。

[注]床ずれに関係する圧迫力、摩擦力、ずれ力

・圧迫力:ベッドに寝た状態や車椅子に座った状態で、体のベッドとの接触面や車椅子座面に自分の体重が加わること。

・摩擦力:ベッドの頭(ベッドの患者さんの頭の側)を上げる動作の時に、体の接触面に、動作の方向と逆方向の力が働くこと。

・ずれ力:ずれとは、ベッドのマットや布団で上体を起こすとき、体を動かすとき、体を拭くときなどに、皮膚表面と、皮膚の内部が互い違いにずれる「ずれ力」のことです。(「ずれ力」は、褥瘡分野の用語です。)
皮膚にずれが起きると、皮膚の中では筋肉から皮膚に向かう血管が引き伸ばされて細くなるため、皮膚への血行が悪くなり、床ずれを起こしやすくなります。

床ずれの見極めかた...どこを観察すればよいか?

床ずれの予防には、まず皮膚の状態を毎日、観察することです。できやすいのは、骨が突出していてベッドマット、布団、椅子などで圧迫されやすいところです。おむつ交換や着替え、入浴時に床ずれができやすい部分を必ず観察しましょう。皮膚が赤くなっていたら、その部分が圧迫されないよう体の向きを変えてみます。30分後、赤みが消えていたら床ずれではありません。赤みが消えない場合は床ずれの可能性がありますので、医師や看護師に相談しましょう。

毎日、体をよく見て、次のような変化がないかチェックします。

①発赤・紫斑 ②水ぶくれ・むくみ ③ただれ・潰瘍(かいよう) ④滲出液やにおい ⑤局所の熱や体温の変化

どこにできやすいか?

仰向けに寝ている場合は、おしりの中央にある骨の飛び出した部分(仙骨部)に最も多く、後頭部、肩甲骨、かかともできやすいところです。

ですから、これら骨の突出部が要注意です。

予防とケア

1)体圧分散ケア

圧迫力とずれ力ができるだけかからないにようにし、体の組織が傷んでしまう前に体位を変え、血の流れをよくすることが重要です。

圧迫を予防するには、患者さんに合った「体圧分散寝具(マットレス)」を選ぶことです。体がマットに沈み込み、骨突出部と接触する面積が広くなることで減圧・除圧ができます。このマットレスは、介護保険制度のサービスでレンタルがあります。

日本褥瘡学会では、床ずれの予防に「体圧分散マットレス」を、特に高齢者の床ずれ予防には「二層式エアマットレス」の使用を推奨しています。

ウレタンマットレスやエアマットレスなどは、厚さ7㎝以上のものを使用しましょう。マットレスにはいろいろな種類があり、患者さんが自分でどれだけ体位を変換できるか、ベッド上ではどんな体位をとっているかなどを考えて選択します。

座っているときは、「姿勢保持クッション」を使用します。

2)摩擦・ずれの予防

ベッドに寝ている時

①本人が体の向きを変えられない場合は、できるだけ二人の介助者で最低2~3時間ごとに体の向きを変えます。移動する場合には引きずらないで体を浮かせて行います。

②上半身を支えるベッド部分の傾きは<図2>のように30度以下に。

③ベッドの傾きが30度以下でも、ずり落ちないようベッドの足側を上げるか、膝下に枕を入れましょう
*おしりで体を支え、ベッドとの接触面積を広げることで除圧ができます。

④体を横に向け、パジャマの背中部分やシーツのしわを取り除きましょう。体の下に手を入れるときには「すべりやすい手袋」(ビニール袋など)を用いると皮膚のずれを予防でき、簡単に手が入ります。

<ワンポイントアドバイス>

一人の介護者で体の向きを変える場合

「すべりやすい手袋」をした両手を一緒に、おしりの骨突起部の両側(頭側と足側)に入れ、静かに引き寄せます。(持ち上げないこと!ゆっくり引き寄せるのがコツ)

体の向きを変えたあとパジャマやシーツのしわを伸ばします。体の下にできたパジャマやシーツのしわを伸ばそうと、患者さんが寝たままで引っ張ると摩擦・ずれの原因となります。

床ずれができたときは、その部分が下になる体位はできるだけとらないように。円座(えんざ)=写真=の使用は禁止です。円座で皮膚が引っ張られ、接触部の血行が悪くなるからです。

面積の広いふくらはぎの下に枕などを入れて、かかとにかかる圧を軽くしましょう。

車椅子などに座っているとき

座る姿勢は、横から見て、<図3>のように、股関節、膝関節、図3足関節の角度がいずれも90度になるよう保持するのが基本です。

90度で座ると、圧力はおしりの骨突出部分から、より広い面積のところ(大臀前部)へかかるので、床ずれができにくくなります。

長時間、座っている姿勢をとるのは避けましょう(車椅子は1時間まで)。おしりの血のめぐりが悪くなるのを予防するため、15分に1回おしりを浮かせます。自力でおしりを持ち上げられない場合、座るのは1時間以内に。

クッションを使用したポジショニング

床ずれの予防には、できるだけ広い面積で体重を支えて圧を分散させることが必要です。体にフィットしやすい素材の適切なクッションを選んで使いましょう。

ベッドと体の間にすき間ができると、体の狭い範囲で体を支えねばならず、その部分の筋肉が過度に緊張します。この過緊張状態が続くと筋肉が縮んでしまう要因となります。

3)スキンケア

正常な皮膚の機能

正常な皮膚は、角質細胞と呼ばれる細胞の層(角質層)が水分を保っていて、外から微生物、アレルギーの原因となるアレルゲンなど刺激物が侵入するのを防いでいます。この働きが低下すると、角質層から水分が蒸発して、皮膚は乾燥しドライスキンとなります。ドライスキンでは、皮膚表面のすき間が多いので刺激物などが侵入しやすく、皮膚障害が起こりやすくなります。

基本的スキンケア

乾燥した皮膚は、摩擦されるとはがれやすくなっていますので、清拭(せいしき)や入浴後に水をはじく撥水(はっすい)クリームを塗り、乾燥を予防します。

骨突起部のマッサージはしないこと。マサージ自体が皮膚に摩擦やずれを引き起こすからです。

尿・便失禁で皮膚が湿っている場合は、皮膚がふやけたり、皮膚炎が起きたりするのを予防するため、撥水性の高い軟膏・保湿クリームを塗ります。

心不全や脳梗塞による血流障害や低栄養、皮膚温が低下した状態が続くと、皮膚は薄くなり、乾燥しやすくなります。乾燥すると、かゆくなりやすく、その部分は、かいたり、摩擦による刺激で、傷つきやすくなります。保湿クリームを塗って乾燥を防ぎましょう。

また、重力によって、体の下側になる部分に浮腫(むくみ)が強くなり、床ずれができやすくなります。指の間、もものつけねなど皮膚が重なりあう部分は、ふやけやすく、皮膚障害が起こりやすくなります。皮膚を清潔に保ち、撥水性軟膏やクリームを使いましょう。

よく使われる軟膏、保湿クリーム、撥水クリームをまとめました。

4)排尿・排便のケア...スキントラブルを少なくする方法

(1)オムツを効果的に使いましょう

オムツ、尿取り、失禁パッドとも、体にあったものを使ってください。素材、吸収量をよく検討して選ぶこと。夜間は、吸収率の高いパッドを使いましょう。

オムツを多く使用すると、むれの原因になるだけでなく、摩擦やずれが生じやすくなり、体へかかる圧が高まります。水様便の場合は軟便吸収パッドがあります。

(2)オムツ交換を減らす方法

夜間などにオムツ交換を少なくするには、吸収力の高いオムツを使用することが重要です。また1回の尿量に合わせたオムツを選ぶことで、無駄な交換時間を減らせます。

(3)皮膚の清潔を保ち、汚れを防ぐ

オムツ交換時に、ぬるま湯(37度~38度)を使い、石鹸をよく泡立てて便や尿をよく洗い流します(1日に1、2回)。ナイロン手袋をした手で洗い、石鹸は残らないように十分に洗い流してください。便排泄後はティッシュ、ガーゼやタオルなどでこすらず、おしりの薬用清浄剤(サニーナ®など)でふき取ります。

できる限り、摩擦刺激が少ないようにすることで皮膚障害を予防できます。

当然のことですが、汚れを放置しておくと皮膚炎が起こりやすくなり、床ずれができやすくなります。

便失禁の場合は、便に含まれる消化酵素が皮膚に付着しないよう肛門の周囲に保護クリームをしっかり使い、皮膚を守りましょう。

皮膚がふやけるのを防ぐため、吸収力が強く、通気性がよいオムツを選びましょう。外からの刺激を防ぐため、軟膏やオイルを塗ります。

(4)真菌について

皮膚がふやけると、真菌(かび)が発生しやすくなります。

皮膚がふやけやすくなる環境を避け、尿・便をきれいに取り除くための洗浄と、撥水ケアが予防につながります。

もし赤くなって真菌(感染)が疑われるときは皮膚科を受診し、治療してください。

5)栄養管理

床ずれの多くは、皮膚が圧迫された状態が続き、皮膚の内面組織や筋肉に血液から十分な栄養が行き届かなくなることが原因の一つです。ですから皮膚への圧迫を減らす一方、皮膚・筋肉に常に栄養を与え、丈夫にしておくことが、床ずれの予防・治療につながります。

健康な皮膚・筋肉づくりには日々必要な栄養素を十分にとっていることがとても大切です。「食事で床ずれはよくなりますか?」と問われれば、答えは「イエス」です。

食事の注意点をまとめました。これを日々の献立ての参考にしてください。

きず(傷、創)の手当て

★詳しくは、医師や看護師の指示に従って処置して下さい。

1) 洗浄・消毒:床ずれにはシャワー浴をお勧めします。ぬるま湯での洗浄でも結構ですが、十分なお湯で洗い流すことが重要です。皮膚への刺激の少ない弱酸性石鹸をよく泡立て、周囲の皮膚を泡で洗います。

*消毒剤を使用する場合は、ぬるま湯か、生理食塩液で洗い流し、消毒剤を残さないことが重要です。

2) 外用薬:医師の指示にしたがって使用してください。

3) 浅い床ずれの場合:傷の面に外から力がかからないように保護し、適度に湿った状態を保って皮膚の再生を図ることが大切です。指で押しても消えない赤みは床ずれの初期です。傷の周囲が赤い、水ぶくれができている、ただれている場合は、発赤部に油脂性軟膏(白色ワセリンなど)を厚く塗って、半透明のフィルムドレッシング材を張り、保護することもあります。軟膏は撥水性の高いものを塗布することをお勧めします。(セキューラ®、リモイスバリア®、キャビロンクリーム®など)

4) 深い床ずれの場合:しみ出た液(滲出液)を吸収することが重要です。滲出液を吸う外用薬や、医師の指示で感染の治療のための外用薬を使用します。

*傷の周囲が赤くはれ、熱を持っている場合などは、入院治療を検討する必要があります。在宅での介護が可能かどうか、医師・看護師などへ相談しましょう。

床ずれに使用する薬剤

床ずれには、傷の状態に応じて薬が使われます。よく使われる薬について、効果や使い方のポイントを紹介します。

①精製白糖・ポピドンヨード:ユーパスタ軟膏=ヨードと白糖を含みます。細菌を減らし、傷を治す作用があります。傷を洗浄後、適量をガーゼにのばして張るか、直接患部に塗り、ガーゼで保護します。

②カデキソマー・ヨウ素:カデックス軟膏®=ヨードと水を吸収する成分を含みます。細菌を減らし、浸出液を吸収して傷をきれいにすることで治りを早めます。傷を洗浄後、患部に500円玉の厚さ(約2~3㎜)を目安に塗布します。

③スルファジアジン銀:ゲーベンクリーム®=銀を含む薬で、抗菌作用があります。この薬は水分を多く含むため、乾燥した傷によく使用されます。患部に2~3㎜の厚さに直接塗るか、ガーゼなどにのばして張ります。

④トラフェルミン、ヒト型塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF):フィブラストスプレー®=傷が治る過程で重要な血管新生作用や肉芽形成促進作用などがあります。通常、傷から約5㎝離して専用の噴霧器で噴きつけます。傷の最大径が6㎝以内の場合は5噴霧、6㎝以上の場合は薬が同一潰瘍面に5噴霧されるよう繰り返します。必ず指示された使用方法に従ってください。

アルプロシタジルアルファデクス:プロスタンディン軟膏®=傷が治る過程で重要な循環改善や肉芽形成、表皮形成促進作用などがあります。

介護保険制度によるサービス

在宅療養の場合、床ずれのある患者さんのお世話(生活援助)は、家族が中心となりますが、家族だけで行うのは大変なことです。介護が不十分では、床ずれや他の合併症が起きやすくなります。

利用できる公的制度には、介護保険、健康保険、身体障害者自立支援法 などがあります。患者さんの状態、年齢にあったサービスを利用しましょう。

床ずれの患者さんが利用する機会の多い介護保険について説明します。

介護保険制度は、お年寄りの介護を社会全体で支えあうことを目的とした社会保障制度です。原則として40歳以上の方は加入が法律で義務づけられています。介護保険の給付には「予防給付」と「介護給付」があり、どちらも市町村が行う「要支援・要介護認定」で支援が必要と認められた人に給付されます。

申請は居住地の市区町村役所の窓口で行います。地域包括支援センター、または居宅介護支援事業者などに代行してもらうこともできます。

在宅および施設のサービスの種類とその内容は、次の通りです。

*サービスの利用を希望される方は、お住まいの地域の担当窓口へ問い合わせて下さい。

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