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[67] これからの国立循環器病センター

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
文章・図表・イラスト等の転載・引用のご相談は循環器病研究振興財団までご連絡ください。

国立循環器病研究センター
名誉総長 北村 惣一郎

新たな取り組み 開発 治験 教育 救急 移植…

イラスト:早く見つけて治療を受けよう

もくじ

はじめに

心臓病、脳卒中など血液循環にかかわる多くの病気の総称が「循環器病」です。がん同様、日本人の死因の3分の1を占める循環器病は、高齢化社会が進行するにしたがい、ますます戦略的に取り組まねばならない重要な疾患となってきました。

循環器病の予防、研究、治療、人材育成にあたるナショナルセンターである国立循環器病センターは、昨年、創立30周年を迎えました。この30年間に順調に成果が上がってきた分野もあれば、想像した以上に困難で、なかなか進まない分野もあります。

このページでは、センターのこれまでの足取りを振り返る一方、現在、循環器病センターが置かれている状況を紹介し、これから何を目指して研究、診療、人材育成にあたるかを解説します。

いわば、21世紀の循環器病センターがこれからどんな目標を掲げ、どんな進路をとり、国民の皆さんの期待にどうこたえようとしているのかを知っていただくページです。センターで受診される方だけでなく、循環器病に関心を持つ多くの方々にも一読していただければ幸いです。

国立循環器病センターの独立行政法人化

この数年間で日本の医療界・病院のあり方が大きく変わってきました。私どものセンターもその例外ではありません。

行政改革の大きな柱として公務員削減が決定し、まず、国立大学が平成16年(2004年)4月から 独立行政法人*になりました。厚生労働省もこうした流れの中で検討を続け、国立循環器病センターは、国立大学より6年遅れて、平成22年(2010年)4月から独立行政法人となります。その結果、職員は国家公務員でなくなります。

この背景には、平成18年(2006年)6月30日の閣議決定があります。それは厚生労働省の5600人程度の公務員削減方針と、国立高度医療センターと呼ばれる、厚生労働省直轄の六つの「ナショナルセンター(NC)」の特別会計を平成21年(2009年)度で廃止するという決定です。平成19年度内にその実施に向け法律が制定されます。独立行政法人化すると病院は以前にも増して医療収益を確保し、収支バランスがマイナスにならないよう「自立」と「自律」が求められます。

*独立行政法人制度=国立循環器病センターの場合、厚生労働省の政策の実施部門のうち一定の事業を分離し、これを担当する機関(国立循環器病センター)に独立の法人格を与えて、業務の質の向上、活性化、効率性の向上、自律的な運営、透明性の向上を図ることを目的とする制度で通則法・個別法などの法律により運営されます。

研究開発型の病院へ

国立高度専門医療センターは、何を目指して独立行政法人化すべきなのか。この点について“国立高度専門医療センターの今後のあり方についての有識者会議報告書”(平成19年7月13日)では、ナショナルセンターの一つである当センターは「研究開発型の病院」という方向性が示されています。これを受けて名称も「独立行政法人国立循環器病研究センター」となる予定です。

これは、新しい薬や医療機器の「治験」(治療効果や薬物の効果・副作用を検定すること)や、研究所での研究成果を高度専門医療技術として開発する「トランスレーショナル(橋渡し)研究」を推進することです。言い換えると、大学病院に比べて、より患者さんに応用できる成果を出すことが求められています。

しかし、これは決して容易なことではありません。医療に応用しうる研究の種をまき、育てた後、新しい薬や新しい医療機器とするために産業界との連携が重要となります。こうした産学連携も今後のナショナルセンターに強く求められている点です。

一方、日本のどこでも、循環器病に対する良質の医療が受けられるよう、医師や看護師など医療者の教育や育成に努めること、また、医療界のみならず、社会の一般の人達に知ってもらうべき情報を発信することも引き続き当センターの使命です。

より高度で良質な医療を展開

独立行政法人化することによって純粋に国立だった病院がどう変わるのか、ご心配になられるかもしれません。

先に独立行政法人化した大学病院や旧国立病院では、患者さんへの対応や医療の質がよくなりこそすれ、悪くなったことはないように思います。

当センターも独立行政法人化を機会に一層、高度でかつ良質な医療を展開いたしますので、何らご心配に及ばないと確信しています。

本質的には、現在の体制を更に改善し、病院事業の自由度を上げることによって、発展的に進めてゆくことです。独立行政法人化のもたらす影響は、患者さんに対するよりは、職員に対する方が大きく、私どもの心構えがより重要なものといえます。

日本の医学・医療・生命科学の推進

独立行政法人化したナショナルセンターでは、生命科学研究や臨床研究の推進が最重要の事業課題として挙げられています。

その経費には、研究者が自らの研究の素晴らしさや成果をもとに競って申請し、研究費を獲得する「競争的研究資金」が充てられています。

この研究費は、総理大臣を長とする「総合科学技術会議」が生命科学研究費の使い方の方向性を決め、厚生労働省、文部科学省、経済産業省等でこの方向に沿って配分しています。

当センターの研究費も、そのほとんどがこれらの3省から競争的に獲得しているものです。当然のことですが、この研究費の管理には厳しいルールが定められ、厳しい罰則もあって、研究者の絶え間ない精進と切磋琢磨(せっさたくま)が求められています。

この研究成果を人の病気の治療に応用していくためには、製薬会社や医療機器企業との連携が必要であることはすでに述べました。とくに、研究所と企業の研究者の連携は研究成果の実用化に不可欠なものです。

事業の推進のために、当センターではすでに平成16年(2004年)4月に臨床研究センター、同年10月に先進医工学センターを併設しました。ここでも、研究者と企業が連携して成果を生み出すことが求められる一方、医の倫理と利益相反・債務相反(研究者にとっての責任と、企業の利益が相反する場合があること)の立場から両者の関係を監視する仕組みも設けられています。

「治験」に理解と協力を

研究所から生まれた新しい治療法を、人(患者さん)に役立つものとするために、医療技術の開発の最終段階として患者さんと協力して行う臨床研究があります。

このうち、最も重要なものが先に触れました「治験」です。治験は、薬や医療機器について倫理面・安全面・効果面から厳正に、そして公正に検討して進めます。

国立循環器病センターに置かれた倫理委員会(外部の委員を含む)はもちろん、遺伝子治療や人の細胞を用いる再生医療の臨床研究の場合には、厚生労働省の第三者委員会で治験や臨床応用試験に踏み切っていいかどうかを判定します。患者さん側の意見も踏まえ、十分に有効であり、安全性が高いと考えられる場合に、初めて許可されます。

一方、何よりも大切なことは、患者さんが治験の目的を正しく理解して、治験に参加してくださることです。患者さんと医療者・研究者の信頼関係は不可欠です。このステップがないと、新しい薬や新しい治療機器は生まれてこないのです。

テーラーメイド医療の時代に

高血圧・脂質異常症(以前は高脂血症と呼んだ)・糖尿病など生活習慣病や肥満を含めたメタボリックシンドロームが注目されています。この状態が進んで生じる心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞など循環器病に遺伝子が関係していることも最近わかってきました。

現代の人類はすべて同じ種(ホモサピエンス)に属した生物ですが、人種によって顔、体つきは違います。また、「家系」という言葉で、高血圧になりやすい、がんになりやすいなどといいますが、それは各個人の遺伝子の小さな変化によると考えられています。

この遺伝子の変化を個人ごとに見つけ、その変化に応じ、一人一人に、薬が最もよく効き、しかも、副作用が少ない治療をする「テーラーメイド(あつらえ服)医療」(「オーダーメイド医療」ともいいます)も行われるようになってきました。

例えていいますと、お酒が弱い人、強い人を遺伝子情報から見つけ出し、気持ちよく酔えて、悪酔いしない量や酒の種類を前もって決めておくようなものです。

このような研究を行うには皆様のご協力が必要です。遺伝子の研究は究極の個人情報を知ることにもつながりますので、その取り扱いは国の決めたやり方に従って、厳正に行われます。もちろん、皆様のご同意なしに行われることはありません。

こうして一人一人の遺伝子の特徴が明らかになり、将来、糖尿病になりやすいとわかれば、早いうちにカロリー摂取や体重をコントロールし、運動を勧めるようにすれば、本当の糖尿病になるのを未然に防げると信じられています。

目指すは循環器病の予防と超早期診断・治療

当然、これは病気の予防にもつながります。当センターでも循環器病予防検診部や生活習慣病の対応部門(高血圧、代謝)や研究所の遺伝子研究部門などが協力し合い、成果を上げています。

この方法が進めば、循環器病の予防、つまり病気になる人の数を減らすことが可能になるわけで、当センターの重要な研究課題です。

これらの研究を総称して「臨床研究」と呼んでいます。先に説明しました「治験」と同様に当センターの大きな使命であり、独立行政法人化する平成22年(2010年)以降は、ますます重要な任務として位置づけられることになります。

臨床研究は、医師・看護師など医療者と患者さんの間に、信頼がなければ進められません。私たちは、患者さんとの信頼関係を深めるため、心ある良質で高品質の医療を提供してまいります。

知的財産…発明、発見、開発の成果

新しい遺伝子の発見や、新しい薬の元となる物質の発見、新しい機能を持つ医療機器の開発はすべて「知的財産」(発明・発見)として特許が認められており、当センターでもその取得を進めています。

特許とは、当センター発の独自の知的財産を外国も含め他の人や他の企業がすぐに模倣することを禁じる法的な措置で、これを利用して産業・企業と連携を推進してゆきます。

<表>をご覧ください。当センター発の特許の数はこの2~3年で飛躍的に増加し、既に企業と連携して新しい医薬品・医療機器として実用化されNCVC(R)(NCVC:国立循環器病センターの英語略)として商標登録され現在、医療に貢献しているものがあります。

最近は、国際的な産学連携も勧められており、当センターを訪問した外国の政府機関や企業のメンバーは米国、ヨーロッパ、アジア諸国など多数に及びます。

独立行政法人化した国立循環器病センターは、こうした事業をさらに活発化し、日本を知的財産国家として推進する力となることが求められています。研究者も自分でベンチャー企業を起こす機会も与えられることになります。

表 知的財産権出願状況
表:知的財産権出願状況
(平成19年12月末現在)

人材育成の成果は内外に

国立循環器病センターの病院は日本の心臓・脳血管疾患治療の中心的存在であり、心臓手術や心臓移植の数を例にとっても日本一で、世界に広く知られた存在となっています。

当センターはこうした医療活動の中で、若い医師達を教育し、豊かな知識とすぐれた技術と医の心を持ち合わせた人材に育て、広く日本のみならず、外国にも輩出しています。

当センターで学び“専門医”となって、日本中の医療を支えている人は1300人以上、大学の医学部教授などリーダーシップをとっている人材の輩出は研究所も合わせ100人以上になります。<図1>と<図2>をご覧になれば、センターの人材育成への貢献ぶりがよくわかると思います。

さらに、<図3>のように、海外からの研修生も多く、主に国際交流機構(Japan International Cooperation Agency,JICA)を通して諸外国からの研究者や医師研修者を受け入れています。その数は900人を超え、国の数も90か国になろうとしています。

皆様も病院や研究所で海外の医師、研究者にお会いになる機会が多いと思いますが、諸外国から当センターに研修に来た人達です。このように国立循環器病センターは国際的な人材育成にも貢献しています。この使命は今後も変わることはありません。

図1 教育研修受け入れ分布(出身大学等一覧)

(クリックで拡大表示します)

図1:教育研修受け入れ分布(出身大学等一覧)
昭和53年~平成19年度の採用者数
図2 人材輩出分布(医師・研究者)

(クリックで拡大表示します)

図2:人材輩出分布(医師・研究者)
昭和53年~平成19年度
図3 外国人研修生受け入れ実績
図3:外国人研修生受け入れ実績
1986~2007.3.31

循環器病克服への10年戦略

平成18年(2006年)に私どもは「循環器病克服への10年戦略-いきいき健康長寿をめざして」を発表しました。

日本人の死因の3分の1を占めるがんの対策には、国が定めた10年計画、さらに平成19年(2007年)にはがん対策基本法など法律が整備されています。これに基づき、治療効果を高め、死亡率を下げるのを目標に、各地域の医療レベルを均一に高める(「均てん化」と呼ばれています)努力が始まっています。

一方、循環器系疾患については、このような法律的な整備がまだなされていません。しかし、循環器病は、がん同様、死因の3分の1を占め、2050年ごろに向かってますます高齢化する日本社会の最重要疾患となっています。

循環器病の基盤となる生活習慣病やそれの組み合わせによるメタボリックシンドロームについての対策は、国家事業として位置付けられ、多くの研究費が支出されています。

さらに、平成20年(2008年)度からは特定健診や指導も全国レベルで始まります。これは生活習慣病そのものの予防と、生活習慣病を心筋梗塞や脳梗塞といった深刻な病気に進行させないよう、早期に対応するための特定検診や指導をさします。

メタボリックシンドロームについては、新聞やテレビで報じられてきたので関心をお持ちの方も多いと思います。循環器病についての最新情報を広く知っていただくため、循環器病研究振興財団が刊行している「知っておきたい循環器病あれこれ」の58号でも詳しく説明されています。

私どもが提言した「循環器病克服への10年戦略」でも示したように

  1. 予防法のさらなる進歩と充実
  2. 侵襲(体への負担)の少ない安全安心な革新的診断・治療法の開発
  3. 最先端研究成果の標準医療への効果的応用
  4. 腕の良いハイレベル専門医療スタッフの養成
  5. 必要な医療情報を得やすいインフラの整備
  6. 切れ目のない長期的な病気管理体制

を掲げ、全力で取り組んで参ります。

今後の病院体制はどうなるのか

国立循環器病センターは、さらに高度に専門化して循環器病に対峙(たいじ)し、心筋梗塞や脳梗塞など「時間との戦い」といわれる急性疾患を超急性期(病気が始まって1~2時間)に診断、治療する体制を取ってゆきます。

このためには、救急患者さんの搬送システムの構築が大切で、大阪府や吹田市の救急隊や経済産業省や総務省とも連携し、患者さんが倒れたその場から高質な画像をセンターに送信する「モーバイルテレメトリーシステム」を開発しています。

このシステムではいち早く高質な動画像情報が得られるので、患者さんが病院に到着し次第、直ちにCTやMRIで確定診断を行う準備をすることができます。治療が1~2時間以内に開始できれば、後遺症を極端に少なくして治せます。

また、より広域に超急性期医療を展開するため「ドクターヘリ構想」にも参加、新築される病院では屋上にヘリポートを設置し、これらの治療計画がすみやかに実施できるようにします。

救急と災害時の拠点病院の役割も

こうした機動的な救急体制によって、当センターは救急患者さんのためだけでなく、吹田地域での大地震などの場合、周辺住民を救済する防災拠点病院にもなります。

私たちのセンターは大災害時の救急処置や人工透析などに十分に対応できる高度な力を持っています。独立行政法人化された後も、厚生労働大臣の発令で災害時の救急医療を担うべきことが法で定められます。

国立循環器病センターは日本の医療施策や研究に基づく知的国家づくりに貢献するだけでなく、地域の人達の健康を守り、また災害時には救済活動を行う使命を担っているのです。

ボランティアの皆さんとともに

平成17年(2005年)10月に当センターの近くに「マクドナルドハウス」が開設されました。このハウスは、遠隔地の子どもが治療を受ける場合の支援施設で、センターに入院中の子どもの保護者が宿泊したり、心臓病を持つ母親の出産時に宿泊したりする施設です。200人にのぼるボランティアの方々の努力によって支えられています。

入院中の子ども達がご家族とともに治療を受けやすい環境が整備されたわけで、Home Away Home(家から離れた家庭)といわれています。先日も戦火のイラクから心臓病の子ども達と家族を受け入れることができました。これもこのハウスのおかげでした。私たちが温かい医療を実践できるのも、当センター病院の内外で活動していただいている多くのボランティアの皆さんのご支援があってのことです。

この支援に力づけられて国立循環器病センターは、現在厳しい状況に置かれている周産期から小児の医療にも力を注いでゆきます。

これからの移植医療

国立循環器病センターで行っている移植医療には2種類があります。心臓移植など「臓器移植」と、同種心臓弁・血管移植など「組織移植」です。

日本の心臓移植は平成9年(1997年)10月に脳死臓器移植を認める「臓器の移植に関する法律」が発効してから、この10年間に48人が受けました。そのうち当センターでは22人(うち20人、91%が人工心臓で生き続けた)の患者さんに移植し、手術で亡くなった方はゼロで、大変良い結果が得られています。

臓器移植は、不幸にも脳死(脳のすべてが死んでしまい、息もしていない状態で、人工呼吸器によって他の臓器が生きている状態)に陥った人からの提供により成り立っている医療です。脳死からの臓器の提供には、生前に提供の意思表示をしておくという大変重い決心が必要となっています。

現在の医療では全脳死から回復することはありません。心臓が止まる心臓死までの期間に臓器移植の可能性があります。

生前の意思表示を求める点で「臓器の移植に関する法律」はわが国特有のもので、世界からは厳しすぎるといわれています。国内の提供が少なすぎるため、外国に出かけて移植を受けたい、という人が増え続けています。

子どもにも日本で心臓移植を

また、日本の法律では、15歳以下の脳死の人からの提供は認められていません。この年齢層の人達からは生前の意思の確認が法的に困難とされているからです。

ですから、心臓移植以外の方法では助からない日本の子ども達は、外国に行って外国人の脳死になった子どもさんからの提供を受けないと死んでしまう、あるいは死んでしまっても仕方がない、ということになっているのです。

当然の結果といえると思いますが、子供達の渡航移植は増え続けています。外国、特に米国では、日本で移植を行う場合の4倍近くの費用が必要です。日本の子供の命を外国に依存する状況は「日本は自国で解決しようとしていない」と外国から非難を受けています。

平成19年(2007年)、諸外国と同じ内容の法律にして自国内で子ども達を助けられるようにしよう、という新しい法案が提出されましたが、審議は遅れています。

私達は重い心臓病で死に至る可能性の極めて高い成人や子ども達を国内で助けられるようにすることを願っています。循環器病研究振興財団が出している「知っておきたい循環器病あれこれ」の9号や54号に詳しく紹介されていますので、参考にしてください。

組織保存バンクの貢献

一方、「組織移植」の方は、心臓が停止してしまった人からの提供で行える医療です。心臓弁や大動脈などの血管のほか、角膜、皮膚、骨、膵島(すいとう)の移植などがこれにあたります。

当センターでは、平成11年(1999年)に「組織保存バンク」が設置され、死後に心臓弁や血管などをご提供いただき、無菌室での液体窒素を用いた凍結保存という特殊な方法で大切に保存しています。

通常の医療となっている人工弁や人工血管では治療が難しい、重篤な細菌感染を伴う弁膜症(「知っておきたい循環器病あれこれ」41号及び57号を参照してください)や、人工血管に菌が付いて膿(うみ)がたまり、死亡の危険性が高い重い病気の治療に用いています。劇的な効果が得られることがあります。

また、妊娠、出産を希望する女性には、手術後にワーファリン(血液を固まりにくくする薬)内服が必要な人工弁は適当でないため、ロス手術といわれる手術が行われますが、この場合にも大変役立ちます。さらに、小児の特殊な病気の治療にも応用し、子ども達を救命しています。

当センターでは、ご提供いただいた組織を当センターのみならず、これを必要とする他府県の病院にもお渡しし、治療に役立ててもらっています。

当センターで行っているこの治療は、平成18年(2006年)に大変重い死亡率の高い病気の有力な治療法として認められ、厚生労働省から「先進医療」として承認されました。

移植医療を推進するために

臓器移植も組織移植も死後、ご自身の体の一部をご提供いただくという、ご本人・ご遺族の尊い意思に根ざした治療法です。

日本の政府も広く国民の理解が進むよう、さまざまなカードやパンフレットで呼びかけていますが、この機会にもう一度、私たちができる死後の社会貢献を考えてみていただければと思います。

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