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[20] 運動と循環器病

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
文章・図表・イラスト等の転載・引用のご相談は循環器病研究振興財団までご連絡ください。

大阪府立健康科学センター
健康度測定部長 内藤 義彦

運動は楽しみながら気楽に 必ず効き目があらわれる

イラスト:運動は楽しみながら気楽に

もくじ

4つのステップ

運動の習慣を正しく身につけるために、4つの段階(ステップ)を考えておきましょう。

  1. 運動に関心を持つ段階
  2. 運動を始めるための準備段階
  3. 運動に意欲的に取り組む実行段階
  4. 運動を長期にわたり継続する維持段階

この4つです。

皆さんはいま、どの段階でしょうか?このページをご覧になっているということは、おそらく「運動に関心を持つ段階」はクリアされていることでしょう。

まず、循環器病予防のためにどんな運動が効果的かなど、運動の基本原則を説明し、次に実行段階で役立つ具体的な運動プログラムの組み立て方、運動継続のコツなどについて解説します。

運動はなぜいいのか

運動というと、つい余暇の時間の運動を頭に浮かべますが、それ以外の労働ではどうか、日常生活ではどの程度、体を動かしているだろうかということも考えるべきです(まとめて身体活動量といいます)。したがって体をよく動かす職業の人と、事務中心の人とでは、余暇の時間に行う運動の必要性は異なって当然です。

運動が多くの生活習慣病(成人病)を予防・改善し、健康の維持に効果的なことは、いまや常識です。

<表1>は、その効用をまとめたものです。単に身体面だけでなく、精神的、心理的、社会的効用もありますから、いかに幅広い効用が期待できるかをまず知っておいてください。

表1 運動の効用
イラスト:運動の効用
  • 全身の血液循環を改善することにより
    心疾患の危険性を減らす
  • 体重のコントロールに有効
  • 血液中の脂質(HDLコレステロール、
    トリグリセライドなど)の構成を改善する
  • 高血圧を予防あるいは改善する
  • 骨量の減少(骨粗鬆症)を防止する
  • 基礎代謝を向上させる→肥満予防につながる
  • 筋力を増し、他の身体活動に対する予備力が得られる
  • 心理的緊張を開放する
  • 睡眠障害を改善する
  • 自己イメージを改善する
  • 不安や鬱状態から脱し、情熱的で楽観的になる
  • 家族や友人と活動を共有できる
  • 子供のときからの良い生活習慣形成に役立ち、悪い生活習慣を
    改善する
  • 高齢者では、老化に関連した疾病を予防または遅延させ、QOL
    (生活の質)向上に役立つ
U.S. Department of Health and Human Services:
Physical activity and health: A report of the Surgeon General. 1996

では、具体的な効果はどれほどなのでしょうか。多くのデータがありますが、ここではアメリカ・ハーバード大学の卒業生(35~74歳、約17,000人)を対象とした追跡調査の結果を説明します。

<図1>にあるように、1週間に運動で2,000kcal以上のエネルギーを消費した人は、それより少ない人に比べ、心臓発作による死亡の危険性が約30%も低くなりました。こうした調査でわかった結論は、身体活動量の少ないグループは、多いグループに比べ心筋梗塞や狭心症を起こす危険度が1.5~2.4倍も高くなることでした。

次に、どのような仕組みで運動は循環器病の予防に効果があるかを説明しましょう。

一つめは、運動が虚血性心臓病、脳卒中の原因となる高血圧、高脂血症、糖尿病などを改善・予防することです。

二つめは、心臓に栄養を与える冠状動脈の血流を改善したり、サラサラと血液を流れやすくしたり、さらに心臓の収縮力を高めて拍出量を増やしたりする効果です。

もっとも、運動には良い効果だけでなく危険な面もあります。例えば運動中の突然死は時々マスメディアの話題になりますが、運動中に心臓発作を起こす危険性は、海外の報告では非運動時に比べ4~12倍も高まるとされています。わが国の調査では、スポーツ中の突然死はそんなに多くなかったのですが、単位時間当たりの危険性は、中高年ではスポーツ中が最も高いという結果になりました。

これは、人によっては運動が危険なものになりうるということ、あるいは運動は安静時に比べて心血管系に負担がかかり、危険性が増す傾向があることを意味します。

以上、運動は、やり方によっては危険な面もありますが、一般的にはそれをはるかに上回る多くの効用があるといえます。

図1 身体活動量と心発作発生率との関係

(ハーバード大学男子卒業生6~10年追跡調査の初回心発作の発生率)

図1:身体活動量と心発作発生率との関係

(Paffenbarger RS et al,Am J Epidemiol 1978;108:161-175より引用)

効果的な運動とは? 4つのポイント

一言でいえば、循環器病を招く危険因子を改善し、心臓や血管に過度の負担をかけない運動が効果的ということになりますが、「運動の種類・強度・所要時間・頻度」の4つの要素を常に考えておくことが大切です。

(1)動的運動、有酸素運動が基本

筋肉は収縮するが動きは少ない運動を「静的運動」といいます。これは筋肉の肥大を促しますが、循環器病の予防効果はあまりないようです。

一方、ラジオ体操のように筋肉の収縮と弛緩を繰り返し、リズミカルな体の動きを伴う「動的運動」は、筋肉のポンプの働き(これは重要!)によって、心臓へ血液が戻るのが促進されますから、循環器病の予防には効果的です。

心臓が拡張したときに戻ってきた血液で左心室は十分に満たされ、無理なく多量の血液を全身の組織へ送り出すことができます。しかも心筋に対する負担が静的運動に比べ少ないことも長所です。

ところで、運動は、エネルギーを発生する仕組みから「無酸素運動」と「有酸素運動」に分けられています。無酸素運動は短距離を全力疾走する場合など、呼吸(酸素の供給)が追いつかない激しい運動です。こちらは体に急激な負担がかかるので、循環器病予防という点ではお勧めできません。

歩行、ジョギング、サイクリング、マラソン、エアロビックダンス、遠泳など、ゆっくり呼吸しながら続ける持久的な運動は有酸素運動と呼ばれています。こちらは、体の脂肪を効果的に燃やしたり、心臓の負担を少なくしたりするなどの利点があり、肥満の解消、さらにインスリン感受性を高め、糖尿病予防などに効果があります。だから循環器病の予防には動的運動であること、しかも有酸素運動であることが基本です。

(2)全力の40~60%で

循環器病予防を目的とした有酸素運動の場合、全力(最大酸素摂取量)を出しきったときの40~60%の運動が適切とされています。運動する人が「いくらでも続けられる」「じんわり汗ばむ」と感じる程度で、これが安全性と有効性を兼ね備えた強度です。

具体的にはあとで説明しますように、心拍数(脈拍数で代用します)がこの強度のよい指標になります。病気の有無、個人差、経験、年齢、体調などによって、目安となる運動強度は異なりますが、安全を優先し、できるだけ軽い程度の運動から、石橋をたたくように徐々に強度を高めてください。とくに高血圧を改善するには「ニコニコペース」といわれる低強度の運動をお勧めします(後述)。

(3)1回20~60分程度

20分以上の有酸素運動を続ければ、脂肪燃焼効果がより顕著に出てきます。それがムリなら、こま切れでも結構ですから1日合計30分以上の運動を心がけてください。高齢者の方は、翌日に疲れが残らないようにしましょう。何事もほどほどが大切です。

(4)回数は多く、疲れが残らないように

中高年の場合、軽い運動なら毎日でもよいのですが、少し強い運動は週2~3回にし、間に休みをはさむとよいでしょう。

強い運動でなくても、ほどほどの強度の運動を習慣として継続すること。これがコツです。

運動の実践の前に

(1)万全の準備を

新しい生活習慣を身につける秘訣は
(イ) 何のために行うか(目的の明確化)
(ロ) 何を目標にするか(目標の設定)
(ハ) どのように行うか(実行項目の設定)
(ニ) どのように確認していくか(評価項目の設定)
の4項目をはっきりさせておくことです。

イ、目的の明確化・・・体力向上のためか、健康維持のためか、高血圧の改善のためかなど、目的をはっきりさせ、動機を確かなものにします。

ロ、 目標の設定・・・やる気を高め、達成具合を確かめるため、例えば3か月で3kg減量するといった具体的な目標を決めます。

ハ、 実行項目の設定・・・日々実行する具体的な行動内容で、実行できたか毎日確認します。

無理な項目を多く設定しても挫折しますから、比較的少数の項目(2~3項目)から始めるのがポイントです。例えば
◆歩数計を購入し、1日1万歩を目標に歩き、記録する
◆階段を利用し、時間があれば人に頼まず自分で歩く
◆体重を1日1回測定し、記録する

ニ、評価項目の設定・・・できるだけ毎日、実行項目が達成できたか点検します。これはやる気を維持し、行動の効果を実感し、効果を継続させるのに大変有益です。

(2)具体的な運動プログラムを作る

実行項目が決まったら、それを基に具体的な運動プログラムを作ります。しばらく実行し、様子をみてステップアップします。<図2>に参考として減量する場合の一例を挙げておきます。

図2 減量を目的とした運動プログラムの事例

目標:最初の3ヶ月で
3kg減量

図2:減量を目的とした運動プログラムの事例

目標:次の3ヶ月で
2kg減量

目標:更に次の3ヶ月で
2kg減量して
ベスト体重にする

(3)脈拍の測り方をマスターする

運動の強さをどの程度にするか、その客観的な指標になるのが脈拍です。不整脈もわかりますから、何度も練習し測定に習熟してください。

まず、安静時の脈拍を数えます。15秒の回数を4倍にしてください。これが1分間の「安静時脈拍数」です。次に運動の直後に同じ方法で脈拍を測定しますが、脈拍はすぐ減少するので、10拍/分を余分に足しておきましょう(運動直後15秒間の脈拍数×4+10)。

次に、目標とする運動強度に対応する脈拍数の計算方法について<図3>を見てもらいながら説明しましょう。

◆全力、つまり100%の運動強度の脈拍数(最大脈拍数)は
<220-年齢>です。
◆目標の運動強度をX%とすると、そのときの脈拍数は
<安静時脈拍数+(最大脈拍数-安静時脈拍数)×(X/100)>
の式で求めることができます。

循環器病予防に適当な運動は全力の40~60%の運動とされています。

実際に計算してみましょう。Aさんは43歳で、安静時脈拍数が70とします。Aさんの最大脈拍数は<220-43=177>となります。

Aさんにとって40%の運動強度の脈拍数は
70+(177-70)×(40/100)=112
となり、運動直後の脈拍数が1分間110回程度であれば、40%の運動強度の運動をしていることになります。

なお、高血圧の改善に推奨されている「ニコニコペース」の心拍数は<138-年齢/2>で計算しますが、おおむね110~120拍/分が適切な運動強度になると考えられます。

(注)脈拍数と運動強度の関係は、おおよその目安で、個人差があります。心臓病の患者さんや血圧の薬を服用している方は、かかりつけの医師に相談してください。

図3 目標とする運動強度を知るための脈拍数の計算法
図3:目標とする運動強度を知るための脈拍数の計算法

さあ、運動を始めよう

(1)目安は1日1万歩

デスクワーク中心の仕事や座りがちな生活をしている男性では、1日に200~300kcal、女性では100~200kcalを運動で消費するのが望ましいとされています。

300kcalは約1万歩の歩行に相当します。ジョギングで消費するのは毎分約10kcal*ですから、30分程度続ければ300kcalになります。

*厳密には走り方、性、年齢、体重によって異なります

(2)基本はウォーキング

歩行は効果的な有酸素運動の代表ですから、運動不足の人や肥満の人に最適です。走っている時は、体重の3、4倍の衝撃が足首、ひざ、腰にかかりますが、歩行だと、その衝撃が3分の1の1.2倍ですから、いつでも、どこでも、だれにでもできます。

ウォーキングの方法は、<図4>のイラストにまとめました。これを参考にマスターしてください。歩数計を付け、はきやすい靴、動きやすい服装で歩行し、運動記録表(日記)に、体重コントロールが順調かどうか、歩数、実行項目を達成できたかどうかを記録するのも有益です。

図4 リズムをつけて楽しく歩く
図4:リズムをつけて楽しく歩く

(3)転ばぬ先の杖

運動をしていない人が運動を始めるときや、急ぎ足やジョギングなど中等度以上の運動をする場合は、医学的検査(メディカルチェック)を受けておくことが原則です。

病気がある場合は当然として「強い息切れ、動悸、呼吸困難、胸痛、前胸部の不快感、立ちくらみ、めまい、頭痛、吐き気、腹痛、背中の痛み、関節痛、激しい筋肉痛など」の自覚症状がある場合は、必ずかかりつけの医師に相談してください。

運動を安全に行うためのポイントを<表2>にまとめました。この項目をコピーして壁に張り、毎日チェックしましょう。

表2 ◎安全な運動を行うためのポイント
  1. 日頃から体調を整えるように栄養と休養に留意する
  2. 過労、睡眠不足、病気など、体調の悪いときは迷わず休む
  3. 運動する季節、天候、場所、時間帯にあった服装、準備をする
  4. 高温、多湿、長時間の運動の場合は、水分補給に留意する
  5. 必ずウォーミングアップ(準備運動)から入り、主運動が終わったらクーリングダウン(整理運動)する
  6. 強度・持続時間・頻度が適度な運動を心がける
    • 他人とおしゃべりしながらできる程度の運動を
    • 運動中も終了後も苦しさや痛みを覚えない程度に
    • 次の日以降に疲れを残さないように
    • 運動の強さを急に増やしたり減じたりしない
  7. 疲れが残らないように週2~3日の休みを設ける
  8. 同じ強さの運動を2~3週間続けて、次の段階に進む
  9. しばらく運動のブランクがある場合は、前の段階から始める
  10. 交通事故に気をつけ、楽しく続ける
◎日常生活のなかで身体活動量を増やすには
  • 日頃の行動を分析し、運動量が足らないことを意識する
  • 何気なく過ごしている生活の中で、運動する機会を探す
  • 歩きやすい格好をする
  • 歩数計、体重計を利用する
  • 眠くなったり思考が鈍ったりしたら、歩いて気分転換をする
  • 行動のスピードを速める
  • 思案よりまず歩く(ムダ足をいとわない)
  • 3階ぐらいの高さは階段を昇る
  • 運動した効果を実感する
  • 運動を共に行う仲間をもつ
  • みんなの前で運動宣言し、だれかに実行ぶりを見てもらう

(4)運動を強めるときの留意点

同じペースで毎日のように歩いていると、体力がつき、もの足りなくなってくるものです。こうなったら、最初の運動メニューを少し変更し、ステップアップすることを考えましょう。

方法としては(1)距離を増やす(歩行数を1日当たり1,000~2,000歩増やす)(2)スピードを増す(急ぎ足歩行、ジョギング)ことが基本になります。

ただし、一つのステップは少なくとも2週間ぐらい続け、それから次の段階へ進みましょう。逆にくじけそうになったら、一つ前の段階へ戻り、楽な気分でとにかく続けてください。

安全確保のため、主運動の前後にウォーミングアップ、クーリングダウンを忘れないでください。また、運動途中で少しでも異常を覚えたらペースダウンするか、中止してかかりつけの医師に相談してください。

(5)ストレッチ体操や筋力トレーニングも

ストレッチ体操<図5>は肩こりや腰痛、疲労、けがの予防に有効です。この体操の各動作の基本は、できるだけゆっくり気持ちのよい範囲で筋肉を伸ばし、しばらく(10秒以上)じっとすることです。

歩行やジョギングは下半身の運動に偏りがちなので、個人の筋力に合った軽いダンベルを使う筋力トレーニングもお勧めします。

図5 ストレッチをしよう
図5の1:ストレッチをしよう1
大腿後面の筋群を伸ばす 大腿前面の筋群(大腿四頭筋)を伸ばす
図5の2:ストレッチをしよう2
アキレス腱とふくらはぎを伸ばす 歩幅を広げる 歩幅を広げる

運動を続けるには

せっかく身についた運動習慣が危うくなることがあります。例えば、寒い日には散歩に出るのがおっくうですし、暑い日に大汗をかくのも嫌なものです。仕事が忙しいとき、出張や風邪引きで生活のリズムが乱れたときなども、運動習慣が崩れる恐れがあります。夜遅くまでお酒を飲む機会が続く年末年始も要注意です。

そんな状況への対処法をあらかじめ考えておきましょう。

運動を中断することになっても、失敗の経験は次のチャレンジに必ず役立ちます。挫折の原因を分析し、対処法を工夫して、もう一度やってみましょう。

困ったときは専門家に相談することも大切ですし、友人、同僚や家族にアドバイスをしてもらう手もあります。

同じことを繰り返していると、どうしても飽きがきて、うかうかすると怠け癖がつきます。それを他人に指摘されると、不愉快になるかも知れません。しかし、冷静に自分の行動を観察し、注意してくれる仲間や家族はありがたいものです。一人で悩まずにアドバイスを求めましょう。

新しい生活習慣を自分のものにするには、周囲からのサポートが欠かせません。やる気のある人ほど周りの指摘を快く受け止めるという研究もあります。周囲の方々との接触を大事にしたいものです。

循環器病の症状のある方に

◇肥満の人へ

肥満は、消費エネルギーより摂取エネルギーが多すぎるために生じるので、長時間の運動によってエネルギーを消費すれば改善します。脂肪が効率的に燃焼するには最低20分の運動が必要とされていますから、それ以上の運動を心がけましょう。

強い運動を短時間行うよりも、軽い運動を長時間する方が、疲労感が少なく、トータルでは消費エネルギーが多くなることをよく理解しておいてください。

ジョギングは足首、ひざ、腰に大きな負担がかかります。肥満者は腰やひざに障害が起こらないようにする注意が大切で、走行より歩行が無難です。歩行が続けられないようなときは、水中歩行や自転車こぎなど腰やひざへの負担が少ない運動にとどめることが肝心です。

運動だけで減量するのは至難の業ですから、節食と運動の両方をうまくコントロールしていかねばなりません。

体重が減らなくても皮下脂肪の減少やウエストの周囲が細くなっておれば運動の効果は出ています。この点もお忘れなく。

◇高血圧の人へ

運動している最中の血圧は、安静時よりかなり高くなっています。中でも、息をこらえて力を入れる重量挙げや腕相撲のような運動は血圧を著しく上昇させ、高血圧の人には勧められません。高血圧の人には、できるだけ自然の呼吸で全力(最大酸素摂取量)の40~50%に相当する、やや軽度の有酸素運動がよいとされています。

この強度は、やや汗ばむ程度で、人と会話しながら続けられることから「ニコニコペース」と呼ばれており、長期的には血圧を下げる効果があります。

ただし、定期的な血圧チェックとかかりつけの医師を受診することを忘れないでください。寒冷時や過労の時は運動は避けましょう。

◇高脂血症の人へ

有酸素運動を長時間続けると脂肪が燃焼し、血液中の中性脂肪であるトリグリセライドが低下しますし、”善玉コレステロール”(HDLコレステロール)を増やす効果があります。さらに、運動にはさまざまな面で動脈硬化を防ぐ作用がありますから積極的に続けてください。

ただし、強すぎる運動は不整脈や狭心症発作を誘発する危険性があります。また、すでに虚血性心臓病が潜んでいる場合がありますので、運動中に不快な胸痛を感じたら、かかりつけの医師に相談してください。

◇糖尿病の人へ

糖尿病は膵臓から分泌されるインスリンの作用が低下し、糖質をはじめ栄養分がうまく利用できなくなる病気です。日本人では遺伝素因のある人に過食や運動不足が原因で起こるⅡ型糖尿病が多数を占めています。

これらの人には運動療法が有効で、筋肉や脂肪組織のインスリンに対する感受性がよくなり、食事療法だけでは得られない効果があります。

運動は軽度の有酸素運動、つまり全力(最大酸素摂取量)の40%の運動で効果があります。血糖値、グリコヘモグロビン値があまり高くない状態では、食後に適度の運動をすれば、食事による血糖の上昇が抑えられ、1日を通じて血糖値が改善します。

ただし、網膜症、腎症、自律神経障害など糖尿病の合併症があるか、コントロール不良のときは、運動がかえってそれらを悪化させる場合があります。運動をする前にかかりつけの医師に相談してください。

糖尿病の運動療法は脂肪の利用率を高めることも目的にしています。有酸素運動を1日30分、軽・中等度の強さで週3日以上続けましょう。

インスリンや経口血糖降下治療を受けている患者さんは、低血糖の危険性があります。運動は食後1~3時間後にしてください。

糖尿病では足の障害(神経障害、循環障害、水虫など)が起こりやすいので、フットケアといって足への注意も必要です。足の感覚が鈍っていないかチェックし、さらに足の皮膚表面に色の変化がないか、水虫になっていないかを確かめましょう。

靴はきつくなく、はきやすい通気性のよいもの、靴下は吸湿性の高いものを選び、汗ばんだらはき替えます。体の抵抗力が落ち、感染しやすくなっている場合もありますから、体の清潔を心がけ、お風呂ではていねいに洗ってください。

いかがでしたか?運動と循環器病について、ぜひ知ってもらい、すぐに実行していただきたいポイントを中心に解説しました。

運動といっても、むずかしく考える必要はありません。強い運動より、やや弱めの運動を1日30分以上、「ニコニコペース」でこなせばよいのです。たかが運動ぐらいと思われるかもしれませんが、されど運動です。

とにかく楽しみながら、気長に続ければ、必ず効果があることを保証します。

 

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