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ホーム > 循環器病あれこれ > [145] コロナ禍に挑む国循の新研究─ 新鋭エクモと高性能マスク ─
「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
文章・図表・イラスト等の転載・引用のご相談は循環器病研究振興財団までご連絡ください。
国立循環器病研究センター
研究所長 望月 直樹
人工臓器部長 西中 知博
予防医学・疫学情報部 西村 邦宏
国立循環器病研究センター研究所は、略して「国循研究所」といいます。循環器病を対象にした国立の研究所ですから、この病気の診断や治療の発展、充実につながる研究の「種」を大切に育て上げ、臨床の場で実際に活用できるよう努力を重ねてきました。
この方針は、40年前、大阪府吹田市藤白台で創設された国立循環器病センターでも、昨年7月の吹田市岸辺への移転後の国立循環器病研究センターでも一貫しています。
具体的にいうと、心臓・血管がどのようにして病気になるのか? その病気をどう見つけるのか?その病気をどのように治療していくのかーに取り組んでいるのが国循研究所です。〈図1〉のように循環器病の原因解明、新しい診断法の開発、新しい治療法の開発に毎日取り組んでいます。
ですから、スペイン風邪以来とされるコロナ禍にも循環器病の視点から多大な関心を寄せています。今回は、新型ウイルスCOVID-19とも戦う「国循研究所」として、このウイルス感染症の治療、予防に関する二つの共同研究成果を紹介します。続いて、この病気の発症から、老化による生活活動の制限、その活動制限による生活の質の低下が循環器疾患をもたらすことなど、循環器病をどうとらえていくかを解説します。
新型コロナウイルス感染症の重症患者の増加に伴い「重い肺炎になると人工呼吸器では手に負えず、エクモが最後の手段」といった報道をよく見聞きされていると思います。
国循研究所人工臓器部では、急激に血液循環や呼吸ができなくなり、薬物や人工呼吸器など他の治療では助けることができない患者さんの救命を目的としたECMO(エクモ:Extracorporeal Membrane Oxygenation)システムの開発に取り組んできました。
エクモとは血液ポンプと膜型人工肺による体外循環を用いて呼吸・循環補助を行う生命維持法です。つまり、肺のように、酸素を取り込んだり、二酸化炭素を排出したりするほか、弱った心臓の機能を補助することによって生命を維持する方法です。
肺や心臓が機能不全になり、例えば①心肺停止した患者さんの心肺蘇生時、②ウイルス性肺炎などにより、人工呼吸器でも患者さんの肺が十分に酸素供給や二酸化炭素除去ができない時、③患者さんの心臓が生命維持に必要な血液循環ができない時などに、低下した肺のガス交換機能や心臓のポンプ機能を補助することによって患者さんの生命を維持する目的で行われます。
患者さんの太ももの血管に太いチューブ(管)を入れ、血液を体外に導き、首近くの血管に戻す、または、この逆の流れや両方とも太ももの血管を使用するなどして体内とエクモシステムの間で血液を循環させます。これは、肺のガス交換機能、心臓のポンプ機能のうちどちらの補助を主目的にするかなどによって異なります。
新型コロナによる肺炎では、肺の状態が重症化した患者さんに、数日から数週間の呼吸補助に使用されています。
緊急の生命維持に始まり、患者さんの全身の状態を改善させて回復や別の治療への橋渡しをするまでの時間をかせぎ、病気の治療を進めることが期待できるのです。
従来、エクモに使用されている装置は、連続して使用すると性能の低下が起きる、血液回路内に血栓ができるなどの難点があり、長期間安全に使用するのが困難でした。そのため、様々な合併症が発生するリスクがあり、呼吸・循環補助を一時停止して、装置の交換を頻繁に行う必要がありました。
また多くの計測機器が必要なので、装置自体が大きくなり、さらに多くのケーブルがつながれるので煩雑になり、緊急時の対応や院内での移動に伴う扱いにくさが問題となっていました。
人工臓器部では、呼吸・循環の補助が長期間できるエクモシステムの開発に長年、取り組んできました。その成果によって、高機能な「膜型人工肺」や、血栓のできにくい「抗血栓性コーティング」を開発し、実用化してきました。開発した膜型人工肺を組み込んだエクモ回路は、従来は命を救うことが難しいとされた患者さんへも使用され、救命に貢献しています。
さらに、超小型で高性能であるとともに生体に優しい血液ポンプの開発にも成功しました(詳しくは次の重症心不全救命の補助人工心臓の進展の項で説明します)。この血液ポンプと、これまで開発してきた、長期間の呼吸・循環の補助につながる技術を統合し、コンパクトにして、救命と安全な呼吸・循環の補助が長期間可能な世界最小・最軽量級のエクモシステムを開発しました〈図2〉。
超小型の駆動装置に耐久性と生体適合性に優れたエクモ回路が搭載されています。駆動装置は横幅298㎜、奥行き205㎜、高さ260㎜、重さ6.8㎏で、酸素ボンベコンテナを付けても8.9㎏と世界最小、最軽量級です。エクモシステムがどう働いているか、つまりエクモ回路内の血流量、圧力、温度、血液の酸素飽和度などの状況をまとめて画面に表示する一方、異常を直ちに知らせるアラーム機構で、医療スタッフはより安全に患者さんの状態を管理できます。
集中治療室や手術室で使用するだけでなく、内蔵バッテリーと酸素ボンベで外部からの電源や酸素の供給がなくても1時間連続使用することができ、患者さんの安全で円滑な搬送も可能なシステムとなっています。
現在は、臨床応用・製品化に向け、国立循環器病研究センターの病院、研究所が協力して、多施設参加の医師主導治験を実施しており、このシステムの有効性と安全性を検証しています。
この治験が終わり次第、これまでのエクモの難点を克服した世界最小・最軽量級のエクモシステムが登場し、重症コロナ患者さんの救命にも貢献することになります。
人工臓器部では、国循研究所発足以来、自分の心臓では生命の維持ができない重症心不全患者さんの救命に役立つ治療機器の研究と開発を行ってきました。
医師と、ものづくりの技術を持つエンジニアが協力して開発を進め、「国立循環器病研究センター型拍動流式補助人工心臓」〈写真〉を国内の企業とともに実用化し(1994年から健康保険を使って治療を受けることが可能になりました)、それ以来、近年まで日本で最も多く使用されている補助人工心臓として重症心不全患者さん、特に心臓移植待機患者さんに移植までの橋渡しとして使用されてきました。
このとき実用化された補助人工心臓は、人の心臓と同じように血液ポンプの拍動によって血液を送り出す「拍動流式」とよばれるタイプでした。
この「拍動流式補助人工心臓」は小型化や長期耐久性に限界があり、血液を流すポンプを体内に植え込むことができず、体外に設置されていました(「体外設置型」と言います)。ポンプが体外にあると退院するのは無理です。さらに、太い血液チューブが皮膚を貫通するため貫通部の周辺に感染が起こりやすいのも難点でした。(海外では大型の「拍動流式血液ポンプ」による「植込み型補助人工心臓」が使用されましたが、日本では普及に至りませんでした)。
そこで、小型で、退院し、自宅や社会生活を送りながら使用できる「植込み型」の補助人工心臓が求められてきました。
2000年代に入り海外では羽根車を高速で回転させて血液を流す方式の「連続流式血液ポンプ」による「植込み型補助人工心臓」が急速に普及するようになりました。2011年以降は、日本でも「連続流式血液ポンプ」を用いた「植込み型補助人工心臓」が心臓移植待機患者さんの移植までの橋渡しとして使えるようになりました。
このポンプは蛇口からでる水道水のように、連続的に血液を送り出すために「連続流式」と呼ばれています。
開発が始まった当初は、「脈」が減弱するので、人体に何らかの影響があるのではと心配されていました。
人工臓器部ではこのような医療機器による生理学的な影響についても研究を重ね、連続流式血液ポンプの使用で減弱した脈の状態でも生存が可能であることを世界に先駆けて証明するなど、実用化前から多くの研究成果を得てきました。
今日、急激に心臓機能が悪化して生命が危険な患者さんには、エクモや補助循環用ポンプカテーテルが使用されます。特に重症な患者さんには体外設置型補助人工心臓が必要になり、先ほどの拍動流式補助人工心臓が使用されてきましたが、より多くの血液流量を得ることができるなどの理由で、連続流式血液ポンプが拍動流式補助人工心臓の代わりに使用されるようになってきました。ところが、血液の塊ができてしまうなどのために長期間使用することは難しいことが問題でした。
人工臓器部では、多くの血液流量が必要な患者さんにも、血液の塊ができずに長期使用できる体外設置型補助人工心臓用連続流式血液ポンプ「BIOFLOAT NCVC(バイオフロートNCVC)」の開発に成功しました。
これは、体外設置型として世界で初めて動圧浮上式(羽根車は血液中に浮いた状態で回転し血液を送り出します)という方式を用い、上記のエクモシステムにもこの血液ポンプが組み込まれています。患者さん自身の心臓が回復するまで、または植込み型補助人工心臓ヘ橋わたしするまで、強力な心臓サポートを長期間安定してできる体外設置型補助人工心臓として、間もなく日本で使用できるようになる見込みです。また、この技術を用いた植込み型補助人工心臓も開発中です。これからも、安心、安全に治療に貢献できる新しい人工心臓の開発を続けていきます。
新型コロナ感染の拡大とともに、皆さんは外出の際にマスクを着用されるようになったと思います。
これまでマスクの着用習慣がなかった欧米諸国では、一転して新型コロナ対策としてマスク着用を推奨する声が急速に広がっています。
「マスク着用が定着しているアジアでは感染拡大が抑制されている」という声や「無症状の感染者から二次感染を予防する効果が期待できる」との見解が欧米の感染症専門家からも出てきました。
一方、トランプ前大統領のようにマスクは効果がないと公言するような人もいて、日本では若い方の中にはあまりマスクを着けない人もいるようです。
今回は、我々が開発している新しいタイプの医療用マスク(N95マスク)を紹介、続いてコロナ予防へのマスクの一般的な効果と限界について、さらに、なぜ新しいマスクが必要かを解説します。
コロナウイルスの大きさを皆さんご存知でしょうか?コロナウイルスは1個が140nm(0.14㎛)といわれています。〝nm〟はナノメートルと呼びます。
よく小さいものを表すときにミクロのという言葉を使いますが、それをもとにした㎛(マイクロメートル、ミクロン)という単位は、1㎜の1000分の1のサイズを表す単位です。
nm(ナノメートル)は1㎛のさらに1000分の1のサイズ(=0.000001㎜=10億分の1メートル)を表します。コロナウイルスがとても小さいものであることがお分かりいただけたでしょうか?
一般的なマスク(不織布製の使い捨てマスク)の網目、メッシュのサイズは10─100㎛。一方、コロナウイルスは約0.1㎛なのでマスクを軽々とくぐりぬけ、マスクなんて意味ないよという話を聞かれた方もいらっしゃるかもしれません。
ところが、実際のマスクは表面に静電気を帯びさせる加工がしてあり、静電気の反発力で小さい粒子を通さない効果が防護効果の半分を占めています。ですからスギ花粉(20㎛)、かびの胞子(3─5㎛)などの粒子も防げますし、ウイルスも一定程度、防ぐことができます。
またウイルスの粒子は、咳から10万、くしゃみから100万も外部へ飛散するといわれており、新型コロナウイルスの飛沫感染はウイルスに水分や埃(ほこり)が付着した状態で空気中に飛散することから始まります。
水分をまとった飛沫のサイズは5㎛以上なので、マスクで大部分が防げるといわれています。
もう一つの大きな効果は「感染した方が知らずに他人に感染させることを予防する」効果です。理化学研究所が世界最高の計算速度を誇るスーパーコンピューター「富岳(ふがく)」を使い、マスクによる飛沫の拡散防止効果などを計算した結果を公表しています。(https://www.r-ccs.riken.jp/jp/topics/pickup2.html)
通気性(空気の通りやすさ)は、布製のマスクの綿、ポリエステルマスク、不織布の順に高いですが、全体として咳によって出る飛沫の約80%は抑えることができるようです。
不織布の場合、飛沫が透過することはほぼなく、直径20マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル以下の小さな飛沫については、マスクと顔のすき間から1割以上、漏れ出ているようです。ポリエステルや綿の場合、繊維のすき間が比較的大きいため、小さな飛沫が最大4割も透過する場合があるとのことです。
実際、皆さんもマスクを着けたとき、眼鏡がくもったりすることでわかるように、市販のマスクは顔への密着度が低いため、一定の量が外に漏れ出てしまいます。
コロナ患者さんの診察をしたり、食事入浴など日常生活の介助をしたりして濃厚に接触する医師、看護師、医療関係者は一般の人よりはるかに高濃度のウイルスにさらされます。
そのために、病院ではN95と呼ばれるNIOSH(米国労働安全衛生研究所)によって規定された要件を満たした微粒子用マスクで、塩化ナトリウムを飛沫の大きさと同じくらい小さくした微粒子を95%以上捕集する高性能マスクを使用することが決められています。
コロナウイルス診療で医療関係者の感染防御に必須のN95マスクですが、2020年のコロナ感染拡大とともに世界的に、爆発的に需要が増大し2月から4月にかけて供給が枯渇した状況でした。
特に国立循環器病研究センターの患者さんは、気管内挿管や心肺蘇生時の心マッサージなどを行うことで大量のエアロゾル(微細粒子)が発生するため、N95マスクの確保が課題でした。そこで心臓膜型を開発中の教育推進部・小児循環器内科の白石公部長と協力して当院のみならず、他院でも使用可能な新規高性能マスクの開発を行うことになりました。
(http://www.ncvc.go.jp/pr/release/20200902_press.html)
現状の医療用高性能マスクには次のような問題点があります。1)輸入依存性(国内生産メーカーが少数):パンデミック発生時に枯渇しやすい。3M社の国際標準品は事実上米国から禁輸状態になったため手に入らなくなりました。
2)不安定な品質(中国産に依存):中国の検定基準「GB2626-2006(KN95)」の認定を受けたマスクのうち、ろ過効率95%を満たしているのは81製品中22製品のみでした。
3)乏しい密着性(画一的な設計):顔にフィットさせるため、ひもで物理的に締め付ける必要がある。ところが当センターでは、約10%の看護師でフィットしませんでした。
4)装着者の苦痛(呼吸苦):ろ過効率と相反して呼気抵抗が増加し、空気が取り込みにくくなる。このためマスクを着用し続けると、新鮮な空気を取り込むことが阻害されて頭痛や吐き気、頭が重くなるとの報告もあります。
以上の状況から国産で生産性が高く、日本人の形状に適したN95相当マスクの供給が必要です。
これらの問題に対応するため4月から6月まで開発を進めました。初期の試作品は、N95に準拠した評価試験に相当する性能を示しましたが、フィルター部分が大きく、手元操作がしにくい、医療現場で使用するには威圧感があるなどの問題点がありました。
これらの試作品作成の過程については、開発過程で取材を受けた「ガイアの夜明け」(2020年6月16日放送 テレビ東京)を見ていただければと思いますが、特にデザイン面で違和感がないように〈図3〉に示すように改良し、変化しており、さらに改良を進めています。
今回の開発過程で、新規に高性能のフィルターを開発し、息がしやすく長時間つけていても苦痛が少ないようにしました。従来に比べて息の吸いやすさが20%程度、従来の製品に比べて向上しています。
また再利用可能な〝本体〟と、使い捨ての〝フィルター〟とが分離可能で、本体は簡単に洗浄、消毒ができるようにしました。特に、顔に密着する部分は日本人の顔を3Dセンサーで立体計測して、樹脂製の柔らかい素材で顔の形や大きさによらず、だれでも安全に装着できるように工夫しています。
また国内の企業のみで開発、生産するAll-JAPANによる生産体制のため、感染が今回の第3波よりさらに拡大して輸入品が入ってこなくなっても、国内で自給することが可能になっています。
加えてフィルターの素材は、フッ素樹脂(PTFE)シートを延伸することにより、ナノファイバー繊維の立体網目構造からなります。
従来のN95マスクに使用されているフィルターは静電気を利用した帯電濾過を利用しており、長時間使用すると息を吐くときに水分で性能が低下する可能性がありました。今回開発したものは物理的に濾過するだけなので効率は低下しません。現在は市販前の安全確認の最終段階に入っています。
N95マスクは今後、ウイルス性状の変化、新規のウイルス出現などでパンデミック状況が深刻化しても医療現場では必要不可欠です。現状の供給が多く輸入に依存し、流行状況によっては再び輸入途絶による深刻な状況を招きかねず、国産化の推進は必須と考えています。
〝マスク本体〟を備蓄すれば、需要が増えた場合は、〝フィルター〟のみの増産で足りますし、現在のコロナウイルスのように、一般的なマスクでは防御困難なウイルスが出現した場合でも、〝マスク本体〟は町工場レベルでも金型を複製することで必要な数量の確保が容易と思われます。今後は国内を代表する企業との連合により、安全かつ安心な製品を医療現場に提供していこうと考えています。
コロナ関係の研究を紹介したのに続き、循環器病全体について知っておいてほしいポイントを簡単に解説します。これは国循研究所からのメッセージです。
国立循環器病研究センター病院には、生まれつき心臓や血管に異常がある患者さんも来院します。生活習慣(食生活や仕事環境によるストレス)により、徐々に影響を受ける青壮年時代の患者さんもいます。
さらには歳をとること、つまり加齢によって臓器(心臓・血管・腎臓) が正常に働かなくなり、心臓の筋肉に十分血液がいきわたらないことによる虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)や脳卒中(脳の血管が詰まる脳梗塞・破れて出血する脳出血)の患者さんがいます。
それをまとめたのが〈図4〉の左の部分です。
生まれつきの心臓の中の壁に穴があいている(心房中隔欠損症・心室中隔欠損症など)場合、原因は穴ですので、直す手術が治療として行われます。
遺伝によって不整脈が出現したり、血液中のコレステロールが高くなってしまったりする病気(心電図上で異常波形を示すブルガタ症候群やLongQT症候群)の方もいます。
これらの患者さんは、遺伝子の異常が原因です。日本では遺伝子への操作が認められていないので、埋め込み型除細動器を体に埋め込んだり、高脂血症では血液からコレステロールを除去したり、コレステロールの合成を抑制する薬剤の内服をすることになります。
生まれつき心臓の筋肉細胞の収縮を調整するたんぱく質に異常がみられ、心臓の収縮機能が低下している患者さんは、心臓移植が必要になることもあります。
若年から青壮年期には、社会に出ることで食生活や職場の環境などにより、自覚しないままストレスにさらされ、高血圧症や高脂血症を発症して、それが危険因子となる虚血性心疾患や脳卒中を発症します。
発症を抑えるためには、日々の食生活で減塩や動物性脂質の摂取を抑える工夫が必要になります。治療は、虚血性心疾患では血管を広げるバルーンによる血管形成やステント植え込みが治療となり、脳卒中では詰まった血管の血栓溶解療法・破れた血管を修復する手術が行われます。さて、いずれの患者さんも重症化すると身体の活動制限がよぎなくなるため、車椅子での生活になったりします。活動が低下すると認知機能にまで障害がおよび、心身ともに弱まるフレイル状態となります。
さらに悪化すると、筋肉の委縮が原因となり更なる活動制限や転倒が原因となる骨折を併発して寝たきり状態という悪化の流れに乗ってしまうことになります(図4の右)。
こうした状況を踏まえ、自分の〝人生シナリオ〟をより健康に、より生き生きとしたものにしてほしいと願っています。
研究所では岸辺への移転以来、研究開発の拠点「オープンイノベーションセンター」を活性化するために、健康都市づくりに賛同する企業、オープンイノベーションラボとのチームワークを強化してきました。視野を広げ、異分野融合や共業にむけた研究も行っています。
今回は、COVID-19に対しても研究所が力を発揮している二つの研究成果を紹介いたしました。
研究にご興味がある方は、「国循サイエンスカフェクラブ」に入会していただけますと、もっと身近になるかもしれません。是非、ご入会ください。
https://www.science-cafe.jp/guide/#general