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[138] なぜ大切か? 循環器病の臨床研究─ 目的と患者さんの参加 ─

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
文章・図表・イラスト等の転載・引用のご相談は循環器病研究振興財団までご連絡ください。

国立循環器病研究センター
臨床研究開発部 部長  北風 政史

臨床研究...未来につなぎます

なぜ大切か? 循環器病の臨床研究─ 目的と患者さんの参加 ─

もくじ

  1. 「臨床」と「研究」
  2. 医学には三つの顔
  3. 最良の医学を届けるための臨床研究
  4. 原因不明の〝海軍病〟─パンと白米
  5. 医学の発展にも患者さんにも必要
  6. わが国の臨床研究の現状
  7. 日本の論文数 世界25位にダウン
  8. 具体的に臨床研究とは?
  9. 医学研究の全体図
  10. 臨床研究に参加いただく方へのお願い
  11. 観察研究から臨床試験へ
  12. 臨床試験の数多くの段階

「臨床」と「研究」

今回は、皆さんに直接関係する病気の話と違い、かなり聞きなれない言葉が出てきます。分かりやすくなるように話を進めますので、最後までお付き合いください。なぜなら、私たち自身、私たちの子孫、わが国の将来の医療のありかたにも関わる大切な話だからです。

タイトルに「循環器病の臨床研究」とあります。「循環器病」はご存知ですね。では、「臨床研究」とは何でしょうか?

「臨床」という言葉にはなじみがあるかと思います。「患者さんを苦しめている病気を的確に診断して適切に治療する」、または「健康な人が病気にならないように万全に予防する」という行為のことです。

では「研究」とは、何でしょうか? これが、分かっているようで、よく分かりません。実は「研究」の定義は、

 ① 世間・世界などの混沌の中からある一定の法則を見いだすこと
 ② まだ世界の誰もが知らないような物質・現象を見いだすこと
 ③ 新たな化合物を作成すること
 ④ 不可能を可能にするような手法を編み出すこと...です。

少し難しいので例えて言います。①はニュートンが万有引力の法則を見つけたこと。②は山中伸弥先生が体細胞のES細胞化の法則を発見しiPS細胞を作り出したこと。③はフレミングがペニシリンを、遠藤章先生がコレステロールを下げるスタチンを発見したこと。④はCTスキャンやMRIなど検査機器が開発されたこと...などです。つまり、何か皆の役に立つ素晴らしいことを生み出すことが研究なのです。

「研究」を支えるのは「科学」です。では「科学」とは?

科学は、「自然科学」と「応用科学」に大別されます。

辞典によると「自然科学」とは、自然界における本質的な現象を見いだし、その現象の把握に必要な概念を確立し、現象を支配する法則を発見することです。簡単に言えば、数学や物理学です。一方、「応用科学」とは、「自然科学の成果を実用的に使えるものにすること」を目指す学問で、例えば材料力学や流体力学です。

もう少し分かりやすく言いますと、ロボットを作るための基礎となる理論が「自然科学」で、実際ロボットを作るために必要になる技術が「応用科学」です。この枠組みの中で、学問を発展させることが「研究」で、目指すのは「技術革新」、「現実世界への貢献」です〈図1〉。

図1 自然科学と応用科学の関係
図1 自然科学と応用科学の関係

医学には三つの顔

興味深いことに、医学には「自然科学」と「応用科学」の両面があり、これが医学の面白いところであり、同時に複雑なところです。

つまり、「基礎医学」と呼ばれる細菌学や分子生物学、薬理学、遺伝学などの「自然科学」と、その自然科学を応用した「臨床医学」と呼ばれる内科学、外科学、小児科学などの「応用科学」があり、医学の両面となっています。

さらに医学には、この基礎医学と臨床医学とは別の体系として、疫学があります。これは、医学研究に独特なもので、皆さんの健康状態の〝国勢調査〟のようなものです。つまり、どのような病気が、どのような衛生状態・健康状態の中で生じやすいかをとらえるもので、医学研究を始めるうえで基礎となります。

最良の医学を届けるための臨床研究

少し理屈っぽくなりましたが、ここまでをまとめると、「医学研究」とは、「基礎医学」、「臨床医学」、「疫学」にもとづく科学研究のことです。 この中で、病気に苦しむ患者さんへ最良の医療を届ける「臨床医学」の発展のために行う研究が「臨床研究」であり、それは「実際の臨床」をよりよくするために行う研究なのです。

皆さん方の主治医から「いま、このような臨床研究を進めています。この研究に参加、協力していただけませんか?」とお誘いがあった方はたくさんおられるのではないでしょうか?

皆さんの中には、医療スタッフは患者さんをきっちり診療できる「実際の臨床力」があれば、それでいいのではないか、なぜ臨床研究をしなくてはならないのか、と不審に思われた方も多いと思います。

医療スタッフは、なぜ臨床研究をすべきか? 最良の医療を届ける「臨床医学」を発展させ、「実際の臨床」をよりよくするために必要だと、すでに説明しましたが、この点はあとで詳しく説明します。

原因不明の〝海軍病〟─パンと白米

まず、臨床研究がいかに重要か、歴史的に有名な研究を紹介します。

現在、臨床研究は欧米の方がより盛んで、日本は周回遅れですが、意外なことにこの研究の重要性をいち早く認識していたのは日本でした。

明治時代、海軍は長い航海に出ることが多く、原因不明の病気で多くの兵士が亡くなりました。海軍の軍医トップの高木兼寛は、留学していたイギリスの海軍兵士はこの病気にならないことに注目、イギリスと日本の差はパン(麦)と白米の違いによるのでは、と考えました。

そこで、次のハワイへの航海では、白米をやめてパン食と肉食にする実験をしたところ、この病気にかかる船員は激減したのです〈図2〉。

図2 高木兼寛による臨床研究

図2 高木兼寛による臨床研究

まさに「臨床研究」の成果です。後にこの病気は、ビタミン不足によって生じる脚気であることが判明しました。長い航海では新鮮な野菜が食べられないのですが、この時麦芽がそのビタミンB1不足を補って脚気を防いでいたのです。余談ですが、脚気は、足の腱反射が悪くなるだけでなく、心不全も起こるのです。これを「脚気心」と言います。

しかし、陸軍の対応は違っていました。当時はドイツ医学、なかでも細菌学が全盛の時代でしたから、「これは何らかの細菌によるもので、細菌に打ち勝つためには体力をつけよう、そのために高価な白米を兵士に食べさせよう」と決断しました。その結果、日清戦争、日露戦争でこの病気で亡くなった方は、〈図3〉のように海軍と陸軍でまったく異なりました。

図3 臨床研究の必要性と重要性

図3 臨床研究の必要性と重要性

この陸軍軍医のトップは、ドイツ留学から帰国した森鷗外でした。文豪森鷗外は医者だったのです。森は、臨床を重視するイギリス流の実学的医学を蔑視して次のように述べています。

「今の医界の重鎮には、なお英米医業の弊害を受けて、而して自らそれを悟らずに英米医の実学を称揚する者あり。彼らの実学は自然科学とその方法論に何の関係かあらん」

でも、高木兼寛の臨床研究─米を主食にした時と小麦を主食にした時で、航海中に原因不明の病気になる確率に差が出るかという研究─は、戦死者よりはるかに多い人たちの命を救ったのです。

医学の発展にも患者さんにも必要

このエピソードから、臨床研究がいかに重要で、多くの命を救う可能性があるということが、お分かりいただけたかと思います。

しかし、先に触れましたように、皆さんのなかには「医師、看護師、検査技師、薬剤師はそれぞれの持ち場で診療をすることが業務であり、研究が業務ではない。医学研究は、大学や研究所、製薬、医療機器メーカーの研究員が行えばいいことで、医療関係者はその発見・発明の利用者であればいい」と思われている方も多いはずです。

私も循環器内科医ですが、同時に臨床研究開発部という臨床研究を行う職に就いています。日本で指導的立場にある病院は、「臨床研究を行う部、支援する部」をつくっています。

臨床研究が必要なわけを、広い視点に立って整理してみましょう。

第一は、医学の発達は、「基礎医学研究者のみならず、実臨床に携わる医療関係者の臨床医学研究によるもの」だからなのです。医学の教科書は、先人たちの臨床医学研究の成果によるもので、これがなければ、医学のさらなる発達はあり得ません。

第二は、医療を受ける患者さんへの貢献です。私たち医療関係者は「人の役に立ちたい、病める方の役に立ちたい」と思っています。そのための最も確実な貢献方法は、医学研究を行うことなのです。

第三は、医学研究が医療における原油のようなものだからです。原油が産業の基盤であるのと同様に、医学研究で成果を出せば、医療界のみならず経済界においてもわが国が、優越性を保つことになります。

日本の医薬品メーカー、大学医学部・薬学部も頑張って新薬をだしていますが、その開発は明らかに海外メーカーの後塵を拝しています。また、応用医学の成功例であるCTやMRIも、海外に依存しています。

第四は、知的好奇心です。人間は、新しいこと・未知なことを知りたいという欲求があります。これを満足させるのが研究です。まさに「趣味と実益をかねる」構図になっているのが「臨床研究」です。

わが国の臨床研究の現状

日本の臨床は、世界の中でも優れたレベルにあります。しかし、最近、医薬品・医療機器が輸入超過になっていることがよく指摘されています。
循環器分野でも、ペースメーカー、植え込み型除細動器、冠動脈内ステントなど、医療機器の分野でその傾向が顕著です。これらの高価な医療機器には日本製がほとんどないのです。

さらにこれらの医療コストは保険料や税金で支えられているので、その医療コストは外資系メーカーを通じて海外に流れていきます。せっかく日本が車産業で稼いだ外貨が、医療を介して国外に流れていくわけですから、日本経済に対してブレーキになります。

でも必要なものは輸入してでも患者さんに対して使わなければならない、というジレンマがあります。どうしますか?

この対策の一つとして、新しく開発されたいろいろな医療技術を、確実に患者さんに還元するのに必要な臨床研究の充実、さらに国家としての取り組みが必要です。私たちが「臨床研究」をしなければ、新しい医療技術を世の中に送り出すことができないのです。

日本の論文数 世界25位にダウン

基礎研究が発表される主要学術誌(Nature、Scienceなど)では、日本の論文数はまだ世界のトップレベルを維持しています。しかし臨床関係の主要学術誌(New England Journal of Medicine、Lancetなど)では、残念ながら日本の論文数は少なく、論文数は現在世界の25位なのです。しかも残念なことに、減少の一途をたどっているのが現状です〈図4〉。世界の国々と比べてもお粗末です〈図5〉。

図4 わが国の医学論文数の国際順位の推移

図4 わが国の医学論文数の国際順位の推移

図5 各国の臨床研究医学論文数

図5 各国の臨床研究医学論文数

この理由には、様々なことが考えられますが、医師を含む研究者の臨床研究に対する認識、および危機感の不足が一因と思います。今後、医療関係者は、自らの意識改革を進める一方、医学会や国に積極的に働きかけて、臨床研究を取り巻く環境を改善する必要があります。

具体的に臨床研究とは?

臨床研究は、人を対象に病気の予防、診断、治療方法の改善、病気の原因、病態の理解、患者の生活の質の向上を目的として実施される研究です。この臨床研究には、「介入を伴う」場合と、「介入を伴わない」場合があります。(以下の14行は、やや難解ですので関心がなければ読み飛ばしてくださって結構です)

介入を伴う場合とは、臨床研究に関する倫理指針などの定義によると、予防、診断、治療、看護ケア、リハビリテーションなどについて、次の 行為のことをいいます。

① 通常の診療を超えた医療行為であって、研究目的で実施する場合
② 通常の診療と同じ行為であっても、研究に参加、協力される患者さんの集団を原則として2グループ以上に分け、それぞれに異なる治療方法、診断方法、予防方法、その他の健康に影響を与えると考えられる要因について、それぞれのグループに割り付けして、その効果などをグループ間で比較する場合

介入を伴わない場合は、患者さんからいただいた血液などの試料や検査データを用いた研究であって、疫学研究(特定の集団の中で出現する健康に関する様々な事実と現象の頻度、分布、それらに影響を与える要因を明らかにする研究)を含まない場合で、「観察研究」と呼びます。
つまり、介入を伴わないのが観察研究です。

以上の14行を簡単に言うと、通常の医療行為を越えて研究を行い、人に対して肉体的・精神的ストレスを与えることが「介入研究」となります。例えばAとBという高血圧の薬があったときに、どちらの薬剤で治療したほうが心筋梗塞を起こしにくいか検討する、という研究は「介入研究」となります。

介入研究は、臨床試験とほぼ同義語で、臨床研究の中で重要な部分を占めています。

医学研究の全体図

医学研究を分かりやすくまとめると、〈図6〉のようになります。医学研究の中には、基礎研究、疫学研究、臨床研究があります。さらに臨床研究の中に、観察研究と臨床試験があり、臨床試験の中に治験、医師主導治験、先進医療があります。

〈図6〉の中の「治験」は通常、医薬品メーカーや医療機器メーカーが行い、新薬の薬事申請をめざすものです。皆さん方が病院から処方される薬は、この「治験」という「臨床研究」で効果があると厚生労働省が承認した薬なのです。

図6 医学研究

図6 医学研究

医薬品メーカーが行わない治験は、医師主導型治験として医者が行うことがあります。この場合、資金提供者は国や財団となり、国や財団が支援して、医師が行う研究になります。〈図7〉

図7 わが国の臨床研究の仕組み

図7 わが国の臨床研究の仕組み

医薬品、医療機器メーカーが行わない治験とは、どのような場合でしょうか? メーカーは民間企業ですから、社会貢献とともに利益を追求しなくてはなりません。「治験」にかかるコストに対して、十分に利益が上がらないと予想された薬剤や医療機器は、いくら社会貢献度が高く医学的重要性があったとしても「治験はしない」と判断します。

となると、海外では承認されている薬剤が、国内メーカーが治験をしないために、日本の患者さんたちには使用できない、ということが起こり得ます。これをドラッグラグといいます。「ドラッグ」は薬、「ラグ」は遅れという意味です。日本人の患者さんに対してある有用な薬剤の利用が遅れる、または永遠に使えない可能性もあります。

このような状態のとき「わが国でもその薬剤は国民にとって大切だ」と医師・厚生労働省が判断すれば、医師主導型治験の出番となります。

また、大学など研究機関が新薬と期待される物質を開発したとき、医薬品メーカーは、新薬開発のリスクが高いために治験できない、ということがあり得ます。このようなときも医師主導型治験を行うことがあります。これらは企業の治験と同様にGCP(Good Clinical Practice)という法律で規制されます。

臨床研究に参加いただく方へのお願い

私たち医療関係者は、皆さん方に臨床研究への参加をお願いすることがあります。その際、皆さん方に心がけていただきたいことがあります。
まず、1)倫理審査委員会をパスした研究なのか、2)研究の説明を受けたうえで書面での同意を得ようとしているのか、という2点に留意していただく必要があります。

臨床研究参加の話があったときは、「むやみに引き受けるのでもなく、頭から断るのでもなく、よく説明を聞いて」ご自分の意志で参加・不参加を決めることが大切です。よく説明を聞いたうえで臨床研究に参加しても、その参加を撤回するのは自由です。

むやみに理由なく参加を断るのはあまりよくありませんが、例えば、その臨床研究で使われている薬がどうしても体に合わない場合、同意を撤回するのは何ら問題ではありません。

もう一つ知っておいてほしいことがあります。臨床研究に参加することはすぐにはあなたの治療に役立ちませんが、あなたの将来、もしくはお子さん、お孫さんの世代にとって、とても大切な知識を提供することになります。臨床研究の成果は、現在のあなたから未来のあなたとあなたに続く子孫への贈り物なのです。

観察研究から臨床試験へ

臨床研究には、すでに説明しましたように観察研究と臨床試験とがあります。このうち観察研究はすべての医学研究の基礎になるものです。基礎研究から、なにか臨床研究のアイデアを思いついたとき、観察研究を、臨床試験に入るための下調べとして行います。

例えば、「ある高血圧の薬」(仮に「高血圧薬A」)が心不全に有効であることを、マウスやラットを使った基礎研究からヒントを得たとします。そこから、すぐに臨床試験に入るわけにいきません。

というのも、臨床試験は、科学性と倫理性に基づき患者さんにご参加いただく貴重な研究ですから、その薬剤に証拠(エビデンス)のみならず、臨床的にも効果がありそうだというエビデンスが必要となります。そこで、観察研究をします。

これまでに高血圧で受診された患者さんの診療データをもとに、「高血圧薬A」を処方されていたグループと、別の高血圧の薬を処方されていたグループを比べると、心機能の改善率は明らかに「高血圧薬A」を使ったグループの方が高かったという結果が出たとします。

そこで、心不全の患者さんに「高血圧薬A」を投与する臨床試験(介入試験)を行い、心不全に効果があるかどうかを確かめます。

一方、介入試験ができない場合でもエビデンスは当然必要です。

例えば、重症心不全で僧帽弁逆流がある患者さんについて、僧帽弁の手術をするか、しないかの二つのグループに分け、比較することは医療倫理上許されません。でも、本当に手術をすることは正しいのかという臨床上の疑問にこたえるエビデンスは必要です。

重症心不全で僧帽弁逆流がある患者さんを手術すると、その侵襲(身体的負担)のため、かえって予後を悪くする可能性もあるからです。

そこで、これまでの患者さんで、重症心不全で僧帽弁逆流があり、実際に手術が必要になった患者さんと、手術を受けなかった患者さんのデータをもとに予後を観察したところ、手術という侵襲を与えてでも、僧帽弁逆流を改善したほうが、断然予後がいいという結果が出てきました。こうした観察研究の結果を踏まえ、臨床試験に入るわけです。

(観察研究には、横断研究、前向き観察研究、後ろ向き観察研究、ケースコントロール研究などの種類がありますが、ここでは名前だけ挙げておきます)

観察研究を行うときは、施設内の倫理審査委員会の承認が必要となります。また多施設で行うときは、すべての施設の倫理審査委員会で了承が必要となります。

臨床試験の数多くの段階

臨床試験を進めるには、数多くの段階が必要で、開始から結果の公表までに相応の時間がかかります〈図8〉。研究期間は、短いものでも数年、

図8 臨床研究の流れ

図8 臨床研究の流れ

長いものでは10年近くかかるものがあります。

さらに2018年から、一部の臨床研究は「臨床研究法」という法律のもとに行うことが義務づけられました。研究者だけでこの法律に対応するのはほぼ不可能ですから、臨床試験の企画・運営を支援する体制の整備が、臨床研究に取り組む医療機関の緊急の課題になっています。

臨床研究を推進するうえで重要となるのは、臨床研究ネットワークの構築です。循環器病分野でも、様々な臨床研究ネットワークが存在します。大学病院を中心としたネットワークが多いのですが、全国的な臨床研究ネットワークも数多く存在しますし、研究対象も臨床試験だけでなく、患者さんを登録して経過などをたどっていく疾患対象登録研究なども多く行われています。

われわれも、J-WIND、ABC、PPAR試験と名づけられた循環器病の臨床試験で全国の多施設の先生方と臨床研究ネットワークを構築させて頂いており、世界レベルの臨床研究ネットワークチームへと展開できるように努力しています。

研究の質を担保するうえで、臨床研究を遂行できる病院をさらに増やすことが必要です。そのためには、研究責任者およびネットワーク事務局のやる気が一番大事ですし、わが国の病院が、臨床研究を通常業務として行える病院へ変化していくことが期待されています。

臨床研究がなぜ必要か、患者さんの参加がどれだけ重要か、さらに高齢化が容赦なく進む日本の医療の将来は、まさに臨床研究の進展なしに は考えられないことを説明してきました。

難しい説明で分かりにくい部分もあったと思いますが、強い意思と意欲のある病院が連携して、わが国から世界に通用するエビデンスが数多く発信されることを願っていること、そのために患者の皆さんのご協力と参加がいかに大切かをご理解いただければ幸いです。

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