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[123] いざというときの救命処置

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
文章・図表・イラスト等の転載・引用のご相談は循環器病研究振興財団までご連絡ください。

国立循環器病研究センター
心臓血管系集中治療科 医長
田原 良雄

できる範囲で救命処置を

もくじ

  1. 命をつなぐリレー “救命の連鎖”
  2. 市民による救命効果はどれほど?
  3. 三つのキーワード
  4. 救命処置の実際
  5. “救命の連鎖” 四つ目の輪
  6. おわりに

日曜日の朝、自宅のリビングでくつろいでいたおじいちゃんが、急に意識を失って倒れたらどうしますか?

すぐに声をかけ、返事がなければ家族を大声で呼んで、119番通報し、次におじいちゃんが息をしているか確かめるため、胸の動きをよく見て...など、自分の大切な家族、友人、そして隣人が突然倒れたときに具体的に行動できるように救命処置を身につけておきたいものです。今回は、緊急の場合、大切な人の命をどう守るかがテーマです。

この冊子では「JRC蘇生ガイドライン2015」(医学書院)に準拠した「改訂5版 救急蘇生法の指針2015(市民用)」(へるす出版)を参考に、突然倒れた人に対して行う胸骨圧迫(心臓マッサージ)とAED(自動体外式除細動器)を使用した救命処置を中心に解説します。

命をつなぐリレー “救命の連鎖”

急に意識を失って倒れた人の命を救い(救命)、元の生活に戻れるまで回復(社会復帰)させるためには「命をつなぐリレー」が必要です。 それをまとめたのが〈図1〉で“救命の連鎖”といいます。

図1 救命の連鎖

救命の連鎖

一つめの輪は心停止の予防、二つめの輪は早期認識と119番通報、三つめの輪は迅速な救命処置(胸骨圧迫とAED)、四つめの輪は医療従事者による高度な救命医療です。この場合の心停止の予防は、急性心筋梗塞や脳卒中の初期症状に早く気がついて救急車を呼ぶことを指します。このうち、一般の人に期待されるのは一つめから三つめの輪の部分です。これらがうまくつながった場合、効果はどれほどでしょうか。

大した効果がなければそれなりの対応でよいのですが、実は皆さんが想像される以上の効果が実証されているのです。救命処置は、命を大切 にする現代人に身につけてほしい“必須マナー”なのです。

市民による救命効果はどれほど?

心臓と呼吸が止まってから時間の経過とともに救命の可能性は急激に低下しますが、救急隊を待つ間に居合わせた市民が救命処置をした場合、救命の可能性が2倍程度、高まることがわかっています。

わが国では119番通報をしてから救急車が現場に到着するまでにかかる時間は全国平均で8.6分です。

救急車の現場到着から救急隊が患者に接触するまでにさらに数分を要することがあり、その間、約10分間があなたの対応にかかっています。

わが国で市民がAEDを使用することで社会復帰したと推定される患者数は2005年の年間6人から2013年は201人へと増加しています。

図2 社会復帰率でみた、市民による救命処置の効果(%は社会復帰率)

社会復帰率でみた、市民による救命処置の効果

〈図2〉の上のグラフをご覧ください。突然、心停止し倒れた人に、居合わせた市民が救命処置を実施した場合、1か月後の社会復帰率は 11.7%(オレンジ色)。しなかった場合は4.7%(青色)。市民の救命処置で助かり、社会復帰できる率は約2.5倍に高まるのです。

次に〈図2〉の下のグラフを見てください。心停止し倒れた人に市民が救急隊の到着前にAEDを使用して電気ショックを実施した場合、1 か月後の社会復帰率は46.1%(オレンジ色)でした。

一方、119番通報で駆けつけた救急隊が電気ショックを実施した場合の1か月後の社会復帰率は20.3%(青色)と半分以下で、現場で市民がいち早くAEDを使うことがいかに重要か納得されるはずです。

そばに居合わせた市民による「救命処置の実施率」は、1994年は13.4%でした。それが2015年には48.1%と3.5倍以上になっており、この流れをさらに強め、より安全な社会を目指す必要があります。(救命効果のデータは「平成28年度版 救急救助の現況」などから引用)

三つのキーワード

これから説明する救命処置は、停止した心臓の働きを補助し、回復させることです。心臓が止まると約15秒で意識が消失し、そのままの状態が続くと脳機能の回復は困難となります。

まず、次の三つの用語について説明します。

1) 胸骨圧迫

一般に「心臓マッサージ」といわれるものは、正確には「胸骨圧迫」のことです。心臓が止まっている間、胸骨を圧迫し心臓に栄養を与える冠状動脈や脳に血液を送り続けることは、AEDによる心拍再開の効果を高めるためにも、心拍再開後に脳に後遺症を残さないためにも重要です。胸骨圧迫は、強く、速く、絶え間なく行うことが大原則です。

2) 人工呼吸

胸骨圧迫と人工呼吸を組み合わせて行う「心肺蘇生法」は、呼吸が止まり、心臓も動いていないとみられる人の救命のチャンスを維持するための血液循環の方法です。効果的に実施するには、講習を受けて人工呼吸法も習得しておくことが大切ですが、講習を受けていなければ、とりあえず胸骨圧迫だけを行うことが勧められています。

これは人工呼吸の重要さを否定するものではありません。倒れた人の口に接して“口対口”で行われる方法は一般の人に抵抗感が強いこと、講習を受けていなければ実施が難しいという現実を踏まえての判断です。

この冊子の読者は、講習は受けておられない方が多いと考え、人工呼吸の方法は省略しました。講習会があればぜひ受講してください。

[注] 子どもの心停止の大部分は、窒息や溺水などで呼吸停止から心停止に至る「呼吸原性心停止」です。この場合、人工呼吸で血中に酸素を取り込まないと、胸骨圧迫をしても脳へのダメージは防げません。プール監視員や教職員など、こうしたケースに対応する立場の方は人工呼吸も習得すべきです。

3) AED

突然の心停止は、心臓が細かくふるえる「心室細動」によって生じることが多く、この場合、心臓の動きを戻すため、電気ショックを与えてふるえを止める「除細動」が必要になります。その装置がAED(自動体外式除細動器)で、心停止から電気ショック実施までにかかる時間が、まさに患者さんの生死を分けることになります。

AEDは2005年にわが国では、わずか1万1千台でしたが、2013年には43万台に増え、公共施設などでよく見かけるようになりました。

救命処置の実際

突然倒れた人のそばに、あなたが居合わせたという状況で、救命処置の実際を〈図3〉の「市民が行う救命処置の手順」の流れに沿って説明 します。手順は、倒れた人が成人、子どもいずれの場合も同じです。

図3 市民が行う救命処置の手順

市民が行う救命処置の手順

1) 安全を確認

誰かが突然倒れるところを目撃したり、倒れているところを発見したりしたら、まず周囲の状況が安全かどうかを確かめます。車の往来がある、室内に煙が立ち込めているなどの場合、他の場所に運び出すなど状況に応じて安全を確保しましょう。

2) 反応を確認

次に、患者さんの反応を確認します〈図4〉。患者さんの肩をやさしくたたきながら大声で呼びかけたときに、目を開けるなどの応答やしぐさがあれば、反応があると判断します。

突然の心停止が起こった直後には引きつるような動き(けいれん)が起こることもありますが、この場合は呼びかけに反応しているわけではないので、「反応なし」と判断してください。

「反応なし」と判断した場合や、その判断に自信が持てないときは、心停止の可能性を考えて行動します。「誰か来てください!人が倒れています!」などと大声で叫んで応援を呼んでください〈図5〉。

図4 反応を確認する
図5 大声で叫び応援を呼ぶ

3) 119番通報しAEDを手配する

そばに誰かがいる場合は、その人に119番通報をするよう依頼します〈図6〉。また近くにAEDがあれば、それを持ってくるよう頼みます。「あなた、119番通報をお願いします!」、「あなた、AEDを持ってきてください!」など、具体的に依頼するのがよいでしょう。

119番通報をすると電話を通じ、あなたや応援に来てくれた人がすべきことを指導してくれます〈図7〉。AEDが近くにある場合、その場所を教えてもらえることもあります。電話を通じ「胸骨圧迫ができますか?」と尋ねられるので自信がなければ指導を求め、落ち着いて従ってください。

大声で叫んでも誰も来ない場合は、胸骨圧迫を始める前に119番通報とAEDの手配をあなた自身が行わなければなりません。

この場合、AEDを取りに行くために患者さんから離れてよいのか心配になるかもしれません。すぐ近くにAEDがあることがわかっていれば、あなた自身でAEDを取りに行ってください。

図6 119番通報とAED手配を依頼する
図7 通信指令員による口頭指導

4) 呼吸を観察する

心臓が止まると普段どおりの呼吸ができなくなります。呼吸を観察するには、胸の動き(呼吸をするたびに上がったり下がったりする)を見て、普段どおりの呼吸があるかどうかを観察します〈図8〉。

胸が動いていなければ、呼吸が止まっていると判断します。呼吸が止まっていれば心停止とみなし、胸骨圧迫を開始してください。

一方、突然の心停止直後には「死線期呼吸」と呼ばれる“しゃくりあげるような”途切れ、途切れの呼吸に似た動き(ただし、呼吸をするたびに胸は上がったり下がったりしない)がみられることも少なくありません。

このような死線期呼吸がみられたら心停止と考えて、胸骨圧迫を開始してください。普段どおりの呼吸かどうかがわからないときも胸骨圧迫を始めてください。

呼吸の観察に10秒以上かけないようにします。約10秒かけても判断に迷う場合、普段どおりの呼吸がない、つまり心停止とみなしてください。

反応はないが普段どおりの呼吸がある場合には、様子をみながら応援や救急隊の到着を待ちます。とくに呼吸に注意して、呼吸が認められなくなったり、呼吸が普段どおりではなくなったりした場合は、心臓が止まったとみなして、ただちに胸骨圧迫を始めてください。

図8 普段どおりの呼吸があるかどうかを観察

5) 胸骨圧迫を行う

呼吸の観察で心停止と判断したら、ただちに胸骨圧迫を開始します。

(1) 圧迫する場所

胸の左右の真ん中に「胸骨」と呼ばれる縦長の平らな骨があります。圧迫する部位はこの骨の下半分です。この場所を探すには、胸の真ん中(左右の真ん中で、しかも、上下の真ん中)を目安にします〈図9〉。

図9 胸骨圧迫をする場所

(2) 圧迫の方法

胸骨の下半分に一方の手のひらのつけね(手掌基部)を当て、その手の上にもう一方の手を重ねて置きます。重ねた手の指を組むとよいでしょう。圧迫は手のひら全体で行うのではなく、手のひらのつけねだけに力が加わるようにしてください。

指や手のひら全体に力が加わって肋骨が圧迫されるのは好ましくありません。垂直に体重がかかるように両ひじをまっすぐに伸ばし、圧迫部位(自分の手のひらのつけね)の真上に肩がくるような姿勢をとります〈図10〉。

図10 胸骨圧迫の方法

胸骨圧迫の方法

(3) 圧迫の深さとテンポ

患者さんの胸が約5cm沈み込むように強く、速く圧迫を繰り返します。圧迫の強さが足りないと十分な効果が得られないので、しっかり圧迫することが重要です。こわごわと圧迫したのでは深さが足りず、十分な効果が得られません。強く、速く圧迫するよう心がけましょう。圧迫のテンポは1分間に100~120回で、圧迫は中断せずに続けます。

(4) 圧迫の解除

圧迫と圧迫の間は、患者の胸が元の高さに戻るように十分に圧迫を緩める(解除する)ことが大切です。ただし、圧迫を緩めるため自分の手が患者の胸から離れると、圧迫位置がずれることがあるので要注意です。

(5) 救助者の交代

成人の胸が約5cm沈むような力強い圧迫を繰り返すには体力を要します。疲れてくると気がつかないうちに圧迫が弱くなったり、テンポが遅くなったりするので、常に意識して強く、速く圧迫します。

手伝ってくれる人がいる場合は、胸骨圧迫200回を目安に役割を交代します。これはあくまで目安で、胸骨圧迫は短時間で疲れるので頻繁な交代が必要になります。交代による中断時間をできるだけ短くしましょう。

6) 胸骨圧迫30回と人工呼吸2回の組み合わせ

講習を受けていて、人工呼吸を行う場合は、胸骨圧迫に人工呼吸を組み合わせます。胸骨圧迫30回に人工呼吸2回のペースで続け、救急隊員と交代するまで繰り返します。

すでに説明しましたが、人工呼吸に自信がない場合や、患者さんの口に直接接触することにためらいがある場合は、胸骨圧迫だけ続けてください。

7) AEDを使用する

次はAEDの出番です。AEDは、音声メッセージとランプですべきことを指示してくれるので、それに従ってください。胸骨圧迫は、AEDによる心電図解析や電気ショックなど、圧迫を中断せざるを得ない場合を除いて、できるだけ絶え間なく続けることが大切です。

(1) AEDを持ってくる

AEDは人の目につきやすい場所に置かれています。多くの場合、AEDのマークが目立つように貼られた専用のボックスの中に置かれています。取り出すためボックスを開けると、警告ブザーが鳴ります。ブザーは鳴りっぱなしにしたままでよく、すぐに患者のもとに持参してください。

日ごろから、いざというときに備え自分の職場や通勤途中のどこにAEDがあるかを把握しておきましょう。設置場所がわかる「全国AEDマップ」が公開されており(URL: https://www.qqzaidanmap.jp/)、厚生労働省が設置場所の登録を呼びかけています。

(2) AEDの準備

胸骨圧迫を行っているときにAEDが届いたら、ただちにAEDを操作しやすいよう、患者の頭の近くに置きます〈図11〉。

図11 AEDを患者の頭の近くに置く

(3) 電源を入れる

AEDの電源を入れます〈図12〉。機種によって、ボタンを押して電源を入れるタイプと、ふたを開けると自動的に電源が入るタイプがあります。

電源を入れたら、以降は音声メッセージとランプに従って操作します。

図12 AEDの電源を入れる

(4) 電極パッドを貼り付ける

患者の胸から衣服を取り除き、胸がはだけるようにします。ボタンやホックが外せず、衣服を取り除けない場合は衣服を切る必要があります。

AEDのケースに入っている電極パッドを袋から取り出します。電極パッドや袋に描かれているイラスト〈図13〉に従い、2枚の電極パッドを肌に直接、貼り付けます〈図14〉。

イラストにある貼り付け位置は、胸の右上(右側の鎖骨の下で胸骨の右)と、胸の左下側(脇の下から5~8cm下、左乳頭の斜め下)です。手伝ってくれる人がいる場合は、電極パッドを貼り付ける間も胸骨圧迫を続けます。

電極パッドは患者の肌にしっかり密着させます〈図15〉。電極パッドと肌の間に空気が入っていると電気がうまく伝わらないからです。

機種によっては、電極パッドから延びているケーブルの差し込み(プラグ)をAED本体の差し込み口に挿入する必要があります。

図13 電極パッドの貼り付け位置が図示されている

図14 胸をはだけて電極パッドを肌に貼り付ける

図15 電極パッドは肌に密着させる

電極パッドは肌に密着させる

(5) 心電図の解析

電極パッドが肌にしっかり貼られると、そのことをAEDが自動的に感知して、「体から離れてください」などの音声メッセージとともに、心電図の解析を始めます。周囲の人にも患者から離れるように伝え、誰も患者に触れていないことを確認してください〈図16〉。患者の体に触れていると、心電図の解析がうまく行われない可能性があります。

図16 誰も患者に触れていないことを確認する

(6) 電気ショックと胸骨圧迫の再開

①電気ショックの指示が出たら
AEDは心電図を自動的に解析し、電気ショックが必要な場合には、「ショックが必要です」などの音声メッセージとともに自動的に充電を開始します。周囲の人に患者さんの体に触れないよう声をかけ、誰も触れていないことをもう一度確認します。
充電が完了すると、連続音やショックボタンの点灯とともに「ショックボタンを押してください」など電気ショックを促す音声メッセージが流れます。これに従ってショックボタンを押して電気ショックを行います〈図17〉。このときAEDから患者さんに強い電気が流れ、体が一瞬ビクッと突っ張ります。
電気ショックのあと、「ただちに胸骨圧迫を開始してください」などの音声メッセージが流れるので、それに従ってください。

図17 ショックボタンを押す

②ショック不要の指示が出たら
AEDの音声メッセージが「ショックは不要です」の場合は、ただちに胸骨圧迫を再開します。「ショックは不要です」は、胸骨圧迫が不要だという意味ではないので、誤解しないでください。

(7) 胸骨圧迫とAEDの手順の繰り返し

AEDは2分おきに自動的に心電図解析を始めます。そのつど、「体から離れてください」などの音声メッセージが流れます。胸骨圧迫中はこの音声メッセージを聞きのがさないようにして、メッセージが流れたら患者から手を離すとともに、周囲の人にも離れるよう声をかけ、離れていることを確認してください。

以後も同様に胸骨圧迫とAEDの手順を繰り返します。

(8) AEDに関する特に注意をはらうべき状況

電極パッドを貼り付けるとき、とくに注意すべき点があります。

① 患者の胸が濡れている場合
パッドがしっかり貼り付かないだけでなく、電気が体表面の水分を伝わって流れ、AEDの効果が不十分になります。乾いた布やタオルで胸を拭いてから電極パッドを貼り付けてください〈図18〉。

図18 胸が濡れている場合

② 貼り薬がある場合
貼り薬や湿布薬が電極パッドを貼り付ける位置に貼られている場合には、まずこれを剥がします。肌に残った薬剤を拭き取ってから、電極パッドを貼り付けます。貼り薬の上から電極パッドを貼り付けると電気ショックの効果が弱まったり、貼り付け場所がやけどしたりするからです。

③ 医療器具が胸に植え込まれている場合
皮膚の下に心臓ペースメーカーや除細動器を植え込む手術を受けている患者さんでは、胸に硬いこぶのような出っ張りがあります〈図19〉。
出っ張りがあれば、電極パッドは出っ張りを避けて貼り付けてください。

図19 医療器具が植め込められている場合

④ 小児用パッドと成人用パッドがある場合
小学生以上には成人用パッドを使用してください。成人用パッドの対象者に小児用を使うと電気ショックの効果が不十分になります。

8) 救命処置を続ける

救命処置は到着した救急隊員と交代するまで続けることが大切です。効果がなさそうに思えても、あきらめずに続けてください。

患者に普段どおりの呼吸が戻って呼びかけに反応したり、目的のあるしぐさが認められたりした場合は救命処置をいったん中断しますが、判断に迷うときは継続してください。

救命処置を中断した場合、反応の有無や呼吸の様子を繰り返しみながら救急隊の到着を待ちます。呼吸が止まったり、普段どおりでない呼吸に変化したりした場合はただちに救命処置を再開します。

再び心臓が停止しAEDが必要になることもありますので、電極パッドは患者の胸から剥がさず、電極も入れたままにしておいてください。

“救命の連鎖” 四つめの輪

一般の人が現場でできる“救命の連鎖”の一つめから三つ目の輪を解説してきました。あとは、四つめの輪である救急救命士や医師にバトンタッチされ、高度な救命医療によって、患者さんの心拍を再開し、専門医による集中治療によって社会復帰をめざします。

これには救急隊と医療機関との連携プレーが欠かせません。私どもの国立循環器病研究センターでは、吹田市の救急車から当センターに搬送中の患者さんの12誘導心電図、血圧、呼吸、脈拍などのバイタルデータや小型ビデオカメラによる患者さんの映像など、救命医療に必要なデータをインターネットを通じ送信してもらいます。その他の近隣の豊中市、箕面市、池田市、茨木市、摂津市などからは当センターのCCUホットラインに所見を電話連絡する方法で、早期診断や早期治療に役立てています。

心筋梗塞などで倒れ、AEDの処置で病院到着時に心拍が再開していても昏睡状態(意識が戻らない)の場合、通常の治療法では社会復帰率は30%未満でした。ところが、こうしたケースに体温管理療法(低体温療法)が行われると社会復帰率が50%以上にアップし注目されています。

一方、同じケースの患者さんで、病院到着時に心拍が再開していない最も重症な場合、通常の治療では社会復帰率は2%前後ですが、補助循環装置を使用した心肺蘇生法と緊急カテーテル治療および体温管理療法を含めた集中治療で社会復帰率は12%前後に上がってきました。

このように救命医療も大きく前進しています。

おわりに

実際の救命処置で重要なのは、あなたの大切な人、目の前で倒れた人の命を守るために「何か役に立つこと」をすぐに始めることです。もし目の前で倒れた人がいたら、勇気をもって、あわてずに、覚えていることをわずかでも実施してあげてください。あなたが一生懸命やっていれば、周囲の人たちもきっと行動を起こしてくれるはずです。

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