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[101] 睡眠時無呼吸症候群と循環器病─ そのいびきが危ない! ─

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
文章・図表・イラスト等の転載・引用のご相談は循環器病研究振興財団までご連絡ください。

2013年11月1日 発行

国立循環器病研究センター
呼吸器・感染症診療部 呼吸器科/感染症科
医療安全管理部 感染対策室
佐田 誠

イラスト:いびきは睡眠時無呼吸の前兆です

ここだけでも読んでください! ~時間のない方のために~

睡眠時無呼吸症候群は、文字通り寝ている間に何回も呼吸が止まる病気です。英語では Sleep Apnea Syndrome といって、頭文字をとって SAS(サスと読みます)と呼ばれています。睡眠中、平均して1時間に5回以上、それぞれ10秒以上呼吸が止まる場合は、この症候群の可能性があります。

国立循環器病研究センターでは年間約500人の方がこの検査を受け、うち約80%がこの症候群の疑いがあると診断されています。

この症候群は単に呼吸が止まるだけの病気ではありません。心臓、脳、血管に負担をかけるのです。実は、睡眠時無呼吸症候群があるだけで高血圧症、脳卒中、狭心症、心筋梗塞など循環器病を合併する危険が高まることがわかっています。無呼吸回数が多くなるにつれて、つまり重症になればなるほど、そのリスクは高くなります。

しかし、一方で、この症候群の治療をきちんと受けると、長生きできる可能性があることもわかっています。

いびきは無呼吸の前兆です。そのため、いびきは睡眠時無呼吸症候群の患者さんの多くに認められます。しかしこの症候群はいびき以外には自覚症状が出にくい病気です。昼間の眠気を自覚される方もいますが、それは半数程度で、なかなか自分だけではわかりにくい病気なのです。

周りの人から寝ている時のいびきや無呼吸を指摘されている方は、ぜひ専門医療機関を受診してください。そして、周りでいびきがひどい方や寝ている間に呼吸がしばしば止まる方がいたら、ぜひ受診を勧めてあげてください。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは

(1)「閉塞性」と「中枢性」の2タイプ

ここから睡眠時無呼吸症候群について詳しく説明します。

睡眠中10秒以上、呼吸が止まることを「無呼吸」と呼び、無呼吸にはなっていないけれども、もう少しで止まりそうな弱い呼吸を「低呼吸」といいます。

1時間あたりの平均の無呼吸と低呼吸の回数を「無呼吸・低呼吸指数」(AHI)(注1)といいますが、この指数が5以上(5未満は正常とされています)であれば異常と判定し、これを「睡眠呼吸障害」(SDB)(注2)といいます。

睡眠呼吸障害のなかで、日中の眠気や倦怠感などの症状を伴う場合、今回のテーマである「睡眠時無呼吸症候群」(SAS)と診断します。最近は、症状がなくても無呼吸・低呼吸指数が15以上ならばこの症候群と診断してよいことになっています。

睡眠時無呼吸症候群というと、いびきがひどくて、肥満の人を想像する方が多いと思います。もちろんこの症候群の患者さんにはそういう方が多いのですが、必ずしもすべての人が肥満でいびきがひどいというわけではありません。

実は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)は大きく分けて2種類あるのです。一つは、呼吸という運動は保たれているが上気道のどこかの閉塞によって鼻・口の気流が停止する「閉塞性(obstructive)」の睡眠時無呼吸症候群(OSASといいます)です。もう一つは呼吸運動そのものが停止する「中枢性(central)」の睡眠時無呼吸症候群(CSASといいます)です〈表1〉。

(注1)無呼吸・低呼吸指数AHIは,無呼吸(apnea)、低呼吸(hypopnea)、指数(index)の略。

(注2)睡眠呼吸障害SDBは、sleep(睡眠)disordered breathing(呼吸障害)の略。

表1 睡眠時無呼吸症候群(SAS) の分類

要するに、呼吸をしようとしているけれども上気道が何かの原因でふさがっていて息ができないのが「閉塞性」で、呼吸せよという脳からの信号自体が一時的になくなるのが「中枢性」ということになります。つまり、「閉塞性」ではいびきが生じますが、「中枢性」では基本的にいびきはかかないのです。

以下で、「閉塞性」は閉塞性睡眠時無呼吸症候群を、「中枢性」は中枢性睡眠時無呼吸症候群のことを示します。

(2)睡眠時無呼吸症候群の頻度は

図1 正確に診断されている睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者の割合

この症候群の患者さんは、どれくらいいるのでしょうか。「閉塞性」は世界的に有病率が高いことがわかっています。30~60歳を対象とした有名な米国の研究によると、無呼吸・低呼吸指数が5以上の睡眠呼吸障害の患者さんの割合は男性24%、女性9%で、うち症状がある睡眠時無呼症候群の割合は男性4%、女性2%であったと報告されています。

わが国では大規模な調査はなく、正確な「閉塞性」の有病率は明らかではありませんが、一般住民910人を対象とした調査では、無呼吸・低呼吸指数が10以上の「閉塞性」は男性3.3%、女性0.5%(全体で1.7%)という報告があります。

単純に計算すると、日本での患者数は約200万~300万人ということになりますが、実際はもっと多いのではないかと考えられています。正確に診断されている人が少ないことが問題視されており、治療の対象となる睡眠時無呼吸症候群の80~90%がはっきり診断されていないと言われています〈図1〉。

(3)この症候群が起こるメカニズム

図2 睡眠時無呼吸症候群のメカニズム

〈図2〉を見ていただきながら話を進めます。

「閉塞性」はどのようにして起こるのでしょうか。私たちはふつう寝る時は仰向けの時間が長いと思います。仰向けで寝ている時は重力の影響もあり、舌が下方(喉の奥の方向に)に少し落ち込みます(舌根沈下)。特に問題がなければその程度の舌の動きで気道が閉塞してしまうことはありません。

しかし、舌の周りに脂肪などの余分な組織が付着しているか、もしくはもともと気道自体が狭い人などでは、仰向けで寝た場合、そうした舌の下方への動きによって気道が狭くなり、極端な場合は気道を完全に塞いでしまうのです。これが「閉塞性」の正体です。ですから、肥満の方で頸部に脂肪が多く付着しているような場合は「閉塞性」を引き起こす可能性が高くなります。

しかし、リスクがあるのは肥満の方だけではありません。アジア、特に日本を含めた東アジアの人はあごが小さく、もともと気道が狭い人が多いとされており、肥満がなくても「閉塞性」が生じやすいと考えられているのです。

いびきは狭くなった気道を何とか空気が通過した時に発する音で、いわば気道が狭くなっていることを知らせる重要なサインです。肥満がなくても、いびきをよくかく方は「閉塞性」を疑ってみる必要があります。

一方、「中枢性」は脳の呼吸中枢から信号が送られないことによって生じる無呼吸です。「閉塞性」と違って上気道の状態に問題はありません。つまり、純粋な「中枢性」の患者さんはいびきをかきません。

「中枢性」がどのような仕組みで起こるのか、まだ十分に解明されていない部分が多いのですが、脳にある呼吸の司令塔の機能異常などが原因として考えられています。

なぜ循環器病の分野でこの症候群を扱うの?

睡眠時無呼吸症候群は1970年代あたりから世界的に認識されるようになりました。日本でも2003年の山陽新幹線の運転士の居眠りでにわかに注目され、広く一般の方にも知られるようになったと思います。

しかし、当初は多くの方が"いびきをかく人に多い病気で、睡眠中に何回も呼吸が止まり、熟睡できないため日中に眠気をもよおす"といった程度の理解だったのではないかと思います。もちろんそれも正しい認識なのですが、もっと重要なのは、睡眠時無呼吸症候群は高血圧症、脳卒中、狭心症、心筋梗塞など循環器病と密接な関係があることなのです〈表2〉。

表2 睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者は循環器病を合併しやすい

例えば、米国で18年間にわたり経過を調べた研究では、無呼吸低呼吸指数が5以上の睡眠呼吸障害があるだけで、心血管系疾患(循環器病)による死亡リスクが5.2倍に高まることがわかっています。こうした考え方が確立されてきたのは最近のことで、今や睡眠時無呼吸症候群は循環器病と言っても過言ではないほど、循環器病の分野で盛んに診療と研究が行われるようになってきました。

個々の疾患によって細かな状態は異なりますが、睡眠時無呼吸症候群によってもたらされる交感神経活動の亢進(こうしん)(自律神経の緊張状態)が、種々の循環器病の下地の一つになっている可能性が指摘されています。

つまり、無呼吸によって血液中の酸素濃度が下がり「低酸素血症」が生じて、心拍数や血圧が上昇します。血液中の酸素濃度は「動脈血酸素飽和度」(SpO2)という指標で表されますが、正常では96%以上なのに無呼吸時には簡単に90%以下に低下します。

驚くべきことに、これは"呼吸不全"になった時と同じで、通常は酸素吸入を必要とする状態なのです。体にとって非常事態ですから、当然心臓は反応し、心拍数を上げて体中に十分な酸素を供給しようとします。その結果、血圧も上がります。言い換えれば、日中に運動をしている時と同じような負担が心臓にかかるのです。

こうした非常事態が、毎晩、1時間に何回も、そして何年も繰り返されるわけですから、心臓に蓄積する負担は計り知れません。こうして交感神経の緊張状態が続き、種々の循環器病の発症や悪化に一役も二役も買っているのです。まさに"寝ている間に病気はつくられる"のです。

循環器病と睡眠時無呼吸症候群との関連

(1)「閉塞性」の場合

循環器病にかかりやすくなります。また、すでに循環器病を持っている場合、「閉塞性」があれば、その循環器病にさらに負担をかけてしまいます。

以下で主な循環器病との関連を解説します。

*高血圧

「閉塞性」であること自体、高血圧の原因になる可能性があります。「閉塞性」の患者さんの50%に高血圧が認められ、高血圧の患者さんの30%に「閉塞性」が認められると報告されています。

米国の調査研究によると、無呼吸・低呼吸指数が30以上の患者群と15未満の患者群を比較したところ、指数30以上の患者群の方が1.37倍高血圧になりやすいことがわかっています。また、薬物治療に抵抗性のある高血圧症の陰に「閉塞性」が隠れている可能性も指摘されています。

*心不全

「閉塞性」は心臓に負担をかけて、心機能を低下させる可能性があります。実際、心不全患者さんの11.37%は「閉塞性」を合併することが報告されています。男女別にみると、男性38%、女性31%と男性に多いようです。いくつかの経過を観察した研究によれば、「閉塞性」を合併している心不全患者さんでは、「閉塞性」を治療しないと死亡率が2~3倍高くなることもわかっています。

*脳卒中

米国での4年間にわたる研究によると、無呼吸・低呼吸指数20以上の睡眠時無呼吸症候群の患者さんでは、脳卒中を発症するリスクが4倍も高まりました。50歳以上の方を対象に平均3.4年間、経過をみた研究では、無呼吸・低呼吸指数が5以上の「閉塞性」の患者群は、脳卒中および死亡のリスクが「閉塞性」でない人の1.97倍になると報告されています。

*不整脈

「閉塞性」の患者さんは、不整脈を合併する率が高く、無呼吸・低呼吸指数の増加や低酸素血症の悪化に伴い、合併率が高まります。夜間の不整脈は「閉塞性」患者さんの50%近くに認められています。

睡眠中に比較的よく認められるのは、心房細動、非持続性心室頻拍、洞停止、2度房室ブロック、心室性期外収縮などの不整脈です。重度の「閉塞性」では夜間の不整脈の発症リスクが2~4倍高まることが明らかになっています。

*虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)

冠動脈に疾患のある患者さんで「閉塞性」を合併する率は、冠動脈に疾患のない場合の約2倍です。また、健康な人と比較した場合、「閉塞性」患者さんの虚血性心疾患の発症リスクは1.2~6.9倍と報告されています。平均10.1年間、経過を追跡したスペインでの研究によると、無治療の重症「閉塞性」患者群の心筋梗塞、もしくは脳卒中による死亡率は、健康な人比べ約3倍に達することがわかりました。

*突然死

「閉塞性」の患者さんが、深夜0時~午前6時に心臓が原因の突然死をきたすリスクは、「閉塞性」でない人に比べて2.57倍高いと報告されています。

(2)「中枢性」の場合

「中枢性」は、心不全をはじめとした心機能低下や脳卒中で比較的多く認められる無呼吸パターンで、多くの場合そうした心血管系の病気の結果として出現すると考えられています。

心不全患者さんで「中枢性呼吸障害」を合併する率は21~40%と報告されています。なかでも「チェーン・ストークス呼吸」(CSR)(注3)と呼ばれる呼吸パターンが特徴的で、心不全患者さんによくみられます〈図3〉。

図3 チェーン・ストークス呼吸を伴う中枢性睡眠時無呼吸症候群

これは無呼吸の後に呼吸が再開する際、だんだん大きく速くなった後、今度はだんだん弱くなっていき(漸増漸減パターン)、最終的に再び無呼吸に至るという呼吸パターンで、「中枢性」の一種です。

心不全患者さんでは、チェーン・ストークス呼吸を伴う「中枢性」が、寝ている時だけでなく、日中起きている時にも出現します。つまり無意識にこの異常呼吸をしているのです。そして、夜間睡眠中や起きている時のチェーン・ストークス呼吸の出現頻度が高い心不全患者さんほど予後が悪いと考えられています。

(注3)チェーン・ストークス呼吸CSRは、Cheyne-Stokes respirationの略

どういう時にこの症候群を疑い、どこで受診すればいいの?

「閉塞性」は疑うためのポイントがあります。いびき、日中の眠気、肥満、小さいあご、朝方の頭痛、夜間頻尿などは、「閉塞性」の患者さんに比較的よく認められる症状や状態です。特に、頭痛や夜間頻尿は「閉塞性」が原因とは考えにくいでしょうが、「閉塞性」の治療によってこれらが軽減するか、消失する方が少なくないのです。

一方、「中枢性」は、「閉塞性」のような特徴的な症状や状態はあまりみられないようです。「中枢性」は循環器病があること自体がすでにその危険因子と考えてください。つまり、「閉塞性」の症状や状態がある場合はもちろんですが、そうでない場合でも、心不全をはじめとした循環器病をもっている方は、一度は睡眠時無呼吸症候群を疑って検査を受けることをお勧めします。

よく尋ねられるのは"どこで受診すればいいのか"という質問です。確かにどの専門科の病気なのかわかりにくいと思います。実際、この症候群の診療をしているのは、呼吸器科、耳鼻咽喉科、精神神経科、循環器科など多岐にわたっています。

できれば各医療機関のホームページなどで、睡眠時無呼吸症候群や睡眠医療などを扱っているかどうかを事前に調べていただけたらと思います。最近は、専門に扱う医療機関(睡眠センター、睡眠クリニック、睡眠時無呼吸クリニックなど)をよく見かけますので、昔に比べだいぶ窓口が増えたようです。

どのように診断するの?

この症候群が疑われた場合、まず「簡易型睡眠モニター」と呼ばれる装置で疑わしい人をふるいにかける検査を行います。この装置で測定するのは、主に鼻や口での気流、血液中の酸素濃度(動脈血酸素飽和度: SpO2)です。この装置は貸し出し可能で、自宅でも検査ができるので、外来で行うスクリーニング検査として普及しています。

この検査で無呼吸・低呼吸指数が5以上の場合、精密検査に進むことになります。精密検査は「ポリソムノグラフィー」(PSG)、もしくは「終夜睡眠ポリグラフ」と呼ばれ、1泊2日か2泊3日の検査入院が必要です。

この精密検査では、簡易型睡眠モニターの検査項目に加えて、脳波、各種筋電図などのセンサーも取り付けられ、無呼吸だけでなく、睡眠状態を詳細に解析できます。無呼吸・低呼吸指数40以上の場合は簡易型睡眠モニターのみで診断が確定しますが、基本的に睡眠時無呼吸症候群の確定診断は、この精密検査で行うことになっています。

「閉塞性」の場合、無呼吸・低呼吸指数が5以上15未満を軽症、15以上30未満を中等症、30以上を重症と判定します〈表3〉。

表3 閉塞性睡眠時無呼吸症候群の重症度

どうやって治療するの?

(1)「閉塞性」の場合

減量(肥満のある場合)、持続陽圧呼吸療法(CPAP療法)(注4)、口腔内装置(OA)(注5)、手術などで治療します。また、生活習慣の改善(横向きに寝る、禁酒、睡眠薬の禁止、鼻疾患の治療)でよくなることもあります。

通常、まず飲酒制限や、睡眠薬使用の制限を指導し、肥満者には減量を示します。これらによって重症度をある程度下げることが可能で、軽症の患者さんでは無呼吸がほぼ正常域まで改善する場合があります。

しかし、こうした生活習慣の改善だけでは十分な改善が得られない場合は、口腔内装置や持続陽圧呼吸療法(CPAP療法)、もしくは耳鼻科的手術が必要となります。

口腔内装置はマウスピース療法とも呼ばれ、下あごが少し前方に出るようなマウスピースを作製し、これを夜間装着して寝てもらう治療法です。下あごが前方に移動する分、気道が広くなるので、軽症~中等症の「閉塞性」なら改善が期待できます。

CPAP療法(シーパップと呼んでいます)は、簡単に言えば、気道に空気の圧力(陽圧)を持続的にかけることによって、舌の根元が沈み込んで気道を閉塞するのを予防する治療です〈図4〉。

図4 持続陽圧呼吸(CPAP)療法の原理

このため、夜間は専用のマスクをして寝てもらいます。設定された一定の圧力の空気がマスクを通して送られてくるのです。それほど強い圧力ではないので、慣れてしまえばふつうに眠ることができます。

(注4)CPAP療法のCPAPはcontinuouspositiveairwaypressureの略。

(注5)口腔内装置OAは oral appliance の略

わが国の保険診療では、無呼吸・低呼吸指数が20以上の「閉塞性」の場合、この療法の対象となっています。CPAP療法は、無呼吸を減らすだけでなく、降圧(高血圧の改善)、不整脈の減少、交感神経の働きの抑制、インスリンが効きにくい状態を改善(糖尿病の改善)などの効果があり、心筋梗塞・狭心症や脳卒中など循環器病の発症を抑え、この症候群の経過をよくすることがわかっています〈図5〉。

図5 持続陽圧呼吸(CPAP)治療の死亡率抑制効果

上気道の閉塞部分がはっきりわかっているときは、上気道を拡大する手術が行われる場合もあります。軽症~中等症には効果があると考えられていますが、必ずしも無呼吸が完全に回復するわけではなく、また手術ということもあり、CPAP療法やマウスピース療法ほど行われていないのが現状です。

(2)「中枢性」の場合

重要なのは、まず原因の一つと考えられる、心不全などの循環器病の治療をきちんとすることです。こうした循環器病に対する適切な治療により、症状は改善してきます。それでも「中枢性」の症状が残ってしまう場合には「中枢性」自体に対する特別な治療を行います。その治療には酸素療法、もしくはCPAP療法などの陽圧呼吸療法があります。

予防はできるの?

生活習慣を改善することによって、「閉塞性」の方は予防することが可能です。肥満が原因の場合、予防は肥満にならないことに尽きます。過度の飲酒も避けてください。泥酔することで気道周囲の筋肉の緊張状態が過度に失われてしまい、睡眠時無呼吸症候群の原因になります。

喫煙も気道に炎症を起こし、結果的に気道がむくんでしまう(浮腫)ので、この症候群の原因にもなります。ですから、禁煙は予防を考えるうえで大切です。まとめていえば、循環器病の予防自体が、睡眠時無呼吸症候群の予防にもなるのです。

おわりに

ちょっと前までは、睡眠時無呼吸は病気だとは考えられていませんでした。いびきをかいていたと思ったら急に呼吸が止まって、しばらくしたらまた大きないびきをかき始める、何とも騒々しくて迷惑な人ぐらいにしか思われていませんでした。ところが、現在は医学的にはっきりした病気、しかも循環器病と深く関わる病気と捉えられています。

考えてみれば、長い人生のうち、約3分の1の時間は寝ているのです。最近ようやく睡眠の重要性が指摘されてきましたが、私たちはこれまで以上に、この人生の3分の1の送り方に注意を払うべきなのです。

睡眠時無呼吸症候群は、私たちが眠っている間に着々と循環器病の下地をつくっているのです。繰り返します。周りの人から寝ている時のいびきや無呼吸を指摘されている方は、専門医療機関を受診してください。周りでいびきがひどい方や寝ている間に呼吸が止まっている方がいたら、ぜひ受診を勧めてあげてください。それが循環器病予防のための重要なステップになるのです。

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