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[27] お子さんが心臓病といわれたら

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
文章・図表・イラスト等の転載・引用のご相談は循環器病研究振興財団までご連絡ください。

国立循環器病研究センター
名誉総長 川島 康生

進歩している心臓外科 “奇形”の手術は、ほとんど可能

イラスト:進歩している心臓外科

もくじ

はじめに

わが子が心臓病とわかったら、だれしも絶望的な思いにかられます。治療法はあるのか、手術で助かるのか、危険な手術ではないか、治療成績はどれほどか、支障なく学校生活が送れるようになるのか・・・。これからのことが次々と頭に浮かび、不安になります。

お子さんが心臓病と診断されたときに、お父さん、お母さん、ご家族の方にもぜひ、これだけは知っておいてほしい知識をまとめました。

心臓手術などの進歩で、かつては見守るしかなかった心臓病も治療できるようになっています。治療成績も上がっています。ただし、生命の源ともいうべき大切な臓器の病気ですから、最先端の医学を導入しても、ごくわずかですが、治療が困難な場合もあります。

治療の現状をしっかり理解し、希望をもって治療を受け、お子さんの回復と成長を見守ってほしい。そんな願いを込めて解説します。

心臓とはどんなもの?

子どもの心臓病の話に入る前に、心臓とはどんなものかを少しお話ししましょう。ご存じのように心臓は血液を送り出すポンプです。ポンプの働きをしている「心室」には「左心室」と「右心室」とがあります。

左心室は、肺で酸素をもらって戻ってきた赤い動脈血を身体全体に送り出すポンプの役を、一方、右心室は、身体から戻ってきた少し黒っぽい色になった酸素の少ない静脈血を、酸素を受け取るために肺へ送りだすポンプの役をしています。これら二つの心室が一つになっているのが心臓です。ポンプがうまく働くには、十分な量の血液を準備して左右の心室に流し込まねばなりません。そこでポンプ室(心室)の前に血液を用意するための小部屋がついています。この小部屋を「左心房」「右心房」と呼びます。

このように心臓には左右の心房と心室の合計四つの部屋があります。

心室の壁は分厚い筋肉からできていて、この筋肉が収縮することによって中の血液を送り出しますが、これがポンプとして働くには血液が一方向にだけ流れるようにしなければなりません。そのために心室の入り口と出口にそれぞれ弁がついています。

弁の名前は<図1>をご覧いただくとわかるように、右心室から肺動脈へ出ていくところにある弁を「肺動脈弁」、左心室から大動脈へ出ていくところにある弁を「大動脈弁」といいます。

右心房から右心室への入り口にある弁は、弁が三枚の帆のようなものでできているので「三尖弁」と呼びます。左心房から左心室への弁は二枚の帆のようなものでできていますが、二尖弁とはいわずに「僧帽弁」と呼んでいます。仏教でもキリスト教でも、偉いお坊さんがかぶる二枚の布が合わさった形の帽子によく似ているからで、英語でも日本語でも坊さんの帽子の形をした弁、僧帽弁と名前がつけられているのです。

このように心臓は二つのポンプの機能をはたしていて、左心室から出た血液は身体へ流れ、身体に酸素を与えるとともに、いろいろな栄養分やいらなくなったものの受け渡しをした後に右心房へ帰ってきます。これが右心室に入り、押し出されて肺へ向かい、肺で酸素をもらって左心房へ戻ってくるという循環をしているのです。

図1 心臓と全身の循環
図1:心臓と全身の循環

筋肉、弁、血管、神経で構成

ポンプの働きをするため、心臓のほとんどは筋肉でできていると説明しましたが、心臓の筋肉(心筋)もまた、それが働くには酸素や栄養分の供給を受けなければなりません。

その供給役が心臓の筋肉へ向かう血管です。心臓から出たばかりの大動脈の付け根のところから分かれ心臓の周りを取り囲む冠のような形に流れているので、「冠状動脈」(冠動脈)と呼んでいます。この動脈から心筋に流れ出た血液は冠静脈に集められて右心房に戻ってきます。

このように心臓には、筋肉のほかに血管と弁とがあります。さらに肉眼でははっきり見えませんが、心臓の筋肉が規則正しく収縮するように命令を伝える「刺激伝導系」という神経に相当するものがあります。

まとめますと、心臓は筋肉、弁、血管、神経の四種類の組織からできています。それぞれの組織は病気になることがあります。筋肉が悪くなる場合が「心筋症」、冠動脈が狭くなって心筋へいく血液の流れが不十分になって起こるのが「心筋梗塞」、「狭心症」といった冠動脈疾患、弁の機能がわるくなるのが「弁膜症」、さらに刺激伝導系の病気、つまり電気系統の故障のような「不整脈」といったものです。

“奇形”が起こす心臓病いろいろ

子どもにも実はそれぞれの組織がおかされる病気があります。

心筋症は子どもにもみられますし、冠動脈の変化は川崎病の後遺症として起こります。日本では少なくなりましたが、子どものころリューマチにかかることによって起こる弁膜症は、今でも存在します。不整脈は若い時には比較的少ない病気ですが、先天性のものがあります。

しかし、子どもの心臓病ではこうした場合よりも、先天性の心臓の奇形が多いのです。心臓の組織の病気と違い、奇形は生まれつきの病気です。心臓の後天性の病気は、別の機会に譲り、ここでは生まれつきの心臓病、「心臓奇形」を中心に話を進めます。

心臓奇形にはどんなタイプが?

一番多いのは、左右の心室や左右の心房を隔てている壁が完全に出来上がらないで、一部が孔(穴)として残っている場合です。この孔を「欠損孔」と呼び、「心室中隔欠損」「心房中隔欠損」といいます。

赤ちゃんが生まれるまでの間、大動脈と肺動脈の間に「動脈管」という管があり「ボタロー氏管」とも呼ばれています。これは生まれると自然に閉じるのですが、閉じずに開いたままになっている場合を「動脈管開存」、または「ボタロー氏管開存」といいます。

左心室から出ている大動脈、右心室から出ている肺動脈を含め、心臓ではふつう左側の血圧が右側の血圧よりも高く、これらの欠損孔を通って血液が左側から右側へ流れます。このような血液の流れを「左右短絡」と呼び、それを起こす病気のことを 「左右短絡疾患」と呼んでいます。<図2>

このような病気では、せっかく肺で酸素をもらって心臓に戻ってきた血液が、欠損孔を通ってまた右側へゆき、もう一度、肺へ流れ出ます。つまり血液が空回りすることになり、心臓はそれだけよけいな働きをしなければなりません。

ただし、この場合も、身体に流れる血液は酸素を十分含んだ赤い動脈血ですので、あまりはっきりした症状のないのがふつうです。しかし、短絡の量が多過ぎると、心臓はオーバーワークで耐えられなくなり「心不全」という状況になってきます。そうなっては困るので、肺の血管が収縮して、肺へたくさんの血がこないように抵抗することもあります。こうなると肺動脈の血圧が上がって 「肺高血圧」という状態になります。

大きな心室中隔欠損がある場合に、いま挙げたような状態になりやすいのですが、心房中隔欠損のときは、こうした状態になるのは比較的遅く、一番軽い心臓病と考えられています。

動脈管開存の場合も大動脈から肺動脈の方に血液が流れるので、心室中隔欠損とほぼ同じようなことが起こります。

左右短絡疾患には、ほかに心房と心室の境目のところに孔があいている「心内膜床欠損症」や、左心室から右心房へ血液が流れる 「左室右房交通症」といった病気もあります。

一般に短絡量が多いときには、乳児期から心不全になることもあり、成長が遅れたりしますが、短絡量が少ないと症状が軽い場合やないことも少なくありません。

図2 左右短絡疾患のいろいろ
図2:左右短絡疾患のいろいろ

動脈管開存のほかにも、いろいろな大動脈の奇形があり、これらは心臓の外の奇形ですが、一般には心奇形に含められています。その中で多いのは 「大動脈縮窄症」といって、上半身に行く三本の枝を出した直後のところが部分的に非常に狭くなっている病気です。この場合、子どものときから上半身の血圧が高くなり、いろいろな障害を起こすことになります。まれですが、大動脈が完全に切断されてしまった 「大動脈離断症」といった病気もあります。

人間の身体はうまくできていて、こういった奇形が生じていても血液はほかの血管を通って流れてゆき、すぐに命を失うわけではありませんが、なるべく早い時期に手術が必要です。

心臓奇形のもう一つの種類は先天的に弁が狭かったり、閉じてしまっていたりする病気です。弁が狭い奇形の中には、まったく症状がなくて、高齢になって年とともにこの弁に石灰が付着することによって症状が出てくるような病気もあります。

弁が閉じてしまっている奇形は非常に重症で、中隔欠損などほかの奇形も合併しており、多くの場合、手術をしなければ長期の生存は困難です。これに対し弁の閉じ方が不完全な 「弁閉鎖不全」は先天性奇形では比較的少なく、三尖弁が変形している 「エプスタイン奇形」はその一種です。

このように弁の狭窄と中隔の欠損が組み合わさった代表的なものが「ファロー四徴症」といわれる病気です。<図3-1>のように、大きな心室中隔欠損と、肺動脈弁の狭窄、または弁の下の筋肉の張り出したための狭窄、あるいはその両方の狭窄があり、大動脈が右心室と左心室の両方にまたがって出ていて、それらの結果として右心室の壁が非常に分厚くなっている病気です。

ファロー四徴症にもいろいろなタイプがあり、最も重症の場合は、肺動脈弁が完全に閉鎖していて、肺動脈へは大動脈からの「側副血行」といわれる大小の異常な血管を通って血液が流れています。

この場合は酸素の含量の少ない黒っぽい血液、つまり身体から戻ってきた静脈血が、肺から心臓に戻ってきた動脈血に大量に混ざってそのまま身体へ流れ出ていくことになるので、 「チアノーゼ」という皮膚が紫色になる症状が出るのがふつうです。<図4>

こうした状態が長く続くと手足の指先が太くなって、太鼓のバチのような形になってきます。昔はこういった子どもさんをよくみかけましたが、今では早い時期に手術をしますので、比較的少なくなりました。

大動脈と肺動脈の心室からの出方が完全に入れ替わって、左心室から肺動脈が、右心室から大動脈が出ている 「大血管転位症」、大動脈と肺動脈の両方が右の心室から出ている 「両大血管右室起始症」、大動脈と肺動脈が一本になっている 「総動脈幹症」といった病気もあります。

赤ちゃんの間に重症になる心臓奇形の一つとして「総肺静脈還流異常症」という、肺静脈が左心房につながらないで右心房につながっている奇形があります。これらはいずれも重症の奇形です。

先天性心奇形のもう一つの重要な病気は、左右の心室の片一方が非常に小さくなっていて、実質的には心室が一つしかない状態になっている 「単心室症」です。房室間の弁が完全に閉じた僧帽弁閉鎖庄や三尖弁閉鎖症のような病気も機能的には単心室とほぼ同じことになります。

こうした病気は心臓奇形の中で最も重症で、昔はほとんど手のほどこしようがなかったのですが、1971年にフランスのフォンタン先生が特殊な手術法を発表して以来、手術ができるようになりました。この手術については、後で詳しく述べます。

ほかにも、冠動脈の奇形など、いろいろな心臓奇形がありますが、いずれも比較的まれですので、ここでは省略します。

図3-1 ファロー四徴症
図3の1:ファロー四徴症
図3-2 ブラロック手術後のファロー四徴症
図3の2:ブラロック手術後のファロー四徴症
図4 チアノーゼ症状
図4:チアノーゼ症状
皮膚が紫色になる

どんな手術をするのだろう

こうした子どもの治療法は、チアノーゼがきつい場合は酸素吸入をしたり、心不全のときは心臓がより一層、働いてくれるよう強心剤を用いたり、さらに特殊な薬剤でチアノーゼの発作を抑えたりする方法などがあります。しかし、いずれも対症療法にすぎません。奇形ですので本質的な治療は外科手術をして治すことになります。

外科手術で、正常な心臓の状態にできる単純な奇形もあれば、どうしても正常な形にもっていけない複雑な場合もあります。正常な状態へもっていくとしても、一度ではできず何回かの手術によってやっとそこへ到達できるような場合もあります。

一般に正常な心臓の形にする手術のことを「根治手術」と呼び、段階的に正常な状態へもっていくための最初の手術や、一時的に症状を軽くする、いわばその場しのぎの手術は「姑息的手術」と呼ばれています。それぞれについて少し説明をしましょう。

姑息手術とは

この手術はふつう肺へ流れる血液の量が少なすぎる場合や、逆に多すぎる場合に行われます。

肺への血液量が少なすぎる場合、肺への血流を増やしチアノーゼを軽減させるために最もよく行われるのは、鎖骨下動脈(大動脈の枝で腕にいく血管)を途中で切って、これを曲げて肺動脈につなぐ「大動脈肺動脈短絡手術」です。創始者の名前をとって「ブラロック・トーシッヒ手術」、あるいは「ブラロック手術」と呼ばれています。<図3-2>

幸い鎖骨下動脈を切ってしまっても、他の細い血管を通って腕には十分、血液が流れるため、手が腐るようなことはありません。しかし、最近は、切らずに人工血管で鎖骨下動脈と肺動脈の間にバイパスをつくる方法がより多く行われるようになりました。

こうして肺へいく血液の量が増えると、肺から心臓へ戻ってくる赤い動脈血の量が増えるため、大動脈へ流れ出る血液の中の酸素の量が上昇して体全体により赤く正常に近い動脈血が流れ、チアノーゼが軽くなるのです。詳しくは<図3-1><図3-2>を比べてご覧ください。

もう一つの姑息的手術は、肺へ行く血液が多すぎる場合に、肺動脈を軽く縛って狭窄をつくる「肺動脈バンディング手術」です。これも根治手術が出来るようになり、行われることが少なくなっています。

根治手術の方法

根治手術の説明をしましょう。この手術の際、まれですが「超低体温法」といって赤ちゃんの身体をうんと冷やして血液の循環を止めてしまい、短時間の間に心臓の中を手術することがあります。しかし、一般には「人工心肺装置」を使って手術をします。心臓を切開して手術をしている間、全身に動脈血を流すために心臓と肺の役割をする装置です。

心臓へ戻ってくる静脈血を上下の大動脈からこの人工心肺装置の方へ流し、その中で静脈血に酸素を与えて動脈血にし、これを大動脈に戻すことによって手術の間、身体には赤い動脈血を流し続ける方法で「体外循環法」とも呼ばれています。

このように、心臓に血液が戻ってこないようにしておいて心臓を切開します。一般的にはさらに大動脈を鉗子で挾んで冠動脈へも血液が流れないようにし、これによって心筋への酸素の供給を止めたり、さらに薬液を冠動脈に注入したりして、心臓に血液が流れない時間が長くなっても安全が保てる状態にして心臓の中を手術します。

単純な奇形の手術では、例えば中隔欠損のとき、欠損孔が小さければ直接、縫合閉鎖し、孔が大きい場合は合成繊維の布を当てて閉じます。複雑な奇形の場合は血液の流れが正常になるよう組織を削り取ったり、合成繊維の布で血液の通路を作ったり、場合によっては弁の修復や取り換えもします。

ほとんどの奇形は一度で根治手術ができますが、どうしても二回、三回に分けて手術しなければならないときもあり、ファロー四徴症の難しいケースにもそういった場合があります。

画期的なフォンタン手術

外科医がいくら全力を傾けても正常な心臓の形にもっていけない場合もあります。心室が一つしかない奇形のとき、心室の中に壁をつくって左右に分けることができるのはごくまれで、多くの場合は心室は一つのままで静脈血が身体にいかないようにするフォンタン手術が行われます。<図5>

身体から戻ってくる血液を右心室を通さずに、そのまま肺動脈に流し、一つしかない心室は肺動脈から戻ってきた血液を全身に送り出すようにする手術です。

いままで手術方法がなかった単心室症、僧帽弁閉鎖症、三尖弁閉鎖症などの奇形の治療に用いられている画期的な方法です。

図5 フォンタン型手術後の血液循環
図5:フォンタン型手術後の血液循環

手術の成績を分析すれば

お子さんが心臓病で手術をしなければ治らないといわれた時、一番心配されるのはその成績でしょう。残念ながら現在でも、心臓手術は絶対に安全であるとはいえないのです。

<図6><図7>は、比較的多い心奇形に対する根治手術成績を示したものです。ご覧の通り、成績は奇形の種類、言い換えれば手術の難易度によって大きな差があります。単純な中隔欠損などは、手術死亡率はほぼゼロか、1%未満でとても安全になっています。

複雑な心奇形でも、ファロー四徴症のように比較的死亡率の低いものもありますが、10%を超える死亡率のものも少なくありません。現在、手術が一番難しいとされている「左室低形成症候群」に対する「ノルウッドの手術」などは、まだ手術で半分以上の患者さんが亡くなるというのが厳しい現実です。

<図6>に示したのは1998年の全国集計の結果で、ここ数年少しずつよくなっていると思います。これは全国を調べた平均値ですので、施設によって成績にはかなりの差があります。一般的には手術数の多い施設の成績がよいという傾向があるようです。

手術成績を左右する要因の一つは年齢です。<図7>はすべての疾患を含めて、年齢別に手術死亡率をみたものですが、1歳以上になると成績がぐんとよくなっているのがわかります。

しかし、見方を変えれば、1歳になるまでに手術をしなければならないような病気は、成績がよくないともいえます。ですから1歳を過ぎるまで待って手術を受けるのがよいとは限らないのです。

図6 先天性心奇形の根治手術死亡率(日本全国平均)
図6:先天性心奇形の根治手術死亡率(日本全国平均)
(疾患別、すべての年齢を含む)

(日本胸部外科学会雑誌より)

図7 先天性心奇形の根治手術死亡率(日本全国平均)
図7:先天性心奇形の根治手術死亡率(日本全国平均)
(年齢別、すべての疾患を含む)

切開をしない治療法

胸を開いて行う手術のほかに、血管の中に通すカテーテル(管)を使う方法も、対象は限られていますが行われています。

すでに説明しました「動脈管開存症」は、動脈管が心臓の外にありますので、この管を縛るか切断してしまえばよく、人工心肺を使う必要はありません。しかし、それでも胸を開かねばなりませんので、カテーテルを使って閉じてしまう方法が開発されています。

心房中隔欠損の軽い場合もこの方法で閉じることが考案され、条件が合う場合には実際に試みられるようになりました。これですと、胸に大きな傷を残さずに治療できますから、確実に行えるようになれば、特に女のお子さんの場合などに広く用いられるようになるかもしれません。

一般の心臓手術についても、最近はできるだけ傷を小さくして行う手術が工夫されています。

手術方法は進歩しているが・・・

心臓の手術は、心臓にメスをいれるので、多少とも心臓に傷が残ります。だから、手術が終わったといっても、どのような手術が行われたかによって長期的な成績(遠隔成績)は変わってきます。

また、手術をどの時期に受けたか、つまり病気がどの程度になって手術をしたか、何歳で手術をしたかによっても長期の成績は変わります。

心室中隔欠損や心房中隔欠損のように単純な奇形の場合でも、20~30年後には、手術したことによる不整脈や、手術の時期が遅かったことによる障害もみられます。つまり、心臓の外にある動脈管を切断した場合など以外は、まったく何の障害も残らないということは心臓手術の場合は難しいのです。

単純な奇形の場合は、大部分の方が手術でふつうの人と同じ寿命を全うされると思います。まだ長期的なデータが少ないので、術後40~50年先を見守っていかねばなりません。

手術方法が年々改良されてきたファロー四徴症などでは、昔、手術した人と、現在の方法で手術を受けた人とで、長期の成績はかなり違っています。フォンタン型手術を受けた人も遠い将来、どのようになるか、まだ長期的なデータがそろっていません。

フォンタン手術を受けてからすでに20年以上、元気に生活してこられた方もいますし、出産された方もいます。しかし、一般的にはこの手術の術後に出産することは、あまりお勧めできません。

わが子が心臓奇形とわかったら

これまで子どもの心臓病のうち心臓奇形について述べてきましたが、お子さんが心臓奇形とわかったとき、どのように対処すべきでしょうか。

心奇形といわれれば、お先真っ暗と感じられるかもしれません。しかし、前に触れたように、手術成績は大変向上しています。

心臓奇形には手術する一番良い時期があります。多くの場合、早ければ早いほどよいのですが、すべてがそうであるとは限りません。経験のある専門の病院を訪ねて、十分な検査を受けた後に、生涯にわたっての治療方針を決定されるのがよいと思います。

一つ注意しておかねばならないのは、お子さんの心臓が悪いとわかると、どうしても甘やかしがちになります。そのため気ままな子どもに育ってしまう場合が少なくありません。

現在では早い時期に手術を受けることができますので、手術後の生活について小児科の先生とよく相談し、過保護にならないようにしなければなりません。ただし、フォンタン手術の術後のような場合は、運動制限のほか、主治医の見立てに従って十分な対策が必要です。

子どもの時にチアノーゼがあると、頭にいく酸素の量が少なくなるので、賢い子どもにはなれない、などといったことを本気で信じる人がいます。しかし、子どものころチアノーゼがあった方で、現在、医師として活躍している人はたくさんいますし、フォンタン手術を受けてから医師になった人もいます。心臓奇形といわれても悲嘆にくれることなく、生涯にわたる正しい治療計画を作ることが大切です。

心臓外科の進歩でほとんどの先天性奇形は手術が可能になりました。それでもまだまったく手の施しようのない奇形もなくはありません。

しかし、そういった子どもたちにも手段は残されています。心臓移植、あるいは心肺移植です。現在、わが国では法律が不備でまだ実現していませんが、遠からず可能になると思われますので、それまで出来るだけの対策を立てて、機会を待っていただきたいと思います。

◎心臓病の子を持った親の心得

・ 経験豊かな専門病院で検査を受けさせ、生涯の治療計画を決めてもらう。
・ 医者と相談し、子どもを過保護にしない。甘やかさない。

イラスト:心臓病の子を持った親の心得

 

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