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[119] 心臓病の子どもが大人になったら ─ 成人先天性心疾患の注意点 ─

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
文章・図表・イラスト等の転載・引用のご相談は循環器病研究振興財団までご連絡ください。

国立循環器病研究センター
小児循環器科 医長 大内 秀雄
教育推進部 部長 白石 公

心臓をいたわり元気な日々を

もくじ

  1. 大人の先天性心疾患の特徴は?
  2. 成人先天性心疾患の問題点 九つの項目


生まれながらの心臓病を「先天性心疾患」といいます。この心臓病の子どもたちの医療は年々、進歩し、小児期、思春期を無事過ごし、大人となる患者さんが着実に増えています。大人になった先天性心疾患の患者さんを「成人先天性心疾患患者」と呼びます。

〈図1〉をご覧ください。1980年代まで、先天性心疾患は小児が圧倒的に多かったのに、2000年ごろには小児と大人の患者数の割合がほぼ同じ割合になり、2020年には、大人になった患者さんの数が小児の患者さんをはるかに超え、しかも、重症の複雑性先天性心疾患の患者さんが著しく増えると予測されています。

図1 わが国の成人先天性心疾患患者数の推移


今回のテーマ「成人先天性心疾患」の病状(病態)は、一般の大人に高血圧、生活習慣病などが下地になって起こる心筋梗塞や心筋症など「後天性心疾患」とは大きく異なっています。ですから、日々の注意や治療も、後天性心疾患とは異なることが多く、専門医療機関での管理と治療が好ましいと言えます。

この冊子では、心臓病の子どもたちが大人になって以降の病状の管理や治療法について、ご本人だけでなく、ご家族や周囲の皆さんにも知っておいてほしい点を中心に説明します。心臓病の話は、難しい内容になりがちです。わからないところはそのままにして読み進み、一つでも多くの役立つ知識を身につけてください。

大人の先天性心疾患の特徴は?

まず知っていてほしいのは心不全のことです。心不全は、心臓から全身への血液を押し出すポンプ役の左心室の働きが落ちて生じる、全身の酸素不足状態のことです。心不全の状態は「成人先天性心疾患」と「後天性心疾患」では大きく異なっています。

後天性心疾患の患者さんは数が多く、心不全の特徴は比較的よくわかっていて、症状・重症度の分類も確立しています。最も有名な症状分類は「ニューヨーク心臓機能分類」(NYHAクラス分類)と呼ばれる方法です。

(注)心不全の症状分類  NYHAクラス分類以外にも、急性心不全では血行の状態、特に左心室の機能を中心とした分類や、この分類を簡単にし、皮膚の湿り気や温度から判断する分類法などもあります。最近では収縮期血圧だけから分類する便利な分類もあります。

ところが、成人先天性心疾患では、血圧の高い患者さんは多くありません。むしろ、右心室の働きが低下した「右心不全」が圧倒的に多いのです。ですから、現在、便宜的に使われているNYHAクラス分類を除き、成人先天性心疾患に適した分類はありません。成人先天性心疾患の患者さんが急増しているので、それに対応した分類が必要になっています。

脳卒中、心筋梗塞など一般の循環器病では多くの大規模な臨床試験で薬の効果が試され、有効な治療薬の情報が増えています。しかし、成人先天性心疾患の治療薬については情報が極めて少ないのが現状です。

というのは成人先天性心疾患の病状は一人ひとりさまざまで、大規模な臨床試験を行うのが難しく、治療や管理法が確立されていないのが現状です。医療の現場では、これまでの経験や専門家の意見に基づいて医療を行っていますから、経験豊富な専門医療機関での治療や管理が望ましいのです。

成人先天性心疾患の心不全の特徴は①心室の機能異常に加えて先天性の構造異常がある②心室中隔欠損(心室の壁に穴があき血液の流れが異常になっている)などの場合、穴を手術で閉じても多少の漏れが残っていること③心臓や大血管の弁の働きが十分でないなど、"小さな不都合"が残る場合が多いことです。

さらに、手術に伴う心筋障害などの影響も残っています。複雑な手術を何度もした患者さんほど手術の影響は大きくなります。

心不全のことを中心に説明してきましたが、ここまでのまとめとして何が心不全に関係し、どんな状況になるかを〈図2〉にしました。

図2 心不全の病態は患者の心臓病の原因が後天性か先天性かで大きく異なります


成人先天性心疾患は、後天性心疾患には見られない特有の状況(病態)にあることも知っておいてほしい点です。代表的なものは、

  1. 全身へ血液を送り出す心室は、本来は左心室なのに、そうでない場合がある。
  2. 通常は右心室が肺へ血液を送るポンプ役をしているが、心室が一つのため、肺へ血液を送る心室がない場合(単心室血行動態)がある。
  3. 血液中の酸素の濃度が低い低酸素血症(チアノーゼ)を伴う「未修復状態」などです。それらをまとめたのが〈図3〉です。
図3 成人先天性心疾患術後に特有の病態


この「未修復状態」には、心室中隔欠損、心房中隔欠損、そして動脈管開存などが原因で強い肺高血圧になり低酸素血症が見られるアイゼンメンジャー症候群などが含まれます。(難しい病名が次々、登場し、戸惑う方もいらっしゃると思いますが、一つひとつ説明すると長くなるので省略します。病名だけでも知っていただければと思います)

先天性心疾患の手術を受け大人になった成人先天性心疾患患者さんが抱える問題点を〈図4〉にまとめました。

図4 先天性心疾患手術後の血液循環の問題点


成人先天性心疾患では手術の影響で、正常の人に比べて(1)肺が小さく硬くなっている (3)心筋は感覚異常のため痛みを感じにくく、やや硬く、拡がりにくくなっている (4)自律神経異常のため脈はやや遅め。心臓の筋肉に手術の時の傷があるので不整脈が出やすい (5)大動脈は大きく硬いことが多い。また、右心室が異常であることが多く(右心不全)(6)腎臓や (7)肝臓は"うっ血"のため腫れて大きくなっていることが多い(番号は本文の番号に一致)

次に、〈図2、3、4〉を見てもらいながら、成人先天性心疾患の方にぜひ知っておいてほしいこと、心がけてほしいことを九つの項目にまとめ解説します。

成人先天性心疾患の問題点 九つの項目

1.肺機能の低下

心臓と全身の血管の大きな役割は、肺で酸素を取り込んで全身の内臓や筋肉へ配ることです。肺はこの最初の役割を担っています。

後天性心疾患の心不全では、左心房の圧が上昇し肺に血液が戻りにくくなり、うっ滞(うっ血)しています。この場合、肺全体は水っぽくなり、膨らみにくくなります。また、肺の大きさ(肺活量)も低下しています。"うっ血"した小さい肺の患者さんでは、運動中の呼吸が浅くて速くなり、酸素を取り込む効率(呼吸効率)は落ちてしまいます。

一方、成人先天性心疾患では、手術の影響が大きく、手術の回数が多くなるにつれ肺活量は低下しています。喘息(ぜんそく)のような気道が狭くなる変化(閉塞性換気障害)はないのですが、肺の大きさのみが小さくなった「拘束性換気障害」の場合がほとんどです。

また、成人先天性心疾患では、背骨が曲がる側弯症(そくわんしょう)になりやすく、肺活量低下の原因の一つとなっています。さらに、手術時の合併症として横隔膜の動きが悪くなる横隔神経麻痺(まひ)で呼吸が不十分な換気不全になっている場合があり、注意が必要です。

肺活量の低下が、成人先天性心疾患の患者さんの長期的にみた死亡率に関係することが報告されています。ですから、日々、自分の状態に合った運動を続け肺活量を維持することを心がけてください。

一般に息を吸うとき、胸の気胸腔と呼ばれる部分が陰圧になり、全身の血液が心臓に戻りやすくなります。特にフォンタン手術を受けた患者さんは、呼吸によって、血液が心臓へ戻りやすくするのが大切です。この患者さんでは、右心不全が典型的な症状で、肺活量を含めた呼吸機能を維持するのが特に重要だからです。

最近、肥満の成人先天性心疾患の患者さんが増えています。肥満の方は睡眠中に呼吸が一時的にとまるのを繰り返す睡眠時無呼吸症候群を合併していないかを診てもらう必要があります。

肥満、拘束性換気障害、もしくは横隔神経麻痺を合併している場合、夜間の酸素吸入や陽圧換気と呼ばれる方法が有効な場合があります。

2.自律神経の異常

肺や心臓の働きには、脳(中枢神経系)からの自律神経である交感神経や副交感神経が深くかかわっています。

例えば、息を吸うとき脈拍が速くなるように、副交感神経の働きで脈拍は呼吸とともに大きく変動(「揺らぎ」と言います)します。また、血圧が下がると心拍数が増え、逆に血圧が上がると、脈拍は遅くなり血圧が安定するように調節されています。こうした脳と心臓や血管との素早い連携プレーは、自律神経の働きで複雑にコントロールされているのです。

心不全では、交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、副交感神経の活動が弱まり、交感神経の活動が高まった状態になっています。 

このため、血圧が下がると心拍数が増えるといった心拍の変動は小さくなり、結果的に血液の循環が不安定になります。こうした心拍や血圧の反応の異常は、心不全の重症度と密接に関係しています。ですから、心拍の変動が少なくなっている患者さんの病状は、良い状態とは言えません。

一方、心臓はもちろん、上下大静脈や大動脈、肺動脈などの大血管の周囲には、脳からの多くの自律神経がお互いに複雑に絡み合いながら伸びています。

先天性心疾患の手術では、心房や心室、肺動脈、大動脈などの血管の周囲を手術しやすいよう剥がしたり(剥離)、血管を切断したりすることが必要になります。こうした際に心臓や血管の周りの神経を傷つけたり、切断してしまったりすること(「除神経」と言います)は避けられません。手術の種類や回数が多いと「除神経」による障害は大きくなります。

極端な場合、心臓移植を受けた患者さんのように自律神経が切れた心臓に似た状態になります。この状態では、自律神経活動の異常の程度が高いほど心不全も重症という関係は見られなくなります。これが手術を受けた成人先天性心疾患患者さんの大きな問題点の一つで、心拍の変動や血圧の調節障害などからは、手術後の重症度はわかりにくいのです。

脈がゆっくりした患者さんが多いのも特徴です。先天性心疾患の手術の際、脈を調節する信号を発信する「洞結節」という右心房の部分に栄養を与える動脈を傷つけ、調節の働きが落ちることが少なくありません。この場合、脈が極端に遅くなったり、急に速くなる頻拍が起こったりすることがあります(洞機能不全)。脈が遅すぎるとき、ペースメーカー治療が必要な場合もあります。

スポーツ選手の場合、副交感神経の活動が高まり、脈が遅い徐脈傾向になりがちです。しかし、成人先天性心疾患では運動能力が高くないのに徐脈傾向の患者さんが少なくありません。この徐脈は、手術による洞結節の酸素不足(虚血)や心臓自律神経の損傷で洞結節の働きが低下した結果と考えられています。

ですから、手術を受けたことのある成人先天性心疾患の患者さんでは、脈がゆっくりしていても心不全の程度が重い場合があり注意が必要です。特に何度も手術を受けている場合、要注意です。また、副交感神経の働きが低下しているとき、急に立ち上がったりすると、立ちくらみを起こすことがあります。これは、立ち上がったとき、血圧が低下しないように脈拍を瞬時に上げることができないからです。

心室の神経障害は要注意

手術の際、心室などの切開で心臓からの知覚神経も含めて神経が遮断されることが避けられないことは、すでに説明しました。例えば、完全大血管転位や大動脈疾患狭窄などの手術では、冠動脈(冠状動脈)を移植せねばならず、冠動脈、心臓神経とも切断することになります。

神経が切断された場合、心臓の交感神経の活動度から心不全の重症度を調べる「MIBG心筋シンチ」と呼ばれる画像診断は、重症度の判定に使えない場合があり、注意が必要です。

とくに注意したいのは、心筋の知覚神経も除かれたとき、虚血(酸素不足)による胸の痛みを感じない場合があることです。ですから、ジャテネ手術後やロス手術後の患者さんに冠動脈の狭窄が起きているかどうかの検査は、胸痛による自覚症状はあてにならない場合もあり、心臓の負荷試験や冠動脈の造影などで診断することが大切です。

3.心室機能の異常、原因とその対策

心室の機能が低下してしまう原因は、

  1. ① 肺動脈弁や大動脈弁などの弁が狭いため心室内の血圧が上昇する場合
  2. ② 心房中隔欠損や心室中隔欠損などで血流のコースが短くなったり、弁の逆流で血液量が過剰になったりして心臓を大きくしてしまう場合
  3. ③ 手術前の長い間、低酸素状態にあったことによる線維化などの心筋障害
  4. ④ 本来、全身に血液を送る心室が左心室でなく血圧上昇に弱い右心室である
  5. ⑤ 先天性の冠動脈異常や手術後の冠動脈狭窄による心筋の酸素不足(心筋虚血)
  6. ⑥ 心房細動などの持続した速い心拍数で心筋が疲れてしまう頻拍性心筋症
  7. ⑦ 心室全体の動きがスムーズにいかず血液がうまく送り出せない状態(同期性異常)
  8. ⑧ 手術の際の出血やその後の心膜と心室の壁が癒着し心臓が拡がりにくくなり、まるで硬い殻の中に心臓が入っている状態(心室の拘束性変化)

にまとめることができます。これらの中で、①~④と⑧は、手術を受けたことのある成人先天性心疾患の患者さんに特徴的に起こる問題です。

心室の機能低下に薬の治療では限界があり、手術による治療、例えば心室中隔欠損の閉鎖術などで原因を治すことが必要です。ファロー四徴症術後遠隔期の肺動脈弁閉鎖不全による右室容量負荷に対する肺動脈弁を入れ替える肺動脈弁置換術などもその典型と言えます。

体に血液を送り出す心室が右室の場合、血液が逆流するのを防ぐ働きの三尖弁の働きが落ち、逆流が進行するおそれがあります。右心室機能が低下する前に、人工弁に置き換える手術が必要で、手術のタイミングを逃さないことが大切です。

収縮力が低下し心室が拡大している場合、通常の成人の心不全治療薬(「アンギオテンシン変換酵素阻害薬」、「アンギオテンシンⅡ受容体拮抗剤」、「βブロッカー」など)が心臓を休める治療に有効です。

しかし、手術を受けたことがある成人先天性心疾患の患者さんでは、洞機能不全で脈が遅くなっている場合が多く、「βブロッカー」の投与でさらに脈が遅くなり、悪化することがあり注意が必要です。

通常の成人循環器病の左心室自体の非同期の収縮に対する「再同期療法」は確立しています。術後成人先天性心疾患でも心臓の収縮の非同期性が認められる場合は、心臓再同期療法が有効な場合があります。

拡がりにくい拘束性の右室はファロー四徴症術後の特徴的な病態として知られ(拘束性血行動態)、心室拡張障害の一つのタイプと考えられています。一般成人心不全患者での左室の拡張不全(収縮性の保たれた心不全)は未だに確立した治療法がなく難しい病態と考えられています。ファロー四徴症の手術後のこの右心室の拡張障害も右室版の心室拡張障害と考えられますが、その治療も難しいのが現状です。

4.心電図異常と不整脈

手術を受けたことのある成人先天性心疾患の患者さんの心電図異常は、心筋障害と肥大した心室に関係して起こります。特に心電図のQRS波と呼ばれる波の幅は、ファロー四徴症やフォンタン手術後の右室や心室の大きさを反映します。また、ファロー四徴症やエプスタイン奇形でのQRS波の内の小さな粗雑な波(フラグメンテーション)があれば、心室内の電気の伝わりが遅いことを示し、危険な不整脈が出やすいとされています。

また、手術の際に心臓にできた傷が、心筋を伝わる電流を妨げ、電流が勝手に心房や心室の壁を回って速い脈となる「頻拍発作」が起こることがあります。この場合、血圧が急に下がり意識を失うことがあります。現在、このような脈の乱れ(不整脈)は薬の服用よりも、足の付け根の静脈から細い管(カテーテル)を入れて行うカテーテル治療で治せる場合が多くなっています。

5.大動脈壁が拡大

肥満や糖尿病などの生活習慣病では、動脈の柔らかさが次第に失われ動脈硬化になります。動脈硬化があれば、高血圧による心不全の原因となりますから、生活習慣病の予防は、成人先天性心疾患の場合も極めて重要です。

生活習慣病が原因の動脈硬化に加え、成人先天性心疾患では大動脈の壁そのものが生まれつき異常であることもわかってきました。その特徴は上行大動脈が拡大し太いことです。

これは、チアノーゼ性心疾患(ファロー四徴症や単心室など)の患者さんによく見られ、極端に太くなると動脈壁が剥がれる(解離)ことがあります。また、この太くなった大動脈は硬くて心臓に負担をかけ冠動脈への血流を減少させ、運動能力を低下させる原因となっています。

この太く硬い大動脈が、成人先天性心疾患の重要な病状悪化のリスクとして問題になりだしたのは最近のことで、その治療法はまだよくわかっていません。

6.腎機能の低下

腎臓の働きの低下が心臓病の患者さんの寿命を短くしていることが、腎臓と心臓の関係“心腎連関”として注目されています。

手術後の成人先天性心疾患の場合、静脈がうっ血した状態の右心不全が多く、その結果として生じる腎臓のうっ血は腎臓の働きを低下させます。とくに注意しなければならない合併症と言えます。

手術を受けたことがある成人先天性心疾患の患者さんでは、自律神経異常で血圧が低下したとき脈を速くして血圧を上げるようにする調節ができない場合があることは、すでに述べました。

この調節がうまくいかないと腎臓への血液が減り、尿が急に出なくなる腎不全になることがあり注意が肝心です。特に、風邪などで下痢をしているときなどは脱水に注意してください。

7.肝臓の異常

手術後の成人先天性心疾患の患者さんで右心不全のある場合、腎臓だけでなく、肝臓もうっ血していることが少なくありません。特に、フォンタン手術後は静脈圧が高いためほとんどの患者さんに、肝臓のうっ血が起こります。長く続く肝臓のうっ血は肝臓の働きを低下させ、さらに肝臓の線維化を進めるのではと心配されています。

最近、フォンタン手術を受けたあと、大人になってから肝硬変、まれに肝臓がんになるケースが報告されています。ですから右心不全がある患者さんは循環器の先生だけではなく、消化器が専門の先生にも協力してもらい、定期的な検査や経過観察をする必要があります。

8.糖尿病予備軍が多い

肥満など生活習慣病の人は、糖尿病やその前段階である食後の高血糖「食後高血糖」、つまり血糖値を正常に保つ働きが落ちる「耐糖能(たいとうのう)異常」になりやすくなります。心筋梗塞などの患者さんは、食後高血糖を示す場合が多いことがわかっています。これは動脈硬化の促進因子ですから、狭心症や心筋梗塞の治療後もこの耐糖能異常を改善することが再発の防止に非常に大切です。

成人先天性心疾患でもこの耐糖能異常を合併している患者さんが多く、言い換えれば、糖尿病予備軍が多いことがわかっています。 

ファロー四徴症やフォンタン手術後の患者さんの約半数は糖尿病予備軍で、さらに驚くことにブドウ糖負荷試験で約10~15%は「糖尿病パターン」(糖尿病状態)と診断されています。 

その原因はまだはっきりしませんが、成人先天性心疾患に多い右心不全による、肝臓や腎臓のうっ血による臓器障害や運動不足も関係していると考えられています。


ですから、状態の安定した成人先天性心疾患の患者さんは、食生活に加え生活習慣の改善が大切です。また、定期的な検査も重要で糖尿病パターンと診断されたら、糖尿病の専門医の先生との連携も欠かせません。

9.運動能力が低下

慢性心不全の特徴の一つが運動能力の低下で、運動をしてもらって測定する運動負荷試験で「最高酸素摂取量」の低下でわかります。低下の程度は、先天性心疾患の手術を受けたあとの経過や重症度と深く関係しています。 

最高酸素摂取量に影響する要因はさまざまで、心機能の異常や、自律神経障害で心拍の変動がうまくいかなくなるのが主な原因です。 

運動不足で筋肉の性質が変化した筋肉の萎縮(廃用性骨格筋萎縮)は、運動能力を低下させる大きな要因となっています。骨格筋の萎縮は筋肉から心臓へ血液を絞り出す働きを弱めてしまい、さらに運動ができなくなるという悪循環に陥ってしまいます。

そこで、最近は、手術を受けたことがある成人先天性心疾患の患者さんで、手術後の状態が安定し、不整脈などの危険な合併症がない限り、積極的に運動をするよう勧められています。運動は生活習慣病の予防に欠かせません。


これまで説明してきましたように、成人先天性心疾患には、心臓だけでなく、腎臓や肝臓のチェック、肥満や糖尿病の予防、運動など心がけて実行してほしい点が多々あります。かけがえのない心臓をいたわりながら、元気に日々を送っていただくため、この冊子が指針となれば幸いです。


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