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[88] 脳卒中の再発を防ぐ

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
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2011年9月1日 発行

-"健康生活"継続は力-

元国立循環器病研究センター
脳血管内科 医長
上原 敏志

"健康生活"継続は力

もくじ

はじめに

脳卒中は再発しやすい病気です。その年間再発率は約5%、つまり、1年間で、20人に1人の患者さんが脳卒中を再発するといわれています。10年間で約半数の患者さんが再発したというデータもあります(福岡県久山町の疫学研究のデータ)。

脳卒中を一度起こした人は、脳卒中を起こす下地となる生活習慣や病気などをもっているため、新たな脳卒中が起こる可能性が高いのです。

もし脳卒中が再発すると、最初の時よりも後遺症が重症になったり、新たな後遺症が加わったりしますから、再発を防ぐことはとても大切なことです。

これからお話するように、日頃から健康管理をしっかりして、処方された薬をきちんと毎日飲み続けていけば、再発の危険をかなり減らすことができます。

ところで脳卒中ってどんな病気?

「脳卒中」とは「卒然として邪風に中(あた)る」、つまり「突然、悪い風に当たって倒れる」という意味です。

昔の人は「脳が急に悪い風に当たる(中る)ために起こる病気」と考えていたのですが、今では、脳の血管が詰まったり、破れたりすることが原因だとわかっています。

症状は、脳卒中が起こる脳の場所によって様々ですが、片側の顔面や手足の麻(ま)痺(ひ)(片麻痺。顔の片方がゆがむ、片方の手足に力が入らない)、半身の感覚障害(顔の半分、片方の手足の感覚がおかしい、しびれる)、言語障害(ろれつが回らない、言いたいことが言えない、他人の言うことが理解できない)などの症状が、突然、出現するのが典型的です。

図1
図1
脳卒中のタイプ

〈図1〉を見てもらいながら、話を進めます。

脳卒中には、脳の血管が詰まるタイプの「脳梗塞」、脳の血管が破れるタイプの「脳内出血」、および「くも膜下出血」があります。

もっとも多いのは脳梗塞で全体の約7割を占めています。今回のテーマは「脳卒中の再発を防ぐ」ですが、脳梗塞がもっとも多いことを踏まえ、脳梗塞の再発予防について説明します。

1)脳梗塞

脳梗塞は、原因によってラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症に分けられます。

①ラクナ梗塞

脳の細い動脈(穿通(せんつう)動脈)が高血圧などのために損傷を受けて詰まってしまい、脳の深い部分に小さな脳梗塞ができるものです。サイズが小さいため、症状は比較的軽いことが多いのですが、発作を繰り返すとパーキンソン症候群や認知症の原因になります。

*パーキンソン症候群・・・・・・安静時に手がふるえる(振戦)、動作が遅くなる、足が前に出にくくなって歩きにくくなる、などの症状が出て日常動作に支障をきたす病気。

②アテローム血栓性脳梗塞

頸(首)の血管や脳の表面を走る太い血管の動脈硬化(アテローム硬化)が原因で起こる脳梗塞です。

動脈硬化によって血管が狭くなり、そこに血栓ができて完全に詰まったり、その血栓がはがれて飛んでいって、それより先の血管が詰まったりして起こります。最初は症状が軽くても、その後、進行することが多いのが特徴です。

動脈硬化は、高血圧、糖尿病、脂質異常症などが原因で起こりますから、こうした生活習慣病が危険因子といえます。他の血管、特に冠動脈(心臓に酸素や栄養を与える血管)や、足の血管にも動脈硬化がみられることが多く、心筋梗塞や下肢閉塞性動脈硬化症を合併することも少なくありません。

③心原性脳塞栓症

心臓の中にできた血栓(血のかたまり)が脳の動脈に流れ込んで、これを詰まらせることによって起こる脳梗塞です。心(しん)原(げん)性(せい)とは、心臓の中でできた血のかたまりが原因になる、という意味です。

正常な心臓の中では、血栓ができることはまずありません。しかし、心臓病があると、心臓の動きが悪くなったり、リズムがおかしくなったりするため、血液が滞りやすくなり、血栓ができてしまうのです。

血栓ができやすい心臓病には、心房細動、リウマチ性心臓病(弁膜症)、心筋梗塞、心筋症などがあります。ほかのタイプの脳梗塞に比べ、起こり方が突然で、重症化する場合が多いのが特徴です。

2)脳内出血

高血圧の影響で、脳内の細い動脈(穿通動脈)がだんだんもろくなってきて、ついには破れて脳の中に出血するものです。脳内出血は発症したときに頭痛やおう吐を伴うことがあります。出血した場所や大きさによって異なりますが、多くは意識障害、片麻痺、半身の感覚障害などの症状が生じます。

3)くも膜下出血

脳の動脈にできたこぶ(動脈瘤)が破れて、脳と、脳を包んでいる「くも膜」とのすき間(くも膜下腔)に、出血するものです。

多くは激しい突然の頭痛で発症し、意識も混濁します。脳の外に起こる出血なので通常、手足のまひなどは起こりません。(脳の中に破れ込むと、手足のまひが起こることがあります)

脳卒中の再発予防

脳卒中の再発予防は、①原因となった病気の治療、②生活習慣の改善(誘因を除く)、③薬物療法、④手術の4点が基本になります。この4つを十分に行うことによって、最大の予防効果が得られます〈図2〉。

1.原因となった病気の治療:危険因子(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)の管理

脳卒中を起こした人は、その原因となった高血圧、糖尿病、脂質異常症などの危険因子をもっています。これらを放置すると、さらに脳の血管を傷めたりして、脳卒中を起こしやすくなります。

脳卒中の再発を予防するためには、まずこれらの危険因子をしっかり治療することが大切です。

図2 脳卒中再発予防の4本柱

1)高血圧

高血圧は、脳卒中の最大の危険因子です。ですから、脳卒中の再発を防ぐうえで、血圧をコントロールすることは極めて重要です。

血圧は、収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg未満、拡張期血圧(下の血圧)が90mmHg未満を目標にします。まず、塩分摂取を控え、適度な運動をしましょう。それでもこの数値より高い場合は、内服薬による降圧治療を行います。

脳卒中の患者さんを対象にして、降圧治療をした場合としなかった場合を比較すると、降圧治療をした方が、脳卒中の再発率を約3割減らせることがわかっています。

血圧管理のため、家庭での血圧を測ることはとても大切です。血圧が高い人は、早朝に血圧が上がりやすいので、起床後1時間以内に血圧を測って、これを目安にしましょう。

できれば朝と就寝前の2回、毎日なるべく同じ条件で測定して記録するようにしたいものです。

2)糖尿病

糖尿病は動脈硬化を発生・進行させるので、脳卒中の危険因子のひとつです。まずは食事療法・運動療法で血糖値をコントロールします。食事療法と運動療法でも血糖値が正常値にならない場合は、薬物療法を行います。薬物療法には、内服薬によるものと、インスリンを自己注射する方法とがあります。

糖尿病のある脳卒中患者を対象にして、ある種の糖尿病治療薬(インスリン抵抗性改善薬)を内服した場合と、内服しない場合を比較すると、内服をした方が、脳卒中の再発は約半分に減ったというデータも報告されています。

【糖尿病の診断基準】

①空腹時血糖値 126mg/d.以上

②75g糖負荷試験の2時間値 200mg/d.以上

③随時血糖値 200mg/d.以上

④HbA1c値6.1%以上

①.③のいずれかと④を満たすこと

*HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)値:赤血球中のヘモグロビンに糖がくっついたもので、過去1.2か月間の血糖状態がどうだったかがよくわかります。糖尿病の診断をするうえで、HbA1c値が重要視されるようになっています。

3)脂質異常症

脂質異常症、つまりコレステロールや中性脂肪が高いと、動脈硬化が進み、脳梗塞発症の危険性が高くなります。

脳梗塞の再発予防として、LDL(悪玉)コレステロール値を120mg/d.未満、HDL(善玉)コレステロール値を40mg/d.以上、中性脂肪値を150mg/d.未満にコントロールしていきます。

コレステロールや中性脂肪を下げる方法として、まず食事療法と運動療法をします。食事療法や運動療法で効果が出ない場合は、薬物療法を行います。

脂質異常症の治療は、以前から心筋梗塞の予防に効果があるとされていましたが、脳卒中の予防に対する効果は不明でした。しかし、最近、コレステロール低下薬の一種であるスタチン系の薬を内服すると、脳卒中の再発が減少することが明らかになりました。

2.生活習慣の改善(誘因を除く)〈図3〉

脳卒中の再発予防には、禁煙や食事、運動など生活習慣そのものを改善して健康的な生活を送ることが重要です。脳卒中の危険因子となるような生活習慣を続けていたのでは、再発しやすくなるのは当然です。

一度、脳卒中を発症した方は、これまでの生活習慣を見直して、日頃から健康管理に気を配って脳卒中の再発を防ぎましょう。

1)規則正しい生活をし、ストレスや疲労をためない

不規則な生活やストレスは、過食や深酒の原因となり、寝不足や疲労は体力低下のもとになります。また、不規則な生活、ストレス、寝不足や疲労は、血圧を上げるホルモンを出やすくし、そのような生活を続けていると動脈硬化が進行するといわれています。

食事は1日に3回きちんととり、過労は避け、睡眠時間を十分とるように心がけましょう。また、ストレスと上手く付き合うことや、上手に気分転換する方法を見つけることも大切です。

2)水分を十分にとる

水分を十分にとらずに脱水となった状態では、血液が濃くなって固まりやすくなり、脳梗塞のリスクが高まります。

特に、高齢の方はのどの乾きを感じにくいので注意が必要です。日中の外出などでからだを動かした場合や、夏はもちろん、冬でも暖房が効いた所に長らくいる場合などには、十分に水分を補給しましょう。

ただし、心臓や腎臓の病気のある方のなかには、水分制限が必要な場合があります。飲水については主治医に相談してください。

3)適度な運動をする

運動には次のような効果があるといわれています。①筋力と持久力がつく。②肺や心臓の働きをよくする。③骨が丈夫になり、関節の滑らかさが保てる。④肥満の防止になる。⑤ストレスが解消される。

さらに、食欲増進、不眠・肩こり、高血圧、便秘などに効果があるといわれています。

運動については、定期的に、無理をしない程度にすることが効果的です(例えば、散歩を1日30分、約3000歩を週3回など)。後遺症で片麻痺などのある人も、体調に合わせて軽い運動をするとよいでしょう。

図3 脳卒中の再発を防ぐための日常生活

4)食べ過ぎない

肥満は、高血圧、糖尿病、脂質異常症を助長させ、これらとともに動脈硬化の危険因子です。

食事全体の摂取カロリーを抑えるというごく一般的なことが実は重要です。お菓子やジュースは糖分を多く含むので控えましょう。油は高カロリーです。炒め物、揚げ物を摂りすぎないようにしましょう。マヨネーズ、ドレッシングもほどほどにしましょう。

コーヒー、紅茶の砂糖も少なめにしましょう。果物には果糖が含まれているため、果物のとりすぎは糖分のとりすぎになるので、気をつけましょう。欠食、まとめ食いは余分なカロリーを消費しきれず、かえって太りやすいと言われています。また夜食も控えましょう。

5)お酒を飲みすぎない

適度のアルコール(アルコール20g程度で日本酒なら約1合)は、コレステロールを下げるなどのよい働きもあります。しかし、深酒は血液成分や血圧に異常をきたして再発のきっかけとなります。

大量の飲酒は、血圧を上昇させ、脳内出血や、くも膜下出血など出血性の脳卒中の発症を増加させます。また、アルコールを分解するときに体内の水分が失われるため、脱水になりやすく脳梗塞の誘因となります。飲みすぎにはくれぐれもご注意。

6)たばこをすわない

たばこはやめるのが一番です。脳卒中を予防するには、血液の流れをスムーズにして脳に酸素を送ることが大切です。しかし、たばこは逆に血液をネバネバにして酸素を運びにくくしてしまいます。また、コレステロールのなかでも動脈硬化を予防する働きのある、HDL(善玉)コレステロールを減らしてしまいます。

たばこを長年吸っていても、2年間禁煙するとリスクが減少してきて、5年間禁煙すると、もともとたばこを吸ってない人と同じリスクまで戻るといわれています。「長くたばこを吸っているから、いまさらやめてもいっしょだ」と思っている人が、案外多いのですが、やめれば必ずリスクが減少します。今からでもぜひ禁煙してください。

3.薬物療法:薬を飲んで血栓ができるのを防ぐ〈表〉

脳梗塞の再発を予防するために、血栓ができるのを防ぐための治療、つまり「抗血栓療法」を行います。これには、「抗血小板療法」と「抗凝(ぎょうこ)固療法」とがあります。

1)抗血小板療法

血液は、動脈のように流れが速い場合、まず血液中の「血小板」という成分が集まって固まり、血栓をつくります。

ですから、動脈にできる血栓が原因となる脳梗塞、つまりアテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞の再発予防には、血小板の働きを抑えて血栓ができるのを防ぐ「抗血小板薬」が用いられます。

日本で使われているのは、「アスピリン」、「クロピドグレル」、「チクロピジン」、「シロスタゾール」の4種類です。

2)抗凝固療法

動脈にできる血栓は血小板が集まったものですが、心臓内の血栓は、血液中の凝固因子が深くかかわって形成されます。この凝固因子の働きを抑えて、血栓ができるのを防ぐのが「抗凝固薬」です。

抗血小板薬
(主にラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞に)
抗凝固薬
(主に心原性脳塞栓症に)
・アスピリン(バファリン、バイアスピリン)
・クロピドグレル(プラビックス)
・チクロピジン(パナルジン)
・シロスタゾール(プレタール)
・ワルファリン(ワーファリン)
・ダビガトラン(プラザキサ)

心原性脳塞栓症の再発予防には、抗凝固薬でないと効果が期待できません。「ワルファリン」という薬に加えて、最近「ダビガトラン」という新しい薬が発売されました。

これらの抗血栓薬を処方された脳梗塞患者の4人に1人が、薬の服用を自分の判断で中断、もしくは中止していたというデータがあります(日本脳卒中協会のデータ)。抗血栓薬は、予防のための薬であって、今ある症状を改善させるための薬ではないため、「薬を飲んでも飲まなくても変わらない」と思い、副作用などを心配してやめてしまう人が少なくないようです。

しかし、抗血栓薬は、脳梗塞の再発を防ぐためのとても重要な薬です。処方された以上、毎日飲み続けないと意味がありません。服薬は、毎日続けることが肝心です。

*凝固因子・・・・・・血液が凝固するのに関係する種々の血漿成分

4.手術

頸の動脈に狭窄(きょうさく)(動脈硬化で細くなっている状態)があると、脳梗塞の再発の重大なリスクになります。抗血栓療法や危険因子を管理しても不十分な場合は、手術(外科的治療)をする場合もあります。

「頸動脈内膜剥離(ないまくはくり)術」という外科手術で、頸動脈の狭窄病変を取り除く方法と、血管内にステントという金属の筒を留置して血管を拡張させる血管内治療法の「頸動脈ステント留置術」の2種類があります。これらの治療法については、この冊子の56号を参照してください。

定期的に検査を受ける

脳卒中の再発予防のためには、定期的に検査を受けることも重要です。脳の太い血管に狭窄などがある人にはMRA検査(磁気を利用して脳の血管をみる検査)、頸の動脈に狭窄がある人には頸部超音波検査、心臓の悪い人には心電図や心臓のエコー検査を定期的に行います。

ワルファリンを内服している場合は、原則として1か月に1回血液検査をして用量を調節します。また、危険因子の管理も重要ですので、糖尿病のある人なら血糖値やHbA1c値、脂質異常症のある人ならコレステロールや中性脂肪などの定期的な血液検査が必要です。

さあ、脳卒中再発防止をめざし、これまでの生活をしっかり見直し、新たな一歩を踏み出しましょう。それは、単に脳卒中再発防止にとどまらず、生活習慣病を予防し、より健康的なライフスタイルへ転換させるものです。

まず続けることです継続こそが、大きな力になります。

参考:脳卒中ことはじめ、山口武典 編著、医学書院

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