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[107] 認知症とたたかう

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
文章・図表・イラスト等の転載・引用のご相談は循環器病研究振興財団までご連絡ください。

国立循環器病研究センター
脳神経内科 部長
猪原 匡史

認知症とたたかう

はじめに

認知症を起こす病気には、たくさんの種類があります。アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体(しょうたい)型認知症、前頭側頭型認知症など、ほかにも正常圧水頭症や甲状腺の病気といった適切な治療によって治るものもあります。

いきなり難しい病名がいくつも出て、難解な話になるのではないかと心配された方もいらっしゃると思いますが、まずは病名を知ってもらい、詳しくはあとでできる限りやさしく説明します。

適切な治療で治る認知症もあること―これはぜひ覚えていてほしい大切な点です。ところが、アルツハイマー病がとくに注目された結果、認知症は神経細胞がひとりでに死んでいく難病だという認識が広まってしまいました。

しかし、認知症の2番目の原因である血管性認知症であれば、脳卒中の予防が認知症の予防に直結します。また、最近の医学の進歩によって、アルツハイマー病ですら高血圧や糖尿病などの生活習慣病を治療すれば、その進行を抑制できそうだということが明らかになってきました。

認知症と診断されたとしても、あきらめるのは早すぎます。この冊子では、認知症の頻度、原因、その診断・治療について解説し、認知症診療の新しい潮流についてもご説明します。

認知症の頻度

認知症は年齢とともに雪だるま式に増えていきます〈図1〉。このグラフを左から右にたどると、70歳以降では5歳年齢を重ねるごとに認知症の有病率(言い換えれば危険度)が倍になっていきます。80歳を超えると20%、85歳を超えると40%へと、ぐんぐん高まります。

このことから、認知症の最大の原因は年齢だと言えます。ですから、認知症が急増しているのは、私たちの寿命が延びていることと深い関係があります。人生50年と言われていた時代には考えられなかったことなのです。

では、私たちは寄る年波には勝てないと手をこまねいているしかないのでしょうか? いえ、いえ、そんなことはありません。認知症の予防という視点から、この図を読み返してみましょう。

グラフを右から左へ逆にたどると、5歳だけでも認知症の発症を先送りできれば、認知症の発症はそれまでの半分にまで減ります。衝撃的といえるほど、発症先送りによる効果は大きいのです。しかも、認知症の発症を5歳程度、先送りにする方法が明らかになってきたのです。

認知症の原因

福岡県久山町で行われている大規模な「久山町研究」によると、アルツハイマー病が認知症の筆頭原因、2番目が血管性認知症であると報告されています〈図2〉。かつては血管性認知症が筆頭原因でしたが、高齢化に伴ってアルツハイマー病が筆頭疾患になりました。

3番目は混合型認知症です。その大半がアルツハイマー病と血管性認知症の両方の要素が合併している認知症です。4番目はレビー小体型認知症というパーキンソン病に似た疾患で、幻視(実際には存在していない人物や小動物があたかもあるように見えること)や歩行障害(歩きにくさ)を伴うことがあります。

アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体型認知症のいずれも神経細胞の働きがおかしくなって死んでいく病気なので、神経変性疾患と呼ばれています。今回は、多い方から順にアルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、レビー小体型認知症の四つの認知症の原因疾患について説明します。

1)アルツハイマー病

アルツハイマー病は、β(ベータ)アミロイドという水に溶けにくいタンパク質が脳の神経細胞の周りに老人斑と呼ばれる「しみ」として蓄積したり、タウと呼ばれるタンパク質が神経原線維変化と呼ばれる「糸くず」として神経細胞の中に蓄積したりするために、神経細胞の働きが衰えて認知症を引き起こす病気です〈図3〉。

老人斑や神経原線維変化は、いわば脳でつくられる老廃物と考えられていますが、それらをうまく処理できなくなると脳にたまってきます。「しみ」や「糸くず」が脳に一杯たまれば、脳の働きが悪くなると思い浮かぶでしょう。

また「しみ」の成分であるβアミロイドは血管の壁にも蓄積し、血管の働きを悪くすることによって、小さな脳梗塞や脳出血を引き起こしたり、さらに老廃物の排泄(はいせつ)を悪くしたりすることもわかってきました。

βアミロイドが脳内に蓄積するマウスを使った動物実験では、脳の循環が悪くなると、認知機能が急激に悪くなることがわかっています。βアミロイドの蓄積と脳の循環が悪い状態は、「足し算」的に認知機能を悪化させるのではなく、「掛け算」的に悪くします。

2)血管性認知症

2番目の原因である血管性認知症は,「血管性」の文字通り,老化や生活習慣病を背景に血管の壁がもろくなった結果、詰まって梗塞を起こしたり、破れて出血を起こしたりして、認知機能が悪くなる病気です〈図4〉。

脳血管性認知症と「脳」を強調して呼ばれることもあります。脳は全身の20%近い血液を必要とする臓器で、血管の老化や動脈硬化によって最も影響を受ける臓器だからです。しかし、「人は血管とともに老いる」とよく言われるように、血管の病気(動脈硬化)は全身に及びますから、あえて「脳」をつけないのが通例となっています。

血管性認知症の原因は、虚血性心疾患(心筋梗塞など)や脳卒中の場合と同じく動脈硬化を起こす病気そのものです。その中には高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、心房細動などが含まれます。

3)混合型認知症

超高齢社会を迎え、アルツハイマー病と血管性認知症の合併例が大半を占める「混合型」認知症も増えていくでしょう。

米国の研究では、アルツハイマー病と診断された80歳以上の方の約3割が血管性認知症の要素も持っている「混合型」認知症で、軽い脳血管疾患まで含めると、アルツハイマー病の約8割に血管障害が合併していることが報告されています。つまり、アルツハイマー病と診断された患者さんの場合も、血管障害の影響を無視できないことになります。

4)レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、α(アルファ)シヌクレインというタンパク質が集合して水に溶けにくくなり、神経細胞の中でレビー小体という塊をつくることから名づけられました。ですからαシヌクレイン自体も、分解しにくい老廃物の一種と言えます。レビー小体の塊によって、神経細胞の働きが悪くなり、認知症、歩行障害、幻視などが現れる病気です。

αシヌクレインの蓄積だけが観察される「純粋型」と、アルツハイマー病の変化を伴う「通常型」に分類されます。アルツハイマー病に次いで多い神経変性疾患であるパーキンソン病も、このαシヌクレインが神経細胞に蓄積することから、このタンパク質が蓄積する病気を総称してαシヌクレイン病と呼ぶことがあります。

認知症の症状は

1)中核症状

記憶障害、見当識障害(これは後で説明)、理解・判断力の低下、実行機能の低下などが認知症の中心的な症状(中核症状)です。

記憶障害は、脳の海馬という部分が、五感でとらえた情報を整理整頓、取捨選択し、記憶しておく過程に障害が出て、新しいことが記憶できなくなることです。

見当識とは、現在の年月・時刻、自分がいる場所を把握する能力のことで、その働きが障害されるのが見当識障害です。まずは時間に関係する見当識が、次に場所に関する見当識が障害され、進行すると人間関係にまで及び、親しい家族を含め自分の周りにいる人との関係もわからなくなります。

理解・判断力の低下によって、情報を処理するスピードが低下し、ささいな変化にも戸惑うようになります。訪問セールスの口車に乗って高価な物品を購入したり、銀行の現金自動預け払い機がうまく扱えなくなったりするのも理解・判断力の低下に関係しています。

また、物事を段取りよく行う能力が障害され、実行できなくなることを実行機能障害と呼び、テレビのリモコンなどの電化製品が使えなくなったり、料理ができなくなったりします。

これらの中核症状はいろいろな組み合わせで出現しますが、アルツハイマー病では記憶障害や見当識障害が出現しやすく、血管性認知症では実行機能の低下が起こりやすいなどの特徴があります。

2)行動・心理症状

認知症が進んでくると、本人がもともと持っている性格、環境、家族関係などのさまざまな要因がからみ合って、うつ状態や妄想のような精神症状や、日常生活への適応を困難にする行動上の問題が起こってきます。これらを行動・心理症状と呼ぶことがあります。

盗まれたと信じ込む「もの盗られ妄想」や徘徊(はいかい)が代表的な症状です。これらは記憶障害や見当識障害といった中核症状が背景にあって起きていることを理解し、患者さん本人や介護者への支援が必要になります。

3)身体症状

認知症には中核症状と行動・心理症状以外にさまざまな身体症状も現れます。血管性認知症では、早い時期から運動まひ、言語障害、排尿障害などの身体症状が合併することもあります。アルツハイマー型認知症では、初期のころ身体機能が保たれている場合が多いですが、進行すると歩行がうまくいかなくなり、終末期では寝たきりになってしまう人も少なくありません。

早期診断・早期治療が重要

認知症は難病だという考え方は根強く、病院を受診しても仕方がない
といった誤った考えを持っておられる方もいますが、認知症は早期診断・
早期治療が重要な病気です。

1)はっきりした原因のある認知症の場合

まず、頭のCT検査やMRI検査で正常圧水頭症、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫といった病気だと判明すれば、脳外科的な処置で認知症がよくなることがしばしばです。また、甲状腺ホルモンの異常やビタミンの不足などで認知症が起こっている場合は、内科的な治療でよくなります。

薬の過量投与など不適切な使用が原因で認知症が起こることがあり、そのような場合、薬を調整することで回復することもあります。ですから、できるだけ早い時期に病院を受診するのが原則です。

2)アルツハイマー病の治療

アルツハイマー病では、ドネペジル塩酸塩などのアセチルコリンエステラーゼ阻害薬という薬を使って、脳の中で減少したアセチルコリンを増やして認知機能を改善させたり〈図5〉、メマンチンという、神経細胞が過剰に興奮するのを抑える薬を使って、病状の進行を遅らせるのを目的に治療が行われます。これらは根本的な治療法ではなく、一時的に症状を緩和する対症治療と位置づけられています。

3)アルツハイマー病に今後期待される治療

アルツハイマー病の根治療法として注目されているのが、βアミロイドに対する抗体療法です。簡単にいうと、βアミロイドを攻撃する、いわば〝ミサイル役〟の抗体を体でつくりだしたり、体外から投与したりして、脳に蓄積したβアミロイドの塊を破壊して取り除こうという治療です。

マウスを使った動物実験では、見事なまでにβアミロイドが除去されて認知症が改善しました。しかし、いまのところアルツハイマー病の患者さんでは、うまくいっていないため、方法を見直したうえで臨床研究が引き続き行われています。

うまくいかなかった原因の一つが、βアミロイドの神経細胞周辺での蓄積(老人斑と呼ばれるしみ)は減少したものの、かえって血管への蓄積が増えてしまったことでした。これは高齢者では多かれ少なかれ動脈硬化が起こっており、そのことが関係しているのではないかと考えられています。

また、現在開発中で期待されているのは、糖尿病の治療に使うインスリンを鼻腔内へスプレーする方法(点鼻噴霧)です。

インスリンは神経細胞が糖を取り込み、利用するのを手助けしているため、糖が唯一の栄養源となっている脳には欠かせないホルモンです。ですから、この治療法はインスリンが脳で不足すると脳がうまく働かなくなりアルツハイマー病が起こるという「脳のメタボ仮説」に基づいたものです。

インスリンは糖尿病に広く使われていますので、有効性が証明されればアルツハイマー病の患者さんにとって光明となるでしょう。

「糖尿病は血管病」と言われるほど、糖尿病は動脈硬化を引き起こす最たる疾患です。すでに説明しました抗体療法も、結局のところ動脈硬化が進んでいるかどうかが、成否に関わっているのです。

また、レビー小体型認知症を含むαシヌクレイン病でも脳血管疾患が関係していることを示す結果が発表されています。このように、アルツハイマー病を代表とする神経変性疾患でも、血管を健全にする対応策を講じなくてはならないことを示しているといえるでしょう。

4)血管性認知症の治療

一方、血管性認知症は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などによって引き起こされる動脈硬化が直接の原因ですから、それらの治療が先決になります。幸いそうした生活習慣病に有効な薬剤はたくさんありますし、運動療法や食事療法もその治療となります。

10~15分程度の少し汗ばむ程度の運動を毎日続けるだけでも効果があります。食事療法は、高血圧ならば減塩食、糖尿病ならばカロリー制限食といったように、その病気に応じた方法を選びます。

また、自分の意思で煙草をやめることができない場合、禁煙を補助する貼り薬や飲み薬が使えます。このように血管性認知症には、食事療法・運動療法・薬物療法といったさまざまな治療があるのです。

アルツハイマー病と血管性認知症では、治療法が異なるように言われることが多かったのですが、動脈硬化がアルツハイマー病治療のかぎを握っている可能性が高まってきました。さらに、あとで説明する研究結果のように、アルツハイマー病も血管性認知症と同様に、生活習慣病の管理でその進行が抑えられることがわかってきました。

つまり、認知症の原因のほとんどを占めている2大疾患、アルツハイマー病と血管性認知症は、いずれも生活習慣病を厳重に管理することで進行を予防できることがはっきりしてきたのです。

生活習慣病の管理で進行防止

フランスのリール大学でとても興味深い研究が行われました。アルツハイマー病と診断された約300人の患者さんを約100人ずつ3群に分けました。その3群とは① 高血圧、糖尿病、脂質異常症、もしくは喫煙といった生活習慣病と言われる状態をまったく管理しなかった群②ある程度管理した群③すべて管理した群です〈図6〉。

ミニメンタルステート検査(MMSE)という認知症の評価法(30点満点)で、得点が22点ぐらい、辛うじて自立した生活ができている、ただ認知機能障害が進んできている―そういう患者さんを対象に2年半にわたり経過を観察しました。

結果は、すべて管理した③群は20点くらいでほぼ横ばい、自立が可能な状態を維持できていましたが、まったく管理しなかった①群は14点まで低下し、少なくとも補佐する人が必要で、場合によっては後見人制度への申請が必要な状態と言えます。②群はその中間でした。生活習慣病を管理するかしないかによって、2年半でこのように大きな差が生じることがわかったのです。

重要なことは、この研究が生活習慣病が直接の引き金となる血管性認知症の患者さんではなく、アルツハイマー病という診断がついた患者さんを対象にしていることです。つまり、神経細胞が年をとるにつれ、ひとりでに死んでいくと考えられていたアルツハイマー病でも、生活習慣病を管理すれば進行を止められることが実際にわかったのです。

カナダのHachinski博士は、アルツハイマー病という診断が独り歩きするのは望ましくない、と述べています。その理由は、高齢者でアルツハイマー病という病名がついてしまうと、高血圧、糖尿病、肥満、脳卒中という認知症を引き起こしうる病気に目配りされず、医師も生活習慣病の治療をなおざりにしがちだからです。

アルツハイマー病は生活習慣病とは異なる変性疾患だから、塩分やカロリーを気にせずに好きなものを食べてもらってもよい、徘徊が怖いから屋外には出ないでいてもらおう、といった食事療法や運動療法に逆行する判断がなされてはいけないのです。

言い換えると、高齢者の認知症は単一の原因であることはむしろまれで、アルツハイマー病は単にその一側面であり、ほかにも高血圧、糖尿病、肥満、脳卒中といったいくつもの原因が共存しているというのが、認知症の「多因子説」です〈図7〉。

例えば、ある患者さんではアルツハイマー病もあるけれども、糖尿病も一因である、別の患者さんでは肥満、脂質異常症に関連して起こった脳卒中が原因である......。このように、それぞれの認知症患者さんごとに原因を見極め、テーラーメード治療(一人ひとりに最も適した個別化治療)を行うべきだと提言されています。

高血圧の治療を例にしますと、1剤でうまくいかない方には、2剤、3剤と作用の仕組みが違う薬剤を併用するのが通常です。認知症の多因子説に立てば、認知症に対してもいくつかの作用の仕組みが異なる薬剤を同時に使う、もしくは食事療法、運動療法を併用する治療法が将来の標準治療になるでしょう。

「心を動かせ、そして体を動かせ」

認知症に効果的な、よい「活動」があります。歩きながら計算するなど二つの課題を同時にこなして、脳に相応の負荷(負担)をかける方法です。これは、運動もするけれど頭も使うことで、脳の記憶をつかさどる部分(海馬)の萎縮が抑制できたという研究報告に基づいています。運動しながら脳も使う活動をデュアルタスク(二重の課題)と言います。デュアルタスクとは引き算をしながら散歩するというような課題をさします。

また、認知症の方を対象に万歩計で歩行距離を記録し、その記録をもとに「歩行距離が足りないから、もうちょっと歩きましょう」などと外来で指導したという研究もあります。

前に紹介したミニメンタルステート検査などの認知機能評価をしながら経過を追っていくと、普段よく歩いている人は、認知機能が保たれている傾向が認められました。6か月後に歩数が増加した方と増加しなかった方を比べると、認知機能に差が出ており、歩数が増加した人は認知機能テストの点数が上がっていました。

普段の運動がいかに脳機能に影響を与えるか、そして認知症の進行を予防するのに役立つかということを示唆しています。

哲学者プラトンが紀元前に、生活習慣病の予防には何がよいか、という問いに対して「絶えずこころを動かせ、そして、身体を動かせ」という言葉を残しています(「ティマイオス-自然について」)。これもある意味でのデュアルタスクです。「心と体をともに動かす」ことが生活習慣病の予防につながることが、紀元前からの真理だということでしょう。

認知症を減少させたイギリス

2013年の医学専門誌に、イギリスの75歳以上の高齢者に占める認知症の頻度がここ20年間で減少したという報告が出ました。ここ20年間でイギリス国民の平均寿命は約3年延びていますが、そうした人口の高齢化を調整したうえでの報告で、高齢化に伴って認知症は必然的に増加する、という私たちの認識とは正反対のものでした。

日本では20年前に比べて認知症が増えているというのが世間の共通認識です。では、イギリスはどうして成功したのでしょうか?

イギリスでは2007年に国家戦略として、〝What's good for your heart is good for your head〟という標語をつくって、認知症対策に取り組んできました。心血管病(heart)の治療、つまり生活習慣病の治療が、認知症(head)の治療にもなりますよという健康戦略です。

特に高血圧の管理や禁煙を推進したことが認知症を減らした要因だ、という分析結果が出ています。イギリスでは、高血圧の管理を推し進めた開業医にはそれ相応の報酬が支払われますし、煙草は一箱1000円以上しますから、社会全体として認知症予防を推し進める仕組みができ上がっていると言ってよいでしょう。

さらにオランダ、アメリカ、スウェーデンなどからも認知症が減少傾向にあるという同様の報告が出ています。すべてに共通するのは、生活習慣病の管理が行き届いたのが一因ではないかと考えられています。認知症は社会全体として取り組めば予防できる病気なのです。

終わりに

日本の生活習慣病対策の指針「健康日本21」第2版が2013年に発表されています。肥満、喫煙、飲酒などについては多く取り上げられていますが、残念ながら認知症自体はほとんど取り上げられていません。

わが国では、認知症は生活習慣病とはあまり関係がない、と捉えられていると言っても過言ではありません。これもアルツハイマー病が神経変性疾患を代表する認知症の筆頭疾患であるという認識があまりにも根強いためかもしれません。

しかし、生活習慣病が実はアルツハイマー病の発症や進展にも密接にかかわっていることが明らかとなってきました。生活習慣病の管理には、これまで説明したように食事療法・運動療法・薬物療法と対応策がたくさんあります。繰り返しますが、私たちはすでに対処法を持っているのです。

認知症の最大の危険因子である「年齢」はどうすることもできませんが、生活習慣病を管理することで健康寿命を延ばすことが可能なことをご理解いただけたかと思います。

わが国も認知症への認識を180度変えることで、認知症が減少した国の仲間入りをすることも不可能ではないのです。

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