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[43] 血圧の自己管理(改訂版)

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
文章・図表・イラスト等の転載・引用のご相談は循環器病研究振興財団までご連絡ください。

元国立循環器病研究センター
高血圧・腎臓部長
河野 雄平

生活習慣を改善しよう

イラスト:生活習慣を改善しよう

もくじ

※本ページは、知っておきたい循環器病あれこれ[43]「血圧の自己管理」の改訂版(2005年4月20日改訂)です。

はじめに

血圧の異常には、高血圧と低血圧があります。高血圧はよくみられますが、脳卒中や心筋梗塞などの循環器病の原因になるので、管理や治療が必要です。一方、低血圧の方は比較的少なく、また治療が必要な場合は、そのうちの一部にすぎません。高血圧の治療や管理を十分に行うには、それを病院や医師に任せておくだけではなく、患者さんご自身の理解と努力も重要です。

ここでは高血圧の人が血圧をどう自己管理すべきかを述べます。まず、高血圧という病気について簡単にご説明し、次に、血圧の自己管理の中心となる生活習慣をどう正し、よくしていくか、つまり「修正」の話をします。それから、血圧の薬に触れておきましょう。最後に、これも自己管理で重要な家庭での血圧測定の話をします。高血圧の皆さんやご家族の方々の参考になれば幸いです。

高血圧とは

1) 血圧と高血圧

血圧は血管内の圧力のことで、普通は動脈内圧を意味しています。血圧は心臓の働きや小さな動脈の抵抗、大きな動脈の硬さなどによって決まり、心臓の収縮期に最大(収縮期血圧=上の血圧)となり、拡張期に最小(拡張期血圧=下の血圧)となります。

血圧の測定には水銀柱が用いられてきましたので、その高さが単位(mmHg)となっています。また、血圧は血液の量や粘度、腎臓、神経系、内分泌系など多くの因子の影響を受け、常に変動しています。

高血圧とは血圧(動脈圧)が高い状態です。血圧の正常値は「収縮期140mmHg未満、拡張期90mmHg未満」で、これ以上なら高血圧となります。高血圧の程度は、血圧のレベルによってさらに分けられています<表1>。また、正常血圧であっても高めの場合、循環器病の危険性が、より低い人に比べ高くなりますから、130~139/85~89mmHgは正常高値血圧、120/80mmHg未満が至適血圧とされています。

高血圧の人は、頭痛やめまい、動悸、息切れなどを伴うこともありますが、何の症状もないのが普通です。しかし、自覚症状がなくても重大な悪影響をもたらしますから、高血圧は“サイレント・キラー”(沈黙の殺し屋)と呼ばれています。一方、軽い高血圧で種々の症状を伴うこともあり、高血圧と心身症の関連も考えられています。

高血圧の人の大部分(約90%)は、明らかな原因を特定できない「本態性高血圧」で、一部(約10%)は腎臓や副腎などに原因がある「二次性高血圧」です。

本態性高血圧の原因は完全には解明されていませんが、遺伝因子と環境要因とがともに重要と考えられています。環境要因には食塩、肥満、ストレス、アルコール、運動不足、ミネラル不足などの生活習慣が含まれ、高血圧は生活習慣病の一つになっています。

表1 成人における血圧の分類
表1:成人における血圧の分類

2) 高血圧と循環器病の関係

高血圧は、全身の小さな血管や大きな動脈の硬化や心臓の肥大をもたらし、心臓血管系の主要な危険因子となっています。高血圧が関係する循環器病には、脳出血や脳梗塞などの脳卒中、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心臓病、心不全、不整脈、腎不全、大動脈瘤や大動脈解離、閉塞性動脈硬化症などがあります。老年痴呆にも高血圧が関係しています。

血圧の悪影響は、若年者や中年者では拡張期血圧(下の血圧)も重要ですが、一般には収縮期血圧(上の血圧)がより強く関係しています。老年者に多い収縮期高血圧(収縮期血圧は高く、拡張期血圧は正常)でも、循環器病のリスクは高くなっています。この場合、低い拡張期血圧はあまりいいことではなく、大きな血管の動脈硬化が進んでいることの表れと考えられています。

3) 高血圧の治療効果は

高血圧の治療によって多くの循環器病を予防できることは、いくつもの大規模な臨床試験で証明されています。具体的にいいますと、血圧の薬(降圧薬)で治療をすれば、治療をしなかった場合に比べて脳卒中は30~40%、虚血性心臓病や心血管死亡は約20%、全死亡も10%以上少なくなることが期待できます。この効果は、高齢者や収縮期高血圧者の場合にも明らかです。また、控えめに血圧を下げるより、積極的な降圧が循環器病の予防に効果的であることもわかっています。

生活習慣をどう改善するか

1) 改善の原則

生活習慣の修正は非薬物療法とも呼ばれ、食事や運動などの生活習慣を改善することによって、高血圧や他の心血管危険因子をコントロールするものです。生活習慣の修正は、高血圧の基本的な治療法として勧められており、高血圧の予防にも重要です。

日本高血圧学会の新しいガイドライン(指針)を<表2>に示しました。ご覧いただくとわかるように(1)食塩制限(2)野菜・果物の摂取とコレステロールや飽和脂肪酸(動物性脂肪)の制限(3)減量(肥満の是正)(4)運動(5)アルコール制限(6)禁煙の6点が基本となっています。

これらのほかにも、ミネラルの摂取やストレスなど、いくつかの生活習慣が血圧に関係しています。生活習慣の修正には自分自身の認識と理解、意欲、努力が必要で、血圧の自己管理はこれをしっかり行うことが重要です。

表2 生活習慣の修正項目
表2:生活習慣の修正項目

(高血圧治療ガイドライン2004より)

2) 食塩の制限

塩をとりすぎると血圧によくないことはご存知ですね。食塩(ナトリウム)の制限は、高血圧治療の基本として重要です。食塩制限の目標は1日6g未満です。日本人の食塩摂取量は平均して1日約12gで、世界的にもまだ多い状況です。

食塩制限の効果には個人差がありますが、1g減らすごとに約1mmHgの血圧低下が期待できます<図1>。また、食塩自体が心肥大や血管障害をもたらしますので、この点からも制限が重要となります。自己管理のポイントは、塩や醤油などの調味料を減らすこと、外食や加工食品に注意すること、食事全体の量に気をつけることなどです。

図1 高血圧の患者さんの食塩制限の効果
図1:高血圧の患者さんの食塩制限の効果

(Kawano Y,et al:Hypertension Reserch 1996より)

3) 減量(肥満の是正)

体重や肥満度と血圧との間には密接な関係があり、肥満で高血圧の人は減量が必要です。残念ながら、飽食社会の日本では肥満者は急激に増加しています。減量の降圧効果は明らかで、1kgあたり1~2mmHgの血圧低下が期待できます<図2>。減量によって糖・脂質代謝も改善しますので、心血管系リスクの軽減にとても効果的です。

体重を減らすにはエネルギーの摂取と消費のバランスをマイナスにする必要があり、食事のカロリー制限が主体となります。運動によって消費エネルギーを増やすことも重要で、両方を組み合わせればさらによい結果が得られるでしょう。

図2 肥満のある高血圧患者さんの低カロリー食(800~900キロカロリー/日)による減量の血圧への効果
図2:肥満のある高血圧患者さんの低カロリー食による減量の血圧への効果

(河野雄平:高血圧治療と予防、PHP研究所、1995より)

4) 運動(身体活動)

運動は減量に有効ですが、これとは別に血圧を下げる効果が認められています。日本人の身体活動量は、以前に比べ随分少なくなっています。高血圧の人にはウォーキングやサイクリングのような比較的軽い運動を定期的に(毎日30分以上)行うことをお勧めします<図3>。運動をきちんと行えば血圧は5~10mmHg低下し、糖・脂質代謝も改善することが期待できます。

運動する人は、そうでない人より循環器病や死亡率が少ないこともわかってきましたので、身体を動かす習慣をぜひ身につけて実行してください。

図3 高血圧の人にお勧めしたい運動
図3:高血圧の人にお勧めしたい運動

5) アルコールの制限

アルコールと高血圧の関係もよく知られています。高血圧の人は飲酒を制限するのが望ましく、その目安は男性で1日30ml(日本酒1合、ビール大瓶1本に相当)以内、女性はその半分までです<図4>。

しかし、アルコールとその代謝産物には血管拡張による降圧作用もあります。私たちの研究では、飲酒制限により日中の血圧は下がりましたが、夜の血圧は逆に上昇し、24時間血圧は不変でした。アルコールは脳出血、不整脈、心肥大などの危険因子ですが、一方では動脈硬化を抑制し、虚血性心臓病を予防する働きがあります。

アルコール摂取量と循環器病死亡および全死亡との関係はU字型で、飲まない人より少し飲む人の方が死亡は少なく、酒量が多くなれば危険性は高くなります。したがって、特別な理由がなければ禁酒する必要はありません。

図4 飲酒と喫煙の原則
図4:飲酒と喫煙の原則

6) 禁煙

すべての高血圧治療のガイドラインが禁煙を勧めています。喫煙は動脈硬化を促進し、心筋梗塞などの虚血性心疾患の主要な危険因子になっています。日本人の喫煙は男性では減少傾向にありますが、他の先進国と比べるとまだ多く、女性は他の先進国より少ないものの、若い人ではやや増加していることが問題です。

喫煙者は非喫煙者に比べ、循環器病、がん、全体の死亡率がそれぞれ1.5~2倍になることがわかっています。禁煙によってこれらのリスクを大幅に低下させることができます。また、たばこを1本吸うたびに血圧は10~20mmHg上がります。したがって、高血圧でたばこを吸っている方は、禁煙がとても重要です。ただし、禁煙後の体重増加には気をつけて下さい。

7) ミネラルや野菜・果物の摂取

カリウム、カルシウム、マグネシウムといったミネラルは、摂取不足の場合、高血圧に関係することが知られています。これらの補給効果を調べた研究結果は一致していませんが、カリウムを多くとることにより3~4mmHg、カルシウムとマグネシウムは1~2mmHgの血圧低下が期待できます。私たちの24時間血圧や家庭血圧への効果を調べた研究でも、これらの摂取増加により小さいながら血圧低下が認められました。

したがって、これらのミネラルは十分な量を摂取することをお勧めします。カリウムとマグネシウムは、野菜や果物、海藻、豆、ナッツなどに多く、カルシウムは牛乳やシーフードに多く含まれています。ただし、腎不全の人は、これらはお勧めできませんので、ご注意ください。

高血圧をコントロールするのに、食事全体の改善が効果的なこともわかっています。例えば、果物と野菜、低脂肪の乳製品に富む食事(DASH食)の効果をみた、米国の「DASH研究」では、体重や食塩は変わらなくても血圧はかなり下がっています。この食事はミネラルを豊富に含み、食物線維や蛋白質も多く、脂肪は少なくなっています。DASH食は米国の新しいガイドラインで推奨されています。

8) 飽和脂肪とコレステロールの制限

高血圧に高脂血症が加わると動脈硬化がさらに進みますから、そのような人は食事に注意が必要です。コレステロールを下げるには、飽和脂肪(動物性の脂肪)を制限することが効果的です。肉の脂身やバターなどですね。次に、卵の黄身やレバーなどコレステロールが多い食品の制限も必要です。中性脂肪(トリグリセリド)を下げるには、糖質と全体のカロリー制限が重要です。HDLコレステロールは“善玉コレステロール”とも呼ばれ、低い場合が問題です。これはアルコールや運動によりいくらか増加します。

9) ストレスへの対応

血圧は常に変動しており、精神的あるいは身体的なストレスが加わるときに大きく上がります。普通はストレスがなくなれば血圧も元に戻りますが、持続するストレスや強いストレスは、高血圧や心血管事故に関係すると考えられていますから、ストレスの多い生活はなるべく避けることです。

ストレスへの対応も重要です。運動やリラックスができればいいのですが、たばこや酒の量が増えるなどの悪い生活習慣にならないようにして下さい。ストレスを管理する方法として筋肉を弛緩させるリラクゼーションや、瞑想するメディテーション、脈拍数をコントロールするバイオフィードバックなどがありますが、高血圧の治療としてはあまり行われていないのが現状です。

10) その他

食事や生活について、これまで挙げてきたこと以外は、高血圧の一般的な治療法としてはあまり認められていません。しかし、魚油や食物線維は血圧を少し下げ、脂質代謝などにも好影響があります。また疫学調査で、蛋白質の摂取量が多い人は血圧が低めであることが報告されています。

健康食品の多くは、血圧への効果は証明されていません。しかし、魚ペプチドやサワーミルクなど、いくつかは降圧効果が確認され、特定保健用食品として認可されています。

11) 生活習慣修正の限界と問題点

食事や運動を中心とした生活習慣の修正は、血圧を下げ、他の心血管危険因子を是正し、副作用はほとんどなく、費用もかかりません。しかし限界や問題点もあります。

まず、血圧への効果があまり大きくないことです。厳重な食塩制限や大幅な体重減少ができれば別ですが、通常はそれぞれの降圧効果は数mmHgに過ぎず、それらを組み合わせても10mmHg程度です。ですから、生活習慣の修正だけで血圧が正常化するとは限らず、多くの高血圧の人は薬も必要となります。

次の、そしてもっと大きな問題は、実行と継続が難しいことです。きちんと守れるかどうかという点で、生活習慣修正は薬物療法にはるかに劣っています。特に食塩制限と減量という最も効果的なものが、守れず長続きしないことが多いのです。

私たちの経験でも、血圧の薬は約8割の人はちゃんと飲んでくれますが、食塩制限がきちんとできている人は約2割に過ぎません。減量も、いくら外来で指導してもなかなかやせてもらえません。

さらに、生活習慣の修正の長期的な効果についてのデータが乏しいこともあります。高血圧治療の目的である心血管疾患の予防は、集団検診などにより観察していく疫学研究の結果から期待できますが、無作為の臨床試験による証明はまだありません。

それでも、生活習慣の修正が高血圧治療の基本であり有用であることには疑いがありません。なかなか難しいとは思いますが、ぜひ良い生活習慣を続けて下さい。

血圧の薬

1) 高血圧の薬物療法

前にも述べましたが、降圧薬による治療が高血圧の患者さんの血管や心臓を守り、死亡率も減らすことは明らかです。薬は副作用が怖いとか、ずっとのまないといけないのでいやだ、という気持ちもわかりますが、薬をのまずに放っておくほうがもっと危険です。降圧薬には多くの種類があり、患者さんの病状によっていくらか向き不向きがありますが、血圧を下げること自体が重要です。

薬についてあまり神経質になることはありませんが、ある程度の知識と理解は必要でしょう。薬をきちんとのむことも、血圧の自己管理では大切です。

降圧薬をきちんと飲みましょう
イラスト:降圧薬をきちんと飲みましょう

2) 降圧薬の種類と作用、副作用

降圧薬には多くの種類があります。よく用いられるものは「カルシウム(Ca)拮抗薬」「アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬」「アンジオテンシンII受容体拮抗薬(AII拮抗薬)」「利尿薬」「ベータ(β)遮断薬」「アルファ(α)遮断薬」の6つのグループです。それぞれのグループには、さらにいくつもの薬剤があります。

Ca拮抗薬は、血管の細胞へのカルシウムイオンの流入を減らすことによって血圧を下げます。狭心症にも有効です。

ACE阻害薬は、血圧や心臓、腎臓に関係するアンジオテンシンというホルモンを減らすことにより血圧を下げます。心肥大や心不全、糖尿病性腎症などへの効果が認められています。

AII拮抗薬は、アンジオテンシンの作用を抑えることによって血圧を下げ、ACE阻害薬と同様の効果があります。副作用が少ないのが特徴の一つです。

利尿薬は腎臓から食塩と水を出すことで血圧を下げます。安価であり、脳卒中や心不全などの予防効果が確認されています。

β遮断薬は、主に心臓への交感神経の作用を抑えて血圧を下げます。狭心症や不整脈にも有効です。

α遮断薬は血管への交感神経の作用を抑えることにより血圧を下げます。糖・脂質代謝を改善し、前立腺肥大の症状にも効果があります。

これらの他に、中枢神経に作用する中枢性交感神経抑制薬や、血管を直接拡げる血管拡張薬が用いられる場合もあります。

降圧薬の副作用は、詳細は省略しますが、それぞれの薬により異なります。また、血圧が下がり過ぎた場合に、めまいや立ちくらみ、倦怠感、眠気などが起こることがあります。自分がのんでいる薬の種類や主な副作用について、担当の医師や薬剤師に教えてもらっておく方がよいでしょう。薬を開始、あるいは変更してから体の調子が変わったら、早めに話して下さい。

3) 薬物治療の問題点

高血圧の治療は進歩し普及してきましたが、高血圧なのに治療を受けていない人や、薬をのんでいても血圧がコントロールされていない人が多いことが、大きな問題です。副作用や血圧の下がり過ぎも問題ですが、早めの対応や家庭血圧の測定でかなり防げると思います。

高血圧はコントロールできます。自然に治ることはほとんどありませんから、薬はきちんと飲み続けることが大事です。血圧の薬はずっと続けるのが原則ですが、止めることができないわけではありません。軽い高血圧の人で血圧が十分に下がっている場合や、食事療法を守っていなかった人が真面目に取り組んで血圧が下がった場合などは、医師と相談のうえで降圧薬の中止を試みてもよいと思います。そのためにも生活習慣の修正が大切ですね。

また、自分勝手に薬を調節してはいけません。薬の飲み忘れは感心しませんが、現在用いられている薬の大部分は長時間作用性ですので、1度忘れただけで血圧が急激に上がることはほとんどありません。しかし、あまり飲み忘れが多い場合には、そのことを主治医に話して下さい。

家庭での血圧測定

1) なぜ大切なのか

家庭用の血圧計が普及し、自分で血圧を測定しておられる方は多いと思います。家庭血圧からは、診察室での血圧測定ではわからない情報が得られ、高血圧の診断と治療に大きな意義があります。

まず、家庭血圧測定によって、日常生活中の血圧を知ることができます。白衣の医療スタッフの前では緊張して血圧が上がる「白衣高血圧」や、病院では正常ですが日常は高い「仮面高血圧」の診断、降圧治療の決定、治療効果の判定に役立ちます。次に、家庭血圧は一定の条件で数多く測れますので、信頼性に優れています。高血圧に関係する心血管障害は、外来血圧より家庭血圧との関連が強いことがわかっています。

また、家庭血圧で自覚症状と血圧との関係がわかるのも利点の一つです。さらに、患者さんの血圧への意識が高まり、治療への理解が深まることも期待できるでしょう。このように家庭血圧測定は有用で、血圧の自己管理の面からもお勧めします<表3>。

表3 高血圧の患者さんのための家庭血圧測定
  • 家庭血圧の測定で、より良い高血圧治療を
  • なるべく一定時間に、規則的に測る(朝食前と就寝前)
  • めまいなどの症状があるときは追加測定を
  • 血圧値にあまり一喜一憂しない
  • 血圧値によって自分勝手に薬を調節しない
  • 高血圧の予防と早期発見のために、家族全員の血圧測定を

(河野雄平:今日の高血圧治療,2000改変)

2) 家庭血圧と外来血圧の差

家庭血圧は病院での外来血圧より低いことがふつうです。その差は平均すると10/5mmHg程度ですが、外来と家庭の血圧差は個人差が大きく、50mmHg以上になることもあります(白衣現象)。一部の人は、家庭血圧が外来血圧より高い“逆白衣現象”を示します。また、家庭血圧は朝が夜よりいくらか高い場合が多いです。

家庭血圧では、高血圧の診断や治療目標の数値をより低くする必要があります。家庭血圧では135/85mmHg以上が高血圧となります。

3)  家庭血圧測定の実際と注意点

家庭用の血圧計は種々のものが市販されていますが、上腕用のものがお勧めです。手首用はあまり勧められませんが、精度検定で信頼できれば用いてもよいでしょう。指用のものは勧められません。また、使用開始時や2~3年ごとに精度を検定し、正しく測定できるようにしておくことも大切です。

家庭血圧は、朝(起床後から朝食前)と夜(夕食2時間後から就寝前)に測定するのが理想的です。朝は、排尿後に座って静かにして測りましょう。測定時は腕帯(カフ)を心臓の高さに保つようにします。1回でも悪くはありませんが、できれば2、3回測るほうがよいでしょう。血圧は毎日測って記録するのが望ましいことですが、厳密である必要はありません。時々でもいいから測ることが重要なのです。めまいや頭痛などの自覚症状があるときには追加して測定しましょう。血圧は常に変動していますから、数値にあまり神経質にならないようにして下さい。

4)  家庭血圧と高血圧治療

家庭血圧は私たちも大いに参考にしています。高血圧の治療では、外来血圧より家庭血圧を重視していると言ってもいいくらいです。ただし、そのためには家庭血圧が正しく測定されていなければなりません。

家庭血圧に基づく治療で、白衣高血圧や白衣現象の著しい患者さんに、不要な降圧薬の使用を避けることができます。また、家庭血圧は朝が夜より高い場合が多いと述べましたが、この傾向は降圧治療により強くなることがあります。朝の血圧が外来血圧や夜の血圧よりかなり高い場合、薬の種類や服薬時間を変更することで改善が期待できるでしょう。

このように、家庭血圧の測定で、それぞれの患者さんにとってよりよい高血圧の治療ができるようになります。ただし、自分勝手に薬を調節するのは禁物です。

おわりに

血圧の自己管理が高血圧の治療にいかに大切かということと、それを実行する際に心がけてほしいポイントをご説明しました。高血圧は動脈硬化を進行させ、多くの循環器病の原因になりますが、適切な治療によってそれらの大部分を予防できます。生活習慣の修正を中心とした自己管理は高血圧治療の基本です。ぜひ実行し、継続していただきたいと思います。薬をのむことも大事ですし、家庭血圧測定もお勧めします。ただし、自己管理が自分勝手にならないよう、医師や医療スタッフに相談し、アドバイスを受けて下さい。

 

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