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[80] 血液をさらさらにする薬

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
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2010年5月1日 発行

- なぜ、いつ必要か -

国立循環器病研究センター
臨床検査部 臨床検査科 輸血管理室 宮田 茂樹
元薬剤部長 小原 延章

血管を詰まらせない協力

挿絵01

もくじ


はじめにクイズを一つ。

問い 次の病気に共通しているのはなんでしょうか?
心筋梗塞(こうそく)、脳梗塞、深部静脈血栓症、肺塞栓(そくせん)症

答え 病気の起きた場所は違っていますが、共通しているのは血の塊である「血栓」ができ、それが血管を詰まらせていることです。<図1>をご覧ください。

図1 おもな血栓症とその発症部位
図1 おもな血栓症とその発症部位

心臓に栄養を与えている冠動脈、頭の中の脳動脈、足からの血液を心臓に戻す深部静脈などを血栓が詰まらせると、【問い】で挙げたような病気を引き起こします。これらの病気を総称して「血栓症(血栓塞栓症)」と呼んでいます。

血栓症を起さないため、つまり血管を詰まらせないようにするため、血液を“さらさらにする薬”が必要になります。

このページでは、血栓と血栓症の仕組み、血液をさらさらにする薬が、どんな場合に必要で、どのように働くのか、患者さんが服用するときに注意すべき点などを解説します。

血栓ができるのはなぜ?

健康な人では、血液は体の中をスムーズに流れ、固まって血栓ができることはありません。では、血栓はなぜできるのでしょうか。

血管が傷ついて出血した場合、生命にかかわる危険な状態になります。そこで、血液の流出を防ぐ仕組みが働きます。これが「止血」です。

止血の仕組み

止血には二つの段階があって、まず一次止血と呼ばれる仕組みが働きます。この際、血液中の「血小板」が重要な働きをします。血小板が血管の傷ついた部分にくっつき、止血が始まります。さらに血小板同士が集まって塊を作り、損傷部をふさぎます<図2>。これが一次止血です。

次に、この塊をより強固なものにするため、血液中のもう一つ重要な因子である「凝固因子」が働きます。凝固因子は数多くあって、複雑にお互いに反応、制御しあって最終的に「フィブリン」という糊(のり)のようなものをつくります。

この凝固因子の反応は、血小板膜の表面や、または血小板がちぎれてできた断片の表面で加速され、血の塊を強固にし、出血を止めます。この血の塊が「血栓」なのです。

ですから、血栓ができるには血小板と凝固因子が欠かせません。

図2 止血の過程

図2 止血の過程

  1. (1)健康な血管は、血管内皮に覆われ、血栓はできない
  2. (2)血管内皮に傷がつくと、血小板が集まってくる
  3. (3)血管の傷ついた部分に血小板がくっつき(粘着)、血小板同士が集まって塊を作る(血栓)
  4. (4)凝固因子が働き、フィブリンという糊が血栓をからめて、強くし、出血を止める(絵の中の糸くずの様なものが、フィブリン)

止血に異常がある場合

血液中のこれらの因子に生まれつき異常がある方がおられます。血小板の働きが低下している血小板無力症、凝固因子の中で凝固第8因子(または凝固第9因子)が少ない血友病などが代表的です。これらの患者さんは、けがをしたときなどに血が止まりにくくなります。

つまり、血栓は本来、出血を止めるために重要な役割を果たしているのです。次に血栓と血栓症について話を進めます。

動脈硬化と血流の鬱滞(うったい)が血栓症の下地に

歳をとるにつれ、血管も元気がなくなってきます。さらに喫煙、肥満、脂質異常症、高血圧、糖尿病などの条件が重なると、動脈硬化が進みます。

血管の内側は内皮という組織で覆われ、血栓ができないようになっています。しかし、動脈硬化が起こっているところでは、血管壁にコレステロールなどがたまって、おかゆのような状態「粥(かゆ)状」になり、血管の内側を狭くする一方、動脈硬化の部分が破れると内皮がはがれ落ち、血管がけがで傷ついたのと似たような状態になります。

傷ついた部分に血栓ができ、この塊が大きくなって、血液がその先に流れなくなると、血栓症を起こすわけです。動脈の内面にできた血栓がはがれて血流に乗り、その先の血管を詰めてしまうことがあります。これを「塞栓(そくせん)症」と呼びます。ここまでの話は、主に動脈についてです。

では、静脈はどうでしょう。動脈に比べ血の流れが遅く、血圧も低いために、滞りやすくなります。例えば、手術後に長い間ベッドに寝たままになっている場合などがそうです。この場合は、下肢での血のめぐりが悪くなることで、血の流れが停滞しがちになり、血栓ができやすくなります。

最近よく報道されるエコノミークラス症候群では、飛行機の狭い座席に長時間座ったままの状態が続くことで、静脈の流れが滞り、血栓ができます。この血栓が血流に乗り移動し、肺動脈にひっかかって肺塞栓が起こるのがエコノミークラス症候群です。心房細動で心臓の中で血液の流れが悪くなって血栓ができ、それが流れ出て脳塞栓症が起こるのも、これと同じようなメカニズムです。

このように血栓症は動脈硬化によるものと、血液の流れが滞ることによるものとがあります。二つの血栓症はどう違うのでしょうか。

血栓症ができるプロセス

「ずり応力」が関係

最近、この血栓症のできる過程が実験的に詳しく分かるようになってきました。<図3>を見てください。

これは血管内の血液の流れを示したものですが、赤血球が血管の中心部を流れ、血小板は血管壁(血管内皮)に沿って移動しています。血液の流れは血管の中心に近いほど速く、血管壁に近いほど遅くなります。また、血液は粘つく性質(粘度)を持っています。

この速度の違いと血液の粘っこさによって、血管の中で「ずり応力」という力が発生します。難しい言葉ですが、流れる血球(血小板)が受ける「摩擦力」と考えてください。

血管壁の近くを移動している血小板は、この摩擦力にさらされ、その力が、血栓ができるのにかかわっています。

血栓症の二つのタイプ

摩擦力(ずり応力)は、血流が速く、血圧の高い動脈で大きく、血流の遅い、血圧の低い静脈で小さくなります。血栓ができる場合に、この「ずり応力」が強く影響します。

「ずり応力」が大きいところで血栓ができるには、血小板の働きが最も重要です。ずり応力が小さい、血流の滞っているところでは、フィブリノーゲンをはじめとする凝固因子の働きが活発になることが重要です。

従って摩擦力(ずり応力)の高い動脈で、動脈硬化が主体となる血栓症を防ぐには、血小板の働きを抑えることが必要です。静脈で血液が滞ることが主体となる血栓症では、凝固因子の働きを抑えることが必要となります。

ですから、血液をさらさらにする薬は、血小板の働きを抑える「抗血小板薬」と、凝固因子の働きを抑える「抗凝固薬」の二種類に分けられます。

ただし、血小板と凝固因子は、お互いに影響しあって血栓を作っていますので、両方の働きをはっきりと分けることが困難な場合もあり、抗血小板薬と抗凝固薬が同時に必要になることもあります。

図3 血小板の働きに影響を与える「ずり応力」

図3 血小板の働きに影響を与える「ずり応力」

  • 血液は血管の中心部ほど流れが速い
  • 血液はいろいろな成分が含まれ、粘つく性質(粘度)を持っている
  • 血流の速さの違いと血液の粘っこさが「ずり応力」を生む
  • ずり応力とは流れる血球(血小板)が受ける「摩擦力」

凝固因子・凝固阻止因子・血小板の働き

凝固因子と血小板の働きをよく理解していただければ、血液をさらさらにする薬の「抗凝固薬」と「抗血小板薬」をなぜ使うのか、どのようなことに気をつければよいのかがわかります。

凝固を促すのは

凝固因子は血液中に微量含まれ、連続的に反応して、最終的に糊のような働きをする「フィブリン」という物質をつくります。

フィブリンがつくられるルートは二つあります。重要なのは、血管内皮が傷ついて組織因子が血中に現れ、凝固第7因子と結合して反応が始まったときです。そしてプロトロンビン(凝固第2因子)という物質がトロンビンに変化し、最終的にフィブリノーゲンという物質を、糊の働きをするフィブリンに変えます。

この反応に登場する凝固第2、第7因子(他に第9、第10因子)は「ビタミンK依存性凝固因子」と呼ばれ、肝臓でつくられるときにビタミンKを必要とします。抗凝固薬としてよく使われる「ワルファリン」は、ビタミンKの働きを抑えて、血液を固まりにくくします。

凝固を阻止する物質も

血液には凝固因子の働きを抑える物質も含まれ、凝固阻止因子と呼ばれています。主なものはアンチトロンビン、プロテインC、プロテインSなどです。これらの物質の量や働きが、生まれつき少ないか、低い方は、血栓症を起こしやすく、若い人でも血栓症を発症することがあります。

他の病気(抗リン脂質抗体症候群、高ホモシステイン血症など)でも血栓症を起こしやすいことが知られています。また、プロテインCやプロテインSが低下している方では、ワルファリンの投与開始時(特に高用量の場合)に、一時的に逆に血栓ができやすくなる可能性がありますから、注意が必要です。

血小板の活発な反応

血小板は、赤血球の1/10の容積(直径2~3 ミクロン。1ミクロンは1000分の1ミリ)しかありません<図4>。しかし、血小板の表面には、血液中や血管に存在するさまざまな物質(フィブリノーゲン、フォン・ウィルブランド因子、コラーゲンなど)と結合する受容体と呼ばれる分子が存在し、さまざまに反応しあって血小板が刺激を受け、働きや反応が活発になります。

図4 血球の種類

図4 血球の種類

その結果、血小板から、さらに血小板の働きを活発にする物質が放出される一方、「偽足」と呼ばれる足を出し、円盤のような形に変わって、血管の傷ついた部分にくっつき、お互いが結合し、血栓をつくっていきます<図5>。

血小板の働きが活発化するのを抑え、血栓をできにくくする抗血小板薬のうち、代表的なのはアスピリンです。

図5 血小板血栓ができる過程

図5 血小板血栓ができる過程

  1. (1)血管壁に傷がつくなどで血小板が刺激を受けると、働きや反応が活発になり、血小板からさらに血小板の働きを活発にする物質が放出される一方、「偽足」を出し円盤状に変形する
  2. (2)さらに血小板が血管の傷ついた部分にくっつく
  3. (3)血小板同士が結合しあい、血栓を作る

血液をさらさらにする薬と血栓症

これまでの説明から、血栓症の予防には、活発になっている凝固因子や血小板の働きを抑える薬、つまり血液をさらさらにする薬の「抗凝固薬」と「抗血小板薬」が、重要だとわかっていただけたと思います。

もう一度、繰り返します。血栓症の発生に、動脈では血小板が、静脈などで血液が滞るために起こる血栓症では凝固因子の働きが重要です。

ですから、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞など動脈で起こる血栓症では、主に抗血小板薬が使われ、人工弁置換術後、心房細動、深部静脈血栓症、肺梗塞など主に血流の乱れや鬱滞(うつたい)による血栓症では、抗凝固薬が主に使われています。

すでに説明しましたように、血栓は血小板と凝固因子が複雑に反応してできますから、患者さんの血栓症の背景を考えて、薬を使い分け、場合によっては併用します。

それぞれの薬は、出血した際、血を止めるのに必要な血栓ができる過程も抑えますので、出血しやすい、または出血したとき止まりにくいという副作用があります。主治医の説明をよく聴き、変わったことが起こった場合はすぐに主治医に連絡してください。

抗凝固薬の種類

わが国では抗凝固薬のうち注射薬はヘパリン、低分子ヘパリン、アルガトロバン、ダナパロイドナトリウム、フォンダパリヌクスが主に使用されています。これらの薬は、患者さんが重篤になった場合や急変したとき、もしくは手術のためなどに使います。ヘパリン(低分子ヘパリン)は、皮下注射でも投与できます。

経口投与できる抗凝固薬は、日本では現在、「ワルファリン」だけが使われています。ワルファリンは、妊娠6~9週間に内服すると赤ちゃんに奇形が発生する恐れがあることや、母親より胎児に強く作用することがあり、妊婦さんにどうしても抗凝固薬が必要な場合はヘパリンを使うことがあります。この場合、主治医によって決められた用量と、指示された注意を必ず守ってください。

ワルファリンは、ビタミンKの働きを抑えることで、ビタミンK依存性凝固因子の働きを抑え、血液を固まりにくくします。

つまり、直接、凝固因子を抑えるわけではないので、飲み始めてから作用が安定するまでに時間がかかるほか、ワルファリンの作用に影響する遺伝子が人によって異なるため、効き方に違いがあり、さらに体調や食事内容などによっても効き方が変わることがあります。

ワルファリン服用中は、どの程度効いているのかを定期的に検査し、服用量を調節する必要があります。

そのために、血液凝固検査の「プロトロンビン時間(PT)検査」が主に行われます。どの病院でも結果の評価が同じ基準で行えるよう国際標準化プロトロンビン比(INR)で表す病院が増えています。

日本人では、この国際標準化プロトロンビン比を1.6から3.0の間でコントロールすることが多いのですが、病気の種類、患者さんの背景などを考えて適正範囲を決めています。

処置、手術が必要なときや、出血の副作用が起こった場合は、飲む量を減らしたり、服用をいったん中止したりすることが必要となります。

緊急にワルファリンの作用を抑えねばならないときは、ビタミンK、プロトロンビン複合体濃縮製剤などを使用することもあります。

ただ、服用を一時中止すると、血栓症の発症、再発につながることがありますので、簡単な抜歯や小手術(白内障手術など)は、服用を続けたまま実施する場合があります。服用の一時中止は、自分で判断せず、主治医と必ず連絡を取り、よく相談したうえで決めるようにしましょう。

へパリンの副作用:ヘパリン起因性血小板減少症

ヘパリン(低分子ヘパリン)使用の際に、注意すべき副作用です。体内にヘパリンと血小板第4因子という物質の複合体に対する「抗体」ができ、血小板の数が減少します。

普通、血小板の数が減少すると出血しやすくなるのですが、この病気の場合は逆に血栓症を起こしやすくなり、場合によっては重篤な血栓症の原因となります。

治療はヘパリンを中止し、他の薬を選びます。また、ヘパリンを中止して、しばらくしてから発症することもありますので、注意が必要です。

新しい経口抗凝固薬

ワルファリンは、投与量を決めるために定期的な検査が必要なことに加え、食事などの影響を受けやすく、使う際に注意が欠かせません。このため、定期的に検査を受けなくても、一定の量を使うことができる経口凝固薬の開発が進んでいます。

これらは、主に凝固因子のトロンビンや活性化した第10因子を抑える薬です。近い将来、より使いやすい抗凝固薬が出てくるでしょう。

抗血小板薬にはどんな薬が

日本で主に使用されている抗血小板薬にはアスピリン、クロピドグレル、チクロピジン、シロスタゾールなどがあります。

このうちアスピリンが最もよく使われています。作用は、血小板の働きを活発化するために必要なトロンボキサンA2を作るシクロオキシゲナーゼという酵素の働きを抑えることによって、血小板同士の結合、血小板の働きを活発にする物質の放出を抑えます。

現在、1日あたり81mgから330mgという比較的低用量で使用されることが多く、その有効性が確かめられています。

クロピドグレル、チクロピジンは、血小板同士の結合を促す物質(ADP)が血小板の表面にある受容体へ結合するのを抑えることで、血小板の働きを抑制します。アスピリンとクロピドグレル(もしくはチクロピジン)は、血小板に対する効き方が違いますので、両方を合わせて使うことで、さらに強力な抗血小板療法が期待できます。

シロスタゾールは、血小板の働きを活発にするために必要なホスホジエステラーゼを抑えることによって血小板の働きを抑制します。薬を止めてから、その効果がなくなるまでの時間が短いという利点があります。

血小板の働きには、さまざまな仕組みが関係していますので、先に挙げた薬とは異なった仕組みで血小板の働きを抑える薬もあります。ベラプラスト、サルボグレラート、オザグレルなどです。

それぞれ血小板の働きに影響する部分が違い、効果や副作用が異なるため、患者さんに合った薬が選ばれます。主治医や薬剤師の薬についての説明を十分理解し、指示を守って服用するのが原則です。

また、これらの抗血小板薬はその作用が異なるため、効果が続く期間も違います。もし、抗血小板薬を服用している患者さんで、手術や何らかの処置を受けなければならない場合には、出血を防ぐために、薬を止めることが必要になる場合がありますが、薬によって休薬する期間が異なります。例えばアスピリンの場合は3~14日、チクロピジンやクロピドグレルは5~14日、シロスタゾールは3日などとされています。ただし、これはあくまでも目安で、手術や処置の程度によって異なります。

また、抗血小板薬を中止したあと、血栓症を起こすリスクの高い方には、手術までヘパリンなどを代わりに投与する場合などもありますので、手術や処置を受ける場合には、必ず主治医と相談するとともに、抗血小板薬を飲んでいることを、手術や処置を行う担当医に伝えてください。

血液をさらさらにする薬を服用するときの注意

血液をさらさらにする薬は、血栓症の治療や、その再発防止に効果を発揮する反面、頭蓋内出血など、重篤な出血という副作用を招くこともあります。医者まかせにしないで、作用の仕組みを理解し、自分から積極的に治療に参加する心構えが大切です。

1.抗凝固薬・・・ワルファリンの場合

ワルファリンの投与量は、すでに説明しましたように、血液検査で定期的に調べて決めます。服用する錠数も患者さんによって異なりますので、必ず主治医から指示された量を守ってください。服用量が毎日異なることもあります。よく確かめておくことが重要です。

もし飲み忘れた場合は、できる限り早く服用してください。翌日まで気づかなかった時は、忘れた分は抜き、その日の分だけを指示通りに服用してください。

それ以上の回数を飲み忘れたり、間違えて多く飲んでしまったりした場合や、なにか普段と違う症状を感じたときは、すぐに主治医に相談してください。

最も多い副作用は出血

ワルファリンで最も頻度が高い副作用は出血です。皮膚の内出血・鼻出血・歯ぐきからの出血・傷口からの多量の出血・月経過多・血痰(けったん)・血尿・血便・貧血による立ちくらみやふらつきなどの症状が出ます。

特に消化管・頭蓋内・腹腔(ふっくう)内など見えないところでの出血は、発見が遅れると大変危険な場合があります。気がつかないうちに打撲して起きた皮下出血、歯磨きのときの出血など、いつもと違う症状がないか、自己チェックが大切です。出血が続く場合や多量の出血の場合は、直ちに主治医と連絡をとってください。

ほかの薬との飲み合わせ

ワルファリンは、多くの種類の薬との飲みあわせ(相互作用)に注意しなくてはなりません。一緒に服用した他の薬の影響でワルファリンの効果が強く現れ、出血が起こったり、反対にワルファリンの効果が弱められたりして、期待する治療効果が得られないことがあるからです。

相互作用を起こす代表的な薬は、作用を強めるものとして抗生物質・解熱鎮痛剤など、作用を弱めるものとしてビタミンKの含まれる薬(骨粗鬆(そしょう)症治療薬の一部)・抗てんかん薬などがあります。

この他にもワルファリンの作用に影響する薬がありますので、服用中の薬は、必ず主治医、薬剤師と相談してください。

薬によっては一緒に服用していただかなければならない場合もあります。その際、主治医は相互作用も考えたうえでワルファリンの服用量を決めますから、必ず指示通りに服用してください。

繰り返しますが、主治医から指示されている薬を、患者さんの自己判断で止めるのは、絶対にやめてください。

ほかの病気で主治医以外の医師を受診する場合、かならずワルファリンを服用していることを告げてください。市中の薬局で薬を買う場合も、ワルファリンを服用中と伝え、目的の薬が相互作用を起こさないか確かめてから購入しましょう。

複数の病院を受診される場合、薬剤師のいる基準薬局を「かかりつけ薬局」と決めておき、すべての院外処方箋をこの薬局で調剤してもらうようにすれば、相互作用のチェックがより確実に行えます。

控えるべき食物・嗜好品は?

医薬品による相互作用と同様に、食品・嗜好(しこう)品にもワルファリンの作用を弱めたり、強めたりするものがあります。原則として次の三つのことを厳守してください。

  • 納豆・クロレラ・青汁・モロヘイヤは禁止です。
  • 緑黄色野菜はとくに制限しなくてもよいのですが、一時的に大量に摂取することは避けてください。
  • 偏食や大量の飲酒は避けましょう。

納豆・クロレラ・青汁・モロヘイヤには大量のビタミンKが含まれています。納豆に含まれるビタミンKはそんなに多くはありませんが、ネバネバに含まれる納豆菌が摂取後約72時間も腸内でビタミンKを合成し続けるといわれています。ですから、少量の納豆を摂取しても結果的に多量のビタミンKを摂取したことになります。納豆は厳禁です。

ワルファリン服薬時の禁止食品

挿絵02

この点の注意も忘れずに

歯科を受診する場合、ワルファリンを服用していることを歯科医師に話し、主治医と連携してもらいながら、歯の治療を受けてください。

ワルファリンの服用で、胎児に奇形が生じたり、出血によって死亡したりする場合があります。特に妊娠3か月までは、そのリスクが高くなります。妊娠を望まれるときは、主治医・産婦人科医と相談してください。

2.抗血小板薬ではどうか

抗血小板薬の効果は、個人差があまりなく、抗凝固薬のように投与量を決めるための血液検査は通常はしません。しかし自己判断で服用したり、しなかったりするのは禁物で、必ず主治医の指示に従ってください。

また、「バファリン」という抗血小板薬(アスピリン)を処方されている方は、薬が不足したとき処方箋なしに買える市販薬のバファリンを使うのは避けてください。というのは、現在市販されているバファリンは、大半がアセトアミノフェンという解熱鎮痛成分を中心とした薬で、アスピリンは含まれていないからです。

抗血小板薬の副作用のうち、出血についての注意は抗凝固薬とほぼ同じです。一般的に抗凝固薬ほど注意する必要はありません。

ただし、出血傾向など普段と違う症状がないか自己チェックし、異常を感じたら、すぐに主治医に連絡しましょう。

次に代表的な抗血小板薬の副作用について説明します。

アスピリン

アスピリンは、アスピリン喘息(ぜんそく)や胃潰瘍(いかいよう)などの消化管潰瘍や、それに関係した消化管出血などの副作用を起こすことがあります。

消化管潰瘍の既往がある人は症状が悪化したり、喘息のある人は発作が起きたりすることがありますので、主治医に申し出てください。また、便の色を観察する(消化管から出血すると黒色便となる)ことも重要です。

クロピドグレルやチクロピジン

とくにチクロピジンでは、血栓性血小板減少性紫斑病(発熱、貧血、血小板の減少、精神症状、腎機能の低下などの症状)、無顆粒球症(病気に対する抵抗力が弱くなる)、重篤な肝障害(肝臓の機能低下)などの重大な副作用が、主に投与開始後2か月以内に起こるとして、厚生労働省から緊急安全性情報が出されています。

このため投与開始後2か月間は、副作用の初期症状に注意し、原則として2週に1回程度の血液と肝機能の検査を行い、その後も定期的な血液検査が必要です。主治医の指示した受診日や検査日を守っていただくようお願いします。

副作用の症状は、発熱、倦怠感、紫斑(出血斑)などの出血症状、食欲不振や意識障害などがあり、普段と違う症状に気づいたら、すぐに主治医にご連絡ください。

シロスタゾール

この薬は、血管を広げる作用もあり、そのために頭痛や動悸、場合によっては狭心発作につながるおそれがあります。頻脈や動悸がひどいときは必ず主治医に連絡をとってください。

グレープフルーツジュースを飲むと、この薬の血中濃度が上昇し、副作用が出やすくなるおそれがあります。注意が必要です。

一緒に服用する場合は注意が必要な薬

抗血小板薬には、ワルファリンとビタミンKのような特徴的な組み合わせはありませんが、一緒に服用する薬によって効果が増減することがあります。主治医が処方した以外の薬を服用するときには、この点の注意が必要です。

おしまいに

抗血栓療法に使う薬は、重篤な副作用や食生活に注意しなければならず、不安や煩わしさを感じられるかもしれません。しかし、正しく理解し、主治医や薬剤師の指導に従って服用を続ければ、副作用を減らし、治療効果をあげることができます。

また、治療の内容をご家族や周りの方にも知らせておき、日ごろから協力を得られるようにしておくのも大切なことです。

(このページは、知っておきたい循環器病あれこれ第38号「抗血栓療法の話―抗血小板薬、抗凝固薬を飲んでいる方へ」の内容を、平成22年現在の状況に合わせ修正、加筆したものです。特に日本循環器学会の「循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン」(2009年改訂版)に準拠するよう配慮しました)

最終更新日 2014年03月12日

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