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血管の病気|循環器病あれこれ|

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
文章・図表・イラスト等の転載・引用のご相談は循環器病研究振興財団までご連絡ください。

[59]血液を浄化するには

-血液・腹膜透析とアフェレーシス-

元国立循環器病研究センター
高血圧・腎臓部門
医長 中濱 肇
医師 中田 裕人

長期治療… 根気よく

イラスト:長期治療… 根気よく

もくじ

はじめに

腎不全にかかり、透析療法を受けておられる患者さんは世界で110万人以上と推定されています。わが国でも約27万人を超え、年間約1万人のペースで増え続けています。中には25年以上も透析を受けつつ社会復帰をとげている方もいます。

こうした現状からお分かりのように、透析(血液の浄化)というのは特別の治療ではなく、これらの方々にとっては睡眠や食事と同じような「人生のパートナー」と考えることができます。

このページでは、血液の浄化が必要な病気と、浄化方法の現状、特に血液透析、腹膜透析、さらにLDLアフェレーシスという治療法の最前線を解説します。

腎臓の仕組み

腎臓は糸球体と尿細管と呼ばれる部分からできています。腎臓に入った血液は糸球体で濾過され、濾過された物質の中から尿細管が必要なものを回収し、老廃物を尿として排泄します<図1>。

腎臓の働きは次の六つがあります。

(1)廃物の排泄

エネルギー源となる物質が体内で利用され、その結果できた老廃物を尿として排泄します。

(2)分量の調節

尿を多くしたり、少なくしたり調節することで、体内の水分量を一定に保ちます。

(3)体液バランスの調節

電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウム、リンなど)の濃度や量を調節します。また血液を弱アルカリ性に保ちます。

(4)血圧の調節

ナトリウムや水の排泄を調節するとともに、血圧を調節するホルモンを作っています。

(5)ビタミンDの活性化

ビタミンDは腎臓で活性化されて、初めて一人前の働きをする活性型ビタミンD3に変化します。

(6)造血刺激ホルモン(エリスロポエチン)の分泌

赤血球数を一定に保ちます。

図1 腎臓の仕組み
図1:腎臓の仕組み

慢性腎不全とは

慢性腎不全とは、さまざまな腎臓の病気が数か月から数十年以上続いた後、糸球体の網の目が詰まり、血液を濾過する機能が落ちて、老廃物(尿毒性物質)と水分が排泄できなくなった状態です。さらに進行すると尿の量が次第に減少して、ついには全く出なくなります。慢性腎不全の状態が続くと尿毒症症状、つまり頭痛、だるさ、顔色が悪い、呼吸困難、吐き気、嘔吐、食欲不振、むくみ、出血などが起こるようになります。

慢性糸球体腎炎、腎硬化症、糖尿病、多発性のう胞腎などが慢性腎不全の原因になります。腎不全の治療には、血液透析、腹膜透析、腎移植などが行われています。

腎臓の機能を取り戻すには、腎移植が最も理想的な方法ですが、腎移植には提供者の確保という問題があり、なかなか普及しないのが現状です。透析は今日、腎不全治療の主流であると同時に、腎移植を除いては唯一の治療法といえます。血液透析から説明しましょう。

血液透析の方法

血液透析とは、自分の血液を体外へ送り出し、人工腎臓(透析装置)で血液中にたまった老廃物を取り除き、水や電解質のバランスを整え、きれいになった血液を体に再び戻す方法です<図2>。

一般的に1週間に3回通院し、治療時間は1回約4時間です。血液透析のメリットは、30年以上の実績を持つ確立した医療で、年齢・性別などの条件にかかわりなく受けられることです。現在、日本で約27万人の患者さんが受けておられます。デメリットは自己管理が必要なことで、水分制限、食事制限が重要です。時間の拘束があり、透析を行っていても、心臓、血管、骨などの合併症は進行していきます。

方法は、まずシャント手術(腕の動脈と静脈をつなぎあわせる)をして静脈にたくさんの血液が流れるようにします。血液をシャントから血液ポンプを介して約200ml/分の速さで取り出し、「ダイアライザー」と呼ばれる筒の中を通します。そこでは人工の膜でできた細い管の内側を血液が、外側を透析液が流れ、両者間で物質交換が行われます。

つまり、不要な物質は透析液の側に、有用な物質は血液の中に移行し、血液がきれいになり、体に戻っていきます。このとき、血液が体外に出ると固まってしまいます。そこで血液の凝固を防ぐために抗凝固薬が必要となります。抗凝固薬としてはヘパリンや低分子ヘパリンが用いられます。

また、透析液は供給装置で温度、濃度がチェックされた後、ダイアライザーへ供給されます。

図2 血液透析の方法
図2:血液透析の方法 イラスト:食事に工夫を、適度な運動を、定期的な透析を

ダイアライザーの役目

もう少しダイアライザーについて説明します。

一言で言うと<図3>のように、血液と透析液が接して老廃物が除去される部分のことです。ダイアライザーは、人工の膜でできた細い管で構成されていて、その膜は腎臓の糸球体によく似た機能を果たします。ダイアライザーの膜は広げると風呂敷1枚くらいの大きさになります。

尿素窒素、クレアチニン、尿酸などの尿毒素、ナトリウム、カリウム、リンなどの電解質は、透析膜の穴を通って透析液中に、アルカリは血中に拡散されます。赤血球、白血球、蛋白質などは透析膜の穴を通らない仕組みになっています。透析を行うと、尿素窒素、クレアチニンなど、蛋白質が分解されてできた物質をはじめとする「尿毒症物質」が除去されて、尿毒症症状が改善されます。体内の余分な水分も取り除かれ、電解質も調節されるため、健康な状態を取り戻すことができます。

透析は貧血の改善にも効果があります。さらにエリスロポエチン製剤を使用すると、貧血がさらに改善されます。

体にたまったナトリウムと水分が血圧を上昇させますが、透析で十分な除水を行うことで高血圧を改善できます。

図3 ダイアライザーの仕組み
図3:ダイアライザーの仕組み

透析患者さんに日々実行してほしいこと

血液透析中の患者さんが日常生活で注意してほしいのは、次の点です。

(1)十分な透析を行う

より健康的な生活を送るために定期的な透析をきちんと受け、体にたまった尿毒素を十分に取り除くことが大切です。

(2)適切な食事をとる

日常生活を快適に過ごすには、食事療法が大切です。食事の好みには個人差がありますので、塩分、水分、カリウムなどの許容範囲の目安をつかみ、おいしく食べる工夫をしましょう。

(3)適度な運動を心がける

健康な時と同様の社会生活を送るには、十分な体力が必要です。体調を整え、毎日適度な運動をするよう心がけましょう。

(4)シャントの管理

シャントは透析患者の命綱です。日々シャントの清潔に気を配り、シャントの状態を観察(手や耳をシャント部に当てて血液の流れる音を確認する、シャント部を見て、出血、痛み、腫脹、発赤、発熱がないか)することが、感染や閉塞、出血の予防と早期発見につながります。

(5)血圧・体重は毎日測る

水分、塩分の摂取量は、血圧と体重に表れます。血圧計と体重計は体調を知るための必需品といえます。毎日測って記録しましょう。

(6)適度な休息をとる

仕事や透析に追われると、休息を忘れがちになります。少し疲れたときには、適度な休息と十分な睡眠をとりましょう。

(7)規則正しい排便を心がける

透析と透析の間の体重増加を少なくするために、水分制限があり、調節が難しく、便秘になりやすい傾向があります。便秘になると食欲が落ちますので、規則正しい排便を心がけましょう。

(8)感染に気をつける

透析をしている人は、一般に抵抗力が低下していますので、感染症にかかりやすい状態にあります。食事と運動で体力をつけ、規則正しい生活をして、感染予防を心がけましょう。

イラスト:透析患者さんに日々実行してほしいこと

腹膜透析の仕組み

腹膜とは、腹腔を覆っている膜のことです。この膜を使う腹膜透析は1984年に健康保険で認められて以来、在宅治療として普及してきました。体内の腹膜を利用し24時間連続して透析を行えるので、最も生体腎に近い治療法といえます。

腹膜は胃、肝臓、小腸、大腸などの内臓を保護し、固定する役割を担っています。この膜全体に毛細血管が網の目状に走っています。

腹膜透析は<図4>のように、腹腔に透析液を入れ、一定時間とどめておきます。その間に、腹膜を通じて血中の老廃物や余分な水分が透析液に移行しますから、その液を体外に出すことで血液の浄化ができます。

透析液の出し入れをするために、柔らかいチューブ(カテーテル)を簡単な手術によって腹部に埋め込みます。体の外に出るカテーテルの部分はわずかですから、日常生活の妨げにはなりません。

透析液を腹腔から廃液し、新しい液を注入することを、バッグ交換と呼びます。通常1日4回行い、交換時間は約30分です。バッグ交換は特別に難しいことではなく、医療スタッフの指導をよく守れば、誰でも行えます。

特に高齢の方や、糖尿病による視力障害、手先の弱い方には、バッグの付け替えと殺菌を同時に行う小型のバッグ交換器もあります。

図4 透析を24時間行える腹膜透析
図4:透析を24時間行える腹膜透析

<図5>をご覧ください。排液するには、カテーテルに透析バッグのチューブをつなぎ、腹腔に入っている老廃物を含む液を体外に出します。これに約10~20分かかります。腹腔内の液が全部出たら、新しい透析液を腹腔内に入れます。これが注液で約10分かかり、注液が終わればチューブを外します。新しい透析液が腹腔内にとどまっている状態が貯留で、貯留している間、自由に活動することができます。

腹膜透析は在宅治療が基本となるので、月に1~2回の通院で治療を行うことが可能です。そのため、透析液の交換以外は今まで通りの生活を続けることができ、通学、就労、家事、旅行などが可能です。

また、機器や透析液の進歩で、睡眠中に自動的に透析液を交換し、日中の透析交換を行わなくてもよい治療法や、より長時間の貯留を可能にした透析液を用いることによって、患者さんの生活パターンに適した治療ができます。バッグ交換は自分で自宅や会社、学校で行います。

腹膜透析のメリットは、残った腎臓機能を保ちやすい、体に負担が少ない、通院が少なくて済むので拘束時間が少ない、社会復帰がしやすい、などがあります。一方、デメリットとして、1日4回のバッグ交換、おなかの張り、腹部の感染症、一生腹膜透析を続けることはできない、などが挙げられています。

腹膜透析に使われる透析液は、今までは濃いブドウ糖と血液の浸透圧の差で体内の水分を除去するものでしたが、近年、ブドウ糖に代わって、デンプンを分解したイコデキストリンという物質を使った透析液を利用するようになってきました。新しい透析液は長時間(8~12時間)の貯留で十分な水分の除去ができますから、十分な水分とナトリウムの除去によって、血圧を正常化し、心臓の負担を軽減します。

腹膜から吸収されるブドウ糖を減らすことにより、血糖値や、血中の脂質の増加を抑えることが期待できます。

このように最近の腹膜透析は、さまざまな機器の進歩や新しい透析液の登場で、安全性やQOL(生活の質)がより一層向上しています。

図5 排液、注液時以外は自由に動けます
図5:排液、注液時以外は自由に動けます

LDLアフェレーシスの仕組み

むずかしそうな治療法の名前です。まず「LDL」と「アフェレーシス」とに分けて説明し、そのあと「LDLアフェレーシス」とはどんな治療法かを解説します。

悪玉コレステロールのLDL

心臓がたえず活動するためには、多くの酸素と栄養を必要とします。心筋(心臓の筋肉)に酸素と栄養を供給する血管が冠動脈(冠状動脈)で、この血管が動脈硬化を起こし、血液がスムーズに流れなくなると、狭心症や心筋梗塞といった症状が出ます。

動脈硬化を引き起こす原因には、高血圧、糖尿病、喫煙や肥満などがありますが、最も大きな原因の一つがLDLコレステロールです。

コレステロールには“善玉”と“悪玉”があります。善玉はHDLというリポ蛋白に乗っているコレステロールのことで、細胞や動脈壁から余分のコレステロールを運び出し、肝臓に戻す役目を担っていることから、動脈硬化を予防すると言われています。

一方、動脈硬化を進展させるのが悪玉コレステロール、つまりLDLというリポ蛋白に乗っているコレステロールです。

LDLのコントロールが必要な場合

特に狭心症や心筋梗塞を起こしたことのある方、あるいは心臓バイパス手術、経皮的冠動脈形成術(PTCA)などを受けたことのある方は、動脈硬化のさらなる進行を抑えるため、LDLコレステロール値をより低く維持する必要があります。狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患はLDLコレステロール値を下げれば予防できることが、多くの研究から明らかになっています。

LDLコレステロールの値は100mg/dl未満(総コレステロール値180mg/dl未満)に管理することが望ましいとされています。

もちろん、LDLコレステロール値の管理以外にも、冠動脈硬化を進行させる原因である高血圧、糖尿病、肥満などがある方は、その治療をきっちり行う必要がありますし、また、喫煙されている方は禁煙に努めることも大切です。

イラスト:喫煙されている方は禁煙に努めることも大切です

自覚症状なくても油断禁物

コレステロール値が高くても、一般的に自覚症状はありません。そのために治療の必要性を感じない方もおられます。しかし、コレステロール値が高い状態が長く続くと、症状がないまま、ついには命にかかわる病気に発展します。

冠動脈硬化を起こしている患者さんは、血管壁にコレステロールが沈着して厚くなり、血管内腔が狭くなります。このようになると、急な運動をしたときなど、心筋の酸素需要が増えた場合、十分な血液が送れず、心筋は一時的な酸素不足状態となります。これを狭心症といい、動悸や息切れ、胸の強い痛みなどの症状が現れます。

コレステロールが沈着して厚くなった部分(おかゆ状になった粥腫=アテローム)は傷つきやすく、様々な刺激により突然破れることがあります。そして、破れ出た粥腫の内容物の周りには急速に血栓ができ、それが血管内腔をふさいで血流が止まると、心筋は壊死を起こします。これを心筋梗塞といい、命にかかわります。

このように、冠動脈硬化は自覚症状がなくても油断は禁物です。適切な治療を継続して行うことが、進行を防ぐ意味で非常に重要です。

では、アフェレーシスとは?

体質的にコレステロールが高くなっている高コレステロール血症の場合、食事療法と薬物療法をしても、血中コレステロール値を十分に低下させることは困難です。このような患者さんを対象に、食事療法や薬物療法に加えて、LDLコレステロールを低下させようというのが「LDLアフェレーシス」で、薬物療法では得られないコレステロール低下作用のあることが明らかになっています。

「アフェレーシス」とは、患者さんの血液中から不必要な成分(ここでは悪玉のLDLコレステロール)を取り除いて、浄化した血液を再び患者さんに戻すことです。

LDLアフェレーシス療法は<図6>のように、腕などの静脈から血液をゆっくり取り出し、血漿(血液の液状成分)分離器で、赤血球や白血球などの血球成分と血漿とに分けます。分離された血漿を、悪玉コレステロールを吸着する吸着器に導き、悪玉コレステロールを除去します。吸着器通過後の血漿は、血球成分と合流させ体内に戻します。治療中、治療後もほとんど副作用がなく、安心して治療が受けられます。

図6 冠動脈疾患を防ぐ「LDLアフェレーシス療法」
図6:冠動脈疾患を防ぐ「LDLアフェレーシス療法」

効果はどれほどか?

一般的に、食事療法、薬物療法とLDLアフェレーシス療法を併用した場合、例えばLDLアフェレーシス療法直前の総コレステロール値が250~300mg/dlだとすると、治療直後には100mg/dl前後にまで低下します。

もちろん日にちがたつとコレステロール値は再び上昇しますので、一般に2週間に1回(コレステロール値によっては1週間に1回)の頻度で、1回約3時間の治療を行う必要があります。治療中は、医師や看護師が付き添い、血圧や脈拍、心電図などを常にモニターしていますので、安心です。

動脈硬化を起こした血管では、血管壁にコレステロールを主体とする脂質成分などが蓄積し、粥腫(アテローム)状部分が形成され、血管の内腔を狭めています。

粥腫は薄い繊維性の膜で覆われて血液と接していますが、この膜がもろくなっていろいろな刺激で破れると、破れたところを補修するために血小板などが集まり、血栓ができます。そしてこの血栓が完全に冠動脈をふさいでしまうと、急性の心筋梗塞が起こり、場合によっては突然死の原因となります。

しかし、継続的な薬物療法やLDLアフェレーシスを行い、血液中のコレステロール値を低く維持していると、粥状部分のコレステロールが除かれるとともに、線維性の膜が厚くなり、粥状部分が安定化するという報告があります。この粥状部分が安定化すると破れにくくなり、血栓形成による急性心筋梗塞の危険性も低くなります。

LDLアフェレーシス療法は動脈硬化の改善や進行抑制、そして安定化が図られることにより、長時間続けることで実際に冠動脈疾患の発病や再発を防ぐことができるという研究報告があります。

根気よく立ち向かう気力を

高コレステロール血症の患者さんが高血圧や糖尿病を合併している場合には、より厳密なコレステロール値の管理が必要となりますし、合併している病気の治療もきちんと行うことが大切です。そして、日常生活でも、食生活を改善する、適度な運動をする、禁煙を心がけるといった基本的な注意事項を守るようにしてください。

この治療は長期間にわたって継続する必要があるため、ときには治療意欲が薄れることもあります。冠動脈疾患は、症状が進行して胸の痛みや発作が起こらないかぎりは、自覚症状も少ないため、病気の重症度が患者さんに理解されにくい病気です。

できるかぎり自分の病気についての知識を持ち、長期治療であることを忘れずに、主治医の先生方と協力しあって根気よく病気に立ち向かっていくことが大切です。

 

最終更新日 2014年03月12日

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