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[52] 足の血管病 その検査と治療

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
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2005年9月1日 発行

元国立循環器病研究センター
心臓血管内科
医長 西上 和宏

血管をしなやかに

イラスト:血管をしなやかに

もくじ

足の血管

血液の流れる「通路、パイプ」、それが血管です。これには、主に酸素や栄養分を運ぶ「動脈」と、二酸化炭素や老廃物を運び出す「静脈」があるのは、よくご存じですね。全身には、この動脈と静脈が並行して行きわたっています。

足にも動脈と静脈が足の指先まで走っていますが、静脈は、さらに筋肉の中を走る深部静脈と、皮膚のすぐ下を走る表在静脈に分かれています。まず、足の動脈で起こる病気から解説しましょう。

詰まったところから先は、血液が十分に流れず、酸素不足、栄養不足が起こる
イラスト:詰まったところから先は、血液が十分に流れず、酸素不足、栄養不足が起こる

足の動脈の病気

1)閉塞性動脈硬化症の症状

足の動脈は、足の指先に向かって血液を送り、酸素と栄養を供給します。足の動脈が途中で詰まれば、詰まった所から足の指まで血液が十分には流れず、酸素不足、栄養不足となります。

このような状態を「下肢末梢動脈閉塞症」といい、最も多い病気が動脈硬化によって動脈が詰まる「閉塞性動脈硬化症」です。この病気では代表的な症状として「間欠性跛行」があります。これは、ある距離(特に坂道)を歩くとふくらはぎに凝りや痛みを感じ、休むと痛みが改善して再び歩けるようになる症状です。「跛行」とは、びっこをひくという意味です。

病気が進行すれば、ごく短い距離でも痛みを感じるようになります。さらに病気が悪化すれば、足が冷たく、安静時でも痛みがあり、皮膚の色が悪い(紫色)、傷が治りにくい、足の指やかかとに潰瘍ができるなど、壊疽と呼ばれる状態になります<図1>。

イラスト:閉塞性動脈硬化症の症状
図1 閉塞性動脈硬化症の予後
図1:閉塞性動脈硬化症の予後
(N Engl J Med 326:381,1992から)

2)閉塞性動脈硬化症の検査

閉塞性動脈硬化症を診断するのに、最も簡単で確実な検査は、足の動脈の拍動に触れるか、手の指を当てて脈拍を確かめることです。拍動を感じなければ、動脈が詰まって十分血液が流れていないことを意味します。

触れることができる場所は、足のつけね(大腿動脈)、ひざの裏(膝窩動脈)、くるぶしの後ろ側(内顆動脈)、足の甲(足背動脈)です。自分で触ったり、他の人に触ってもらったりしてみて下さい。

次に、病院で行う検査に、足の血圧を測る検査があります。ふくらはぎに血圧計のマンシェットを巻いて、聴診器の代わりにドプラと呼ばれる血流の音を聴く器械を使って測ります。通常、足の血圧の方が、腕の血圧より少し高いのですが、閉塞性動脈硬化症では逆に低くなります。

足の動脈の詰まっている場所を探し、血流をチェックする検査に血管エコー(超音波)検査があります<図2>。簡単にできて、痛みもありません。さらに、治療を考えるために、CT検査やMR検査が必要となります。

図2 血管エコーでみた、足の動脈が狭くなったり、詰まったりした部分
図2:血管エコーでみた、足の動脈が狭くなったり、詰まったりした部分 イラスト:閉塞性動脈硬化症の検査

3)閉塞性動脈硬化症の治療

閉塞性動脈硬化症の原因は動脈硬化ですから、動脈硬化を引き起こす生活習慣を改善することが治療の第一歩です。

禁煙は絶対に必要です。禁煙ができなければ、病気がどんどん進行して、どんな治療をしても病気が治らないことが、よく知られています。

糖尿病のコントロールも大切です。糖尿病のコントロールが悪ければ、閉塞性動脈硬化症が進行するだけではなく、糖尿病性壊疽(足が黒くなる)や糖尿病性神経症(足のしびれや痛み)も合併して発症します。

歩くことは動脈硬化の進行を抑えるだけではなく、閉塞性動脈硬化症の治療としても効果があります。先に述べた間欠性跛行は、毎日歩くことで、少しずつ歩ける距離が長くなります。

入院をして行う治療に、点滴治療や人工炭酸泉足浴などの内科治療、カテーテル治療、バイパス手術などがあります。

点滴治療では、プロスタグランディンと呼ばれる血管拡張剤や血栓形成を抑える薬を注射します。

炭酸泉足浴は、古くからドイツの(炭酸)温泉で行われていた民間治療ですが、皮膚血流の増加がみられるため、人工的に高濃度炭酸水を作る機械が販売されています。実際にはバケツに炭酸の温水を入れ、20分ほど足をつけておきます。

カテーテル治療は、足の付け根の大腿動脈から細い管を入れて、動脈が狭くなり詰まった部分(狭窄閉塞部)をバルーン(風船)で拡げ、拡げた状態を保つため、金属を網の目状にした筒(ステント)を留置します。

バイパス手術は、閉塞部より先の動脈血流を増やすため、人工血管や表在静脈を用いて、動脈の回り道(バイパス)をつくる手術です。

最近では、血流の悪い場所に新しく血管をつくる治療、血管再生治療が始まっています。まだ確立した治療ではありませんが、カテーテル治療やバイパス手術が困難な患者さんには、朗報となる治療です。

たばこは万病のもと。禁煙しなければ足元からやられる
イラスト:たばこは万病のもと。禁煙しなければ足元からやられる
最先端の再生医学の成果は、足の血管再生にも効果を発揮しそうだ
イラスト:最先端の再生医学の成果は、足の血管再生にも効果を発揮しそうだ

4)閉塞性動脈硬化症で大事な足の手入れ

閉塞性動脈硬化症になると、動脈血流が悪いため、いったん傷ができると治りにくく、細菌感染を起こし、急速に悪化することが少なくありません。

これを予防するには(1)足に合った適切な靴を選ぶこと(2)毎日、足を洗って清潔を保つこと(3)深爪をせず、巻き爪があれば、形成外科で治療してもらうこと(4)水虫(白癬菌)があれば、皮膚科で治療をしてもらうこと(5)低温やけど(足が冷えやすいがカイロなどは使用しない)に注意することなどが大切です。以上のような足の手入れは、糖尿病がある場合、特に重要といわれています。

イラスト:閉塞性動脈硬化症で大事な足の手入れ

5)その他の下肢動脈の病気:急性動脈閉塞症

閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化が徐々に進行して起こる下肢動脈の病気ですが、急に下肢動脈が詰まってしまう病気があります。これを、急性動脈閉塞症といいます。最も多いタイプは、心臓に血栓(血の塊)ができ、その血栓が心臓から下肢動脈に流れ、下肢動脈に詰まってしまう状態です。心臓に血栓ができる原因の多くは、心房細動という不整脈です。心臓は大きく心房と心室に分けられ、心房細動では、心房が細かく動いている(ふるえている)だけで、十分な収縮がなくなりますが、心臓のポンプ機能のほとんどは心室でなされていますので、一般に大きな症状は出ません。それでも、心房の中では血液の流れが滞って、血栓ができやすくなります<図3>。

急性動脈閉塞症では、急に下肢の血流が途絶えるため、下肢の痛み、脱力・麻痺、感覚低下、色調変化(紫色になる)などの症状が出現します。この病気では、急いで血栓を取り除き、血流を再開させることが大切で、遅くなれば足を切断する必要がでてきます。急に上記のような症状が出たら、できるだけ早く循環器の専門病院を受診してください。また、心房細動を病院や検診で指摘された場合、医師の指示に従って、血栓を予防する薬(後で述べるワーファリンという薬が最も効果的といわれています)をきちんと飲んでください。

図3 左房内血栓
図3:左房内血栓
左の心房(左心房または左房という)の中に血栓(血の塊)がみられる

下肢深部静脈の病気

下肢深部静脈の代表的な病気は、下肢深部静脈に血栓(血の塊)ができて、詰まってしまう「深部静脈血栓症」という病気です。

1)深部静脈血栓症の症状

静脈は足先から心臓・肺に向かって血液が流れるため、深部静脈に血栓が詰まると、足からの血液の流れが滞って、足にむくみが現れます。静脈は圧が低く、重力の影響を強く受けて血液量が変化するため、足のむくみは寝ている時に軽減し、立っている時やいすに座っている時に悪化します。また、血流が滞るために歩行時に足の痛みとして感じることもあります。

血栓が足の静脈から心臓・肺に流れていくと、肺動脈に血栓が詰まって肺血栓塞栓症を起こします。肺血栓塞栓症では、呼吸困難が生じ、重症の場合はショック状態になります。

飛行機で長時間旅行した後、突然、呼吸困難やショックを起こす「エコノミークラス症候群」と呼ばれる病気は、深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症によるものです。深部静脈は下肢筋肉が収縮することで血液の流れを増やしますが、飛行機で長時間座った姿勢でいると、深部静脈の血液の流れが滞って、血栓ができ、深部静脈血栓症を発症します。飛行機の到着後、空港で歩き始めると、下肢筋肉が収縮して、深部静脈の血流が増加し、出来ていた血栓が流れて肺に詰まり、肺血栓塞栓症を起こすわけです。

2)深部静脈血栓症の検査

深部静脈血栓症の診断には、超音波検査が最も簡単で確実な検査です。

<図4>は超音波検査でとらえた静脈の血栓です。

血液検査では、Dダイマーなど線溶凝固系と呼ばれる項目の測定によって、血栓の存在を知ることができます。また、造影CT検査やラジオ・アイソト-プ検査では、深部静脈血栓症と併せて肺血栓塞栓症の診断もできます。

3)深部静脈血栓症の治療

血液が固まるのを抑制する、ヘパリンという薬を持続的に点滴するのが一般的です。

内服では、ワーファリンと呼ばれる薬があります。ただし、ワーファリンは効果が十分に現れるまでに1、2週間かかります。一般に、肺血栓塞栓症に対応するためには、まずは入院治療が必要となります。

退院後のワーファリン治療は、食事の影響を受けてワーファリンの投与量を変更する必要がありますので、血液検査(プロトロンビン時間:INR)を定期的に行い、ワーファリンの効果をチェックする必要があります。

なぜチェックが必要かというと、ワーファリンには、血液凝固に必要なビタミンKの働きを下げる作用があり、ビタミンKが下がることによって血液が固まりにくくなるからです。そのため、食事に含まれるビタミンKの量が増えれば、ワーファリンも増やさなければなりません。ビタミンKを豊富に含む代表的な食材は納豆です。このため、ワーファリンを服用している患者さんは、納豆を食べないように指導しています。また、拡張した深部静脈は血栓ができやすい状態にありますので、弾性ストッキングを着用して、足の静脈を圧迫し、静脈の拡張を防ぐことも大切です。

さらに、長時間の旅行では、定期的に足の運動をして、足の静脈の流れを良くするよう心がけてください。

図4 超音波検査でとらえた深部静脈血栓症
図4:超音波検査でとらえた深部静脈血栓症
ふくらはぎにある静脈がふくらんで、中に血栓(血の塊)がみられる
イラスト:ワーファリンを服用している患者さんは、納豆を食べないように指導しています

表在静脈の病気

足の表在静脈で代表的な病気は「下肢静脈瘤」です。

1)下肢静脈瘤の症状

静脈には、血液の逆流を防ぐために弁がついています。この弁が壊れ、下肢の表在静脈の逆流が生じて、表在静脈が拡張し、こぶのように膨れ上がった状態が下肢静脈瘤です<図5>。

先に説明しましたように、静脈は圧が低く、重力の影響を受けるため、立っている時や座っている時に、逆流は強くなり、静脈瘤も大きくなります。したがって、立ち仕事の方に下肢静脈瘤が多いようです。

下肢静脈瘤の症状は、一般に下肢のだるさ程度で、強い自覚症状はあまりありません。ただし、足の白癬菌(水虫)などの傷から静脈の感染を起こして、静脈炎や皮下組織の炎症を起こすと赤くなり、痛み、かゆみが出たりします。また、静脈が破綻して出血すると、黒くなり、時に悪化して皮膚潰瘍ができることもあります。

2)下肢静脈瘤の検査

血管エコー(超音波)検査が一般的です。他の超音波検査と同様に、外来で簡単にできる検査です。壊れている静脈弁の場所などをチェックします。

3)下肢静脈瘤の治療

症状の軽い状態では、静脈が拡張しないように弾性ストッキングを着用します。症状が強くなれば、逆流を起こしている静脈弁付近の表在静脈をしばったり、切り離したりします。また、局所の静脈を固める注射をしたりします。さらに広範囲に静脈瘤がある場合は、静脈瘤を取る手術をします。

図5 静脈の弁が壊れると、足のつま先から心臓へ戻っていく静脈(青の矢印)が逆流し(赤の矢印)、静脈瘤になる
図5:静脈の弁が壊れると、足のつま先から心臓へ戻っていく静脈(青の矢印)が逆流し(赤の矢印)、静脈瘤になる イラスト:長時間の旅行では、定期的に足の運動をして、静脈の流れをよくしよう

おわりに

「足の血管の健康」には案外、無関心、無頓着な人が多いようです。しかし、足の動脈が狭くなったり、詰まったりするといかに大変なことか、足の静脈でも血栓ができて詰まれば極めて危険な状態になりかねないことがお分かりいただけたと思います。

血管をしなやかに保ち、動脈硬化を起こさない生活が、足の血管病を防ぎ、QOL(生活・生命の質)を高めるのに欠かせません。そういう理解が、このページを通じて深まるのを願っています。

イラスト:日常生活でも、もっと関心を持ちましょう

 

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