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血管の病気|循環器病あれこれ|

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
文章・図表・イラスト等の転載・引用のご相談は循環器病研究振興財団までご連絡ください。

[40]脳血管のこぶ-脳動脈瘤

元国立循環器病研究センター
脳神経外科
医師 高橋 淳

唯一の予防は検査

イラスト:唯一の予防は検査

もくじ

脳動脈瘤って何?

脳動脈瘤とは、脳の血管(脳動脈)にできる「血管のこぶ」です。

脳の表面にはたくさんの血管が走っており、まるで木の枝のように、太い幹となる血管から細い血管が枝分かれして脳組織に血液を送っています。「血管のこぶ」は普通「血管の枝分かれの部分」に発生します。こぶができただけでは何の症状もないのが通常ですが、ある日、突然、破裂して「クモ膜下出血」という恐ろしい病気を引き起こすことがありますから、「血管のこぶ」についてよく知っておく必要があります<図1>。

図1 脳動脈瘤とその破裂
図1:脳動脈瘤とその破裂

こぶはなぜできるのか

脳動脈瘤の原因は完全には解明されていません。

統計でみると、男性より女性に多く発生します。原因として、生まれつき脳動脈の壁に弱い部分があり、この部分に長年血流が当たり続けることで膨らんでくるという説が有力です。脳動脈瘤にしばしば家族性があることも、先天的な要因があることを疑わせる事実です。たとえば北欧での研究によると、一親等内にクモ膜下出血の家族歴がある人が脳動脈瘤を持っている確率は、そうでない人の4倍にも達します。

その他、脳動脈瘤を合併しやすい全身の病気がいくつか知られています。「線維筋性異形成」と呼ばれる全身血管の病気や「多発性嚢胞腎」と呼ばれる腎臓の病気などです。

複数の脳動脈瘤が見つかることもあります。脳動脈瘤が見つかった人の5人に1人は、よく調べると別の部分にもう1個脳動脈瘤があるとされており、「多発性脳動脈瘤」といいます。1人で5個以上も見つかる場合もあり、やはり生まれつき動脈壁が弱い体質があるのだろうと推測されています。

こぶの破裂が引き起こすクモ膜下出血

ゴム風船に息を吹き込んで膨らませ続けると、壁がどんどん薄くなって最後には破裂してしまいます。脳動脈瘤もこれと同じで、大きくなっていくとついには破裂して血管の外に血液が勢いよく噴き出し、頭の中が血液まみれになります<図2>。

これが「クモ膜下出血」と呼ばれる状態で、いったん発症すると脳に重大なダメージが起こり、約半数の例で生命にかかわる恐ろしい病気です。日本では今も年間約15,000人もの人々がクモ膜下出血で命を落としています。

クモ膜下出血の典型的な症状は「突然の激しい頭痛」です。普通、脳動脈瘤は破裂する直前まで何の症状もなく、「突然の」という部分が特に重要です。クモ膜下出血から生還した人の多くが「まるで突然バットで殴られたような、これまで経験したことのない激しい頭痛を感じた」と証言しています<図3>。

おう吐もしばしばみられますが、これは頭の中の圧が上昇するのが原因です。出血量が多いと、こうした症状を自覚する間もなく瞬時に意識を失います。さらに最重症型では呼吸停止・心停止に至り、病院に搬送される前に死亡します。いわゆる「突然死」の一つです。

クモ膜下出血が起こると多くの場合、短時間のうちに頭の内圧が上昇して動脈瘤内の血圧と釣り合ったり、出血点に血栓ができたりして、いったん出血は止まります。つまりクモ膜下出血で病院に運ばれてくる患者さんの頭の中では、ドクドクと出血が続いているのではなく、いったん止血されている状態なのです。

しかし、これは、いわば動脈瘤にかさぶた1枚がかぶって血が止まっているだけの状態なので、血圧が上昇するとまた破裂します。また、血圧が上がらなくても出血点の血栓が自然に溶けて再び破裂する可能性があります。この「再破裂」は致死率50%といわれ、非常に恐ろしいものです。

図2 クモ膜下出血の様子
図2:クモ膜下出血の様子
図3 クモ膜下出血の症状
図3:クモ膜下出血の症状

破裂する前の脳動脈瘤

MRI(磁気共鳴画像)やCT(コンピューター断層撮影)が登場してから、脳血管の状態を簡単に調べることができる時代になりました。「脳ドック」と呼ばれる脳の健診も盛んになってきて、まだ破裂していない脳動脈瘤(未破裂脳動脈瘤)が見つかるケースが増えています。

実は脳動脈瘤があること自体は決してまれなことではありません。脳ドックを受けた600人中6%の人に脳動脈瘤が見つかったという報告もあるくらいです。もちろん脳ドックを受ける人は脳卒中を気にする中年以降の年代が中心ですので、全人口に占める割合はもっと低いと思われますが、それでも成人全体の3~4%が何らかの脳動脈瘤を持っていると推定されています。

このように意外と頻度の高い脳動脈瘤が全部破裂するならば、毎年、日本では何十万人ものクモ膜下出血が発生するはずですが、実際はそこまで多くはありません。つまり、脳動脈瘤があるからといって必ず破裂するわけではなく、生涯破裂しない例もあるのです。一般に大きな脳動脈瘤ほど破裂しやすいとされていますが、すべてを平均すると、未破裂脳動脈瘤が破裂する確率はだいたい年間1~2%といわれています。

未破裂脳動脈瘤が見つかった人たちのうち、最初の1年間に1~2%が破裂し、残った人の1~2%が次の年に破裂する・・・といった具合に計算していくと、理論上は次のようになります。

クモ膜下出血を起こす確率(累積)
未破裂のままの確率
1年後 1~2% 98~99%
2年後 2~4% 96~98%
3年後
3~6%
94~97%



10年後 10~18% 82~90%
20年後 18~34% 66~82%
30年後 26~45% 55~74%
40年後 33~55% 45~67%


もちろん、これはあくまで計算上の話で、見つかった時点ですでに大きな脳動脈瘤だと、もっと高率で破裂しますし、非常に小さなものでは「未破裂のままの確率」がもっと高くなると考えられています。しかし、この数字から言えることは、「今後の余命が長いほど(現在の年齢が若いほど)、生涯どこかで脳動脈瘤が破裂する確率が高い」ということです。

たとえば80歳の女性に未破裂脳動脈瘤が見つかったとしましょう。平均余命は約10年(厚生労働省調べ:平成13年度)ですから、将来、クモ膜下出血を起こす人は1~2割で、逆に8~9割の人は一生破裂を経験せずにすみます。

一方55歳の女性の場合はどうでしょうか。平均余命は約31年(同)とされていますので、上の表からはだいたい26~45%の確率で、人生のどこかでクモ膜下出血を発症することになります。いったん発症すると約半数で生命にかかわることは前に説明したとおりです。

脳動脈瘤の治療法は

脳動脈瘤の治療目的は、とにかく「今後破裂しない状態にすること」です。

すでに破裂してクモ膜下出血が起こっている場合は緊急で処置をしなければなりません。放置すると再破裂を繰り返して生命を失う可能性があります。ですから、病院に運び込まれた時点で回復不能なひどい脳のダメージがなければ、なんとか治療して致死的な再破裂を防止する必要があります。

一方、未破裂脳動脈瘤では通常緊急性はありませんが、今後破裂してクモ膜下出血を起こすのを予防することを目的に、脳動脈瘤の状態やその人の余命の長さ(一生のうちに破裂する確率)などを考慮しながら治療を行います。

治療法は、大きく分けて 1.開頭手術による方法と 2.血管内手術による方法の二通りがあります<図4>。いずれも通常、治療に先立ち脳血管撮影という検査(カテーテルと呼ばれる細い管を足の付け根の動脈から入れて、脳血管を造影する検査)を行い、脳動脈瘤の場所や形、周りの血管との関係を詳しく調べます。これらの検査結果と個々の患者さんの状態を総合的に判断し、最も安全度、確実度の高い治療法を計画します。

図4 脳動脈瘤の治療法
図4:脳動脈瘤の治療法

1. 開頭手術による方法

全身麻酔をかけ、手術で頭を開いて脳動脈瘤を露出させ、脳動脈瘤の首根っこ(「ネック」とよばれます)に脳動脈瘤用の特殊なクリップをかけて、はさみつぶす方法で、「ネッククリッピング手術」と呼ばれます。

適切にクリップがかかると脳動脈瘤の中には血液が入って行かないので、二度と破れない状態をつくり出すことができます。クリップはコバルト合金やチタニウムでできており、一生頭の中に入ったままとなりますが、それ自体は問題ありません。

手術は脳の深い部分の繊細な操作を必要としますので、脳外科手術用顕微鏡を使い、慎重な作業となります。直視下に脳動脈瘤の状態を観察しながら行うので確実性が高く、狙い通りクリップがかかれば今後破裂する可能性はまずなくなります。ただ、脳動脈瘤の存在する場所によって手術の難しさに差があり、比較的容易なものから非常に難しいものまで、さまざまです。

2. 血管内手術による方法

足の付け根から細いカテーテル(マイクロカテーテル)を脳動脈瘤の中まで誘導し、ここからプラチナ製のコイルを脳動脈瘤の内部に何本も詰めていく方法で、「脳動脈瘤塞栓術」と呼ばれます。

この十数年で普及してきた新しい治療法で、治療は手術室ではなく血管撮影室で行われます。開頭手術と異なり患者さんの体にメスを入れずにすむのが最大の利点で、体力の余裕のない高齢の方や、心臓病など他の病気を持っている方などにとっては負担が軽くなります。

治療中に患者さんが動くと危険ですし、長時間じっとしているのも大変なので全身麻酔で治療することが多いのですが、場合によっては局所麻酔でも行えます。また、血管内手術はカテーテルされ到達できれば、脳動脈瘤の場所による難易度の差が開頭手術に比べて少ないという特徴もあります。

しかし、新しい治療法であるため、治療後長期間の観察結果の報告がまだ少なく、「確実に将来の破裂を防止するかどうか」に関しては不確定な部分があります。また、いったんうまく詰まったように見えても、その後プラチナコイルの固まりが圧縮されて脳動脈瘤の内部に再び血液が入ってしまうこともあり、治療後も定期的な観察が必要です。

開頭手術と血管内手術の選択は、脳動脈瘤の場所、形、周りの血管との関係、患者さんの全身状態を総合的に勘案して決めることになります。

現時点では、破裂予防効果の確実なネッククリッピング手術をまず第一に考え、脳動脈瘤が極めて手術が難しい場所にあったり、高齢や心臓疾患などで体力がなかったりする場合は血管内手術を考えるという方針が主流です。しかしカテーテルやコイルといった血管内手術器具は年々改良されてきており、将来はその役割がさらに増えると思います。

すでにクモ膜下出血を起こしている場合、これまで説明しました二つの方法による治療で再破裂が防止できたとしても、最初の出血による脳のダメージによって最終的に生命にかかわったり後遺症が残ったりすることも少なくありません。

最初の出血量が多いと3~4日後から「脳血管れん縮」と呼ばれる現象が起こります。これは脳の表面の血管が狭くなってくる現象で、それによって脳の各部分に血液が十分行き届かずに「脳梗塞」が起こり、いろいろな後遺症につながります。

一方、未破裂脳動脈瘤の場合は脳のダメージがまだありませんので、普通の脳動脈瘤であれば、二つの治療法を使い分けてかなり安全に治療ができるようになってきました。未破裂脳動脈瘤の治療で生命にかかわる率は1%程度、何らかの後遺症が残る率は3~5%とされています。

定期的に検査を受けましょう
イラスト:定期的に検査を受けましょう

特殊なこぶ-巨大脳動脈瘤と解離性脳動脈瘤

1. 巨大脳動脈瘤<図5>

脳動脈瘤の多くは数ミリから1センチ程度の大きさです。1センチを超えると大型とされ、2.5センチ以上のものは「巨大脳動脈瘤」といいます。巨大脳動脈瘤は破裂による出血だけでなく、周りの脳や神経を圧迫することによってさまざまな症状を起こします。通常のネッククリッピング術や塞栓術が不可能なことも多く、治療が非常に難しい病気の一つです。

図5 巨大脳動脈瘤
図5:巨大脳動脈瘤

2. 解離性脳動脈瘤<図6>

最初に述べましたように、脳動脈瘤は通常、脳動脈の分岐に発生して膨らみます。これに対して、脳動脈の壁の中が裂けて血液が入り込み、血管全体が分岐に関係なく膨らむものがあり、「解離性脳動脈瘤」と呼ばれています。脳動脈瘤の首根っこ(ネック)がないので、ネッククリッピングは不可能です。また脳動脈瘤だけをコイルで詰めるのも通常無理で、この部分の動脈を完全に遮断するなどの特殊な治療方法が必要になります。

図6 解離性脳動脈瘤
図6:解離性脳動脈瘤

クモ膜下出血を防ぐには

脳動脈瘤の発生は、脳梗塞や脳出血といった他の脳卒中と違って、高血圧や糖尿病、高脂血症などの全身性疾患を予防すれば防げるというわけではありません。いまのところクモ膜下出血を防ぐ唯一の方法は、まだ破裂していない脳動脈瘤を発見して処置することです。

MRIやCTを用いた脳血管検査の診断能力は飛躍的に上がっていますので、脳動脈瘤の有無は、これら外来レベルでできる、体に負担の少ない検査(非侵襲的検査)でかなり分かります。もちろん、脳動脈瘤ができて短期間に成長し破れることもあり、これで完全というわけではありませんが、他に防ぐ方法がない以上、特に クモ膜下出血や未破裂脳動脈瘤の家族歴がある人はMRIやCTの検査を受けた方がよいかもしれません。「脳ドック」とよばれる健診を行っている病院も増えています。

脳動脈瘤が破裂して本格的なクモ膜下出血を起こす数週間~数日前に、わずかに出血してさほど激烈でない頭痛発作を起こすことがあります。これは大出血の前兆発作ですから重要で、たとえ強い頭痛でなくても 「ある瞬間、突然起こって持続する頭痛」を経験したら、早めに脳の専門医を受診したほうがよいでしょう。

頭痛は黄信号
イラスト:頭痛は黄信号

未破裂脳動脈瘤がみつかったら

もし検査で未破裂脳動脈瘤が見つかったらどうしたらよいのでしょうか。

だれしも大変不安になりますが、急激に大きくなっている場合や先に説明したような「前兆発作」を起こしているような場合を除けば、破裂率は年間1~2%ですので、数日後、数週間後にいきなりクモ膜下出血を起こす確率は非常に低く、慌てる必要はありません。まずは落ち着いてゆっくりと今後の治療方針を考えるべきです。

日本脳ドック学会は未破裂脳動脈瘤の治療に関するガイドライン(治療の手引)を作成しています。それによれば、70歳以下で脳動脈瘤が直径5ミリ程度まで成長していれば治療を勧めるべきであるとされています。5ミリ以下であっても破裂しやすそうな特殊な形をしていることがあり、この場合も治療を勧めますが、そうでなければ定期的に検査をして大きさの変化をチェックします。

急激な血圧上昇は動脈瘤の増大や破裂に結びつく可能性がありますから、血圧が高ければ薬でコントロールします。喫煙は破裂の危険因子であるという報告もあり、できれば禁煙をお勧めします。

70歳代前半の人の場合、治療を行うべきかどうかはケース・バイ・ケースです。平均余命からみて一生破裂しない可能性もかなりあるのですが、かなり大きくなっている場合や破裂しやすそうな形をしている場合は、治療の安全性が見込めれば積極的に治療を勧めます。「頭の中に動脈瘤がある」という精神的圧迫が非常に負担になっている人もいます。このような例では治療により破裂の危険を取り除く意義は大きいと思います。

さらに高齢の70歳代後半~80歳以上の人に脳動脈瘤がみつかった場合、一生破裂しない確率も高く、また高齢による治療リスクも低くないため経過観察とするケースが多くなります。ただ、観察期間中に急激に増大するような例では、治療も考慮します。

脳動脈瘤は部位や大きさ、形などによって治療の難しさが異なります。未破裂脳動脈瘤の治療は、クモ膜下出血に比べるとはるかに安全ですが、それでも、すでに説明したような後遺症が残る可能性も数%あります。

自分の場合どれくらいの安全度で治療が可能なのか、開頭手術と血管内手術のいずれが適しているのか、主治医から十分情報を得る必要があります。最終的には治療の安全度と年齢(今後どれくらいの余命があるか)、体の状態を考えながら決断することになります。

脳動脈瘤には家族性のものもある
イラスト:脳動脈瘤には家族性のものもある

 

最終更新日 2014年03月12日

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