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血管の病気|循環器病あれこれ|

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
文章・図表・イラスト等の転載・引用のご相談は循環器病研究振興財団までご連絡ください。

[10]血管の病気・・・「こぶ」と「詰まる」

元国立循環器病研究センター
心臓血管内科
医長 松尾 汎

「瘤(こぶ)」と「詰まり」にご用心

イラスト:「瘤(こぶ)」と「詰まり」にご用心

もくじ

血管に重要な2つの役割

図1 血管ネットワーク
図1:血管ネットワーク
動脈と静脈が並走している

生命のいとなみには十分な酸素や栄養が必要ですし、そのいとなみで生じる老廃物の処理もきちんとしなくてはなりません。

酸素と栄養を供給し、老廃物を処理するという両方の役割を担っているのが「血液」で、血液が体の中をめぐっていることを「循環(血のめぐり)」とか「還流(行った血が戻ってくること)」と呼んでいます。

血液が流れる「通路、パイプ」が血管で、<図1>をご覧いただくとわかるように、体中にあまねく血液が行き渡るよう見事なネットワークをなしています。

血管には、主に栄養分を運ぶ「動脈」と、老廃物を運びだす 「静脈」があることは、みなさん、よくご存知です。

この血管が病気になって、血液が流れにくくなれば、幹線道路で交通渋滞が起きたと同じこと。栄養分も老廃物も運べず、物資の輸送がストップという深刻な事態が生じてしまいます。

また、血管が破れた場合、石油のパイプラインが破裂したと同じように、これも全身に与える影響は深刻です。

脳の血管の病気には脳出血、脳梗塞などが、心臓の血管の病気には心筋梗塞や狭心症などがあります。このように脳や心臓など特定の「臓器」の中を循環する血管の病気はよく知られています。しかし、これら以外にも「血管自体」の病気が少なくありません。

ここでは幅広く血管自体に起こる病気を解説し、血管をいかにいたわっていくかを考えたいと思います。

血管の病気を大きく分けると、「こぶ」ができる場合と「詰まる」場合とがあります。どんな病気があるか<表>にまとめました。

「こぶ」には大動脈瘤や静脈瘤などが、「詰まる」場合には動脈閉塞症、静脈血栓症などがあります。

「こぶ」も「詰まる」場合も、動脈と静脈では事情が違いますので、血管の病気を動脈と静脈とに分けて説明しましょう。

<表> 血管の病気


こぶ(拡張) 詰まる(閉塞)
太い血管 動脈 大動脈瘤 大動脈縮窄、閉塞
静脈 (うっ血性) 大静脈閉塞(上大静脈症候群など)
細い血管 動脈 末梢動脈瘤 急性動脈閉塞
閉塞性動脈硬化症、バージャー病
静脈 静脈瘤 深部静脈血栓症

動脈の「こぶ」

動脈の壁には常に強い圧力(血圧)がかかり、壁に弱い部分があると、そこが膨らみ、拡張して、「こぶ」、つまり「瘤(りゅう)」ができた状態になります。これが「動脈瘤」です。

動脈瘤は

  1. どこにできているかによって「胸部大動脈瘤」、「腹部大動脈瘤」、「大腿動脈瘤」、「脳動脈瘤」(シリーズ2参照)などに
  2. 瘤のできた動脈壁の状態によって「真性」、「仮性」、「解離性」に
  3. 瘤の形によって「紡錘状」「嚢状」などに

分類されています。<図2>にそれらがどんな状態かを示しました。

図2 動脈瘤の分類
  • 真性瘤・・・・元々の動脈の壁が弱くなってできた瘤
  • 解離性瘤・・・動脈の壁が縦に裂けてできた腔(偽腔)がふくれて瘤となったもの(裂け口は亀裂、tearと呼ばれる)
  • 仮性瘤・・・・動脈の壁が裂けて、穴があいたところへできた瘤
図2:動脈瘤の分類

◆どんなとき見つかるか

こぶのうち最も多いのは、おなかにできる「真性腹部大動脈瘤」です。

「真性」とは「本当、本物の」という意味で、真性のこぶは徐々に膨らんでくるので症状がないことが多く、ほとんどは検診などで偶然見つかります。

胸部はレントゲン撮影で、腹部は「おなかの診察」や腹部の超音波検査で発見される場合がほとんどです<写真1>。しかし、解離性のこぶ(最近は「大動脈解離」と呼ばれます)は、胸や背中に突然、痛みを伴って急に起こるのが特徴です。

写真1 胸部大動脈瘤
写真1:超音波エコー像 胸部大動脈瘤
矢印の部分に瘤がある

◆こぶは、なぜ怖い

大動脈瘤は解離性の場合を除き、普通は何も症状が出ないので本人は苦しくはありません。しかし、次の3つの異常が生じることがあり、大変、困ったことになります。

  1. こぶの破裂。急にこぶが破れて、その部分(胸、腹など)の痛み、出血による貧血、ショックなどが起こり、すぐに治療を受けなければ深刻な事態になります。
  2. こぶが大きくなり、周囲が圧迫されて起こる障害。胸部では、声がかすれたり、ものがのどを通らなくなったり、血の混じったたんが出たりします。
  3. こぶができた場所から、さらに先にある脳、心臓、腎臓、手足などに起こる循環障害。

これらの障害が生じない間に、こぶを処置するのが治療の原則です。

◆見つかったときどうする?

動脈瘤は普段、何の症状がなくても破裂することがあり、その危険率はこぶの形、大きさによって異なります。ですから、血管の専門医に相談して治療方針を決めてもらってください。

小さなこぶは経過の観察でよいのですが、症状がないからと放置せず、定期的に検診を受け、大きさ(直径)の変化を観察してもらうことが必要です。胸部はCT(コンピューター断層撮影)検査で、腹部は超音波検査で経過を見ます。

観察中は、血圧のコントロールが大切で、血圧が急に上昇するのを避けねばなりません。すでに高血圧のある方には降圧薬を服用してもらい血圧を調節します。

◆こぶの治療法

最近では、細い管(カテーテル)を血管の中に入れて、こぶの部分を治療する方法がしだいに普及してきました。でも、今のところは手術して、こぶのできた部分を人工血管に置き換える方法が最も信頼できる治療法と言えましょう。技術の進歩によって、動脈瘤と全身の状態がきちんと診断、評価されておれば、治療は安心して受けられるようになっています。

動脈が「詰まる」

動脈が詰まってしまったために、手足の血流障害が起きた状態を「末梢動脈閉塞症」と言います。起こり方は急に生じる「急性」と、徐々に進む「慢性」があり、まず「急性」の方から説明しましょう。

◆急性の動脈閉塞

動脈硬化などで狭くなった動脈に、血が固まりやすくなる条件(例えば脱水状態など)が重なると血の塊ができて詰まってきます。これを 「血栓症」といいます。また心臓の弁膜症や不整脈が下地となって心臓の中にできた血の塊や、大動脈内にできた血栓がはがれて流れ出し、手足の末梢動脈をふさいでしまいます。これを 「塞栓症」といいます。

どちらも、急に手足の激痛や冷感・しびれ感などが生じ、皮膚の色も白くなり、実際に皮膚も冷たくなってしまいます。

こうした状態は一刻も早く手術を受けねばなりません。血栓を取り出し、血流を再開すれば症状はまさに劇的に改善されます。そのためにはとにかく、一時間でも早く専門医にかかることです。

日ごろから、腕や足の脈をみる習慣をつけておれば発見しやすいので、家族の間で互いに脈をとる練習をしてみればよいでしょう<図3>。

急性動脈閉塞は、不整脈のある方や、動脈硬化の進んだ方には、とくに注意してほしい血管の病気です。

図3 お互いに足の動脈に触れてみよう
図3:足の動脈に触れてみよう
脈拍が触知できる部位を覚えておく

◆慢性の動脈閉塞

これには最近、とくに増えてきた「閉塞性動脈硬化症」と、 「バージャー病」があります。

閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化によって手足の末梢動脈が詰まったり、狭くなったりした状態で、しびれ、冷感、歩行障害などいろいろな症状が出てきます。

動脈硬化は全身に起こりますから、脳や首の動脈、心臓に栄養を与える冠状動脈、大動脈、腎動脈、腹部や足の動脈などに程度の差はあれ、だれしも60~70歳台になると、循環障害が起こり得ます。このことをよく知っておいてください。

下半身に起こる慢性の動脈閉塞の症状で最も多くみられるのは、やはり歩行障害です。「ある距離を歩いたときに、ふくらはぎや太ももに凝りや痛みを感じ、休息すると、痛みが改善して再び歩ける」という障害で、 「間歇性跛行」と呼ばれています。
運動中の筋肉は、じっと安静にしている場合に比べ、何十倍もの血液が必要ですから、歩行中に十分な血液がまかなえない循環障害では、このタイプの歩行障害が起こるわけです。

さらに循環障害が進むと、安静にしている時の血液の量さえもまかなえなくなり、常に痛みを感じるようになり、ついに壊疽(えそ)をきたすようになってしまいますから、細心の注意が必要です。

◆末梢血管の循環障害を調べるには

まず、皮膚の色や温度をみます。次いで、全身の脈拍を調べれば、大まかな循環状態をチェックすることができます。

簡単に、しかも客観的に血流の状態をみる方法は、足関節での血圧測定です<図4>。時々、腕と足関節での血圧をお医者さんに頼んで測ってもらってください。健康な人では足関節の血圧は、腕で測った血圧と同じか、少し上回っていますが、足に血流障害がある人では、逆に腕の血圧の8割以下に下がっています。

症状が循環障害によるかどうかは、脈拍と血圧でほぼ判定できますが、治療方針を決めるには、病気の重症度を判定する必要があります。

歩いて足が痛くなる人には、動くベルトの上を実際に歩いてもらい、痛くなるまでの距離を調べます。動脈が詰まっている場所は、最近は血管超音波検査や磁気共鳴画像(MRI、MRA)など、患者さんの体に負担をかけない方法で確かめられるようになっています。

ベルトの上を歩いてもらう検査の際、心電図検査も同時に行い、心臓の状態も調べます。

詰まった場所を手術などで治療する場合は、「動脈造影」によって動脈の流れを直接、チェックし、詰まった場所を確かめておくことが必要です。

図4 足関節での血圧を測る
図4:足関節での血圧測定の様子
病院で足の血圧を測ってもらおう

◆体のどこでも起こり得る

ここで忘れてはならないのが、全身の動脈硬化による合併症のことです。最初にみられた症状が足の痛みであっても、動脈硬化は全身の動脈のどこででも起こり得ますから、すでに脳や心臓などにも循環障害が起きているかもしれないからです。
閉塞性動脈硬化症の方の首の動脈を調べると、約8割の方に脂肪や血栓が付着しており、冠状動脈の疾患も約4割に認められると報告されています。足だけの問題ではない場合が、はるかに多いのです。

◆診療の3本柱

足の冷感、しびれ感、筋肉痛など症状を軽減するには、血流障害をよくするのは当然です。しかし、その原因となっている動脈硬化の進行を放置したままでは、改善は望めませんし、一時的に改善しても再発してしまいます。

繰り返して強調したいのは、動脈硬化は全身に起こりますから、手足の症状だけに目を向けず、脳、心臓、腎臓など重要な臓器にも病気が潜んでいないか疑ってみることです。

そこで大切なのは「診療の3本柱」、つまり(1)循環障害を起こしている手足への対策 (2)動脈硬化を招く「危険因子」への対策 (3)動脈硬化で起こる主要臓器の障害への対策-が必要になります。

「危険因子」である高脂血症、高血圧、喫煙、糖尿病への取り組みや、動脈硬化が下地となる脳血管障害、狭心症などについては、すでに刊行されたこのシリーズの冊子を見てもらうことにし、ここでは閉塞性動脈硬化症で問題となる末梢循環障害の治療について紹介しましょう。

◆末梢循環障害の治療法

最近、患者さんの体に負担が少ない「血管内治療」(カテーテル血管形成術、PTA)が普及してきました。動脈の「こぶ」の治療で触れたように、小さい管(カテーテル)を循環障害の起きた部分に入れて治療する方法で、治療できる場所や程度に限界がありますが効果は良好です<図5>。

もちろん、外科的に血行をよくする「バイパス手術」は極めて効果的ですが、全身への影響が無視できませんから、適応かどうかは慎重に判定する必要があります。

運動療法は「間歇性跛行」の症状の改善に効果があり、薬物療法は末梢循環障害の進行や再発予防、さらに自覚症状を和らげるために用いられています。

図5 足の動脈造影とそのカテーテル治療
図5:足の動脈造影とそのカテーテル治療

治療前の狭くなっている動脈(左端)を風船で広げているところ
右の写真は、足の動脈を広げているときの動脈造影

静脈の「こぶ」

◆女性を悩ます下肢静脈瘤

静脈のこぶで多いのは、太ももや下腿部の表面の静脈がはれて「こぶ」になった下肢静脈瘤です。<写真2>

「瘤」と名がついていても「動脈瘤」とは異なり、たとえ破裂しても大事にいたることはまずありません。紫色になる内出血も数分間、押さえておけば出血は止まります。

症状は、足の鈍痛や、時々、皮膚炎が起き皮膚が黒くなることなどですが、なによりも美容上、女性を悩ませる病気です。妊娠をきっかけに症状が出るようになったり、立ち仕事の人によくみられますが、静脈瘤ができやすい家系もあるようです。

静脈瘤かどうかは、立ってもらい足を見ればわかりますが、どの静脈に起きているか、原因は何かを調べて、治療する必要がありますから、まず専門医の診察を受けてください。

◆治療は弾力ストッキングで

静脈瘤の進行を防ぐ基本的な処置は「弾力ストッキング(弾力包帯)」をはくことです。

これで下肢の症状は軽減していきますが、すでに進行した「こぶ」には、薬剤を瘤の中に注入して固めてしまう「硬化療法」や、問題の静脈を縛ってその血流を止めたり、静脈を引き抜いてしまう治療などが必要な場合もあります。

写真2 両足の静脈瘤
写真2:両足の静脈瘤

静脈が「詰まる」

◆深部静脈血栓症

足の表面でなく、より深い部分を流れている静脈が、血栓(血の塊)によって閉塞し、血液が下肢にたまり、うっ帯した状態が「深部静脈血栓症」です。

静脈が「詰まる」場合に最も問題になるのがこの血栓症で、症状はうっ帯の具合によって、まったくない場合から、足のむくみ、痛み、激痛などいろんな程度があります<図6>。

図6 下肢の腫れと静脈閉塞部位
図6:下肢の腫れと静脈閉塞部位

左:膝より下の静脈の閉塞
中:太もも部分の静脈の閉塞
右:下腹部分での静脈の閉塞

◆原因と診療のポイント

病気や手術後のため長期間、ベッドから離れられない場合や妊娠中などによる「血液のうっ帯」が原因になります。このほか、血液を固める凝固因子の異常、けがやカテーテルで静脈の壁に傷がついた場合も原因になります。凝固因子の異常は専門医のチェックを受けましょう。

静脈血栓症の診断には、検査で「血栓」があることを確かめることが必要です。下肢に「むくみ、痛み、発赤」などの血栓症が疑われる場合は他の病気(全身疾患、表在静脈炎、蜂巣炎、リンパ浮腫など)と鑑別しなくてはなりません。

◆症状の特徴と検査法

静脈血栓を疑うべき症状はいくつかありますが、皮膚の色の異常や、はれや痛みが重要です。皮膚は紫色か赤色になり、慢性になると色素が沈着して黒く見えます。

深い部分の静脈が詰まると、それから先に血液がうっ帯し、極端にはれ、しばしば、ふくらはぎがパンパンにはれて痛くなります<図6>。

静脈血栓の診断には、患者さんに負担のない検査法が開発されており、精度もアップしてきました。

とくに、静脈超音波検査が有用で、専門の医師や技師に検査してもらう必要がありますが、今後、普及してほしい方法です。また、アイソトープを使って血流を調べる「血流シンチグラフィー」も検査法の一つです。

◆治療

血液が固まるのを防ぐ薬を使う「抗凝固療法」が中心です。場合によって、血の塊を溶かす薬を用いたり、手術で血栓を摘出したりすることもあります。最重症では外科的治療が、中程度以下では薬剤が中心になりますが、いずれにしても早く治療をうけることが大切なのはいうまでもありません。

◆血の塊が飛ぶ合併症

まれに静脈にあった血栓(血の塊)がはがれて、肺の動脈まで達したときには、肺動脈が詰まる「肺塞栓症」が起こります。詰まった場所によって、症状はまったくない場合から、胸痛、呼吸困難、ショック、さらに突然死の原因になることもあります。これが最も注意したい合併症です。

予防としては静脈がうっ帯しないように心がけ、この症状が疑われるときは、とにかく一刻も早く治療を受けなければなりません。

このほか、静脈血栓症の後遺症として、患者さんを長期間、悩ませる「血栓後症候群」があります。血栓で静脈の還流が悪くなり、静脈瘤、むくみ、うっ血による痛みや皮膚炎などが生じます。

これを予防するには、静脈血栓症とわかった段階から、静脈の還流をよくするよう、「弾力ストッキング」をはいたり、時々、あお向けに寝て、足を天井に向けたりするのを根気よく続けることが大切です。

「危険因子」避ける生活を

血管自体にも「こぶ」と「詰まる」という、やっかいな病気があることを理解していただけたでしょうか。病気というと、臓器の病気と思いがちですが、血管の病気にも目を向けてほしいのです。

全身の血管をいたわり、その機能と血液の流れを維持するようにすれば、防げる病気は少なくありません。

そのためには、このシリーズの(4)「高血圧とのおつきあい」で紹介されているように、まず循環器病の「危険因子」の高血圧、高脂血症、喫煙、糖尿病、左室肥大、肥満、運動不足などを避ける生活をしっかりと身につけることです。

 

最終更新日 2014年03月12日

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