糖尿病治療薬の正しい使い方
1. 糖尿病とは
- 糖尿病とは、体の中でインスリンが分泌されにくくなるか、インスリンの働きがにぶくなることによって、高血糖をはじめとする代謝異常が起こり、その結果、血管の障害を中心とするさまざまな合併症をひきおこす病気です。
- これらの合併症を予防するために、糖尿病発症直後からの適切な血糖コントロールの継続が重要です。
2. インスリンの生理作用
- インスリンは、肝臓、筋肉や脂肪組織などの臓器に働き、ブドウ糖を細胞内へ取り込み、エネルギー利用や貯蔵を促進するなどの働きをします。
- インスリン作用とは、インスリンが体の中で効果をあらわし、全身の代謝を調節することです。適切なインスリンの分泌と、組織のインスリン感受性のバランスがとれていれば、血糖値を含む代謝全体が正常に保たれますが、インスリン分泌不足、またはインスリン感受性の低下はインスリン作用不足をきたし、血糖値が上昇します。
- 血糖値を下げるホルモンは、インスリンだけです。
3. 糖尿病の内服薬
- スルホニル尿素(SU)薬
- すい臓からのインスリン分泌を促進して、血糖降下作用を発揮します。低血糖に対する注意が必要です。
- グリベンクラミド(オイグルコン)、グリクラジド(グリミクロン)、 グリメピリド(アマリール)、アセトヘキサミド(ジメリン)
- フェニールアラニン誘導体
- 速効・短時間にインスリン分泌を促進させて、食後血糖値を降下させます。必ず食直前に服用します。また、薬の服用直後から薬の効果があらわれます。したがって、この薬を飲んだ後10分以内には、食事をとってください。食事をはじめるまでに時間がかかってしまうと、低血糖を起こす可能性があります。
- ナテグリニド(スターシス)、ミチグリニド(グルファスト)
- α-グルコシダーゼ阻害薬
- 小腸粘膜に存在する二糖類分解酵素(α-グルコシダーゼ)の作用を阻害し、糖の消化を抑制し吸収を遅らせ、食後の高血糖を抑制します。必ず、食直前に服用します。食後では効果がありません。副作用として、腹部膨満感、放屁の増加、消化器症状などが認められます。まれに肝機能障害が報告されており、定期的な肝機能検査が必要です。低血糖に対しては、必ずブドウ糖を服用してください。砂糖では吸収が阻害されてしまいます。
- ボグリボース(ベイスン)、アカルボース(グルコバイ)
- ビクアナイド(BG)薬
- 肝臓での糖の産生の抑制、消化管からの糖の吸収の抑制、末梢組織でのインスリン感受性の改善などにより、血糖降下作用を発揮します。インスリン分泌促進作用はなく、血糖降下作用は穏やかです。高齢の患者さんで肝機能障害、腎機能障害や心機能障害のある場合には、乳酸アシドーシスを起こす可能性があります。
- 塩酸ブホルミン(ジベトスB)、塩酸メトホルミン(グリコラン)
- チアゾリジン誘導体
- インスリン抵抗性を改善して、血糖降下作用を発揮します。副作用として、貧血、浮腫、血液検査値の上昇などが認められる場合があります。肝機能障害が報告されているので、定期的に肝機能検査を行います。
- 塩酸ピオグリタゾン(アクトス)
4. 糖尿病の注射薬
インスリン注射薬には、効き始める時間や作用している時間が異なったいくつかの種類があります。主治医は患者さんを診察し、最も適したインスリン注射薬の種類や注射回数および量を決めます。使用する種類、回数および量は患者さん自身が覚えておいてください。
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インスリン注射をする前に、次のことに注意してください。
- 使用するインスリン注射薬の種類に間違いがないか?
- 使用する注射薬は有効期限内であるか?(有効期限は注射薬の外箱や容器に記載してあります)。これらのことを確認した後、インスリン注射薬をあわ立てないように静かに混ぜてください。インスリンの濃度を均一にするためです。
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インスリン注射薬の保管方法は、使用する注射器(ペン型、使い捨て型)によって多少の違いはありますが、安全に使用して頂くためにも次の3大注意は共通ですので必ず守ってください。
未使用(予備)のインスリン注射薬は1~15℃(冷蔵庫のバター入れ等)で保管してください。また、冷蔵庫に入れなかった場合、30℃未満であれば1ヶ月間は有効です。3大注意
凍らせない!
直射日光を避ける!
高温を避ける! - 使い捨て注射器を使用している場合は、使用中のインスリン注射薬でもできるだけ1~15℃(冷蔵庫のバター入れ等)で保管してください。ただし、旅行や外出の時は冷蔵庫に入れなくてもかまいません。
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ペン型注射器を使用している場合は、次のことに注意してください。
- ペン型注射器にセットしている使用中のインスリン注射薬は使い終わるまで外さないでください。正しい量がうてなくなることがあります。
- ペン型注射器はインスリン注射薬をセットしていても、していなくても絶対に冷蔵庫に入れないでください。必ず常温で保存してください。故障の原因となります。
- 実際に注射する前に、試しうちをして注射液が出ることを確認してください。
- 決められた時間に注射をしなかった場合は、使用するインスリン注射薬の種類によって、対処が異なりますので主治医とよく相談してください。
- 副作用として、低血糖があります。(詳しくは低血糖をご覧ください)。その他、身体のむくみ、発疹、かゆみ、注射部位のしこり等があります。ただし、注射部位のしこりは、注射部位をかえることによって防ぐことができます。副作用らしき症状がでたらすぐに主治医に相談するようにしてください。
5. 低血糖とは
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SU薬(グリミクロン、オイグルコン)およびインスリン使用中の患者さんに起こりうる症状です。
症状は大きく3段階に分類できます。-
血糖値が正常の範囲を超えて、急速に降下した結果、生じる症状。
[交感神経興奮]発汗、不安、動悸、手指振戦、顔面蒼白、頻脈など。 -
血糖値が50mg/dl未満になったことにより生じる症状。
[中枢神経のエネルギー不足症状]
頭痛、眼のかすみ、空腹感、眠気、意識レベルの低下が混在します。
異常行動(とくに高齢者ではボケと間違われやすい)も低血糖の症状として起こります。 - さらに、持続、進行すれば「昏睡」となります。
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血糖値が正常の範囲を超えて、急速に降下した結果、生じる症状。
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低血糖時の対応
- 砂糖10~20g(角砂糖なら3~4個)やジュース(1本)を摂り、安静にしたのち、補食あるいは食事を摂ります。
- 「α-グルコシダーゼ阻害薬」(ベイスン、グルコバイ)を服用している方はブドウ糖5~10gやジュースのみ有効です。
- このように、治療薬の種類により、砂糖またはブドウ糖を使い分けます。あなたに合ったものを必ず携帯してください。
- 低血糖になった場合、応急手当で一時的に回復しても、低血糖の再発やその遷延の可能性が高いため、必ず主治医に連絡をとってください。
- 重い低血糖(けいれん・昏睡)の場合には、救急車を呼びます。
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低血糖を起こさないためにも、次のようなことに日ごろから注意してください。
- 薬は指示されたとおり正しく使用する。
- 食事療法をきちんと守る。
- はげしい運動をする時は運動前か途中で軽い食事等をとるようにする。
- アルコールは低血糖を助長しますので、決められた範囲内でとりましょう。
- 血糖や尿糖のチェックを怠らない。
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低血糖におけるその他の注意点。
- 自動車の運転や高所作業等危険を伴う作業に従事している時に低血糖を起こすと事故につながります。特に注意してください。
- ときには患者さん自身が低血糖になったのに気がつかないこともありますので(ボーとしている、普段と違った行動をするなど)、家族やまわりの人などにも注意をしてもらってください。とくに、一人暮らしの人は低血糖状態になり対処が遅れると非常に危険ですから、日頃から低血糖に対して細心の注意をしてください。
- 虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞など)の合併症がある場合は、発作が起こっているのに気がつかないこともありますので、注意してください。
- 食事をとらなかった場合は低血糖を起こしやすくなりますので、できる限り早く食事をとるなどの対処をしてください。
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sick day(シックディ)とその対応について
- 糖尿病患者さんが治療中に発熱、下痢、嘔吐をきたし、または食欲不振のため食事ができないときを sick day(シックディ)と呼びます。
- sick dayでは、インスリン非依存状態で平常よくコントロールされている患者さんでも、著しい高血糖が起こったりすることがあります。インスリン治療中の患者さんではさらに起こりやすく、特別の注意が必要です。
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sick dayの対応
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sick
dayのときには医師に連絡し指示を受けます。
インスリン治療中の患者さんは、食事がとれていなくてもインスリン注射量を変えずにインスリン注射を続けることを原則とします。
発熱、消化器症状が強いときは必ず受診してください。 - 十分な水分の摂取により脱水を防ぎます。
- 食物は口当たりのよいものや消化のよいものを選び、できるだけとり、絶食しないようにしてください。
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sick
dayのときには医師に連絡し指示を受けます。
6. 日常の注意
- 糖尿病治療薬を使っていることを書いたカード(糖尿病患者カードなど)を常に身につけておくとよいでしょう。
- 薬によっては、低血糖を起こしたり、症状を感じにくくするものがありますので、何か別の薬を飲むときには、主治医に相談してください。
- インスリン注射薬および注射器は、小さな子供の手の届かない所に保管してください。
- 患者さんは「自分の健康は自分で守る」といった自覚をもって、定期的に糖尿病の治療・検査を受け、その結果について十分説明を聞き、医師や医療関係者との協力のもとに、よい治療状態を継続することが糖尿病を克服する基本です。
[国立循環器病センター 薬剤部]
[更新日: 2009年10月10日]
