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くわしく知る循環器病(医療従事者向け)|病気について|肺高血圧症

  1. 肺高血圧症とは
  2. 肺高血圧症の臨床所見と診断
  3. 肺高血圧の病態
  4. 肺高血圧症の種類
  5. 肺高血圧症の治療と対策
  6. 肺血管性肺高血圧症
  7. 疾病に関するリンク集

1. 肺高血圧症とは

肺動脈圧の正常値は一般に収縮期圧30~15mmHg、拡張期圧8~2mmHg、平均圧18~9mmHg とされています。従って収縮期圧で 30mmHg以上、平均圧で 20mmHg 以上の肺動脈圧が存在する場合に、これを肺高血圧と定義することが一般的です。

しかし原発性肺高血圧症の診断を行う場合には、肺動脈平均圧 25mmHg 以上、運動時30mmHg 以上を厳密な意味で肺高血圧の診断基準として用いています。

2. 肺高血圧症の臨床所見と診断

肺高血圧の診断と重症度の正確な評価を行う場合には、右心カテーテルを用いて肺動脈の圧や心拍出量を直接測定することが必要となります。

しかし通常の外来でも、理学的所見で第2音肺動脈成分の亢進、肺動脈駆出音、胸骨傍抬起などを、胸部X線写真では右室成分による心胸比の拡大と左第2弓の突出、肺動脈近位部の拡大および遠位部の急激な狭小化などの所見を、また心電図で高度の右心系負荷所見を認めれれば、肺高血圧の存在を推定することはさほど困難ではありません。

さらに最近では心エコー検査の発達により、右室の拡大・左室の扁平化などの所見から容易に右心負荷の存在を認識でき、また心ドプラ法を用いると、右心カテーテル法を用いなくても、非侵襲的に肺動脈圧をある程度正確に評価することが可能となってきています。

3. 肺高血圧の病態

肺高血圧の存在は右心系にとっては後負荷の増大を意味します。そこで右心はまず拡張・肥大してこれに対応しますが、高度の肺高血圧が持続する場合には、上昇した肺動脈圧によって右心のpump機能が破綻し、心拍出量の低下と静脈系の血液鬱滞とが生じ、肝臓の腫大や全身の浮腫が生じるようになります(右心不全)。

また肺高血圧例には高度の低酸素血症を併発する場合があり、その成因としては肺の換気-血流比不均等(VA/Q inequality)や肺内・肺外shuntを通じての静脈血混合、および低心拍出量状態による混合静脈血酸素飽和度の低下が関与していることが想定されています。

さらに低酸素血症の存在下では、低酸素性肺血管攣縮という機序によりさらに肺動脈が収縮して肺高血圧が増強されるため、病状の悪化がもたらされます。

4. 肺高血圧症の種類

肺高血圧症は前毛細管性肺高血圧症と後毛細管性肺高血圧症に分類される場合も多いのですが、肺高血圧が生じる原因によって以下のように分類することも可能です。

  1. 左房圧の上昇による肺高血圧症
    高度の左室不全(陳旧性心筋梗塞、拡張型心筋症などによる)
    僧帽弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症
    収縮性心膜炎
    左房粘液腫 など
  2. 肺への血流量が増加して生じる肺高血圧症
    心内左-右短絡疾患(心房中隔欠損症、心室中隔欠損症など)
    動脈管開損症
    末梢性動静脈短絡 など
  3. 肺血管の病的変化による肺高血圧症
    原発性肺高血圧症
    慢性肺血栓塞栓症
    Eisenmenger症候群
    肺血管炎
    膠原病に伴う肺高血圧症 など
  4. 肺実質の病的変化による肺高血圧症
    間質性肺炎
    慢性閉塞性肺疾患
    肺結核後遺症 など
  5. 血管平滑筋が収縮して生じる肺高血圧症
    低酸素性肺血管攣縮 など

5. 肺高血圧症の治療と対策

僧帽弁疾患や短絡性先天性心疾患などを基礎疾患とする肺高血圧症については、各々の原疾患に対する外科治療により肺高血圧を解除することはおおむね可能です。

また虚血性心疾患や心筋症、大動脈弁閉鎖不全症など弁膜症などによる左心不全に合併する肺高血圧症に対しても、対策はその原疾患に対する内科的・外科的治療が主体となります。

呼吸器疾患例にも肺動脈平均圧 20mmHg 以上の肺高血圧を合併する例はよく存在しますが、著明な肺高血圧を伴うことは比較的まれで、対策はやはり原疾患に対する内科的治療が主体となります。また以上の疾患で低酸素血症を伴っている場合には、低酸素性肺血管攣縮により肺高血圧がさらに増強されますので、酸素投与が有効な治療法となる場合があります。

近年非常に稀な病態ですが、種々の原因によって肺血管自身に病的変化が生じ、極めて高度の肺高血圧(肺動脈平均圧 45mmHg 以上、 CHEST 1998; 114:185S)を呈する疾患群が存在することが明らかとなってきました。そこでこれらは、肺血管性または肺血管原性肺高血圧症と呼ばれる場合があります。

6. 肺血管性肺高血圧症

肺血管性肺高血圧症を呈する代表的疾患としては、原発性肺高血圧症、慢性肺血栓塞栓症(肺高血圧合併例)、Eisenmenger症候群、膠原病に伴う肺高血圧症、肝疾患にともなう肺高血圧症などが知られ、近年ではaminorex、fenfluramineと言った食欲低下剤の使用によって誘発された肺高血圧症や、HIVに高度の肺高血圧症が合併する例が存在することも知られてきています。肺血管性の肺高血圧症は、患者さんの数が少なく、また真の原因が明らかでない場合が大半で、これまで有効な治療法が存在しない状態でした。

そこで平成10年に、原発性肺高血圧症と慢性肺血栓塞栓症(肺高血圧合併例)については、厚生省により「特定疾患治療研究事業における対象疾患」、いわゆる難病に指定され、医療費の補助が受けられるようになってきております。

またEisenmenger症候群は小児慢性特定疾患に指定されております。

それぞれの病気については難病情報センターの作成した詳細な解説がありますのでリンク集をご覧ください。

肺血管性肺高血圧症に対しては、これまでほとんど治療法が無い状態が長く続いていましたが、近年になって慢性肺血栓塞栓症(肺高血圧型)に対する肺動脈血栓内膜摘除術や原発性肺高血圧症に対するprostacyclin持続静注法、またEisenmenger症候群など肺血管性肺高血圧症の全般に対する一酸化窒素(NO)吸入療法や肺・心肺移植、生体部分肺移植などの新しい治療法が開発されてきました。

これらの治療法は各々の疾患に対して有効性は認められていますが、肺血管性肺高血圧症例の中には各疾患相互の鑑別が困難な場合も多く、治療法の適応例の決定や手術適応の有無、手術手技、治療導入後の長期にわたる経過観察、在宅治療に移行した場合の対応などについては高度の専門性が要求されます。

そこで欧米では限られた肺高血圧症診断・治療センターにおいて、集中的にこれらの治療が実施されているのが現状であり、本邦においてもごく少数の施設で臨床応用が始まった段階です。

国立循環器病センターでも、慢性肺血栓塞栓症(肺高血圧型)に対しては肺動脈血栓内膜摘除術プログラムを、原発性肺高血圧症に対してはprostacyclin持続静注法プログラム、NO吸入療法プログラムを積極的に検討、実施しております。

それぞれのプログラムに関してご質問がございましたら当院内科心臓部門(肺循環)宛の e-mail をご利用下さい。但し e-mail の安全性については、情報の漏洩などの問題があると指摘されており、患者さん個人のプライバシーに関連するご質問にはご配慮下さい。また個々の患者さんの病状判断につきましては、当院での診察が必要となる場合もありますのでご了解下さい。

内科心臓部門(肺循環)E-Mail:phclinic@mgt.ncvc.go.jp

7. 肺高血圧症に関するリンク集

最終更新日 2011年10月31日

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