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ファロー四徴症

ファロー四徴症

ファロー四徴症は1888年にフランス人医師Fallotにより記載された頻度の高いチアノーゼ性心疾患で,心室中隔欠損,肺動脈‐右室流出路狭窄,大動脈騎乗,右室肥大によって構成される。心尖は右室あるいは両心室で形成され,肺動脈幹には低形成がみられる。肺動脈狭窄と心室中隔欠損により動脈血中に静脈血が流れ込むため,低酸素血症(チアノーゼ)が生じる。

臨床所見

乳幼児期に胸骨左縁下部でⅡ音の亢進,胸骨左縁で収縮期雑音が聴取される。チアノーゼ,蹲踞,太鼓バチ指がみられ,代償性の赤血球増多をきたす。胸部X線では右室肥大により心陰影が木靴型,心電図では右軸偏位,右室肥大を呈する。心エコーでは典型例は膜様部近傍に心室中隔欠損があり大動脈騎乗が認められる。右室造影では漏斗部と肺動脈弁輪が細く肺動脈が低形成である。

形態学的特徴

心室中隔欠損

室上稜側方部は低形成あるいは異常発育を示し,前方左方向に偏位しているので心室中隔欠損は通常室上稜の下方にみられ,大動脈弁下にあって肺動脈弁下筋束の下方,後中隔の後方,膜様部の前方で囲まれている。欠損が肺動脈弁下にも及んでいることもある。

肺動脈‐右室流出路狭窄

肺動脈‐右室流出路狭窄は肺動脈弁や右室の漏斗部あるいは両者の異常の合併によって形成されている。肺動脈弁低形成と漏斗部異常との合併が最も多い。

a)肺動脈弁の形態

異常を示すことが多く,二弁(56%),閉鎖(16%),単一弁(11%),ドーム様弁(6%),三弁(3%)あるいは欠損(3%)などがみられ,肺動脈低形成と関連している。極端な場合が弁閉鎖であり,ファロー四徴症極型あるいは偽型総動脈幹とよばれている。肺動脈弁の欠損例には動脈管欠損との合併が多い。

b)漏斗部狭窄

狭窄は漏斗部の上方,中央,下方にあるか,あるいはそれらいずれかとの合併によって形成されている。中隔部の筋束は2つ,あるいはそれ以上で形成され,その上部は肺動脈幹基底部に及び,下部は異常位置にある側方部と癒合して弓状を呈している。一方,側方部の筋束は2つ形成されているが,1つは短く三尖弁から離れて右室腔の前壁に移動し欠損部への入口を形成し,他は前記側方部と三尖弁前尖との間をうずめている。

大動脈騎乗

大動脈は正常より右側前方に位置している。大動脈弁と僧帽弁との関係には大動脈弁無冠尖および左冠尖とが僧帽弁前尖と連絡している正常型と,大動脈弁左冠尖と僧帽弁前尖との間に線維性連絡のある異常型の2つがある。

右室肥大

心室中隔欠損孔より左右短絡が生じ,血行動態の異常によって高い圧により右室肥大をきたすと考えられる。また,一次的に形成されてくるという考え方もある。

治療

出生直後,肺血流が動脈管に依存している例ではプロスタグランジンE1が投与される。右室流出路狭窄が高度の例ではβ遮断薬が有効である。手術は姑息手術と根治手術に分けられる。前者には鎖骨下動脈を肺動脈に吻合するBlalock-Taussig手術(B-Tシャント術)が行われる。後者の心内修復術は心室中隔欠損の閉鎖と肺動脈狭窄の解除である。

症例

1歳 男児
在胎36週,生下時体重2.4kgで出生。生後5日に全身性チアノーゼと心雑音を指摘され近医に入院。プロスタグランジンによる治療を受けた。生後6週間の時点で当院へ紹介され入院。精査の結果,ファロー四徴症,肺動脈閉塞,動脈管開存と診断されプロスタグランジンによる治療が継続された。その後,modified B-Tシャント術が施行された。術後経過は順調で退院後外来にて経過観察されていたが,退院10ヵ月後,突然手足を突っ張るような運動があり,その直後眼球上転がみられ間もなく呼吸停止し永眠された。剖検所見では,高度な肺動脈低形成および肺動脈弁閉鎖を伴った右室流出路狭窄,大動脈騎乗,心室中隔欠損(傍膜様部型),右室肥大が認められ,ファロー四徴症極型に相当する所見であった。右B-Tシャント術後状態であり,動脈管および卵円孔は閉鎖していた。また,両肺には多発性肺血栓塞栓を伴っていた。

  • 図1 正面像。膜様部近傍に心室中隔欠損が認められる(矢印)。高度な肺動脈弁閉鎖を伴った右室流出路狭窄,大動脈騎乗を伴い,右室壁は肥厚し右室肥大を呈している(矢印)。大動脈騎乗,肺動脈低形成を伴う。
  • 図2 図1の拡大像。膜様部近傍に心室中隔欠損が認められる。大動脈弁と僧帽弁との関係は大動脈弁無冠尖および左冠尖とが僧帽弁前尖と連絡している正常型を示している。
  • 図3 図1の拡大像。大動脈は正常より右側前方に位置し,肺動脈低形成を伴う。肺動脈弁閉鎖が認められ,肺動脈幹は基底部において著しく細い(矢印)。遠位側には肺動脈幹の拡張がみられる(矢印)。

最終更新日 2015年04月01日

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