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国循で認知症予防!?

平成24年時点で、65歳以上の高齢者人口3,079万人の内、約462万人もの認知症有病者がいると言われています。また、正常でもなく、認知症でもない(正常と認知症の中間)状態である、軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment: MCI)の高齢者がさらに約400万人と推計されております(厚生労働省)。
あなたも認知症とは未だ診断されていないかもしれませんが、MCIに該当する可能性があります。

「最近物忘れが気になるなぁ...」「お友達の○○さん、認知症って言われたみたい...私は大丈夫かしら?」
上記のような心配はないでしょうか?まずは、以下の項目をチェックしてみましょう。

① 検診などで血圧が高いと言われたことがある。 はい いいえ
② 血糖値が高く糖尿病の可能性を指摘されたことがある。 はい いいえ
③ カレンダー、新聞等を見ないと今日の日付を思い出しにくい。 はい いいえ
④ 外出時、持ち物の準備がはかどらないことがある。 はい いいえ
⑤ バスや電車を使って一人で外出しづらくなっている。 はい いいえ
⑥ 趣味や家事に意欲がわかない。 はい いいえ
⑦ 普段の買い物で小銭を出すのが億劫になってきた。 はい いいえ
⑧ 一人で買い物に行くのは、不安だ。 はい いいえ
⑨ 行った先で何をするのか思い出せない時がある。 はい いいえ
⑩ 普段と違う予定は忘れがちである。 はい いいえ
上記の項目の内...

★「はい」が0~2つの方は
適塩を中心とした食事療法・適度な運動を心がけましょう(2017年5月17日 NHK「ガッテン!」で取り上げられました)。
(適塩については【かるしお】をご確認ください。)

★「はい」が3つ以上の方は
MCIかもしれません。
国立循環器病研究センター脳神経内科では、脳血管を健康に保ち、認知症予防を図る各種の研究プロジェクトを行っております。ここではそのいくつかをご紹介いたします。


MCIってなーに?

注1:軽度認知障害とは?

軽度認知障害(MCI)とは、認知症とまでは言えませんが、物忘れがあったりして正常とも言い切れない状態です。正常な老化とは明らかに区別ができ、本人や、家族などの周りの人が認識できる程度の認知障害が現れます。

軽度認知障害の兆候

注2:認知症とは?

認知症とは、物忘れなどによって日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態を言います。認知症の原因にはいろいろありますが、代表的な病態として、脳内にβアミロイドとよばれる異常タンパク質が蓄積する「アルツハイマー型認知症」と、動脈硬化などによって脳の血流に障害が生じ、神経細胞が死んでしまう「血管性認知症」に大別されます。一部の「血管性認知症」は脳梗塞の後遺症でも生じます。多くの高齢の認知症の患者さんは、「アルツハイマー型認知症」と「脳血管性認知症」を合併していることが一般的です。

これまで、「アルツハイマー型認知症」を治すため、お薬により異常タンパク質の作り出す量を抑える、または、脳内に凝集・沈着した異常タンパク質を溶かして排出させることを目指した研究が行われてきました。しかし残念ながら、現時点では確実な有効性のある治療法は確立していません。「血管性認知症」の治療は、血圧、コレステロール値、血糖値などを適切に管理し、血液をサラサラに保つことでかなりの効果を発揮することがわかっています。脳梗塞の予防も「血管性認知症」の治療法かつ予防法になります。

日本初の、認知症予防のための多施設共同医師主導治験: COMCID研究

(2014年7月20日 NHKスペシャル「認知症800万人時代 認知症をくい止めろ~ここまで来た!世界の最前線~」に取り上げられました)

認知症を発症する前のMCIの段階から治療を行うことが重要です。国立循環器病研究センターと、全国の約10の施設では、日本初の、認知症予防のための多施設共同医師主導治験:COMCID研究を平成27年度より実施しております。
治験の対象となる方は、主に以下のようになります。
① 55才以上、84才以下の方
② MCIの方

COMCID研究の詳細はこちらへ

COMCID研究では、抗血小板薬の1つで血液をサラサラに保ちます、「シロスタゾール」で認知症予防を実現できないか、現在検証しております。興味がおありの方は、連携室を通して、脳神経内科を受診してください。

専門医療連携室はこちら

Taguchi. Psychogeriatrics 2013


Maki. Annals of Clinical and Translational Neurology 2014


※ COMCID研究は現在参加可能です。(2017年5月1日現在)



タキシフォリンプロジェクト

(2017年4月5日 読売新聞、毎日新聞他、報道各社で取り上げられました)

国循はシロスタゾールに続く認知症治療・予防薬の開発も並行して行っております。私たちはアミロイド凝集抑制作用を有する物質、タキシフォリンが、Aβが蓄積してできる「Aβオリゴマー(毒性をもつ立体構造)」の産生を抑制することを動物実験で示しました。

私たちは、脳血管にAβが蓄積する病態、脳アミロイド血管症に注目し、脳アミロイド血管症の治療が認知症治療への近道であると考え、脳アミロイド血管症のモデルマウスにタキシフォリンを投与しました。すると、タキシフォリンを投与したマウスでは、タキシフォリン非投与のマウスに比べ、脳内のAβオリゴマー量が大幅に減少し、脳血流量や認知機能も正常に近い状態まで回復することが明らかになりました。

タキシフォリンによりAβが減少しただけでなく、認知機能障害も回復させられることが明らかになったため、アルツハイマー病の有効な治療薬候補となると考えられます。今後は認知症新規治療薬としてヒトへの効果を確認するため、ただいま臨床試験の準備を行っております。

Saito. Acta Neuropathologica Communications 2017


むし歯予防プロジェクト

(2016年2月8日 朝日新聞、日本経済新聞他、国内主要新聞に取り上げられ, Nature 系ジャーナルのおすすめコンテンツに掲載された)

高血圧等の心血管リスクに基づく細動脈硬化により、脳の深部では微小な出血が生じ、それらが認知症に結びつくことが知られています(右図)。しかし、そのような細動脈硬化の形成には、様々な未知の環境要因が関わることが示唆されるようになりました。したがって、その未知の要因を研究することが未来の認知症予防薬につながると我々は考えています。

大阪大学歯学部との共同研究で、そのような「未知の要因」として、口腔内のミュータンス菌(むし歯菌; Streptococcus mutans)の中でCnmと呼ばれるコラーゲン接着性の高いタンパク質を発現する菌株を口腔内に保有すると、脳の深部に微小な出血が多発しやすいことを見出しました。脳の深部の血管において高血圧や加齢などの影響で血管内皮細胞に損傷が加わると、そこにむし歯菌がCnmタンパクを介して結合、血小板凝集を阻害するとともに局所炎症を引き起こし、微小な出血の原因となると考えられます。この意外な関係を起点に画期的な脳出血・認知症予防薬を現在開発中です。



Ihara. Stroke 2016

Cnm陽性ミュータンス菌による脳出血発症のメカニズム

Tonomura. Scientific Reports 2016

この記事に関連する部局
・国立循環器病研究センター病院 脳神経内科

最終更新日 2017年05月17日

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