ホーム > 国循について > 卓越する国循 > 生体内組織形成術(IBTA):自分用の移植体を自分で作る

生体内組織形成術(IBTA):自分用の移植体を自分で作る

現在の再生医療では皮膚や軟骨、血管などが臨床応用されています。その移植物の作製には、患者の体から採取した細胞を培養によって大量に増やす必要があり、清潔施設での長期間の作業を要します。国立循環器病研究センター研究所の中山泰秀室長は、この細胞培養が全く不要で、患者さんの体内を利用して、異物を一切含まない自分の体内成分のみからなる移植体を作製できる革新的な再生医療技術として、生体内組織形成術(IBTA)を開発しました。従来に比べて手間、暇、コストを大幅に削減することができ、特別な施設が必要ないため、広く一般治療として普及できる可能性があります。


作製方法は簡単で、作りたい形状の型を皮下に1~2ヶ月埋め込むだけです。3次元プリンターを使えば、患者個々に合わせた目的形状の型を自由に設計することができます。出来上がる組織は自分のコラーゲンが主成分であるため、毒性がなく安全です。移植後に拒絶反応が起こることもなく、がん化の心配もありません。

型として細い丸紐を用いると口径0.6mmの世界で最も細い(movie 1)、渦巻き状の型からは50cmを超える長い(movie 2)管状組織体がバイオチューブと名付けた人工血管としてできあがります。これを移植すると、元々皮膚の組織でできていたものが数ヶ月以内に血管として再生して生着します。動物実験ではすでに10年近い耐久性を調べています。幼犬に移植すると、成犬になるまで体格に合わせてバイオチューブも追従して大きく長くなることを確認しています。成長に伴う手術の繰り返しが不要になる可能性があるため、小児外科でも期待されています。バイオチューブの世界初のFirst in human試験となる臨床研究を、天理よろづ相談所病院と共同で実施しています。透析シャント血管の頻回に悩む狭窄に対してバイパス治療するために、患者自身が作ったバイオチューブが役立っています。


また、薄い膜状から1cm近い板状まで、厚さを自由にコントロールできるシート状組織体をバイオシートとして得ることができます(movie 3)。薄くても丈夫で、引っ張っても糸をかけても簡単に破れることはありません(movie 4, movie 5)。バイオシートは欠損部の修復材としての有用性が動物実験で確かめられています。全国の大学と共同研究を進め、硬膜、角膜、気管、食道、心筋、弁膜、皮膚、小腸、腹壁、子宮、膀胱の再生など応用分野は非常に多岐にわたっています。バイオシートは移植した部位に応じて、目的の組織や臓器が再生します。京都府立医科大学との共同臨床研究として、先天性心疾患の幼児患者に対してバイオシートを用いた肺動脈形成がなされています。

さらに、型の設計を工夫することで複雑な三次元構造体の作製も可能となり、その一例としてバイオバルブと名付けた心臓弁様体の開発を、研究所人工臓器部とともに精力的に進めています。4種類ある心臓弁形状の作り分けや、近年普及しつつある経皮的大動脈弁移植術(TAVI)用のステント付心臓弁も作製可能で、体内においてステントと一体成形がなされています。大動物のヤギを用いて移植実験を重ねており、年単位での有用性が実証されています。

国立循環器病研究センターは、平成23年度に早期・探索的臨床試験拠点整備事業に選定され、医療機器開発プロジェクト「Mediciプロジェクト」において様々な医療機器の開発を支援してきました。開発した生体内組織形成術は、本プロジェクトの支援の成果の一つであり、これまで蓄積された技術や知財を有効活用するためにベンチャーの起業が検討され、臨床応用、実用化が加速されると期待されます。

関連プレスリリース
世界最小径の人工血管開発に成功~生体内組織形成術を用いた人工血管~(2015年11月2日)

この記事に関連する部局
・国立循環器病研究センター研究所 生体医工学部

最終更新日 2016年08月23日

ページ上部へ