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ペプチドの研究と臨床応用

血管から“がん転移”を防ぐ ‐AMED支援事業に採択‐

血管から

心臓ホルモン・心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)とは・・

ANPは、1984年に寒川賢治(当センター研究所長)、松尾壽之(当センター研究所名誉所長)らによって発見された心臓ホルモンです。利尿や血管を拡げる作用があることから、1995年より急性心不全に対する治療薬として臨床で使われています。

ANPの肺がん術後再発抑制効果の発見

これまでに私達は、肺がん手術の際、手術中より3日間ANPを持続投与すると、術後様々な心血管・呼吸器系の合併症発生率(不整脈や肺炎など)を下げることを報告しました。その後偶然にも、ANP投与によって、術後のがん再発率が少なくなることがわかり、基礎研究をスタートさせました。

※下図は全症例の無再発生存率のグラフ、右図は症例マッチングを行った無再発生存率のグラフ

無再発生存率のグラフ

ANPのがん転移・再発抑制効果のメカニズム

なぜANPが、がんの転移・再発を減らしたのかどうか解析した結果、ANPが血管へ作用し、E-セレクチンという血管の接着分子を減らすことによって、がん細胞の血管への接着を防ぎ、その結果、がん転移を予防していることを突き止めました。

ANPは何故3日間投与でがん移転を抑制したのか?

がんの手術中、血中に遊離がん細胞が放出され、その多くは1~2日間程度で細胞死を迎え、消退することが知られています。一方、手術時の炎症によって血管E-セレクチンの発現が高まると、一部の遊離がん細胞が(消退する前に)血管へ接着・浸潤してしまうことがあります。これが術後再発・転移の一因であると考えられています。ANPは血管E-セレクチンの発現を抑え、遊離がん細胞が血管へ接着するのを防ぎ、その結果、術後再発を予防していると考えられます。

国循主導多施設共同無作為化比較試験(JANP study)の開始・AMED支援事業

これまでの研究成果を基に、肺がん手術を対象とした多施設共同無作為化比較試験(Japan Human Atrial Natriuretic Peptide for Lung Cancer Surgery: JANP study)を先進医療B取得後、平成28年9月1日より症例エントリーを開始いたしました。国内10施設にて実施中です。本試験は、平成28年4月~国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「臨床研究・治験推進研究事業」に採択され、支援を受けています。平成28年11月現在、既に約200名のエントリーが完了しており、おおむね順調に進んでいます。

世界初の臨床試験 血管保護によるがん転移抑制

また、本試験では新しい試みとして、エントリーされた患者さんの血液やがん病巣の検体を1か所(北海道大学病院臨床研究開発センター研究開発推進部生体試料管理室)に集積・保存し、ANPの新しい“抗転移薬”の効能(血管保護作用)の観点から、様々な独自の解析を加える予定になっています。提供頂いた大事な血液やがん病巣を有効に活用する為、国内トップクラスの様々な研究機関と連携・共同研究を行い、最新のテクノロジーを駆使した解析を行うことで、本邦発・世界初のANPの“抗転移薬”として、さらなる新規作用・メカニズムを見つけていきたいと考えています。

臨床検体の流れ

今後の展望

血管保護によって、がん転移を防ぐという考え方は、肺がんに限らず、あらゆる悪性腫瘍に応用可能と考えられます。今後、様々ながん拠点病院・研究機関と連携し、血管保護によるがん転移抑制効果をあらゆる形で応用すべく、基礎研究の推進も含めて準備を進めています。さらに、抗がん剤とANPの併用治療についても、着実に準備を進めています。

最終更新日 2016年11月16日

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